Relicの新規事業支援には様々な形がありますが、今回はもともと会社が保有していた技術を、どう事業化・収益化するかを共に検討し実現に繋げた事例として、大手通信事業社様のAIソリューション事例を紹介します。
もともとは、「人とAIが対話ができるプロダクト」として、社内のR&D(技術調査・技術開発開発)部門の研究の中で生まれた技術。
この会社には、本社とは切り離され独立したインキュベーション組織があり、このAIソリューションはインキュベーション組織内で技術の事業化可能性を模索している段階でした。アイデア自体が研究開発を専門とする部門の出自ということもあって、事業化の検証や収益化の部分はノウハウがなく組織内だけではスムーズに進めるのが難しそうということで、Relicが事業化検証の支援をしてほしいとお声がけ頂いたことから始まったプロジェクトです。
まずは「サービス名称決め」。兎にも角にも、販売するには名前がなくてはと、一緒に考えるところが初めの一歩となりました。担当者の方とディスカッションを繰り返し、覚えやすく、プロダクトのありようを表すワンフレーズを探すところから伴走が始まります。普通の仕事をしていたら新規事業や新商品の名前を考える経験など、1回2回あれば多い方かと思いますが、こういった誕生の瞬間を何度も味わえるのは新規事業に特化してサポートを行っているRelicの仕事の醍醐味といえるでしょう。
サービス名決定後は、このAIソリューションをどうやって事業化させ収益に繋げていくか、共に検討を行いました。ここからがRelicのノウハウが活きるポイントであり、まずはこの技術が使えそうなユースケースを洗い出し、そこから本プロダクトの導入可能性がある業界を網羅的に幅出ししていきます。
まさに新規事業の“あるある”ではあるのですが、長い間そのプロダクトのことを集中して考えているご担当者様は、網羅的に市場を検討している“つもり”、になってしまう場合があります。たまたま検討初期に着想した事業化アイデアに基づいて機能開発を進めた結果、気づいた時にはマーケットボリューム的に事業としての継続が困難になってしまって……という事例も、これまでいくつか見てきました。
本プロジェクトも、ともするとその落とし穴に嵌ってしまいそうになっていたので、我々は、あえて広く検討をはじめることに。少しでも可能性がありそうな業界については関係者にアポイントメントをとってヒアリング。AIソリューションを使った事業展開の方法や導入の可能性を丁寧に探っていく方法を提案・実行しました。
お客様からRelicの支援で最も評価いただく点のひとつが、そのアポイントメント打診からヒアリングなど、想定ターゲットである業種/業界に向けたテストセールスの活動も任せられることです。新規事業コンサルティングだけを行う会社の場合、「この業界にヒアリングをしたらよい」「●●業界に可能性がある」という【方針】だけを示すこともあると伺うのですが、特にこのAIソリューションプロジェクトはメイン担当が研究開発組織出身の方ということもあり、ご自身の経験少ないアポイントメント取りやヒアリングを取り仕切るモデレーター役などいわゆる営業や企画といった立場をRelicの事業プロデューサーが担うことで、かなり安心感や信頼感を持っていただけました。この、「提案するだけではなく、新規事業立ち上げの伴走をする」姿勢は当社が大事にしている「共創」の考え方に通じるものなので、この部分を評価いただけるのは大変嬉しく思っています。
最終的に、このAIソリューションは事業案のひとつとして、インキュベーション組織を卒業。事業化を目指して本社の事業部へと昇格しました。このインキュベーション組織では、卒業要件のひとつとして「ターゲットと市場感が明確になっていること」が求められているのですが、本プロジェクトはそれを見事クリアしたということです。
この結果には、前述した「幅出しのアプローチ」が大きく貢献しています。網羅的に、充分に市場感を検証したからこそ、事業化を審査する方にもAIソリューションの将来性に納得感を持っていただけたそうです。
はじめてお話を頂いた時は、Relicの担当者もその市場性を見出せずにいたところもありましたが、自分たちの無意識下にあるバイアスを取り除き、フラットな思考でファクトベースの検討をしていくRelicならではのノウハウ・アプローチが奏功した事例だと言えるでしょう。
本プロダクトについては、その後有名なアプリのキャンペーンに組み込まれたり、別のハードウェアに搭載されたりと、着実に実績を重ねています。Relicとは営業支援などの形で協力体制も続いており、このプロダクトのさらなる飛躍を楽しみにしています。
ENjiNEはRelicを代表するサービスのひとつですが、当社はプラットフォームを提供するビジネスのみを展開しているわけではありません。また、クラウドファンディング専業でビジネスを展開する会社ではないので、プラットフォームの利用手数料は非常にリーズナブル。それは、ENjiNEが「新規事業のテストマーケティングのための場」と位置づけられているからです。
あえて標榜すれば、Relicは「新規事業を支援する会社」であり、そのために必要なプラットフォームやマーケティングツールなどを揃えています。例えば、新規事業の立ち上げに向けた資金調達のため、または顧客の意見を集約するためのテストマーケティングが必要となった際に活用していただくサービスが、今回紹介する「ENjiNE」です。
「ENjiNE」の特徴は、「ネットワーク型のクラウドファンディングプラットフォーム」であること。同じ「ENjiNE」の基盤を採用しているサイト同士で掲載プロジェクト(支援を募る案件)を共有できるため、効率的に支援を集めることが可能です。複数のクラウドファンディングサイトをネットワークでつなぐことで、サイトを運営する【プラットフォーマー】は、自社だけで商品やユーザーの開拓が難しくてもサイトを活性化することができます。さらに、プロジェクトで支援を募る【起案者】からすると1回の出品で様々なセグメントの読者にアプローチすることができ、最小の労力で多様なユーザーに向けたテストマーケティングが可能になります。
導入企業には、日本経済新聞社様、パナソニック様、髙島屋様など、誰しも名前を聞いたことがある会社名が並びます。自社でクラウドファンディングサイトを持つことには経済的なメリットもありますし、自社の冠のもと、自分たちの提供したい世界観が演出でき、ファンとのつながりを創出しやすいことが、このような有名企業にENjiNEが支持される理由でしょう。
また、コロナ禍で外出機会が減りネット関連サービスが伸びていること、さらに街でのショッピングが難しくなりEコマースの流通額が増えていること、また窮地に立たされたクリエイターや地元を応援したいという熱意の高まりもあり、クラウドファンディングそのものへの注目度もますます高まっています。
初期費用無料の成果報酬型で、集まった支援金額に対しての手数料をいただくビジネスモデルです。初期費用や固定費のリスクが少なく、はじめてEコマースやクラウドファンディングサイトの構築に挑戦する企業にとってハードルを低くし、挑戦しやすくしたいという狙いがあります。
クラウドファンディングサイト側は、プロジェクトを新規開拓してサイト上に公開→ネットワーク上の複数のクラウドファンディングサイトに同時掲載をすることで支援を集めることもできますし、自社のクラウドファンディングサイトに多くの集客ができる場合は、ネットワーク上のサイトに掲載されているプロジェクトを自社クラウドファンディングサイトに同時掲載→支援を集めることで手数料を得ることができます。自分のサイトが果たしやすい役割でバリューを出しやすいのもひとつの特徴です。
プロジェクトは集められるものの集客に自信が無い、またはオウンドメディア的にクラウドファンディングサイトを立ち上げたはいいものの、自社だけだと案件数を担保できず、サイトの更新性も担保できない……。そんな企業の課題に応えるためにも、この「ネットワーク型」という仕組みを考案しました。
これまで述べてきた集客の強みに加えて、専門スタッフによるコンサルティングもRelicならではの強みです。
圧倒的な件数を扱ってきたノウハウを活かして、ご相談いただいた企業様の商品がいかによく魅せられるか、どうしたらテストのターゲットとなる顧客層に効率的に認知してもらえるかも、一緒に検討しています。
昨年一気に導入社数が増加したENjiNEですが、更なる成長の為に以下の2点に注力しています。
①導入のハードルを更に下げること
サイトを立ち上げる時にハードルとなる手間をシステムで削減したり、料金プラン自体を見直し/追加したり等、SaaSとして今まで以上に導入しやすいサービスとして成長していきたいと考えています。
②導入企業の事業としての成功確率を高めること
導入企業のクラウドファンディングサイト運営が一つの事業として成功する為に、決済手段の拡充や同時掲載の更なる活性化、カスタマーサクセスの体系化を進めることで流通額がより向上しやすいサービスへの成長を目指しています。
全社的なMISSIONである「⽇本発の新規事業やイノベーションを共創するプラットフォームとなり⽇本経済と地域を活性化する」を体現するサービスとして、ビジネスサイド、開発サイドのメンバーが一体となって上記の施策を進めることで更にENjiNEを成長させていきたいと思っています。
2019年より提供を開始した「Throttle(スロットル)」は、新規事業開発プロジェクト、新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度、オープンイノベーションやアクセラレーションプログラム等を含む、すべての新規事業開発やイノベーション創出のための活動に最適化された国内シェアNo.1のSaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォームです。
今の時代、企業規模に関わらず、どこの企業でも「なにか新規事業をやらなければいけない」という意見や、それに伴う動き自体は活発に行われています。
しかし、その新規事業の募集の仕方は果たして適性なのか、新規事業プロジェクトが問題なく動いているか、一体誰をアサインしたらいいのか……特に大企業では、既存のビジネスモデルやアセットの上で事業が動いていることも多く、新規事業立ち上げのノウハウがないことが多い。そんな企業が突然取り組みを始めようとしても、暗闇の中を手探りで進むようなものです。ただでさえ乗るか反るかの新規事業、しかし社内のだれも「正しい事業の立ち上げ方」を知らないーーー
その課題を解決するため、Relicでは新規事業のアイデア創出から事業化に至るまでの一連のプロセスを一元的に管理・運用するサービスである「Throttle」を提供しています。2021年3月の時点で1,400社、3.5万人が利用しており、国内シェアNo.1となるサービスです。
京セラ株式会社様、東京地下鉄株式会社様、株式会社電通様など、名だたる有名企業のアイデアコンテストやアクセラレータープログラムの実行をサポートしています。23,000人の応募に対して、担当者はわずか2名ということもありましたが、Thlottleを使って管理することで負担も少なくプログラムを遂行することができたという事例が示すように、企業の中で限られたリソースを使って新規事業を立ち上げていくサポートをするためにはThlottleのようなサービスが必要だと考えています。
ここまで紹介すると、Thlottleとは「社内ビジコン向けの管理ツール」と思われてしまうかもしれません。しかしThlottleの唯一性を担保しているのは、Relicならではの新規事業立ち上げノウハウをしっかりと詰め込んでいる点です。
例えば、フレームワーク機能。市場分析やKPIツリーの作成、カスタマージャーニーマップの作成などの雛形が数多く提供されています。これらのフレームワークは、一度体系的に学んだことがある人であればやり方はわかるかもしれませんが、新規事業の設計を一度もやったことがない方だとフレームワークをイチから思いつくことは不可能に近く、短期間で成功に近づくための効率的な近道ができると考えれば、管理側だけでなく、新規事業の事業担当者も日々の事業検討やプロジェクト推進にこのサービスを使う理由が生まれてくるところに、Throttleの面白さがあります。
今後は、従来の新規事業創出プログラム等で利用する、主に「プログラム運営者向けシステム」としてのThlottle利用を拡大させていくことはもちろん、前段で語った「ノウハウ提供」の部分を広く普及させていきたいと考えています。Relicは「イノベーションの民主化」によって日本全体を活性化することを目指しています。その実現のためには、事例で取り上げたような大手企業だけではなく、日本の全企業数のうち99.7%を占め、まさに日本の産業を支えているといえる全国350万社以上の中小企業の中からも次々にイノベーションが生まれる状況を作っていくことが欠かせません。
日本の中小企業を応援したいという思い入れがある方や、イノベーション・新規事業といったキーワードに心躍る方。私たちと一緒に、Thlottleというサービス、ひいてはRelicという会社を成長させていきましょう。
Relicが大切にしている考え方に「仮説検証」があります。特に新規事業においては、最初の事業アイデアをそのまま形にすることが大切なのではなく、ターゲットユーザーの意見や行動、売上などのデータを見ながら、柔軟にサービスの形を変化させていくことが事業成功への近道と考えています。
新規事業における「仮説検証」の重要さをわかっているから作れた仕組み
その理想の実現のためには、戦略に基づきフットワーク軽くサービスのプロトタイプを作り、システム開発まで一気通貫で行える体制が必要です。従来、自社内にデジタル関連のデザインや開発部署を持たない会社さまにとってはこの体制を構えることは困難でしたが、Relic内の新規事業立ち上げに特化したプロフェッショナルなメンバーを「チーム」としてアサインすることで、柔軟な対応を可能にしました。それが今回紹介する「Digital Innovation Studio」です。これまで、観光庁の観光地域づくり法人の活動を活発化させるためのプロダクトの開発、大手金融会社様のオンラインコミュニティサービスの構築など、多くの企業・団体の方にご依頼いただいてきました。
新規事業の立ち上げの中でも、特にデジタル領域に特化したこの取り組み。事業戦略/企画の担当者から、システム開発、UI/UXデザインまで、依頼主となる会社さまで必要な部分について、Relicの各部門からメンバーが参加します。
もっとも特徴的なのは、依頼主との関係性のあり方です。一般的なシステム開発では、依頼主の決めた要件や仕様にしたがってプロダクトを開発し、要件通りのものを期日通りに納品することでプロジェクト終了となりますが、Digital Innovation Studioが目指すのは、お客様の「新規事業の成功」です。そのためには、仕様決めの前段階となるペルソナの設定やカスタマージャーニーマップの作成からプロジェクトに関わることも大切ですし、場合によっては本格的な開発に入る前に機能を絞ったプロトタイプを作成、ユーザーテストを行ってインサイトを見極めるという、通常の開発手法よりも手数がかかるご提案をすることもあります。しかし、コストをかけて開発したもののユーザーにまったく受け入れられなかった、解決した課題がそもそもズレていたなどの大きな失敗を避けることができ、結果的には新規事業の立ち上げにより近づけると考えています。
この仕組みは、新規事業開発の特殊性を鑑みて考案されました。一般に、新規事業の成功確率は5〜10%と言われており、裏を返せば失敗の確率がとても高いと言えます。不確実な仮説をひとつひとつ検証したり、「このアプローチは違った」とわかった時点で前段階まで戻って検討し直せる柔軟性が、チームにもデザインにも、システムにも求められており、それを体現したのがこのDigital Innovation Studioです。
もちろん、ここで言う「プロトタイプ」は実際に動くシステム(機能試作・ファンクショナルプロト)に限定されず、手書きのスケッチや紙に書いたペーパープロトやコンセプトムービーも広義的に含まれます。そのときに検証したいことを、最も効果的に検証できる手法を時々で選定し、提案できるのも自分たちのバリューです。
日本を代表する有名企業ともコラボレーション
冒頭に紹介した事例のほかに、誰もが名前を知っているであろう超大手のメーカーさまの新規事業においても、このDigital Innovation Studioが関わっています。今回、「映像制作の民主化」を目指して、原案から撮影・編集に至るまで、動画に関する様々なスキルを持ったクリエイター同士をマッチングするプラットフォーム立ち上げに関する新規事業を企画されており、それを社内で事業化できるかを検討するためのプロトタイプ作りを依頼されました。
映像のコンセプトに共感したクリエイター同士が協力してモノづくりをする文化を創っていく取り組みであり、映像制作の未来を担っていくプロジェクトだという起案者様の熱意も感じられましたし、「日本のクリエイターを応援する」という点がRelicの会社ビジョンとも共鳴し、Relicのメンバーも非常に士気も高く取り組むことができました。
わずか3ヶ月で、サービスの要件定義や外観デザイン、MVP(Minimun Viable Product=顧客に価値を提供できる必要最小限のプロダクト)の開発から評価まで行う短期集中のプロジェクトでしたが、プロジェクト開始時に各プロセスのKPIを細かく決めていたこともあり、スムーズに事業評価までたどり着くことができ高い評価をいただきました。
これまでRelicでは、上述のような誰もが名前を知っている大企業から起業直後のスタートアップまで、2,500社を超える企業を支援し、10,000以上の事業プランやアイデアの誕生に関与してきました。これだけの数の新規事業支援を扱っていると、自然と新しい知識や技術を試す機会も増えますので、自分の経験値の増え方が他社の比ではありません。
このDigital Innovation Studioで新規事業立ち上げのノウハウを身に着けたあとの長期的なキャリアパスとしては、新規事業の立ち上げ支援のスペシャリストとなるのも可能ですし、どこかの事業会社内で新規事業立ち上げを起案することも、サービスをグロースさせるポジションで活躍することもできるでしょう。将来的に自分でなにか0→1で事業を生み出したいと思っている方にも、Relicでの経験は糧になると思います。
Relicを代表するサービスのひとつに、新規事業開発において、事業アイデア創出や構想・プランの策定から事業性の検証を行うフェーズを支援する「Throttle」があります。新規事業開発の担当者が自ら事業開発の活動状況やアイデアの整理をしたり、仮説検証を行うのに使うこともできますし、社内外のオープンイノベーションやアクセラレーションプログラムに採用すれば、プログラム管理者が事業アイディアや応募者管理や状況把握に使用することもできます。
2019年に国内初のサービスとしてリリースされて以降、順調に導入企業や利用者数を伸ばしていますが、これまでの道のりは平坦なものではありませんでした。また、多くの新規事業と同じように、当初予定していた形とはサービスの有り様も大きく変貌しました。Throttleの歴史を紐解きながら、「新規事業を支援するRelicが展開する新規事業」の展開の仕方をご紹介します。
Throttleの前身は「ignition(イグニション)」というスタンドアローン(買い切り)型のサービスです。社内新規事業プログラムの管理を目的とし、主にRelicの創業当初にお付き合いのあったごく数社の新規事業プログラムのために開発されました。
ignitionが2〜3社の新規事業プログラムで導入されたあと、まずひとつめの転機となったのが京セラ株式会社様への導入。
7万人を超える社員を抱える日本を代表する企業のひとつで、社内の新規事業プログラムに採用されるとあって、Relic側の士気も高まりました。そこで京セラ様からでてくる数々の要望に対して、機能を充実させていくことになります。ここでまずThrottleのベースとなる機能、基本形を充分に検討、利用する側の意見を聞くこともできたことが、いまのThrottleの成功につながっています。
2020年12月より、Throttleの料金形態を変更した。
ふたつめの大きな転機は、ビジネスモデルの変更です。ignition時代は買い切り型のサービスでしたので導入すれば一度に成立する売上は大きかったですが、「新規事業で、コストがかけられない」「リスクは最小限にスタートしたい」という利用者のニーズにマッチしていませんでした。そこで思い切って、SaaS型の月額課金モデルに変更。ユーザー数(ID数)によって価格が変動する料金形態にスイッチしました。このタイミングで、サービス名も現在のThrottleに変わります。この思い切ったビジネスモデル転換は、CEOである北嶋のアイディアが大きかったです。まずはMVP(Minimum Viable Product)として、シンプルな機能に絞ったもので仮説検証を繰り返し、成功への道筋に目処がついた段階で本格的な開発や販売に乗り出す。これは、まさにRelicがお客様に提供している「新規事業の立ち上げノウハウ」を、自社サービスに当てはめてうまく成長させた事例といえるでしょう。
結果、いま現在は最も手軽なプランで月額980円(1IDあたり)から利用できるため、初期費用を準備するのが難しい新規事業でも利用ハードルは低く、Relicの目指す「イノベーションの民主化」を体現するサービス形態に移行しました。
ただ、前身であるignitionでの試行錯誤があり、ある程度の完成度でリリースできたからこそ、SaaSに移行した際にもきちんと顧客がついて来たのだと感じています。はじめからSaaSモデルでリリースしていたら、ここまでの成功はなかったかもしれないと思うと、あとから振り返れば絶妙なタイミングでのビジネスモデル変更でした。
似た事例に、「ENjiNEのネットワーク化」があります。ENjiNEも、サービス開始当初はあくまでクラウドファンディングの機能を提供するサービスとして、個別のサイトごとに独立運営をする設計でした。しかし、その設計では各サービスへの集客はもちろんですが、商品数を集めるのに苦戦してしまい、サイトの更新性も担保できず流通額も伸びない……というマイナスのループにはまりかけた期間があります。
そこで、もともと買い切り型だったENjiNEをSaaS化し、月額課金のビジネスモデルに変更するとともに、出品した商品をENjiNEを導入している他のサイトにも掲載できるようにネットワーク化するアイディアが持ち上がり、複数のメディアサイトやクラウドファンディングサイト、Eコマースサイトを連携させることで、全体の流通額を上げ、サービス運営を安定させることに成功しました。
これらのサービスの転換期には、「サービス開発の主導権はRelicにあること」を意識するようにしています。例えば、大口顧客の企業が「この機能があれば導入する」という機能があったとします。しかし、その機能はいち顧客の組織図に紐付いた独自機能で、他の会社では活用できそうにない……。そんな場合は、勇気を持って機能の採用・開発を見送るという意思決定も大切にされています。サービスの新機能を検討するときなどは、開発メンバーだけではなく、顧客の声を直に聞いてきている営業メンバーも踏まえたミーティングを開催し、「他社からも同じような要望が上がったことはあるか?」「その機能に汎用性はあるのか?」と、関係者全員で検討しています。汎用性、ニーズがあると判断したものは、チーム一丸となって開発に取り組みます。
Relicが外部からの投資を受けておらず、短期的な黒字化や上場のための数字づくりを求められることがないという背景も、この意思決定ができた大きな要因のひとつだと言えます。大きな金額の資金調達やIPO、と聞くとスタートアップの成功例のように聞こえますが、Relicがあえてその方向に事業を向かわせないのも、長期的な目線でお客様の新規事業を支援したいからこそです。
以上、ThrottleやENjiNEに代表される、Relicでのプロダクト開発についてお話しました。ビジネス、エンジニアの職種に関係なく、このようなサービス開発の方法に共感する方、ぜひ一度話を聞きに来てみてください。
Relicの事業プロデューサーは、0→1の新規事業立ち上げのサポートを担っています。さらに最近では、新規事業の企画検討段階から参画し、クライアント企業同士もしくはクライアント企業とRelicのアライアンスの検討/提案、ビジネスデューデリジェンスまで、関わる領域が広がっています。
例えばインバウンドの問い合わせメールからスタートした、とある大手メディア企業様の新規事業の企画検討。検討背景は他の多くの会社さまと同じように、従来の収益源以外の新規事業を立ち上げたいということで、その会社の強み・アセット等を検討し、新規事業立ち上げまでサポートする予定でした。
事業内容を検討するうち、「これは他社と組んだほうがいいものができるのではないか」という結論に至り、これまでの会社同士のつながりも活かして結果的に3社のジョイントベンチャー(以下、JV)を設立する話がまとまります。
それまでのご提案や検討プロセスの推進力を評価いただいていたこともあり、上記はRelicではじめての本格的な「ビジネスデューデリジェンス(以下、ビジネスDD)」案件となりました。ビジネスDDということで、3社にとって必要な結論を、どのようなプロセス・アウトプットによって導き出せるのか、日々模索しながらではありましたが、なんとか満足いただける成果を出すことができました。
ポイントは、これを期にRelicが今後M&Aやジョイントベンチャー設立も絡む事業プロデュースに乗り出したいということではなく、“新規事業の成功のための手法として必要であれば”ビジネスDD、M&Aやアライアンスのサポートも行う、という点です。新規事業を自社でも複数件軌道にのせ、お客様の事業立ち上げやグロースまで伴走してきたRelicだからこそ、複数の会社をまたぐ事業の企画/立ち上げについてもバリューを発揮できたと考えています。
新規事業を企画し立ち上げるにあたって、社内にはない機能やアセットが必要になったり、新たなオペレーションを構築するために時間がかかったりと、何かしら障壁やリスクが存在します。そのときにM&AやJV、アライアンスというアプローチを採用することで、その障壁/リスクを回避する、または自社だけでは実現できない規模の事業を描くといったことが可能になります。
今回、ビジネスDDを中心にご紹介してきましたが、それはRelicの関与の最初の一歩でしかありません。
この時点で案件に入り込みサポートすることができれば、そのあとにJV設立、両社の強みを活かした体制構築、新規事業のトライなど、Relicは事業のグロースまで一気通貫で伴走でき、ひとつの案件について、ますます大きく、より深く関わっていくことができるようになります。
現在ビジネスDDやアライアンス系の事業企画を含む案件の担当をしているのは、ストラテジックイノベーション事業部を中心とした数名体制。皆これまでビジネスDDやアライアンスの経験はなかったものの、新規事業の企画/立ち上げ経験を活かしてその領域にチャレンジ中です。
今後、日本全体でM&Aやアライアンスを伴う新規事業の創出ニーズはますます高まってくると予想され、この分野で力をつけることはRelic自身の会社としての市場価値を上げることにつながると考えています。