順調な仮説検証を後押ししたのは「柔軟性」と「スピード感」を持ったプロトタイプ制作
株式会社NTTドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」にて現在仮説検証フェーズにある“退院調整にかかる業務をDX化するアイデア”は、アイデアブラッシュアップ段階のメンタリングからデザインプロトの開発までRelicが伴走パートナーを務めています。
「ユーザーが本当に使いたいと感じるサービスなのか」を測る受容性検証フェーズでどのような活動をされていたのか、なぜRelicを開発パートナーに迎えたのかをお伝えします。
<インタビュイー>
NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー ウォレットサービス部 飯田 修也 様(写真中央)
NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー ウォレットサービス部 丹羽 研太 様(写真右)
<インタビュアー>
Relic プロダクトイノベーション事業本部 マネージャー 北川 祐希(写真左)
お客様の課題
実際にユーザーに体験してもらいながら受容性の検証をしたいが、プロトタイプ制作経験が無い
資料や静止画面ではサービス内容が伝わりにくく、ユーザーに具体的なイメージを想起してもらいにくい
解決したこと
要件定義からデザインプロトを1.5か月で作成
徹底したヒアリングでイメージ通りのデザインプロトを開発
アイデアブラッシュアップのメンタリング支援から継続支援でスムーズなデザインプロト開発支援を実現
新規事業の”答え”を持つのはいつだってお客様。検証を重ねて生まれたアイデア
Q.検証中のアイデアはどのようなサービスですか?
丹羽:
「退院調整にかかる業務をDX化するSaaSサービス」です。
いま、1日に退院する患者数は約4万人もいると言われています。すべての患者さんがそのまま自宅に帰る訳ではなく、別の病院や介護施設に転院・入居・入所することも多く存在します。その中で、高齢者をはじめ病院から退院しても継続的なケアが必要な患者さんに対しては、医療ソーシャルワーカーや退院調整看護師という専門職の方々が、次の退院先や転院先の調整やサポートを行います。
ただこの退院調整は、1件1件「あなたの施設でこの患者さんの受け入れはできますか?」と確認するなど、電話やFAXといったアナログなコミュニケーション手段に依存しています。それにより膨大な非効率が発生し、現場に大きな負担が生じています。
これらの大きな課題を解消し、電話やFAXへの過剰な依存から解放されてストレスなく退院調整ができるように、オンラインで退院調整を行う世界観をつくっていくことを目指しています。
Q.どのような背景から事業アイデアは生まれましたか?
飯田:
現在私はFintech関連の業務を担っているのですが、新しい分野の経験を積みたいと考え、NTTドコモの社内新規事業プログラムに応募しました。
事業アイデアは私の原体験に基づいています。私は幼少期から母親のワンオペ在宅介護の姿を見ていたり、自身も介護の資格を取り学生時代に介護施設でアルバイトをしたりと、介護現場の大変さを目の当たりにしてきました。その経験から、医療・介護分野の現場課題を解決したいと考えていました。
応募当初は異なる介護サービスを検討していましたが、ユーザーヒアリングを繰り返す中で「本当にこのサービスは課題解決できているのか?」という壁にぶち当たり、何度もアイデアをピボットしました。そこからチームメンバーに丹羽も加わり、 二人三脚で何十~何百というアイデアを検証していきました。
新規事業の”答え”は絶対に私たちが持ち得ないんですよね。サービスを使ってもらえるかの”答え”はいつだってユーザーの皆様にあります。なので、少しでも疑問に思ったことや新しいアイデアは何度でもユーザーへヒアリングを繰り返しました。延べ300名ほどのユーザーにヒアリングした結果、今の「退院調整をDX化するSaaSサービス」に行きつきました。
社内プログラム審査もどんどん通過し、いまのdocomo STARTUPプログラムに移管してRelicさんとご一緒させていただくようになりました。
パートナーに求めたのは「柔軟性」と「スピード感」
Q.検証を進める中でどのような課題がありパートナーを検討されたのでしょうか?
飯田:
検証を進めていく中で、ペーパープロトなどを通して顧客課題と解決策の検証は一通り完了していました。次の検証アクションとして、ユーザーへデモ画面を通してサービスイメージを掴んでいただいた上で、実際に「お金を払ってまでも使いたい」と感じていただけるかどうか受容性の検証をすることになりました。
ただ、デモ画面(モックアップ)などの制作経験が私たちには無く、スピード感を持ってユーザーへの検証に臨むためにはどのように進めるべきか課題を抱えていました。
Q.パートナー選定にあたり、どのようなポイントを重視されましたか?
飯田:
重視していたのは「柔軟性」と「スピード感」です。私たちが思い描くプロダクトイメージを如何に早く形にしてもらえるか、そして検証が進む中で求める機能やイメージが変わった際に柔軟に修正してもらえるか、その2点を求めていました。新規事業の開発では欠かせない2点ですよね。
docomo STARTUP事務局からの推薦もありRelicさんへ支援を依頼しましたが、とても丁寧にヒアリングしてもらい、思い描いた通りに形に起こしてもらえました。パートナー選定には意外とコストがかかりますし、もともと新規事業検討を行う伴走パートナーとしてRelicさんにはメンタリング支援にも入ってもらっていたので、関係値がすでに構築できていたのもスムーズに進んだポイントかもしれません。
深い視点のヒアリングで高速かつイメージ通りのプロトタイプを制作
Q.Relicがパートナーとして活動し、課題は解決できましたか?
丹羽:
デザインプロトを制作いただきましたが、丁寧なヒアリングのおかげで私たちが解決したい課題をうまく咀嚼してもらい、潤沢な知見から最適なコンセプト体現を行っていただきました。
Relicの方々は単に要件をヒアリングするのではなく、アイデアに興味を深く持ってくれて、要件ひとつ取ってもユーザーと私たち双方のことを考えた提案や質問を次々ともらえました。この深いヒアリングのおかげでイメージとのずれが無いプロトタイプを作ってもらえたのではと感じています。デザインに関してもカラーチャートを用意していただいたので、想像していたものとの違和感もありませんでしたし、変更要望もクイックに対応してもらいました。
また、想像を上回る機能もいくつかありましたね。チャット機能は非常にイメージしやすく、チャットの反応速度も1秒単位で調整してもらい、「細部に神が宿る」ではないですが、とても細かくユーザーファーストで開発してもらいました。
患者登録機能では、退院業務にかかわる専門職の方々に実際に画面を見てもらい、ユーザー自身の業務に引き寄せて使っている姿を想像してもらうことができました。「このサービスでどれだけ作業が効率化されるのか」を具体的なイメージとともに体験してもらえたので、ヒアリングで非常に役立ちました。そういった意味でも、私たちのイメージを十二分に汲み取ってデザインしてもらえたと感じています。
Q.デザインプロトを用いたユーザーインタビューの反応はいかがでしたか?
飯田:
病院・介護施設に実際に足を運んで、Relicさんに制作いただいたデザインプロトを用いて現場の方々にサービスの手触り感を確認いただきました。
よりユーザーの皆様の生の声を拾うことができ、かつ「ぜひ使ってみたい」と大変多くの好意的な反響をいただきました。
ユーザーの方々からは「資料や静止画面ではサービス理解が難しかったので、動く画面はとても分かりやすかった」「抽象的なイメージではなく具体化されたものがあることによって、自分が実際に業務を行ったときのイメージができた」といった声や、デザインの使いやすさにも大変好意的なお声をいただくことができました。
Q.社内新規事業プログラムの場でもデザインプロトが活躍したとお聞きしました。
丹羽:
そうですね。プログラム審査会ではピッチを行うのですが、そこでもデモ画面を実際に見てもらいました。実際に動くデモ画面を用意するチームは少ないこともあり、ピッチを見ていた参加者たちからは「利用イメージをつかみやすい」との声が挙がりました。審査員へ解像度高く事業価値を伝えられたことは評価の後押しになったのではと感じます。
また検証成果としても、ユーザーとの面談数や成約数などを設定したKPIの2倍の成果で達成できています。
Relicさんの支援がなければ、ここまでスピード感をもち、解像度高く検証ができなかったと強く感じておりますので、非常に感謝しています。
インタビューにご協力いただいた企業
ⅾocomo STARTUPの詳細はこちら
HP: https://startup.docomo.ne.jp/
公式X:https://x.com/docomo_startup
株式会社NTTドコモ
HP:https://www.docomo.ne.jp/