イノベーションマネジメントにおける新規事業のリスクの対処法

2020/4/1

新規事業に取り組む上では、様々なリスクが存在します。イノベーションマネジメント では、いかに効果的にリスクをマネジメントできるのかが、とても重要になります。

例えば、新製品をいざ開発してみたものの、売れなかった場合、不良在庫を大量に抱えることになります。そうすると、新製品を開発した人や、製品の営業に時間を費やす営業マンなど、多くの人の時間と製品の開発コストが全て無駄になってしまいます。

しかしイノベーションを興す上では、上記のようなことだけがリスクではありません。

どのようなリスクがどこにあるのかを特定し、そのリスクへの対処法や許容範囲を事前に策定しておくことがイノベーションを成功させる鍵となります。

今回はイノベーションマネジメントに必要な、リスクの対処法についてご紹介していきます。

イノベーションマネジメントシステムでは計画的にリスクマネジメントする

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントとは、想定されるリスクを事前に管理した上で、損失する機会を回避したり損失を最小限に抑えるためのプロセスのことです。リスクマネジメントを直訳すると危機管理となりますが、実は危機管理は英語でクライシスマネジメントと表現されます。

両者には決定的な違いがあります。

クライシスマネジメントとはリスクが発生した後の対処のことです。一方、リスクマネジメントはリスクが発生する前にリスクを管理することです。

イノベーションマネジメントにおいては、いかにしてリスクが発生する前に管理できるかが重要になります。

リスクを定義する

リスクマネジメントを行う前に、組織でイノベーションを興す上でのリスクとは何なのかを、事前に定義する必要があります。事前に定義しておかないと、リスクを特定し管理することができなくなってしまうからです。

そもそもリスクは取り組んでいる組織やイノベーションの内容によって異なってきます。

リスクに関して、ある程度の共通項目はありますが、ユニークなリスクというものも必ず存在しています。事前に組織内のイノベーション活動におけるリスクを定義し、網羅的に整理しておくことで、最適なリスクへの対処法を策定することが可能になります。

リスクの許容範囲を理解する

リスクマネジメントとは、リスクを発生させないことであるとご説明しました。では、リスクが発生すること自体が悪なのでしょうか。

結論、リスクが発生すること自体は悪ではありません。

リスクが発生した際の許容範囲を事前に理解しておけば問題ないとされています。

例えとして、想定している売上高よりも下振れすることは、リスクと言えます。仮に投入コストが1000万円、想定している売上高が2000万円だとしてみましょう。

この場合、組織が受け取る利益は以下の通りです。

想定売上高2,000万円 ー 投入コスト1,000万 = 1,000万円の利益

ここで想定している売上高よりも下振れするリスクを、2パターンで考えてみましょう。

  1. 売上高1,100万円
  2. 売上高950万円

Aの場合は、

売上高1,100万円 ー 投入コスト1,000万 = 100万円の利益となります。

対してBの場合、

売上高950万円 ー 投入コスト1,000万 = 50万円の損失となります。

つまり売上高1,000万円までの下振れは、許容範囲内のリスクということです。

売上高が950万円である場合、許容範囲外のリスクは50万円の損失となります。そのため50万円の利益をどこかで補填するために、新たな施策を策定し実行する必要があるとわかります。

リスクの許容範囲を事前に正しく理解しておけば、万が一リスクが発生しても適切に対処することができるようになります。

事業撤退の判断基準を明確にする

イノベーション活動に取り組む上での一番のリスクは、企業の倒産です。新規事業に取り組む企業が倒産してしまう原因は、事業撤退の判断基準が存在しないことです。そのため基準を明確にすることがとても重要になります。

イノベーションに取り組んでいる組織は、しばしばイノベーションに取り組むことが目的になってしまうケースがあります。

これはイノベーションに取り組む目的を明確にしていないことが原因です。本来は、目標を達成する手段としてイノベーションに取り組むべきです。

その上で、事業撤退判断の基準がない場合、大赤字の状態の事業を撤退せずに継続してしまうことが起こり得ます。新規事業が大赤字のまま継続しているせいで、既存事業の利益分までが赤字になってしまうと、いよいよ倒産の可能性が出てきます。これこそが新規事業における最大のリスクです。

そのため事業撤退基準を明確にすることがとても重要です。

どこまでが許容範囲で、どこからが許容範囲外なのか、事前に策定します。そして必ず事業撤退基準を明確にしてから、新規事業に取り組むようにしましょう。

まとめ

今回の記事ではイノベーションマネジメントにおけるリスクマネジメントについてご紹介しました。

リスクマネジメントとは、リスクが発生する前に管理することであり、事前に管理するにはリスクを定義し網羅的に整理しておく必要があります。

また、リスクが発生してしまっても適切に対処できるように、リスクの許容範囲を正しく理解することが重要です。そして事業撤退の判断基準を明確にして、最大のリスクである企業が倒産してしまうことを回避します。失敗しなくてよい失敗をいかに回避できるかによって、イノベーションの成功確率が大きく左右します。

イノベーションマネジメントにおけるリスクマネジメントを正しく理解・実践し、ご自身が属する組織内のイノベーションを成功に導いてあげましょう。

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