株式会社電通国際情報サービスクロスイノベーション本部クロスイノベーション推進部部長
荻野 博裕樹(オギノ ヒロユキ)法政大学卒業。2007年に株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)に入社。ISIDではSAP ERPを中心とした大規模システム開発の営業及びサービス企画を経て、2015年より新規事業の企画開発を担当。製造業向け故障予知分析ビジネス、ソーシャルデータ分析ビジネスなどの立ち上げを経験後、2019年よりSaaS事業開発に着手、HR Tech領域で従業員のコラボレーションを支援するサービス”ENGAGE TAG(β版)” を提供。
ISID社の社内新規事業プログラムから生まれたプロダクト”ENGAGE TAG(β版)”。
共創パートナーとして事業推進を担ったRelicと、どのように事業開発に取り組んだのかをお伺いしました。
「社内の隠れた立役者」が正当に評価されるために生まれた”ENGAGE TAG”
ー今日はお時間をいただきありがとうございます。まずは荻野さんが所属していらっしゃるISID社について簡単に教えてください。
ISIDは、1975年に電通とGEの合弁で設立された企業です。製造業や金融業をはじめとする幅広い業種のお客様に対してシステム構築から運用、DX推進のご支援をしています。
ーありがとうございます。荻野さんの所属するX(クロス)イノベーション本部は、社内でも新規事業創出に特化した部署とのことですが、詳細を聞かせてください。
クロスイノベーション本部は、中期経営計画に掲げた「X Innovation(クロスイノベーション)による新規事業創出の加速を目的にISID内のオープンイノベーションや先端技術開発、新規事業開発を担うチームを結集させた組織です。
その具体的な取り組みの一つとして、2019年度から社内全体を巻き込んで「クロスイノベーションワークショップ(以下、XIW)」という社内新規事業創出プログラムを主催しています。部署を問わず全社員から新規事業のアイデアを募集するプログラムで、私が運営事務局の責任者を務めています。
私自身、直近の6年間は新規事業開発に携わっており、製造業向けの故障予知分析や、ソーシャルデータ分析など、弊社内で0→1、1→10のビジネス立ち上げに関わってきました。
ー今回Relicがパートナーとして立ち上げを行った”ENGAGE TAG(β版)”もXIWから生まれたものだそうですね。構想のきっかけや背景を教えてください。
2019年の年末に現在の”ENGAGE TAG(β版)”プロダクト開発・技術責任者の通山との雑談で、「社内で活躍している人材にスポットライトを当てたい」という話で盛り上がったことがきっかけです。ちょうどXIW第2期を募集していたタイミングだったので、そのままの勢いで企画書を作ってエントリーしました。
企業規模が大きくなると、その分社内の人の動きや担当業務が分かりにくいケースがあるんですよね。営業のトップセールスとか、新しい技術開発など、目立つ場面があれば社内外で知られることがあるかと思うのですが、所謂「縁の下の力持ち」のような人材の活動にスポットライトが当たる機会は前者に比べると多くはないんです。
例えばシステムエンジニアはプロジェクトマネージャーになって、ある案件・テーマで成果を挙げて、さらにユニークなキャラクターで、など様々な条件が揃わない限り、表立って注目されることが少ないと思います。「目立つ人ばかりにスポットライトがあたるのではなく、本当の意味で活躍・貢献している社内の立役者に注目できないのはもったいない」という課題意識を持ったことが着想です。
この課題感に対するアイデアとして生み出したサービスが“ENGAGE TAG”です。
ーなるほど。確かにどの企業でもそのような状況になってしまっていることは多い気がします。具体的には”ENGAGE TAG(β版)”はどのような機能があるのでしょうか?
“ENGAGE TAG(β版)”はMicrosoft Teamsアプリケーションとして提供するプロダクトで、従業員のビジネススキルやプロフィール・趣味特技などを社員が相互に“タグ”として付与する形で可視化します。タグを起点にコミュニケーションのネットワークを可視化することができ、従来では発生しえなかった新しい社内の繋がり、コラボレーションを生み出すサービスです。
導入後のチュートリアルでは、主観的に自分自身のスキルをタグ付けした後、同僚や上司などからタグを相互につけてもらいます。タグに対して“いいね”や“推薦文”の形であらためて相互評価を行うことで客観的な評価が行われ、全方位的に社員のスキルや特性が可視化されるようになります。このタグ・ネットワーク情報をもとに新しい部署横断型のチーミングや個々人の活動/成果を正当に評価できるような文化を醸造し、組織全体のエンゲージメント向上に貢献します。
日常業務で困ったことや新しいサービス検討をするとなった際、必要なスキルを持った適切なアサインメントが容易に行えるだけでなく、社員のスキルをタグ付けしておくことで、組織運営・経営的な観点でどのような人材がいるのか、人材ポートフォリオを常に最新の状態で把握することができます。
事業立ち上げ支援でスピーディーなβ版リリースへ。
1→10から10→100までをカバーするRelicのグロース支援
ーリモートでの業務が増えた今、より需要が高まりそうなプロダクトですね。次に、新規事業開発のパートナーとしてRelicを選んでいただいた理由を教えてください。
新規事業における検証計画の設計や進め方に対して、多くのノウハウを持っているというのが大きな理由のひとつです。社内から生まれたアイデアを事業化するためには、役員会での投資判断の必要があり、審査する方々の観点を押さえた上で事業計画策定や検証計画の設計をしなければ先に進むことができません。
そうなった際に、一番怖いのは事業や検証計画の中で抜け漏れがあることです。新規事業の進め方のセオリーと、投資判断の審査観点をそれぞれ正しく理解した上で、抜け漏れなく検討を行うのは非常に難しい。そういった意味で、大手企業の新規事業創出の推進実績が豊富なRelicさんだからこそ分かる社内新規事業の進め方をもとに、抜け漏れなく、審査観点を抑えて伴走してくれたことは非常に助かりました。
ーありがとうございます。実際に支援がスタートしてから、Relicの支援で印象に残っていることや、頼りになったと感じる瞬間があれば教えてください。
ユーザー検証を実行していくスピード感はとても印象的でした。特に、ユーザーへ実際にインタビューをしていくとなった際には非常に心強かったです。
“ENGAGE TAG”ではプロダクト開発のMVP-α版-β版のそれぞれの段階ごとで、ユーザーインタビューを実施しています。ユーザーはどんな課題を抱えていて、どんな機能ならその課題を解決できるのか、正式にリリースする前に、市場の反応を見てプロダクト開発計画をアップデートしていくという重要なプロセスです。ヒアリングのために弊社の既存取引先に対してアプローチすることもできるのですが、既存顧客には営業担当がついており、アプローチまで時間と工数がかかってしまいます。そこをRelicさんに入っていただき、ターゲットやアプローチ対象の明確化から、Relicさんのコネクションやアウトバウンドアプローチを駆使してアポイント獲得、ヒアリング実施までを一気通貫で実施いただき、スピード感をもって検証を進めていくことが出来ました。
また、事業を推進していくための細やかな気配りや、エンドユーザーへのフォローを非常に丁寧に対応いただいたことも非常に助かりました。プロジェクト全体を推進していく立場からすると目標の達成率やプロジェクト全体の進捗状況など、俯瞰的な目線を持つことが多く、細かい部分を見落としがちです。
ネクストアクションの共有や、ユーザーヒアリングの内容整理など、抜けてしまいがちなところをサポートいただき、とても助かりました。同様に、営業活動を行う中で、「この顧客にはこのようなフォローをしたほうが良い」と提言いただき、状況に合わせて丁寧なコミュニケーションをしていただくこともあり、私が追いきれていないところを補ってくれていました。
すでにβ版公開までの初期フェーズはRelicさんにご支援をいただいており、これから本格的なグロースフェーズに”ENGAGE TAG(β版)”は入っていきます。そうなった際に、すでにプロダクトを熟知していて、どういったターゲットなら刺さるかを一緒に考えたRelicさんに引き続き支援をしてもらえることは非常に心強いです。プロダクトは作って終わりではなく、その後の実装や拡大フェーズが重要になってくるので、1→10から10→100まで支援をできるRelicさんは良きグロースパートナーだと思っています。
これからも「大志ある挑戦」を創るために
ーありがとうございます。最後に、”ENGAGE TAG”のこれからの展望について教えてください。
直近はβ版リリースを8月3日にアナウンスしました。今後、利用ユーザーを増やしていきプロダクトのアップデートを続け、2022年の春先にはβ版を卒業させて正式版リリースができればと思っています。
前述したような「社内の隠れた人材が正当に評価される組織」を構築するためのツールとしてはもちろん、テレワークなど働き方の変化が進む中、以前であればオフィス等で立ち話、雑談をする中で知り得た「人となり」や「知見」をタグとして可視化することで、オンラインコミュニケーションの課題である 「初対面の人との関係構築、新しい人との接点」に対する敷居を下げることのできるツールとして、多くの企業にご利用いただきたいと思っています。
事業としては、3年後にARR10億円を目指しています。この数字は弊社内の新規事業開発において非常にチャレンジングなものです。また、プロダクトをゼロから立ち上げ、業界を問わないホリゾンタルSaaS事業も弊社の中では初の取り組みです。こうした自社内で誰も挑戦したことのない領域にこれからも挑み続け、市場に大きなインパクトを生み出す事業開発を続けていきたいと思っています。
ーこれからも一緒に大志ある挑戦を創り続けていきましょう!ありがとうございました。