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新規事業の伴走パートナー選定ガイド ─ 大企業が「事業を形にする」ための外部活用戦略

2026/3/6

大企業の新規事業開発は、戦略の立案だけでは完結しません。社内調整のスピード不足、実行人材の枯渇、リスク許容度の低さ──これらの壁を乗り越えて「事業を形にする」には、自社だけで抱え込まない判断が不可欠です。

本記事では、新規事業の外部パートナー活用を検討する大企業の事業開発責任者に向けて、パートナーの類型・フェーズ別の最適な活用法・選定時のチェックリストを体系的に整理しました。

【本記事の要点】

  • 新規事業の成功率は定義にもよるが概ね1〜3割程度と低く、大企業ほど組織的な壁が成功を阻む
  • 外部パートナーは「戦略アドバイザリー型」「事業具現化・伴走型」「テクノロジー特化型」に大別でき、課題に応じた使い分けが重要
  • フェーズ(0→1 / 1→10 / 10→100)ごとに求める機能が異なるため、パートナー選定は自社の現在地から逆算して行う
  • 選定の失敗を防ぐには「何を委ね、何を自社に残すか」を事前に明確にすることが前提条件となる

なぜ今、大企業の新規事業開発に外部パートナーが必要なのか

新規事業の成功率と大企業特有の3つの壁

日本では多くの産業で市場構造が成熟化しており、人口減少や可処分所得の伸び悩みが見られる中、既存事業の成長に停滞感を抱く企業が新たな柱となる事業の姿を模索しています。こうした環境下で新規事業開発の重要性は年々高まっていますが、その成功は容易ではありません。

PwCコンサルティングの「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025」によれば、投資回収まで至っている新規事業案件を持つ「成功企業」は全体の2割程度にとどまっています。つまり、約8割の企業は新規事業の投資回収に至っていないのが現状です。

アビームコンサルティングの調査(2018年)によれば、大企業が立ち上げた新規事業のうち累積赤字を解消できたものはわずか7%にとどまったとされています。

では、なぜここまで成功率が低いのでしょうか。大企業の新規事業開発においては、特有の3つの壁が存在します。

具体的な症状 影響
スピードの壁 複数部署の合意形成、稟議プロセスの長期化 市場機会の逸失、競合の先行
実行人材の壁 事業開発経験者の不足、既存事業との兼務 アイデアが形にならない、PoCで停滞
リスク許容の壁 既存ブランドへの影響懸念、短期収益要求 挑戦の範囲が限定される、撤退判断の遅れ

ある調査では、新規事業が成功に至っていない理由として「社内調整がうまくいかなかった」が約20%を占め、上位に挙げられています。加えて、日本能率協会の調査では「新規事業に力を入れていない理由」として「人材不足」が最も多く挙げられています。

こうした構造的な課題は、自社内の努力だけでは解消が難しい場合も多く、外部パートナーの活用が現実的な選択肢となっています。

外部パートナー活用の市場が急拡大している背景

新規事業開発を専門とする外部パートナーへの需要は、近年急速に拡大しています。

Relicとデジタルインファクトの共同調査によれば、2024年の新規事業開発におけるブティックコンサルティング市場規模は前年比約1.2倍の149億円と推測され、2029年には約2.4倍の363億円に達すると予測されています。技術革新や消費者ニーズの多様化、既存事業における市場のシュリンクなどを背景として、企業の新規事業開発への投資意欲が高まっています。

また、政府も2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を決定し、人材・ネットワークの構築、資金供給の強化と出口戦略の多様化、オープンイノベーションの推進の3本柱を掲げて推進しています。大企業にもオープンイノベーションの活性化が求められる時代となり、外部リソースとの連携は「選択肢の一つ」から「戦略上の必然」へと位置づけが変わりつつあります。


新規事業の伴走パートナーの類型と選定の基本軸

新規事業の外部パートナーは大きく3つの類型に分けられます。重要なのは、各類型の得意領域と自社の課題がどこにフィットするかを見極めることです。

経営戦略・アドバイザリー型パートナーの特徴

大手コンサルティングファームを中心とするこの類型は、上流の戦略立案や市場分析、経営層への報告資料の品質といった点に強みを持ちます。

【向いているケース】

  • 新規事業の方向性そのものが定まっていない段階
  • 経営会議での意思決定に必要な「お墨付き」を得たい場面
  • グローバル市場の調査・分析が必要な場合

【留意点】

  • 戦略の提言が主軸であり、事業の実行フェーズは対象外となることが多い
  • 大企業の既存事業における競争戦略に強みがある一方、ゼロからの新規事業開発の実践知は限定的な場合がある

事業具現化・伴走型パートナーの特徴

新規事業の構想から仮説検証、プロダクト開発、初期顧客の獲得までを一気通貫で伴走するのがこの類型です。

【向いているケース】

  • アイデアはあるが「事業として形にする」実行力が不足している
  • スピード感を持ってPoCや仮説検証を回したい
  • 社内に新規事業開発の専門チームを持っていない、または経験が浅い

【留意点】

  • パートナーの事業開発経験や支援実績の幅・深さが品質に直結する
  • 「伴走」と謳いながら実態はアドバイスのみ、というケースもあるため、契約前に実行範囲を確認することが重要

テクノロジー・開発特化型パートナーの特徴

システム開発やUI/UXデザインなど、プロダクトの技術的実装を担うパートナーです。

【向いているケース】

  • 事業の方向性は明確で、プロダクトの開発・実装が最大のボトルネック
  • 社内にエンジニアやデザイナーが不足している
  • 特定の技術要件(AI、クラウド、ハードウェア等)に対応が必要

【留意点】

  • 事業戦略の妥当性まで踏み込んだ提案は期待しにくい
  • 要件定義が曖昧なまま発注すると、手戻りが発生しやすい

パートナー類型比較表

観点 戦略アドバイザリー型 事業具現化・伴走型 テクノロジー特化型
主な提供価値 戦略立案・市場分析 構想〜実行の一気通貫 プロダクト開発・実装
得意フェーズ 方針策定〜事業構想 0→1 / 1→10 全般 開発〜ローンチ
実行の深さ 提言・資料作成中心 事業運営まで踏み込む 技術実装に特化
向いている課題 方向性が不明確 実行力・スピードが不足 開発リソースが不足

コンサルティングサービスは大きく支援するフェーズによって分かれ、「立ち上げ前」「事業化・グロース」「包括的」の3パターンが存在します。知名度や実績は大事ですが、より重要なのは自社に合っているかどうかです。


新規事業開発のフェーズ別 ─ 外部パートナーに求めるべき機能

新規事業開発は、フェーズごとに論点と必要な機能が大きく変わります。書籍『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(北嶋貴朗著)では、新規事業開発プロセスを「Concept(事業構想)」「Creation(事業創出・事業化)」「Complete(成長・拡大~完成)」の3フェーズで体系化しています。この枠組みをもとに、各フェーズで外部パートナーに求めるべき機能を整理します。

0→1(事業構想フェーズ):インキュベーション戦略と仮説検証

このフェーズの目標は、質の高い課題仮説を構築し、顧客の受容性を持つプロダクト要件を明確にすることです。

【このフェーズの主な論点】

  • 全社ビジョンと紐づいた新規事業の意義の明示
  • 取り組むテーマ・領域の定義(自由な発想ではなく、適切な制約が重要)
  • 顧客課題の発見と仮説検証(プロトタイピング)

同書では、「何でもよいので自由にアイデアを発想してほしい」という号令からは優れた新規事業は生まれにくく、具体的なテーマや制約条件を設けることでアイデアの質と量が向上すると指摘されています。

【外部パートナーに求める機能】

機能 具体的な内容
インキュベーション戦略策定 ビジョンとのギャップ分析、投資領域の定義
アイデア創出・評価 外部情報を活用した事業アイデアの発想と絞り込み
プロトタイピング LP、コンセプト動画、ペーパープロト等による仮説検証
メンタリング 事業プランの壁打ち、評価基準の設計

明日から使える一歩:自社のインキュベーション戦略を7つのSTEP(ビジョン明確化→意義の明示→投資原資確保→テーマ定義→目標目線の合意→アプローチ検討→ポートフォリオ設計)で棚卸しし、どこが曖昧かを特定してみてください。

1→10(事業創出・事業化フェーズ):プロダクト開発と初期顧客獲得

事業構想フェーズで検証した仮説をもとに、商用プロダクトを開発し、初期顧客を獲得して収益化を目指すフェーズです。

【このフェーズの主な論点】

  • MVP(実用最小限のプロダクト)の開発
  • 初期顧客の獲得と定着(PMFの探索)
  • ユニットエコノミクスの成立(LTV > CACの状態)

このフェーズで最も陥りやすい失敗は、「作り込みすぎてローンチが遅れる」ことと、「初期顧客の声を事業改善に反映できない」ことです。MVPを市場に投入し、フィードバックを得て改善するリーンスタートアップの手法を徹底しつつ、検証に必要なデータが取れる規模感を確保することが重要です。

【外部パートナーに求める機能】

機能 具体的な内容
プロダクト開発 アジャイル開発、UI/UXデザイン、品質管理
マーケティング・営業 テストマーケティング、インサイドセールス、アライアンス構築
KPI設計・事業検証 ユニットエコノミクスの検証、撤退基準の設定

10→100(成長・拡大フェーズ):グロースとスケールアップ

事業が収益化し、投資によるスケールアップを目指すフェーズです。

【このフェーズの主な論点】

  • 顧客セグメントの拡大とLTVの最大化
  • 自立的な成長(事業単体での投資原資確保)
  • 全社戦略との親和性とシナジー創出

同書では、持続的な成長には「顧客セグメントの拡大」「アップセル・クロスセルによるLTV最大化」「ネットワーク効果等によるスイッチングコスト向上」の3つのアプローチが有効とされています。

【外部パートナーに求める機能】

機能 具体的な内容
グロース戦略 スケールに向けたマーケティング・営業戦略
オペレーション構築 BPO、カスタマーサクセス体制の整備
組織・人材 内製化に向けた採用・育成の伴走

新規事業の伴走パートナー選定チェックリスト ─ 失敗を防ぐ7つの観点

選定前に社内で確認すべき3つの前提条件

パートナー選定に入る前に、以下の3点を社内で合意しておくことが不可欠です。

  1. 新規事業の目的と位置づけ:全社戦略の中で、新規事業にどの程度の投資をし、何を目指すのかが経営層と合意されているか
  2. 委ねる範囲と自社に残す領域:戦略の意思決定は自社に残し、実行はパートナーに委ねるのか。それとも構想段階から伴走を求めるのか
  3. 評価基準と時間軸:多くの企業が3年で新規事業の成否を判断している傾向がある中で、自社として何をもって「成功」とするかを定義しておく

パートナー選定チェックリスト

# 観点 確認すべきポイント
1 事業開発の実践経験 コンサルティング経験だけでなく、事業会社での新規事業立ち上げ経験を持つメンバーがいるか
2 フェーズ対応力 自社が今いるフェーズに対応できる機能を持っているか。将来のフェーズへの対応も見据えられるか
3 実行までのカバー範囲 戦略提言だけでなく、開発・マーケティング・営業等の実行領域まで一気通貫で伴走できるか
4 当事者意識と関与度 助言者としてではなく、事業の成否を自分事として捉える姿勢があるか
5 類似業界・規模の実績 自社と近い業界・企業規模での伴走実績があるか
6 柔軟な契約スキーム 不確実性の高い新規事業に適した、柔軟な契約形態や体制変更が可能か
7 ナレッジの蓄積と体系化 過去の事例から得た知見が体系化され、再現性のある方法論として提供されるか

コンサルティング会社を比較検討する際は、自社の課題と導入目的を明確にした上で、もっとも優先すべき課題に対して最大の成果をもたらすパートナーを探すことが重要です。

よくある失敗パターンとその回避策

失敗パターン 原因 回避策
「美しい戦略」だけが残り、事業が形にならない 戦略と実行の分断 実行まで一貫して伴走するパートナーを選定する
パートナー依存が続き、社内にノウハウが蓄積しない 委託と伴走の混同 内製化のロードマップを契約時に合意する
フェーズが進むたびに別のパートナーを探す 初期選定時の視野不足 0→1から10→100まで対応可能なパートナーを候補に含める
社内の意思決定が遅く、パートナーの稼働が無駄になる 社内体制の未整備 経営層のコミットメントと専任担当者のアサインを先行する

アビームコンサルティングの調査では、コーポレート部門が新規事業を担う場合は外部パートナーのナレッジを積極的に活用して成功に導く傾向が見られ、外部リソースの活用が成功要因の一つであることが確認されています。


「戦略の正しさ」より「実行の速さ」が求められる時代の事業共創

新規事業開発の現場では、完璧な戦略を描くことよりも、仮説検証のサイクルを高速で回すことが成功への近道となるケースが少なくありません。

既存事業の論理やしがらみは新規事業のスピードを阻む大きな要因であり、新規事業チームを既存組織から制度的に切り離した「出島」のような特区として扱うことが有効とされています。

書籍『新規事業開発マネジメント』で北嶋貴朗氏は、「上流の概念や理論だけでなく、事業開発の現場における泥臭く地道な実践や実行を積み重ねてきている企業は世界的に見ても稀有な存在」と述べ、戦略と実行の一体化の重要性を強調しています。また、「実戦に勝る教科書はない」として、修羅場を通じた実践知の価値を説いています。

この「戦略と実行の一体化」「泥臭い現場力」という観点は、外部パートナーを選定する際にも重要な判断軸となります。

事業共創カンパニーRelicのアプローチに見る伴走型モデル

ここでは、事業具現化・伴走型パートナーの具体例として、事業共創カンパニーRelicのアプローチを紹介します。

Relicは2015年の設立以来、大企業からスタートアップまで5,000社以上の新規事業に携わってきた、新規事業開発に特化した企業です。「大志ある挑戦を創造し、日本から世界へ」をビジョンに掲げ、以下の三位一体で事業共創に取り組んでいます。

事業領域 概要
インキュベーションテック 新規事業が生まれる仕組みをテクノロジーで実装するSaaS型プラットフォーム(「Throttle」「IDEATION Cloud」等)
事業プロデュース 事業構想〜戦略〜開発〜グロースまで、ビジネス×テクノロジー×クリエイティブ(BTC組織)で一気通貫に伴走
オープンイノベーション 投資・協業を通じて当事者として事業を共創。出島共創スキームである「DUALii」や、スタートアップスタジオ制度である「ZERO1000 Ventures」等を展開

Relicの特徴は、「共創パートナー」として自らもリスクを取りながら事業開発に臨む姿勢にあります。出島共創スキームである「DUALii」では、Relicが事業開発の運営主体として検証を推進し、一定の成果が出た段階でクライアント企業へ事業を移管するモデルを採用しています。これにより、大企業のレピュテーションリスクを回避しつつ、スピード感のある仮説検証が可能になります。

なお、Financial Times「アジア太平洋地域の急成長企業ランキング」4年連続受賞、第5回日本サービス大賞「優秀賞」「審査員特別賞」ダブル受賞など、外部評価も得ています。

ただし、パートナー選定において重要なのは、どの企業が「最適」かではなく、自社の課題・フェーズ・組織文化にどれだけフィットするかです。Relicのようなモデルが合う企業もあれば、戦略アドバイザリー型が合う企業もあります。前章のチェックリストを活用しながら、複数のパートナー候補を比較検討することをおすすめします。


まとめ ─ 新規事業を「形にする」ための次の一歩

新規事業の伴走パートナー選定で最も重要なのは、「自社が今どのフェーズにいて、何がボトルネックになっているか」を正確に把握することです。

ステップ やるべきこと
Step 1 自社の新規事業の目的・位置づけ・投資方針を経営層と合意する
Step 2 現在のフェーズと最大のボトルネックを特定する
Step 3 ボトルネックに対応できるパートナーの類型を選定する
Step 4 チェックリストで複数社を比較検討し、事前面談で相性を確認する
Step 5 小さな範囲で協業を開始し、成果を見ながら拡大する

「しなくてもよい失敗は事前に予防して回避すること、そして避けられない必要な失敗はなるべく早く、致命傷にならないようにして、そこから得た学びを活かすこと」──書籍『新規事業開発マネジメント』に記されたこの原則は、パートナー選定にも当てはまります。

大企業の中から新しい価値を生み出す挑戦は、日本の産業の未来を左右する営みです。適切なパートナーと共に、その挑戦を確実に形にしていただければ幸いです。

会社概要資料をダウンロード

新規事業開発のパートナー選定を進めるにあたり、事業共創カンパニーRelicの取り組み・実績・提供ソリューションの全体像をまとめた会社概要資料をご用意しています。本記事でご紹介した「三位一体の事業共創モデル」の詳細や、具体的な共創事例をご確認いただけます。

この資料で分かること

  • Relicの事業プロデュース・インキュベーションテック・オープンイノベーションの全体像と各ソリューションの詳細
  • 新規事業開発プロセス「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」の体系
  • 出島共創スキーム「DUALii」をはじめとする独自の共創モデルの仕組み

こんな方におすすめ

  • 新規事業開発の伴走パートナーを比較検討中の事業開発責任者の方
  • 「戦略は描けたが、実行フェーズで壁にぶつかっている」とお感じの方
  • 新規事業の仕組みづくり(プログラム設計・制度設計)を検討している方

>> 会社概要資料をダウンロード(無料)


参考文献

Web:PwCコンサルティング合同会社『新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年』、2025年

Web:アビームコンサルティング株式会社『「新規事業取り組み実態調査」から見えた新規事業の成功と失敗を分けるもの』

Web:株式会社ソフィア『大企業の新規事業は成功率向上ではなく挑戦回数と体制構築こそがカギ』、2025年

Web:株式会社Relic・株式会社デジタルインファクト『新規事業開発におけるブティックコンサルティング市場調査』、2025年

Web:経済産業省『スタートアップ・新規事業』

Web:科学技術・学術政策研究所(NISTEP)『全国イノベーション調査2022年調査統計報告』、2023年

Web:才流(サイル)『新規事業を支援するコンサルティング会社の選び方と6つの比較ポイント』

Web:ダイヤモンド・オンライン『日本企業の新規事業は93%が失敗、「なぜうまく行かないのか?」に対する現状打破の第一歩とは』、2024年

Web:一般社団法人日本能率協会『製造業の新規事業への取り組み、その現状と課題』、2024年