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社内ベンチャーの成功例5選|有名企業の事例に学ぶ共通点

2026/7/8

社内ベンチャーの成功例を調べる多くの担当者は、抽象的な成功論より「どの企業が、何から始めて、どこまで育ったのか」という具体的な事実を知りたいはずです。社内ベンチャー制度を立ち上げる、あるいは社内の説得材料を探している方も多いでしょう。この記事では、スープストックトーキョーやモノタロウなど公開情報で確認できる実在企業の成功例5件を、背景と結果まで具体的に取り上げます。そのうえで成功に共通する要因を整理し、貴社が自社の取り組みに活かすためのチェックポイントまでつなげていきます。読み終えたとき、成功例を自社に引き寄せて考えるための設計の論点が見えてくるはずです。

なお、社内ベンチャーの意味や社内起業・子会社との違いは、別記事『社内ベンチャーとは』で詳しく整理しました。本記事は定義の説明には立ち入らず、成功例の解説に特化します。

社内ベンチャーの成功例に共通する3つのポイント

社内ベンチャーの成功例を並べてみると、業界もサービスもばらばらでも、成功に至る構造には共通点が見えてきます。先に結論を示すと、母体の資産を起点にしたこと、当事者が事業をやりきったこと、母体から適切な距離を置いたことの3点です。

共通点何が起きていたか確認したい問い
母体の資産を起点にした親会社の与信・販路・技術・顧客基盤を出発点に事業を組み立てた自社にしかない資産を起点にできているか
当事者が最後までやりきった発案者が現場に立ち、検証と事業化まで自ら推進した提案者が実行まで担う設計になっているか
母体から適切な距離を置いた本社の過干渉を避けつつ、独立や分社で意思決定の速さを確保した権限を現場へ降ろし、撤退基準も決めているか

この3点は、以降で紹介する事例のいずれにも形を変えて現れます。逆に言えば、この3つが欠けると、資金や人材が豊富でも社内ベンチャーは育ちにくくなります。各事例を読むときは、この共通点がどう現れているかに注目してください。

社内ベンチャーの有名な成功例5選【実在企業の事例】

代表的な成功例として、スープストックトーキョー、モノタロウ、スタディサプリ、ルネサンス、サイバーエージェントの「あした会議」の5件を取り上げます。本記事では各社の公式沿革・IR資料・主要報道で確認できる範囲に絞って整理し、事例ごとに出典を添えました。社内資料へ引用する際は、利用時点で各社の一次情報を再確認してください。まず下表で概要を示し、各事例を「背景→打ち手→結果→学び」の順に見ていきましょう。

企業・サービス母体企業事業内容結果
スープストックトーキョー三菱商事スープ専門の飲食チェーン分社化し、後にMBOで独立
モノタロウ住友商事間接資材のBtoB通販東証マザーズ上場、後にプライム市場へ
スタディサプリリクルートオンライン学習サービス主力サービスの一つに成長
ルネサンス大日本インキ化学工業(現DIC)総合スポーツクラブ運営独立・東証一部上場
あした会議発の事業群サイバーエージェント『新規事業創出の会議制度』社内ベンチャーを継続的に生む仕組みの例

スープストックトーキョー(三菱商事)|担当者の構想を会社が事業化した例

スープストックトーキョーは、三菱商事社員だった遠山正道氏の構想を、母体が事業として後押しした成功例です。創業者の遠山氏は日本ケンタッキーフライドチキンへの出向を経て、「食べるスープ」の専門店という事業を構想しました。総合商社の中から消費者向けの飲食事業が生まれた点に、この事例の特徴があります。

打ち手として、まず1店舗で事業の手応えを確かめる進め方を取りました。株式会社スマイルズの沿革によると、1999年8月に東京・お台場のヴィーナスフォートに第1号店を開店し、2000年2月には三菱商事の出資する会社として法人化しています。母体の資本という後ろ盾を得ながら、現場では創業者が事業を率いる体制でした。

結果として事業は店舗を広げ、2008年2月には遠山氏がMBO(マネジメント・バイアウト)を実施して三菱商事から独立しました。母体の中で立ち上げた事業が、最終的に独立企業として自立した形です(出典: 株式会社スマイルズ 公式沿革、2026年6月確認)。

この事例から学べるのは、母体の資産と、発案者が現場で実行まで担う体制を両立させた点です。商社の信用と資本がなければ初速は出にくく、創業者本人が現場に立たなければ飲食という細部の積み重ねが要る事業は続きません。発案者が実行まで担い、節目で独立という距離の取り方を選んだ点が、共通点の3つをそのまま体現しています。

モノタロウ(住友商事)|母体の販路と海外ノウハウを掛け合わせた例

モノタロウは、母体の信用と海外パートナーの事業モデルを組み合わせた成功例です。間接資材(工具や消耗品など、事業活動を支える資材)をインターネットで販売するBtoBの通販で、当時の日本では新しい業態でした。

打ち手の核は、合弁という形で外部のノウハウを取り込んだことです。モノタロウの沿革によると、同社は2000年10月に住友商事と米国グレンジャー社の出資により「住商グレンジャー株式会社」として設立されました。間接資材のネット通販という事業モデルを持つ海外企業と、国内の販路・信用を持つ商社が組んだ構図です。

結果として事業は伸び、2006年2月に社名を「MonotaRO」へ変更し、同年12月に東証マザーズへ上場しました。その後2009年に東証一部、2022年に東証プライム市場へと移行しています。社内ベンチャーから始まった事業が、上場企業として独り立ちした代表例です(出典: 株式会社MonotaRO 公式沿革、2026年6月確認)。

学べるのは、自社にない強みを外部と掛け合わせる発想です。新しい事業モデルを一から自前で作るのではなく、海外の実績ある型を母体の販路に載せました。社内ベンチャーは必ずしも完全な自前主義である必要はなく、足りない部分をパートナーで補う選択も成功の道筋になります。

スタディサプリ(リクルート)|社内公募制度から生まれた例

スタディサプリは、社内の新規事業提案制度を入り口に生まれた成功例です。月額制で予備校講師の講義動画が見られるオンライン学習サービスで、もとは「受験サプリ」という名称で始まりました。制度がアイデアを事業へつなぐ受け皿として機能した点が、この事例の見どころです。

打ち手は、社内コンテストという仕組みの活用でした。リクルートのRing関連情報や日経クロストレンドの記事などの公開情報では、新規事業提案制度「New RING」(現Ring)で2011年に山口文洋氏の提案がグランプリを獲得し、事業化につながった経緯が紹介されています(出典: リクルート公式サイトRing紹介ページ、日経クロストレンド報道、2026年6月確認)。応募多数の社内コンペを勝ち抜いて立ち上がった事業でした。アイデアを募る制度と、それを通った提案を事業へ進める仕組みがセットになっていたのです。

結果として事業は成長し、リクルートの教育領域を担うサービスの一つになりました。社内の制度が、教育という新しい分野の事業を生み出した形です。

この事例が示すのは、提案制度を「アイデアを集める入り口」で終わらせない設計の重要性です。コンテストで終わらず、勝った提案を事業として立ち上げる体制があったからこそ、提案は事業になりました。社内ベンチャー制度の作り方は、別記事新規事業と社内起業もあわせて参考にしてください。

ルネサンス(大日本インキ化学工業/現DIC)|本業と異なる領域で育てた例

ルネサンスは、化学メーカーの社内ベンチャーが本業と離れたサービス業で育った成功例です。総合スポーツクラブを運営する企業で、母体は大日本インキ化学工業(現DIC)でした。化学の会社から健康・運動という別領域の事業が生まれた点に特徴があります。

打ち手として、小さなスクール事業から始め、段階的に総合スポーツクラブへ広げました。同社の公式沿革によると、ルネサンスは1979年にディックプルーフィングのスポーツ事業部として創業し、同年にテニススクールの1号店を開業しています。母体企業の中で新領域に挑み、まず小さく始めてから事業の幅を広げる進め方でした。

結果として事業は独立し、社名変更を経て2004年に東証二部へ上場しました。母体の本業とは異なる領域で立ち上げた事業が、上場企業として自立した例です(出典: 株式会社ルネサンス 公式沿革、2026年6月確認)。

学べるのは、本業と離れた領域でも、小さく始めて段階的に広げれば事業は育ち得るという点です。最初から大きく構えず、テニススクールという的を絞った事業で土台を作りました。新規事業は本業の延長線上にあるとは限らず、別領域への挑戦も、進め方次第で成立します。

あした会議から生まれた事業群(サイバーエージェント)|制度として成功例を継続的に生み出した例

サイバーエージェントの「あした会議」は、一つの事業ではなく、成功例を生み出し続ける仕組みそのものが評価される例です。この事例は単一の事業ではなく、社内ベンチャーを生み出す制度の成功例として扱います。役員らがチームを組み、新規事業や経営課題の解決策を提案・実行する社内の会議制度を指し、単発の成功ではなく、制度として事業創出を継続している点が他の事例と異なります。

打ち手は、新規事業の提案を経営層が直接議論する会議体に組み込んだことです。サイバーエージェントの公式情報によると、あした会議は2006年から実施され、ここから多数の子会社が生まれてきたとされています。提案を出して終わりにせず、合宿形式で議論し、決まった事業を実行に移す流れが定着していました。

結果として、この会議は数多くの子会社と事業を生み出してきました(出典: サイバーエージェント公式サイト、2026年6月確認)。創出された事業の累計売上や子会社数などの数値は時点や出典によって幅があるため、本記事では具体的な数値の断定を控えます。引用する際は、同社のIR資料など一次情報での確認をおすすめします。

この事例が示すのは、成功例は一度の当たりではなく、生み出す仕組みで再現できるという発想です。個人の発案に頼り切るのではなく、経営層が継続的に新規事業へ資源と時間を割く場を制度化した。社内ベンチャーを単発の挑戦で終わらせないためのヒントが、ここにあります。

成功例を3つの型で整理する

ここまでの5つの成功例は、立ち上がり方で大きく「個人起点型」「制度型」「提携起点型」の3つに分けて整理できます。どれが優れているという話ではなく、自社の状況に合う型を考える材料として使ってください。

  • 個人起点型: 特定の発案者の構想が出発点になり、その人が事業を率いる型。スープストックトーキョーやルネサンスがこれにあたります。事業を率いる本人の責任感が強くなりやすい一方、その人に依存しやすく、後継の育成が課題になります。
  • 制度型: 社内公募やコンテスト、会議制度を入り口に事業を募る型。スタディサプリ(New RING)やサイバーエージェント(あした会議)がこれにあたります。継続的に挑戦を生みやすい反面、制度の設計と運用の負荷が大きく、選んだ事業を実行へ進める仕組みが欠かせません。
  • 提携起点型: モノタロウのように、母体と外部パートナーの強みを組み合わせて立ち上げる型。自前のアイデアにこだわらず、外部の事業モデルを母体の販路に載せる進め方です。掛け合わせる相手の選定と、役割分担の設計が成否を左右します。

実際には、この3つは排他的ではありません。制度を入り口にしつつ、選ばれた事業は個人がやりきる、という組み合わせが現実的です。スタディサプリも、制度から生まれた後は発案者が事業を率いています。自社で制度を設計するなら、入り口の作り方(個人の構想を拾うのか、公募で広く集めるのか、外部と組むのか)と、選んだ後に誰が実行するのかを、セットで決めておくとよいでしょう。

成功例の裏で起きる失敗。つまずきやすいポイント

成功例だけを見ていると見落としがちですが、社内ベンチャーには共通してつまずきやすい点があります。華やかな結果の裏側では、意思決定の遅れ、撤退基準の不在、実行体制の不足といった論点で失速するケースが見られます。先回りして手を打つために、主な注意点と起きる問題、回避の方向性を整理しておきましょう。

  • 母体の過干渉でスピードが消える: 本社が口を出しすぎると、意思決定が遅くなり、社内ベンチャーの重要な利点であるスピードが失われます。決裁権限を担当役員など個人に降ろし、現場の裁量を守る設計が回避策です。
  • 撤退基準を決めずに始める: いつやめるかを決めないまま走ると、成果の出ない事業に資源を注ぎ続けてしまいがちです。「いつまでに、どの指標が、どの水準に届かなければ止める」を開始前に合意しておきましょう。
  • 制度を作って公募で終わる: コンテストやアイデア募集までは整えても、選んだ事業を立ち上げきる体制がなければ、提案は事業になりません。実行を担う人と権限を、選考とセットで用意してください。
  • 既存事業の評価軸で測る: 不確実な新規事業を本業と同じ短期の収益で評価すると、育つ前に打ち切られがちです。新規事業には、別の評価軸と時間を用意することが前提になります。

これらは新規事業全般に共通する失敗の構造でもあります。撤退の判断や失敗の典型パターンは、別記事『新規事業の失敗原因7パターン』で詳しく扱っています。成功例から学ぶと同時に、つまずきの構造を知っておくことが、しなくてよい失敗を減らす近道です。

自社の社内ベンチャーに成功例を活かすチェックポイント

成功例を自社に活かすには、事例の華やかな結果ではなく、その手前の設計を自社に当てはめて確認するのが有効です。事例から逆算した、立ち上げ前に押さえておきたい論点を順に挙げます。

  1. 自社にしかない資産を起点にできているか: 親会社の販路・与信・技術・顧客基盤のうち、何を出発点にするかを言語化したか。成功例はいずれも母体の資産を起点にしています。
  2. 発案者が実行まで担う設計か: 提案した人が現場に立ち、検証と事業化まで推進できる体制か。企画と実行を別の人に分けると、発案者の当事者意識ややり抜く責任が途切れがちです。
  3. 母体との距離をどう取るか決めたか: 権限をどこまで現場に降ろし、将来の分社や独立をどう位置づけるか。過干渉を避ける仕組みを最初に組み込んだか。
  4. 撤退基準を先に合意したか: 止める条件を開始前に決めて記録したか。状況が変わると基準は都合よくゆるみがちなため、文書に残しておくと精度が上がります。
  5. 足りない強みを外部で補う選択肢を検討したか: 自前にこだわらず、モノタロウのようにパートナーの事業モデルやノウハウを取り込む道も検討したか。

これらは一度きりの確認で終わらせず、フェーズが進むごとに見直すと精度が上がります。特に撤退基準と実行体制は、立ち上げ初期に後回しにされやすいため、最初の設計段階で言語化しておくことをおすすめします。

成功例から見える、実行をやりきる体制の重要性

成功例を並べて見えてくるのは、アイデアの良し悪し以上に、当事者が事業を最後までやりきれたかどうかが結果を分けているという事実です。制度や構想が立派でも、検証と事業化を担う実行体制が弱ければ、事業は途中で止まります。

実行段階でつまずく典型は、企画と実行が分断されることです。アイデアを練る支援は手厚くても、いざ事業を立ち上げる局面で人手や経験が足りず、検証が進まない。成功例に共通する「やりきる体制」は、ここを乗り越えた結果でもあります。こうした「やりきる体制」を自社だけで構築するのが難しい場合、外部の専門パートナーを活用するのも有効な選択肢です。

私たちRelicは、大企業からスタートアップまで5,000社以上の新規事業を支援・共創してきた事業共創カンパニーです。新規事業支援のなかには、助言やメンタリングを中心にする支援形態もあります。一方でRelicは、常駐・ワンチームで貴社の事業を一緒に推進し、企画と実行を分断しません。社内ベンチャー制度の設計から、生まれた事業の検証・立ち上げまで関わることもできます。制度づくりや実行段階の壁に悩む場合は、事業プロデュース(戦略から実行までの常駐型支援)も判断材料の一つになります。

よくある質問

社内ベンチャーの成功率は高いのですか

成功率を一律に示す公開データは限られますが、成功率が高い前提で設計する取り組みではありません。新規事業はもともと不確実性が高く、社内ベンチャーも一度で成功する前提は置きにくいためです。本記事の成功例も、複数の挑戦の中から育った結果といえます。一件の成功だけを狙うより、複数の挑戦を前提に制度を設計し、撤退基準を先に決めて学びを残す運用が向いています。

中小企業でも社内ベンチャーの成功例はありますか

規模を問わず、母体の資産を起点にし、実行体制と権限設計を用意できれば成立し得ます。本記事では大企業の事例を中心に扱っていますが、成功の共通点である「自社の資産の活用」「当事者がやりきる」「適切な距離」は企業規模に依存しません。むしろ意思決定が速い中小企業は、母体の過干渉という失敗を避けやすい面もあります。中小企業で引用できる成功例を探す場合は、各社の公式発表や、自治体・金融機関が公表する支援事例など、出典を確認できるものに絞ると安全です。

社内ベンチャーと社内起業は同じですか

ほぼ同じ意味で使われます。どちらも社内で新規事業を立ち上げる取り組みを指し、文脈で言い換えが可能です。用語の違いや子会社との区別など、定義を詳しく知りたい場合は本文で紹介した『社内ベンチャーとは』の記事を参照してください。本記事は成功例の中身に絞っています。

成功例を社内の説得材料に使うときの注意点は

出典と時点を必ず添えることです。事例の経緯や数値は、報道や時期によって表現が分かれることがあります。社内向けの資料に引用する際は、各社の公式発表・沿革・有価証券報告書など一次情報で裏取りし、いつの情報かを明記しましょう。華やかな結果だけでなく、その企業が何を起点にどう実行したかという設計の部分を伝えると、自社への示唆につながります。

まとめ

社内ベンチャーの成功例から見えてくる要点は、次のとおりです。

  • スープストックトーキョー、モノタロウ、スタディサプリ、ルネサンス、あした会議の5例は、母体の中から始まり、独立や上場、事業拡大に至りました。
  • 成功には共通点があります。母体の資産を起点にしたこと、当事者が事業をやりきったこと、母体から適切な距離を置いたことの3点です。
  • 成功例は「個人起点型」「制度型」「提携起点型」の3つに整理でき、実際にはこれらの組み合わせが現実的です。
  • 一方で、母体の過干渉・撤退基準の欠如・公募止まり・既存事業の評価軸といったつまずきも共通します。

まず取り組むべきは、自社にしかない資産が何かを言語化することです。成功例に共通する出発点はそこにあり、起点が定まれば、誰がやりきるか、どう距離を取るかも後から一貫して設計できます。