イノベーション・マネジメントが上手くいくようになると、次に直面するのは、どのイノベーションのアイデアから手を付けるのかという問題です。
※『イノベーション・マネジメント』についてはこちらの『組織でイノベーションを始める方法』を参考にしてみてください
組織のリソースは限られていて、数あるイノベーションのアイデアを全て同時並行で実施するのは難しい、しかし発案者はそれぞれ想いがあってイノベーションを興そうとしており、実践への優先順位が付けられない。
マネジメントをする立場の人は、そんな板挟みで頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
贅沢な悩みではありますが、イノベーションを生み出す組織にとってどのアイデアから実践していくのかは、非常に重要な判断を強いられます。
そこで、この記事ではイノベーションのアイデアの取り組みに向けた優先順位を決める基準を4つ紹介し、基準のベース作りをサポートしていきます。
ぜひ発案されたアイデアを想像しながら、自社の基準を考えてみてください。
それでは見ていきましょう。
イノベーションのポートフォリオ
ISOが56002で定めているイノベーション・マネジメントシステムでは、6章の『イノベーションのポートフォリオ』で4つの基準を明示しています。
- イノベーションの戦略、および目標と一致するもの
- 取り組み間に一貫性があるもの
- 他のイノベーションとシナジーがあるもの
- イノベーションのバランス
少し抽象的なので、1つずつ解説していきます。
イノベーションの戦略、および目標と一致するもの
1つ目の基準は、全社的なイノベーションの戦略や目標、即ち目的と一致するかどうかという点です。
あなたの組織で、イノベーションを興している理由は何でしょうか?
仮に営業部で、売上拡大という大きな方針があるとしましょう。
既存顧客からは十分な売上を獲得できているとすると、新規顧客の開拓を重視しなければなりません。
その場合、新規顧客の開拓につながるイノベーションを重視すべきというのが結論です。
イノベーションも、組織の戦略に沿って優先順位を決めるのが、正しい選択と言えます。
取り組み間に一貫性があるもの
2つ目は、取り組みとして一貫性があるかどうかです。
一貫性があると、より効率的にイノベーションを推進できるようになります。
例えばサービスAで新しいマーケティング施策が成功しているなら、サービスBへ横展開していった方が、効率良く推進できるようになるはずです。
営業部門で初回アプローチの方法に工夫をしたのなら、次はクロージングに工夫をした方が成功確度は高まります。
ポイントは業務の流れと種類、いずれか一方に一貫性を持たせることです。
このように、2つ以上のイノベーションのアイデアに取り組む場合は、一方と一貫性のあるアイデアを優先するということも、一つの基準となり得ます。
他のイノベーションとシナジーがあるもの
3つ目は、取り組みとしてシナジーがあるかどうかです。
イノベーションも取り組みによって、相乗効果が生まれることもあります。
例えば新規事業などでは、既存事業とサービスは違うもののターゲットの属性は一緒という場合もあります。
その場合、新規事業Aに取り組むことによって獲得した顧客を、既存事業Bに送客し売上が上がる可能性があるはずです。
逆にそんな中で、社内業務の効率化というイノベーションアイデアがあっても、同時に進めることによるメリットはほとんどないでしょう。
このように、既に実行しているイノベーションがあれば、シナジーが生まれそうかどうかという点も考えてみると良いでしょう。
イノベーションのバランス
最後の4つ目は、イノベーションのバランスです。
イノベーションという難易度の高い新しい取り組みを成功させるには、環境やモチベーションも大切になります。
例えばAさんばかりが、イノベーション関係の施策を担当していたらどうでしょうか?
同じく部門Bのみがイノベーションへの取り組みをしていると、どうでしょうか?
日本は特に遠慮や忖度の文化なので、単独でのイノベーション実行は相当ハードルが高くなるでしょう。
ここでは人や部門という点でのバランスを例に出しましたが、目的や属性など、いろいろな観点でのバランスが考えられます。
できるだけ一局集中になることは避けるよう、バランスという基準を設けることもおすすめします。
まとめ
この記事ではイノベーションの優先順位という観点から、次の4つの基準を解説してきました。
- イノベーションの戦略、および目標と一致するもの
- 取り組み間に一貫性があるもの
- 他のイノベーションとシナジーがあるもの
- イノベーションのバランス
限られたリソースの中でイノベーションを実行するのはとても大変なことですが、課題を放置していては何も変わりません。
正しい優先順位を付けて、イノベーションの効果や成功確度を高めていってください。