「知財の専門家」から「事業の当事者」へ。大手企業からのスピンアウトを経験した弁理士が、Relicでディープテックの社会実装に挑む道

中登俊幸
ディープテックイノベーションセンター マネージャー 立教大学 特任研究員/弁理士・薬剤師・経営管理学修士(MBA)
#ディープテック #事業家

Relicは、日本経済を支える大企業からスタートアップまで、これまで5,000社以上の新規事業を支援してきた「事業共創カンパニー」です。私たちは単なる情報の伝達者ではありません。共にリスクを取り、共に事業を創り上げるパートナーとして、挑戦者の志を形にするエバンジェリスト集団です。


2025年10月、ディープテックイノベーションセンター(以下、DTIC)に一人の異色なスペシャリストが加わりました。弁理士として特許事務所を経営しながら、自らシステムを開発しスピンアウト起業を経験。現在はその事業の売却(バイアウト)プロセスを自ら主導している中登(なかと)です。
製薬業界での研究開発から知財戦略、さらには起業・経営まで。多角的な視点を持つ彼が、なぜ今、Relicという「共創」の場を選んだのか。その裏側にある熱い想いと、彼がDTICで描く未来に迫ります。

【目次】

1.研究開発から知財へ。製薬業界で磨き上げた「技術を形にする力」
2.新規事業立ち上げ、組織づくり、そして投資。専門性を超えて広がるキャリアの厚み
3.「物ができたから、やるしかない」――期せずして始まったスピンアウトという挑戦
4.財務諸表も一人で引いた。バイアウトという「出口」に向き合って得た、事業の本質
5.コンサルではなく「当事者」でありたい。Relic DTICとの衝撃的な出会い
6.「知財×事業開発」がディープテックの“死の谷”を埋める架け橋になる
7.日本の技術を、世界の「遺物」にしないために。未来へのメッセージ

1.研究開発から知財へ。製薬業界で磨き上げた「技術を形にする力」

中登のキャリアは、日本新薬での研究開発から始まりました。「自分で手を動かし、新しい価値を創り出す」現場に2年間身を置いた後、彼は知的財産部へと異動します。ここでの7年間が、彼の専門性の核となりました。
「研究開発の現場にいたからこそ、研究者がどれほどの熱量で一つの技術を生み出しているかが分かります。しかし、その技術が『特許』という守りを得なければ、容易に模倣され、事業としての芽を摘まれてしまう。その現実に直面し、知財の重要性を痛感しました」


主に生物分野の特許出願管理や知財戦略の立案に従事する中で、彼はある確信を持ちます。「技術は、適切な権利化と戦略があって初めて、事業としての強みを持つ」。その想いは、在籍中の弁理士資格取得、そしてMBA(関西学院大学)での学びへと彼を突き動かしました。


「技術を理解し、それをビジネスの言語に翻訳する」。この経験が、後に彼を「支援者」から「当事者」へと変える大きな伏線となります。

2.新規事業立ち上げ、組織づくり、そして投資。専門性を超えて広がるキャリアの厚み

中登の歩みは、知財の枠に留まりませんでした。人材サービス会社のWDBでは新規事業の立ち上げという「0→1」の現場を経験。その後、製薬業界のマルホへ戻ると、今度は知財関連部署を一から立ち上げるという組織づくりのミッションを担いました。

さらに彼のキャリアは経営の中枢へと広がります。経営企画として研究開発戦略の立案や長期ビジョンの検討、さらにはスタートアップへの投資実務まで担当したのです。

「知財は守りの要ですが、事業を成長させるには攻めの経営視点が不可欠です。スタートアップへの投資に関わる中で、外側から事業の価値を評価する眼を養い、同時に中長期的なビジョンが現場の士気をどう左右するかを学びました。ヘルスケアやライフサイエンスという時間軸の長い領域だからこそ、戦略の精度が問われるのです」

この時期の経験が、彼に「技術・知財・経営・投資」という四方向からの視点をもたらしました。これは、Relicが重視する「BTC組織(Business, Technology, Creative)」の体現そのものと言えるでしょう。

3.中登の歩みは、知財の枠に留まりませんでした。人材サービス会社のWDBでは新規事業の立ち上げという「0→1」の現場を経験。その後、製薬業界のマルホへ戻ると、今度は知財関連部署を一から立ち上げるという組織づくりのミッションを担いました。

2024年、中登はキャリアにおける最大の転換点を迎えます。マルホ社内で検討していた新規事業を自らスピンアウトさせ、創業。同時に、自身の専門性を活かした特許事務所も立ち上げました。

「絶対に起業家になりたいという野心があったわけではありません。ただ、自分が開発に関わったシステムが完成したとき、周囲から『これ、スピンアウトさせて独立するしかないよね』と背中を押されたんです。良いものができた以上、自分が責任を持って世に出すべきだ。そんな使命感に近い感覚でした」

安定した立場を捨て、未知の世界へ飛び込む。それは大きな挑戦でしたが、一度その世界に入ってしまえば「案外、慣れてしまうものだ」と彼は笑います。自らの専門性である「知財」を武器に、技術をコアとした事業を立ち上げる。それは、まさにディープテック領域で多くの研究者が直面する「研究成果をどう社会実装するか」という苦しみと喜びを、自ら体現する一歩でした。

4.財務諸表も一人で引いた。バイアウトという「出口」に向き合って得た、事業の本質

現在、中登が起業した事業は、大手企業への売却(バイアウト)に向けた最終段階にあります。特筆すべきは、彼がRelicのメンバーとして走りながら、この複雑な売却プロセスをすべて自らの手で主導している点です。

「財務諸表もすべて自分で書きました。バイアウト交渉の場では、知財のスキル以上に、事業の財務的な妥当性や、譲渡後のシナジー、引き渡し後の運営体制といったビジネスの総合力が問われます。1から10まで、経営のすべてを自分の手で動かした経験は、どんな教科書にも載っていない、私の血肉となっています」

一般的に、弁理士やコンサルタントは「評価」や「助言」は得意ですが、実際に事業を引き渡し、相手先でどう活用してもらうかという「PMI(ポスト・マージ・インテグレーション)」の生々しい苦しみまでを知る人は多くありません。中登は、自ら資金繰りに悩み、交渉のテーブルに着くことで、「事業を終わらせ、次につなげる」という出口戦略の重みを肌で理解しました。Relicが提唱する「挑戦の可逆性」や「多様な出口」を、彼は実体験として語ることができるのです。

5.コンサルではなく「当事者」でありたい。Relic DTICとの衝撃的な出会い

 自社事業の売却が見え始め、次なる挑戦の場を探していた中登が出会ったのが、Relicでした。
「以前、大手コンサルとも仕事をしましたが、彼らは『言ってくれるだけ』だったんです。もちろん示唆は深いですが、自分たちで事業を動かし、汗をかくコミットメントが少なかった。でもRelicは違いました。自分たち自身で事業を創り、投資も行い、当事者として深く入り込んでいる。ここなら、自分の経験が一番活きると思いました」
特に、DTICセンター長の金子との出会いは決定的でした。金子はパナソニックでの研究開発、独立系VCでの投資経験、そして自らも起業家として活動してきた「新規事業の全フェーズ」を経験した人物です。
「金子さんが提唱する、技術を事業に変えるための構造的な支援は、私が現場で感じていた課題に対する明確なアンサーでした。DTICには、証券会社でIPOを支援してきた本田など、各領域のスペシャリストが『当事者』として集まっている。この集団なら、日本のディープテックを本当に変えられると直感したんです。最終面接の日に、たまたま開催されていた懇親会でメンバーと酒を酌み交わした瞬間に、ここが自分の居場所だと確信しました」

6.「知財×事業開発」がディープテックの“死の谷”を埋める架け橋になる

中登がRelic DTICで成し遂げたいこと。それは、ディープテックが持つ可能性を、知財と事業開発の両輪で加速させることです。

「ディープテックは技術がコアです。だからこそ、知財をどう戦略的に活用するかが事業の成否を分けます。しかし、技術だけでは社会に届かない。財務、営業、マーケティング、そして出口戦略。これらを一気通貫で支援できるRelicのプラットフォームに、自分の知財の専門性とヘルスケア領域の深い知見を掛け合わせることで、これまで『死の谷』に消えていった優れた技術を救い出せるはずです」

中登の参画により、DTICの支援体制はさらに強固になりました。

  • 技術理解: 製薬会社での研究開発経験に基づく深い洞察
  • 防衛・戦略: 弁理士としての知財戦略立案と権利化
  • 実行・出口: スピンアウト起業とバイアウトの実務経験
  • 経営・投資: MBAの知見と、スタートアップ投資の審査経験

これらが組み合わさることで、大企業のカーブアウト(事業分離)や、大学発スタートアップの支援において、他に類を見ない精度の伴走が可能になります。

7.最後に:日本の技術を、世界の「遺物」にしないために。未来へのメッセージ

中登の挑戦は、まだ始まったばかりです。彼は今、Relicのメンバーとして働きながら、知財周りで悩む社内メンバーに対しても「いつでも気軽に連絡して欲しい」と手を差し伸べています。

「Relic(遺物)という社名には、先人が残した素晴らしい価値を、次世代に受け継いでいくという想いが込められています。日本の大学や企業に眠る先端技術を、ただの『過去の遺物』にするのではなく、未来を創る『大志』へと昇華させたい。それが、私の使命だと思っています」

優れた技術を持ちながら、事業化の壁に突き当たっている研究者や企業の皆さま。そして、自らの専門性を武器に、当事者として「事業」を創り上げたいと考えている皆さま。

これからも爆速進化を続けるRelic DTICと共に、日本のイノベーションを加速させませんか。

◼️関連情報

中登俊幸
ディープテックイノベーションセンター マネージャー 立教大学 特任研究員/弁理士・薬剤師・経営管理学修士(MBA)
京都大学大学院 薬学研究科 生命薬科学専攻を修了後、薬剤師資格を取得。新卒で日本新薬株式会社に入社し、研究職として医薬品の開発業務に従事。その後、知的財産部門にて知財取得や全社レベルでの知財戦略立案などに携わり、業務の傍ら弁理士資格を取得。また、社会人学生として関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科を修了(MBA取得)。 その後、皮膚薬大手のマルホ株式会社へ参画し、知的財産部門や外部情報調査部門の立ち上げ、経営企画部門での研究開発戦略および全社中期経営計画の立案を担当。並行してスタートアップへの投資(CVC)や新規事業の立ち上げ業務にも従事。2024年1月には、同社内で検討していた新規事業として株式会社WellTechをスピンアウト創業し、資金調達も経験。同時に特許事務所を設立し、大学教員、スタートアップ、大手企業向けの知財戦略構築支援を行っている。 2025年10月より、株式会社Relic ディープテックイノベーションセンターへ参画。大企業における研究開発・知財戦略・経営企画から、スタートアップの創業・資金調達まで幅広い実務経験を有し、研究シーズを基点とした一気通貫の「事業戦略・知財戦略」の構築支援を強みとしている。