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2020.6.4

イノベーションを継続的に創出できる組織のあり方

イノベーションを継続的に創出できる組織のあり方

はじめに

ISO56002「イノベーション・マネジメントシステム」の第4章「組織の状況」にて定義されている規格を題材に、イノベーションを継続的に創出できる組織のあり方についてご紹介します。イノベーション・マネジメントシステムとは、イノベーションを会社/組織全体で創出するための「仕組み」です。コンピューターシステムという意味ではなく、どのような役割の組織が、どのような特徴を持って活動し、どのように社内外と連携しながら会社/組織全体でイノベーションを創出するか、という「系」について定義しています。

ISOで定義されている組織のあり方

ISO56002「イノベーション・マネジメントシステム」の第4章「組織の状況」では、網羅的かつ詳細に定義が並んでいますが、本記事ではその中でも特に重要な3つのポイントを抜粋してご紹介いたします。

①組織の外部/内部環境を理解すること
 -主に社内外の変化やトレンドを把握するための活動方針を定義

②利害関係者のニーズ/期待値を理解すること
 -イノベーションに求められる期待値を把握するための活動方針を定義

③イノベーション・マネジメントシステムを組織に実装すること
 -イノベーション創出に適した職場環境や文化を定義

①組織の外部/内部環境を理解すること

ISOでは、組織が定期的に調査/分析するべき事項を外部/内部それぞれに対して以下の通り定義しています。

◆外部環境を把握するためのポイント
a) 経済、市場、社会、文化、科学、技術、法律、政治、地政学及び環境を含む様々な分野
b) 国際、国内、地方又は地域を問わず、地理的な領域
c) 過去の経験、現在の状況及び潜在的な将来のシナリオ
d) 変化の速度、及び変化に対する抵抗
e) 傾向が発生する可能性、及び傾向の潜在的な影響
f) 潜在的な機会及び脅威、並びに創造的破壊により生じ得る機会及び脅威
g) 利害関係者の動向

ここで定義されている通り、世の中を俯瞰し、マクロ視点で外部環境を把握することはもちろん重要です。その上で、自組織にとってより重要で、より解像度を高めて把握するべき事項は e / f / g だと考えます。

それぞれの定義を言い換えると、
e) どのような変化/トレンドが起きうるか?何に影響するのか?
f) その変化/トレンドにより事業機会や脅威は生まれるのか?
g) 競合/パートナーはその変化/トレンドにどのように対応しようとしているのか?
となります。

自組織がイノベーションを継続的に創出するためには、まずは自組織が属するコミュニティにおいて「変化が起きるか?」「変化の影響はポジティブなのかネガティブなのか?」「競合/パートナーはどう動くか?」の3点を正しく把握することが何よりも重要です。例えば、このコロナ禍においてはどのような変化が起きるのか?または既に起きているのか?、競合やパートナー企業はどのような取り組みを進めているのか?その外部環境を踏まえたときに自組織はどう動くべきか?改めて考えてみる価値があると思います。

◆内部環境を把握するためのポイント
a) 組織のビジョン、野心の水準、戦略的な方向性及び中核的な力量
b) 既存の経営慣行、組織構造、及び他のマネジメントシステムの利用
c) 組織の全体的な実績及び組織のイノベーションの実績。例えば、最近の達成及び失敗、並びに他の関連組織と比較した実績
d) 活動の側面。例えば、プロセス、予算、管理及び協力
e) 現在の製品・サービス及び価値実現モデルの潜在性及び成熟度(ライフサイクルにおける位置)
f) 組織の人々、知識、技能、技術、知的財産、エコシステム、ブランディング、提携関係、 インフラストラクチャなどの独自性
g) 戦略、プロセス、経営資源配分などの適応性
h) 価値観態度及び組織の全ての階層でのコミットメントなどの文化的な側面
i) 長期的に見て、組織の人々がイノベーションを興す力量

内部環境についても詳細に定義されていますが、我々が様々な企業にてイノベーション創出のための組織について課題を特定し、解決を支援してきた経験を踏まえると、ほとんどすべての組織の根本的な課題であり、広く共通している「あるある課題」は a です。

aに関するISO定義を分解すると、
「組織のビジョン」:どうありたいのか、何を目指すのか?
「野心の水準」:いつまでに、どうなりたいのか?どの程度のレベルを目指すか?
「戦略的な方向性」:やらないことは何か?どのように選択と集中を仕掛けるか?
「中核的な力量」 :強みは何か?競合に比べてどの程度強いか?
となります。

「イノベーションを継続的に創出できる組織にしたい」というご相談を受けたとき、まず最初に「ゴールが定義されているか」をヒアリングさせていただきますが、未定義、または定義されているが解像度が低いことが少なくありません。

まずは上記 a を経営陣がしっかり決めることが先決です。b以降はaの定義次第で最適なリソース配分が大きく変わってきます。

このゴール定義については「②利害関係者のニーズ/期待値を理解すること」とも関連するため、続けて次のパートも見てみましょう。

②利害関係者のニーズ/期待値を理解すること

ISOで定義された利害関係者のニーズ/期待値を理解するためのポイントは以下の通り定義されています。
a) 現在又は将来のニーズ及び期待
b) 明示された、又は明示されていないニーズ及び期待
c) 金銭的及び、非金銭的な価値の実現
d) 漸進的なものから革新的なものに至るまで、様々な程度の新規性及び変化
e) 既存の市場、又は新たな市場の創造
f) 何らかの製品、サービス、 プロセス、モデル、方法など
g) 現在の組織の範囲に含まれる製品・サービス、当該範囲に近い製品・サービス、又は当該範囲から遠い製品・ サービス
h) 現在の製品・サービスの改善又は代替
i) 組織自体又はそのバリューチェーン、ネットワーク若しくはエコシステム
j) 法令・規制要求事項、及びコンプライアンスへのコミットメント 

こちらも網羅的に定義されており、いずれも必要な観点ですが、最も重要なのは a / b に記載のある「期待」を理解をすることです。期待とは即ち「どうなることを要求するのか」「どういう状態になれば成功なのか」=ゴール定義に他なりません。前パートでも触れましたが、改めてイノベーション創出のゴール定義を大別すると2種類にわけられると考えています。

[A] 事業観点を重視したゴール定義
「次の収益の柱となる事業を生み出す」「既存事業とのシナジー創出できる事業を生み出す」といったゴール定義です。例えば「3年後に3億円の売上を作る」「新規事業単体での収益は問わないが、既存事業へのシナジー(例えば既存事業への送客等)にて1億円の売上貢献を生み出す」といった目標を定めることになります。

[B] 組織観点を重視したゴール定義
例えば「新規事業に適した人材を育成する」「イノベーション思考のある組織風土や文化を醸成する」といったゴール定義です。例えば「新規事業プログラムに毎年100件以上の事業アイデアが応募され、プログラムの最終審査で3件以上が通過する」「既存事業の改善アイデアが毎月10件以上継続的に投稿される」といった目標を定めることになります。

このようにゴールの方向性を決め、明確に定義することが、b以降のポイント理解において重要な役割を果たします。

③イノベーション・マネジメントシステムを組織に実装すること

最後に、ISOが定義するイノベーション創出組織の職場環境および文化についてご紹介します。

◆組織が提供するべき職場環境のポイント
a) 開放性、好奇心及び顧客重視
b) フィードバック及び提案の奨励
c) 学習、実験、創造性、変化及び現在の前提条件に疑義を呈することの奨励
d) 人々の積極的な参加の継続を伴う、リスクテイク及び失敗からの学習の奨励
e) 内部及び外部の人脈形成、協力及び参加
f) イノベーション活動における様々な人々、規律及び視点の多様性、尊重及び包括性
g) 共有された価値観、信念及び行動
h) 仮説に基づく分析及び意思決定と、客観的事実に基づく分析及び意思決定の両立
i) 直線的及び非直線的な計画及びプロセスの両立

ここで特に強調したいのは h です。不確実性の高いイノベーション創出では、まず初期仮説を立て、検証/実験プロセスを通して結果(データ)を集め、その事実を分析して示唆を出し、ピボットを含めた意思決定をハイスピードに繰り返せるかどうかが成否をわけます。つまり「仮説」と「事実」を明確にわけて理解し、それぞれを適切に取り扱うことができる職場環境(働く人々の思考タイプ/意思決定プロセス/会議体等)が提供できているのか、が最も大切なポイントです。この根本的な「職場環境」が無い限り、仮に h 以外のポイントが満たされていたとしても継続的にイノベーションを創出することは難しいと言わざるを得ません。

◆イノベーションを継続的に創出できる組織文化のポイント
a) 全ての階層のリーダーが、イノベーション活動へのコミットメントを促進及び実証している。
b) 組織内の価値観、信念及び行動の点から、様々なイノベーション活動の共存及び効果的な橋渡しが実行されている。
c) イノベーター、 イノベーティブな行動、 イノベーションの取組み、 及びイノベーションの物語化が支援され、 評価されている。
d) イノベーションを達成するインセンティブが存在し、外発的な動機付け(例えば、金銭的な報酬)のみではなく、内発的な動機付け(例えば、自主性の向上及び意欲を高める目的)が重視されている。
e) イノベーション活動を支援する力量が開発されている。
f) 関連する指標を使用して、文化が査定されている。
g) 多分野にわたる協力の構造が存在する。 

組織はリーダーで決まります。リーダーの価値観、評価基準、思考の癖や特徴がすべての階層に伝播し、組織文化が生まれます。それゆえ最重要なのは a だと言えます。我々がイノベーション創出に取り組む様々な企業にヒアリングした結果「トップの号令でイノベーション創出に取り組んでいるが、ミドルは現場ミッション達成に注力しておりイノベーション創出への理解が乏しい」という状況が多くの企業に共通しています。その場合「トップと現場はイノベーション創出に前向きだが、ミドルはそうでもない」という構造が生まれます。トップからの号令は全組織にイノベーション創出の重要性を呼びかけ奮起させるために必須ですが、その上で必要なのは「トップからミドルに繰り返しメッセージを発信し、健全な危機感とイノベーション創出の必要性について浸透させること」だと考えます。数少ない先進的な企業に限られますが、イノベーション創出組織を本気で実現するため、これまで聖域としてチューニングが難しかった人事評価制度に、イノベーション創出への取り組みに関する評価事項を追加した企業もあります。

ここまでISO56002「イノベーション・マネジメント」の第4章「組織の状況」にて定義されている規格を題材に、イノベーションを継続的に創出できる組織のあり方について検討してきました。みなさまの組織に当てはめて考えると、どのような課題が浮かび上がったでしょうか?イノベーション創出の観点で「百点満点」の組織など存在しません。働く人々の特徴や能力、備わっている文化や慣習は当然企業ごとに異なります。大切なのは、ISO基準に照らすことで「網羅的な観点」で自組織を冷静に評価し、解決するべき「最優先課題」を特定したうえで、愚直に課題解決に取り組むことだと考えます。

本記事が、イノベーションを継続的に創出する組織を目指すみなさまに取って、少しでもお役に立っていれば幸いです。

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