【CTOインタビュー・前編】“新規事業”の創り手であるエンジニアに、Relicが求める姿勢
Relicでは、エンジニアの採用を強化しています。創業8年目にして所属するエンジニアやデザイナーといった開発職のメンバーは80名を超え、2023年10月からは、開発組織を3つに分けるなど、組織体制はさらに充実したものになりました。今回の記事では、そんなRelicのエンジニア全体のトップとして、技術面でも人事面でもメンバーから圧倒的な信頼を得ているCTOの大庭亮(おおば・りょう)にインタビュー。Relicに限らず、「新規事業開発」において活躍できるエンジニア像についても話を聞く、2本立て記事の前編です。
CTOとしてのキャリア観が大きく変わったRelicでの8年間
まずは、大庭さんのRelic入社以前の経歴を教えてください。
学生時代は、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)でロボット工学の研究をしていました。公的研究機関である産業技術総合研究所(以下、産総研)を拠点に研究をし、主には自分で製作したロボットハンドと、Python等を用いたシミュレーションを組み合わせて機構設計の最適解を導き出す研究をしていました。
学業と並行して、中学時代からサイト運営やゲームサーバー管理などを趣味で続けており、Webの世界への興味関心、そしてその可能性というのは感じていました。
就職先は研究を活かしたロボットメーカーや産業用ロボットを扱っているような大手企業を検討し面接を受けていました。しかし、将来の見通しが良すぎることに違和感を覚え、どうにも気乗りしませんでした。そんな時、先輩からの声掛けを機に受けたのがDeNAです。印象的なカルチャーに若手による挑戦文化、事業もソーシャルゲームに限らず、コミュニケーションアプリや海外支社のM&Aなど、勢いがあったDeNAに純粋にワクワクし、2013年に新卒入社しました。
参考記事:EnterpriseZine「技術課題の根本的解決にはビジネスの理解が必要 CTO/エンジニアに求められる資質とは」
DeNAでもショッピング事業のエンジニアとして活躍していましたよね。そこからどうして創業期のRelicに参画することになったのでしょうか。
当時DeNAの社内でショッピングの新規事業立ち上げ総括として活躍していた北嶋から、よく声をかけられていたのです。北嶋が独立してからもちょこちょこと交流を持っていましたね。
立後の話を聞くなかで、まずは「クラウドファンディングの仕組みを使い、新規事業立ち上げを支援する」という、現在のENjiNEの元となるアイデアを聞き、それまでEコマース事業で培った自分の技術を活かせると思い興味を抱きました。ただ、当時はあくまで手伝いとして、Relic立ち上げの場所である根津オフィスに遊びにいっているような感覚でしたね。DeNAを退職してから、しばらくはフリーランスエンジニアとして活動していたのですが、ひとつのプロダクトの立ち上げを自分だけに任せてもらえる環境の面白さも手伝って、おのずとRelicに割く時間が増え、自然な形で1人目のエンジニアとして入社しました。
起業する際に、Relic1人目のエンジニアを誰にするかというのはとても重要なポイントですよね。当時から、入社=CTOという形でのオファーだったのでしょうか。
はい、そうです。RelicのCTO就任を前提としたオファーでした。
ただ、当時(2016年)はまだ私も社会人3年目。「CTOのポジションで参画」と言われても、シンプルに「いいコードを書いて、理想のプロダクトを作る責任者」という目線で承諾したのを覚えています。良くも悪くも、若かったというか、知識や経験が不足していたというか。その時点では自身のキャリアイメージとして、ずっと「いちエンジニアとしてコードを書いていたい」という希望が強くありましたので、まさか現在のように、組織づくりやマネジメント、経営といった方面に大きく時間を費やす立場になっていくというのは、イメージもしていませんでした。
もし、当時の私が一般的な「CTO」の役割や、ボードメンバーの仕事をもっと正確に理解できていたら…?エンジニアのマネジメントも業務範囲だと言われていたら…?もしかしたら、北嶋のオファーを断っていたかもしれませんね(笑)。
ただ、想定していなかった姿ではありますが、結果的にいまはとてもいいキャリアを積めていると思っています。
CTOとしてのあり方も、改めて考えていくフェーズに
入社前はいちエンジニアとして、ずっとコードと向き合っていくキャリアイメージを持っていたという大庭さん。対して、現在の時間の使い方はどう変化しましたか?
エンジニアの採用・育成・ピープルマネジメントといったVPoE的な役割や開発マネジメント・技術選定といったCTO的な役割まで幅広く担ってきましたが、いまは社内のエンジニア組織やマネージャーも成熟してきて、これまで自分が担ってきた役割を、より適切なメンバー、得意なメンバーにお渡しすることができるようになりました。
一方で、Relicのホールディングス化やスタートアップへの出資により、グループ会社は10社、出資先は30社を超え、ホールディングス全体を俯瞰した技術戦略の策定や人材獲得・育成を考えていく時間が増えました。さらに、子会社や関連会社においてもCTOの役割が求められるようになってきました。当然、私だけですべて担えないので、Relicのエンジニアが子会社/関連会社のCTOに抜擢するようなケースも増えてきており、次世代のCTOの育成や獲得が急務となっています。
CTOは、技術スキルだけに秀でていればよいわけではなく、経営人材として成果を上げていく必要があります。最近では、他社で活躍されているCTOやVPoEの方とお話する機会も増えてきて、経営との関わり方は様々だと思っており、自分なりにCTOを3つのタイプに分類しています。
1つ目は、「HR系CTO」。エンジニアのバックグラウンドを活かしつつ、組織づくりや採用・育成などに重きをおくVPoEに近いタイプ。
2つ目は、「プロダクト系CTO」。マネジメントもやるが、自身のセンスや技術力を武器に、プロダクト開発の先頭に立って引っ張っていく。CPO(Chief Product Officer)に近い形。
3つ目に、「R&D系CTO」。その会社のコアコンピタンスとなる技術に特化し、日本や世界のレベルで見てもその分野を代表する知識や技術力を有するタイプ。
このような類型や会社の状況/特性も踏まえて、どのような人物がCTOに就任すべきか、またどのようにCTOを任せられるような人材を育成/指導するのか、といったことを最近は考え、試行錯誤しています。
それでは、大庭さんがこれまでやってきたエンジニア組織づくりなどの職務はだんだんと移譲していく、ということでしょうか。
私のCTOとしての役割を前述の3つのタイプで説明すると、創業当初は「プロダクト系CTO」、組織が拡大する中で「HR系CTO」にシフトしていきました。正直、HR系の役割は、当初自分がCTO像としてはイメージになかったのは確かです。しかしながら、これまでRelicでそういったHR系の役割/業務に取り組んでみて、組織づくりや採用といった業務は、実は私に向いていたのではないかと思っているのです。
会社や事業が急激に成長し、100名弱規模の開発組織になるまで、たしかにそれなりの苦労はありましたが、他社でよく聞く「50人の壁」に伴う組織崩壊や、会社全体を巻き込む大きなハレーションというのはRelicでは起きていません。また、技術的な理想に走りすぎて事業がなおざりになることもなかったと思います。様々な人の助けや力をお借りしつつではありますが、組織・事業・技術のバランスをとるのに長けていたように思います。Relicでエンジニアとして働くメンバーひとりひとりに会社からのメッセージをうまく伝えることができていたことなども、大きく躓くことがなかった要因ではないかと思っています。
今後はHR系の業務に携わることが少なくなるかもしれませんが、この5年ほどを通じて発見した自身のバランサーとしての力や、培ってきた経験は、今後のCTOとしての役割の上で決して無駄になることはなく、要所要所で活かせると考えています。
前編の最後に、Relicの新規事業にビジネス職としてではなく、エンジニアとして携わることの面白み、魅力を教えてください。
まず最初に思いつくのは、「技術選定から始まり、ゼロの状態からコードを書けること」。
既存事業を担当しているエンジニアの多くが抱えるフラストレーションは、既存のコードや枠組み、組織といったレガシー(遺産)を踏まえながら、理想と現実の落とし所を探らなければならないということに端を発することを踏まえると、事業立ち上げ時のほんのわずかなタイミングではありますが、何もない状態からシステムを設計・構築できることは、大きな責任が伴いますが、同時に新規事業担当のエンジニアしか経験できない魅力のひとつです。
また、新規事業というのは小さなチームでスタートすることが多く、エンジニアひとりひとりが事業のコアな部分を担うことができ、プロダクト作りだけでなく、事業そのものにも自分の考えを反映しやすいというのも面白いポイントでしょう。特にRelicでは、事業の状況によって開発手法を機動的に切り替え、チームの生産性を向上させる「バイモーダル開発手法」を採用、ときにはエンジニアがビジネス担当と事業展開についての意見を戦わせますし、可能ならばマーケティング施策にも全力で取り組みます。
最近、特に印象的だったエピソードがあります。DAU(Daily Active Users)の数が目標数値になかなか到達しなかった、C向けアプリの開発担当者。彼はエンジニアにも関わらず、DAU目標の達成のために、アプリダウンロード用QRコードを印刷したTシャツを発注し、なんと自ら着用して街を練り歩いたんです。(私も着用しました)それ以外にも達成のためにいろいろな挑戦をしてくれました。これは本当に、自分が開発したサービスに対する熱意がすごいですよね。
そういった情熱によって事業の存続が決まることもありますし、Relicでは「自分はエンジニアだからやらない/口出しできない」と業務範囲を定める必要もありません。事業を成功させるために、なんでもやる。そしてその事業の成功の面白さを全力で感じられるのが、Relicでエンジニアをやる魅力ではないでしょうか。
社員の声
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脇:ビジネスイノベーション事業本部 XTech事業部 松田:ビジネスイノベーション事業本部 ビジネスクリエイション事業部
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