
地域発の健康経営を全国へ ── Canvas社がRelicと挑んだ「Ciaeru」開発の舞台裏
島根県を拠点に、職業病という未解決課題に挑み続ける株式会社Canvas(以下、Canvas社)は、企業へのアンケート結果から労働損失額やワークエンゲージメントなどの指標を算出し、健康経営の効果を可視化する支援システム「Ciaeru」を立ち上げました。島根拠点を構えるRelicはその開発パートナーとして支援を行っています。本記事では、全国展開を見据えた事業拡大に向けて、事業視点を含めた開発支援の裏側をご紹介します。
Canvas社がRelicとともにどのような課題を乗り越え、どんな価値を創り出したのか、実際のプロジェクトを通して見えたリアルな体験を、元廣さん・爲國さんに伺いました。
<インタビュイー>
株式会社Canvas 創業者・代表取締役 元廣 惇 様(以下、元廣さん 写真左)
株式会社Canvas 事業統括マネジャー 爲國 友梨香 様(以下、爲國さん 写真右)
<インタビュアー>
Relic プロダクトイノベーション事業本部 プロダクトディスカバリー事業部 三上 和也
お客様の課題
- 実現したい開発内容に対してエンジニアリソースが不在
- 担当者に開発経験がなく、事業視点含めた開発支援が必要
- フランチャイズ展開に向けてデータを蓄積・活用できるシステムを開発したい
解決したこと
- ユーザー・事業の両面の視点を持つ開発支援でスムーズに推進
- システム開発により、業務フローや提案内容の標準化を実現
- データ・システム基盤構築により、フランチャイズ先との信頼構築が進み、行政・保険会社・外部団体との連携も促進
Q. Canvas社の事業について教えてください。
元廣:弊社は、企業で働く方々の“職業病”という未解決の課題に向き合い、その改善を通じて健康経営を支援する事業を展開しています。私は、前職で多くの企業と関わる中で、従業員が抱える職業病が見過ごされがちであること、そしてそれが生産性の低下や離職につながっている現状を目の当たりにしました。医療的な支援だけでなく、組織全体で“働く人の健康”を守る仕組みが求められていると感じ、これを事業として取り組むべきだと考えたのがきっかけです。
その事業は、大きく3つのフェーズに分かれています。フェーズ1では島根県の中小企業に直接サービスを提供し、フェーズ2ではそのノウハウをパッケージ化して他地域にも展開できるように整備しました。現在のフェーズ3では、データを蓄積・活用できる健康経営支援システム「Ciaeru」を基盤に、全国での事業拡大を目指しています。島根県の中小企業を対象に始まったこの取り組みは、今では全国へと広がっており、各地域のパートナーと共にフランチャイズの形で事業を推進しています。

Q. フランチャイズ展開にあたり、なぜ健康経営支援システム「Ciaeru」の開発に踏み切ったのでしょうか?
爲國:まず私たちは各地域ごとの事情や職業病の特性に合わせた事業を展開する必要があると考え、地域特性を理解したパートナーが、その地域に適した形で事業を展開できるよう、フランチャイズ化を進めました。その一方で、提供するサービスや提案の質には地域差があり、標準化の難しさを実感していました。
加えて、フランチャイズ先にノウハウを伝える際、紙資料や口頭では正しく意図が伝わらず、結果的に現場での運用に差が生まれてしまうという課題がありました。
こうした課題を解決し、事業全体の再現性と品質を担保するためには、業務プロセスや提案内容をシステム化し、統一された形で情報提供・運用支援を行えるようにする必要があると考え、開発に踏み切りました。
Q. パートナーとしてRelicを選んだ理由を教えてください。
元廣:最初の出会いは松江市が主催の起業家の事業アイデアをもとにプロトタイプの開発に挑戦するハッカソンプログラムでした。私たちは参加企業として、Relicさんは運営側としてハッカソンに関わっており、その中で相談する機会がありました。初めてのシステム開発で右も左もわからない中、エンジニアの方に言われるがまま進んでしまうのではと不安を抱えていましたが実際は全く違いました。
Relicさんは私たちの健康経営支援事業やビジネスモデルを深く理解した上で開発を進めてくださり、さらに自分たちでは気づかなかった課題も発見してくれました。こうしたやり取りを通じて、「ただ作るだけではなく、一緒に事業を育てていこう」という共創の姿勢を強く感じました。
他の開発会社も検討していたのですが、依頼があったものを作るといったスタンスの企業が多く、やはり自分たちが大事にしている「共創」の価値観と近いRelicさんに決めました。それに、Relicさんが島根にも拠点を持っていたことも大きかったです。実際に現地に足を運んでくださり、直接顔を合わせて相談できる距離感は、私たちにとって非常に心強いものでした。

Q. 開発をご一緒する中で感じた「Relicの特徴」を教えてください。
元廣: まず、私たちのように医療現場出身のメンバーが多い組織にとって、ITやシステム開発の進め方は未知の領域でした。しかしRelicさんは、開発の初期段階から非常に丁寧に伴走してくださり、専門用語のギャップを埋めるだけでなく、ワイヤーフレームや画面設計を通じてイメージの共有を進めてくださいました。
また、Canvas社の事業やビジョンを深く理解しようとする姿勢がとても印象的でした。単に要望通りの開発を行うだけでなく、「このサービスをどのように運用していくのか」「営業ではどんな資料が必要か」「イベントやお披露目会をどう設計するか」といったエンジニア視点含めた実践的かつ事業寄りの観点からも多くの提案をいただきました。
爲國: Relicさんの特徴は「つくる」ことにとどまらない「共に育てていく」スタンスにあると感じています。定例ミーティングでは毎回、機能の確認にとどまらず、サービスの使い方や展開方法について意見を交わす場があり、こちらが思いつかなかった視点や改善案を提示してもらえることで、私たちの中でも事業理解が深まっていきました。
特に嬉しかったのは、システム開発にとどまらず、事業の成長を共に考えてくれる“社外の戦略パートナー”のような存在でいてくださったことです。単なる受発注ではなく、信頼し合える関係性を築けたことが、Relicさんとご一緒できて良かったと感じる一番の理由です。
Q. 「Ciaeru」導入後、事業にどのような変化がありましたか?
爲國: システム導入によって、フランチャイズ先でのサービス説明や提案の質が格段に向上しました。これまではアナログでの対応が中心だったため、訴求の仕方や伝え方にばらつきがありましたが、システムにより統一された情報発信が可能となり、信頼性が大きく向上したと感じています。
実際に、行政機関や保険会社との連携が生まれたり、セミナー登壇の依頼をいただいたりと、外部からの注目度が高まりました。また、全国のフランチャイズ同士のコラボレーションも加速し、地域資源や企業同士の連携が広がっています。
加えて、印象的だったのは、フランチャイズ先のスタッフが自社サービスへの理解や誇りを強く持つようになったことです。システムがあることで自信を持ってサービスを提供でき、現場でのモチベーション向上にもつながっていると実感しています。

Q. 開発に際し、AWSを導入されています。AWSを活用する良さはどのようなところにありますか?
爲國:ステージ環境と本番環境を明確に分けて運用していただき、リリース前に安全に検証を行える体制が整っていたのは、大きな安心材料でした。
また、必要に応じて環境をすばやく構築・削除できた点も非常に助かりました。たとえば、開発が活発なタイミングには検証環境を立ち上げ、開発が落ち着いた後はその環境を削除してコストを抑えるなど、状況に応じた柔軟な対応が可能でした。
Q. 今後の事業展望と、Relicへの期待をお聞かせください。
元廣: 現在、Canvas社は日本全国でのフランチャイズ展開をさらに加速させており、地域の枠を越えた事業連携の可能性を日々感じています。これに加え、私たちはリクレーター(バイタル計測機器)を活用した健康データの取得・活用にも力を入れており、今後はそのデータを活かした研究活動や行政との連携も本格化させていきたいと考えています。
さらに、国内での取り組みを基盤に、英語版のプロダクト開発を通じて海外市場への展開も視野に入れています。日本で積み上げてきた信頼と実績を武器に、世界中の職業病という社会課題にもアプローチしていきたいです。
そのためには、システム開発の枠を超えた「共創パートナー」が必要不可欠です。Relicさんには、これからも私たちの構想や想いに伴走しながら、事業づくりの面でも支援いただけることを大いに期待しています。
インタビューにご協力いただいた企業

株式会社Canvas
サイト:https://www.canvas.co.jp/
Ciaeruサービスサイト:https://www.canvas.co.jp/products/
※記載の内容は2025年9月現在のものです。