イノベーションの取り組みに関するリスクとは?その意外な正体

2020/5/14

イノベーションへの取り組みは、組織にとって初めての取り組みであるが故に、必ずリスクが存在します。

「新しいことはやりたいけど、今の状況でリスクは取れない」「リスクが高いから余裕のある時に」といった話はよく聞きます。

しかし、そのリスクとはそもそも何なのでしょうか?そして、そのリスクをどう判断して、イノベーションに取り組めば良いのでしょうか?

この記事ではイノベーションにおけるリスクの正体を明らかにすると共に、組織はどのような判断をしてイノベーションに取り組めば良いのかを解説していきます。

 

イノベーションの取り組みにおけるリスクの種類

イノベーションの取り組みに関するリスクは、そのまま企業活動におけるリスクと直結します。

企業を構成する要素、即ち「人」「モノ」「金」「情報」の4つに集約可能です。

例えば穀物などを扱っている専門商社のA社が、新規事業としてパンの製造・販売を考えているとしましょう。

仮にこの事業が失敗するとどうなるでしょうか?

まず最初に考えられるのは、「金」の部分でしょう。

投資に対してリターンを回収できなければ、「金」が減ります。

それによって財務状況が悪化すれば、リストラという形で「人」を解雇しないといけないかもしれません。

最初に製造する機械を買っていたとすると、それら資産も不要となり償却しなければならず、「モノ」も無くなります。

またあの企業は事業に失敗したからヤバいなどの噂が流れれば、信用という「情報」にも影響が出るでしょう。

このように、イノベーションの取り組みに失敗した時のことを考えると、さまざまなリスクが想定されます。

しかし、これらのリスクを恐れるだけでは、イノベーションは成しえません。

逆に、イノベーションを興さず既存の枠組みだけに囚われビジネスをしていることも、機会損失や衰退へのリスクとも言えます。

大切なのは、イノベーションのリスクを正しく把握し管理する、リスクマネジメントです。

 

イノベーションにおけるリスクの計算方法

理想論を言ってしまえば、そのイノベーションは投資する予定の「人」「モノ」「金」「情報」の全てがゼロになる前提で始めるべきです。

企業が倒産してしまえば、個人とは比較にならないステークホルダーに、多大な迷惑がかかってしまいます。

会社を存続させるためには常にワーストケース(いわば倒産)を想定し、イノベーションに取り組むことをおすすめします。

しかし、「ベンチャー企業で一発当てたい」「既存事業の先細りが見えていて、このままではいずれ立ち行かなる」といった状況では、上記に当てはまりません。

この場合では、イノベーションをしないことがリスクになるからです。

そんな時にイノベーションをやるかどうかの判断は、至ってシンプルです。

確立変数X(得られる値)×確率nとすると、下記の式で表せます。

 期待値=X1×P1+X2×P2+X3×P3・・・Xn×Pn>リスク 許容値

例としてサイコロに当てはめて考えると、 6×1/6+5×1/6+4×1/6+3×1/6+2×1/6+1×1/6=3.5 となります。

イノベーションにおけるリターンの期待値がリスクを上回るようであれば、企業はそのイノベーションを実行すべきです。

ここで重要になるのは、このリスクをどこまで取るかという部分です。

リスクの許容値によってリスクは小さくなっていき、イノベーションは取り組み易くなります。

詳しくみていきましょう。

 

組織におけるリスクの許容値

イノベーションに対するリスクの許容値は、組織によって大きく異なります。

この部分はISOが56002で定めた、イノベーション・マネジメントシステムでも触れられていて、次の3つの観点が示されています。

  1. イノベーションを興そうとする野心
  2. 組織の能力
  3. 取り組むイノベーションの種類

リスク許容値を定量的に規定するのは難しく、課題となるイノベーションの難易度や、組織の状況によって異なります。

面白いのは1番目の野心という部分で、野心が大きければ大きいほど、リスクを許容し易くなります。

また取り組む熱量が大きいほど、イノベーションの成功確度が上がるのも事実で、けん引するリーダーの存在は非常に重要です。

ISO 56002だと、リスクマネジメントでは次の3点が有効とも書かれています。

  1. 経験に基づく学習
  2. 外部との提携
  3. ポートフォリオの多角化

初回だと1を考えることはできませんが、2のオープンイノベーションの仕組みを取り入れたり、3のように複数のイノベーションを同時に実行したりするというのは、有効なアプローチとなるでしょう。

このように組織におけるリスクの許容値を一概に決めることはできませんが、正しくリスクマネジメントをすることで、組織におけるイノベーション実行のハードルを下げることは可能になります。

 

まとめ

この記事ではイノベーションのリスクにはどのような種類があるのか、そしてそれらリスクをどう考えて、実施の可否を判断すれば良いのかという部分を解説しました。

イノベーションには失敗というリスクも存在しますが、やらないという選択には衰退のリスクも存在します。

大切なのはイノベーションのリスクを正しくマネジメントすること、即ちイノベーションマネジメント・システムの構築です。

イノベーションマネジメント・システムに関しては他の記事でも詳しく書いているので、ぜひそちらも読んでみてください。

あなたの組織でもイノベーションにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

この記事をシェアする