イノベーションを興していくことを目的とした組織がイノベーションマネジメントシステムの意図した成果を達成するためには、合理性のある組織構造が導入されることが重要です。この記事ではイノベーションを組織的に推進していくための組織構造についてご説明していきます。
なぜ組織構造を意識するのか?
では、なぜ組織構造を意識する必要があるのでしょうか?
イノベーションを生み出す組織が既存の組織と同様の組織構造を取り続けていることで様々な弊害が発生する可能性があります。例として、以下のような弊害が挙げられます。
・イノベーションを生み出す組織の中心となって業務を推進するミドル層や現場に裁量権が与えられない
・社内のエース級人材は既存事業から離れることが出来ず、イノベーションを生み出す組織への適性があっても異動できない
・不確実性が高い新規事業であるにも関わらず、事業を必ず成功させることが前提となり、失敗が許容されない
・失敗に対して不寛容であることで、心理的安全性が低く、挑戦することに対してネガティブになる
・事業立ち上げを成功した場合にも、メリットは少ない
イノベーションを生み出す組織で取り組む挑戦は、これまでの枠におさまらないほどの不確実性を伴うものです。この不確実性を乗り越えるため、イノベーションを生み出す組織には創造性や探求的姿勢、そして実行力や効率性が必要となり、これらを統合させながら業務を圧倒的なスピードをもって推進する必要があります。
そのため、既存事業との連携/連動を意識しつつも、イノベーションを生み出す組織が最大限の力を発揮することができるよう、新しい組織構造を意識していく必要があります。
特に、イノベーションを生み出す組織に対し、以下のような支援をしていくことができると、より高い成果を出しやすくなると考えます。
新規事業は多産多死であることを前提に、全社の方針/戦略に基づきつつ、適切なアプローチとリソース配分を実施する
新規事業開発に適した人材をイノベーションを生み出す組織にアサインし、最大限の裁量と支援を提供する
支援体制については、以下の記事でも説明していますので、合わせてご覧ください。
『イノベーションを加速させる組織とは』
https://relic.co.jp/throttle/21049
では、いつから既存組織とイノベーションを生み出す組織を別構造にするといいのでしょうか?構造的分離が最初からなされていないと、その後構造を適切に変えていくことは難しいのでしょうか?
どのようなタイミングで組織構造を意識するのか?
前段ではイノベーションを生み出す組織で成果を出すために、なぜ組織構造を意識する必要があるのかについてご説明いたしました。この段では組織構造改革を意識すべきタイミングについてご紹介いたします。
多くの組織では、はじめからイノベーションを生み出す組織が存在しているわけではなく、何かしらのきっかけを経て新規事業に関わる部署やプロジェクトが発足し、その組織がイノベーションを先導する組織として成長していく、という形が多いのではないかと推測されます。
こういった企業が、いつ、どのようなタイミングで組織構造を確立すべきか、ですが、以下4点に該当する際には、組織構造の確立を目指すべきであると考えられます。
イノベーションが自社の既存製品/サービスに関連する、もしくは競合として、破壊的あるいは革命的な力を有する
推進するイノベーションが既存事業から見た際に革命的な力を有する場合、既存事業を推進する責任者/メンバーとの間で不和を生む可能性があります。
それでもこの新規事業を進める際には、イノベーションを生み出す組織の構造を新たな形とすることを検討する必要があります。
様々なリーダーシップのスタイル、インセンティブ、指標または文化が必要とされる
既存事業と同じ人材評価や推進方法では、新規事業はうまく行かないケースも多いとされています。
イノベーションを生み出す組織における適切な評価をすることができるよう、構造を再検討することも大きなきっかけとなり得ます。
特定の支援(経営資源を含む)をイノベーション活動のみに利用することが必要とされる
イノベーションを推進していく中で、特定の支援(人的/物的/資本的支援等)を集中的に必要とするタイミングがあります。こういったタイミングにおいても、組織構造を見直し、支援体制を明確にする等の効果を求めることが出来ます。
特定の活動(プロセスを含む)が、既存の活動と比べ、より大幅な不確実性及び変動に適応することが必要とされる
前述の通り、新規事業は不確実性の高い業務となります。この不確実性を乗り越えていくためには、新規事業が多産多死であることを認めることができる環境や失敗をポジティブに受け止めることのできる環境を作り出す必要があります。
まとめ
この記事ではイノベーションを生み出す組織の組織構造について以下の点にフォーカスをあて、説明しました。
1.なぜ組織構造を意識するのか?
イノベーションを生み出す組織がイノベーションマネジメントシステムの意図した成果を達成するために、適合性のある組織構造が導入されることが必要であるため。
2.どのようなタイミングで組織構造を意識するのか?
a.イノベーションが既存製品/サービスに関連する、もしくは競合として、破壊的あるいは革命的な力を有する
b.様々なリーダーシップのスタイル、インセンティブ、指標または文化が必要とされ る
c.特定の支援(経営資源を含む)をイノベーション活動のみに利用することが必要とされる
d.特定の活動(プロセスを含む)が、既存のプロセスと比べ、より大幅な不確実性及び変動に適応することが必要とされる
既存事業の枠を飛び越え、新規事業を生み出していくためにも、上記ポイントに注目し、新しい組織を作っていってみてはいかがでしょうか?