イノベーションが目的になっている組織が失敗する理由

2020/3/4

新規事業に取り組む組織の中で、イノベーションを興すことが目的になってしまっている組織をしばしば見かけます。

例えば「事業の第二の柱を作る」として、既存のアセットを何も活用できず、知見やノウハウの全く無い新規事業を立ち上げようとしている事例はよく聞ききます。

明確な戦略があってそうしているのなら問題無いのですが、ただ単にイノベーションを掲げ、勝算の少ない事業へ投資をするのは、悪手としか言えません。

この記事ではイノベーションが目的になっている組織が失敗する理由から、そもそもイノベーションの価値とは何かという点を考えていきます。

 

イノベーションは目的を達成するための手段

一言で言ってしまえば、イノベーションが目的になってしまっている組織の最大の敗因は、目的と手段の分別がついていないということです。

イノベーションは、あくまで組織が設定している目的を達成するための手段に過ぎません。

極端な話、組織の中長期的な目的が達成できるのであれば、イノベーションは不要ということになります。

ここがはっきりしないといわば迷子の状態となり、高確率でそのイノベーションは失敗することになるでしょう。

もしあなたが属している組織内でも同じ事態が発生している場合は、まず組織の目的を改めて整理してみてください。

そして、目的を達成するためにイノベーションが本当に必要なのかどうか、もう一度考えてみてはいかがでしょうか?

 

イノベーションの価値は何なのか

イノベーションをなぜ興すのかというと、最終的には「ステークホルダーのため」というところに行きつきます。

ビジネスをする上では、どのような人たちの、どのような課題を、どのような方法で解決するのか?という部分を明らかにすることが大切です。

同様にこの目的を深掘っていくと、そもそも組織はステークホルダーのために存在しています。

つまり、手段であるイノベーションは、最終的にはステークホルダーのために興すものであると言えるのです。

組織で定常的なイノベーションを興す仕組みを、『イノベーションマネジメント・システム』といいますが、これが2019年に国際規格ISO 56002として標準化されました。

ISO 56002でも、組織は以下の事項を決定し、常に監視するべきだと記されています。

  • イノベーションマネジメント・システム
  • ステークホルダーのニーズ、期待や要求事項
  • 密接なステークホルダーとの交流や、彼らを巻き込む方法とその時期

また、ステークホルダーのニーズや期待は、以下の事項に関連していると記されています。

  • 現在明らかな、また将来明らかになるであろうニーズや期待
  • すでに顕在している、また未だ潜在しているニーズや期待
  • 金銭的・非金銭的な価値の実現
  • 斬新的なサービスから革新的なサービスに至るまでの変化や目新しさ
  • 新しい市場の創造
  • 新製品、新サービス、新プロセス、新モデル
  • 組織で取り扱っているサービス、それらに類似したサービスや相違したサービス
  • 現在のサービスの改善点や代替案
  • 組織やバリューチェーン、ネットワークやエコシステム
  • 法令・規制要求事項やコンプライアンスの厳守

逆説的ではありますが、組織を構成するあらゆるステークホルダーの幸福を追求し、その要素を管理をしていくと、イノベーションが定常的に興る組織になります。

このことを正しく理解することが、イノベーションを成功へ導く要因になるのです。

あなたの組織でもイノベーションを何のために興すのか、今一度考えてみてはいかがでしょうか?

その答えの一つが「従業員のモチベーションに繋がるから」というものでも、全く問題ありません。

従業員も立派なステークホルダーです。

大切なのはその目的が明確になっているかどうかで、そこがクリアになっているのであれば、イノベーションマネジメント・システムを構築できつつあると言えるでしょう。

まとめ

今回の記事ではISO 56002に記されている組織が決定すべき事項やステークホルダーからの要求事項などを踏まえながら、イノベーションが目的になってしまっている組織が失敗する理由と、イノベーションの価値について説明しました。

イノベーションのみならず、ビジネス上で手段が目的になってしまうことはよくあります。

それは目的が明らかになっていないことが一番の原因です。

目的を持たずに、または目的が曖昧な状態のままで行動してしまうと、いつしか風化してしまい、最終的には行動することが目的になってしまいます。

あなたの組織は、イノベーションを興すことが目的になってしまっていませんか?

改めて目的を整理した上で、ご自身が所属する組織内でのイノベーションの本当の価値とは何なのかを、ぜひ考えてみてください。

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