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新規事業の立ち上げ完全ガイド|フェーズ別の進め方・成功率を高める7つのステップと失敗回避策

2026/3/6

新規事業の立ち上げは、企業の持続的成長を実現するうえで避けて通れない経営課題です。しかし、その道のりは容易ではありません。PwCコンサルティングの実態調査(2025年)によれば、事業開発プロセスのうち投資回収まで至っている新規事業案件を持つ「成功企業」は全体の2割程度にとどまっています。さらにアビームコンサルティングが実施した調査では、取り組んだ新規事業のうち累損解消に至った割合はわずか7%という結果が報告されています。

一方で、McKinseyのグローバル調査では、新規事業の創出(ビジネスビルディング)は多くの企業にとってトッププライオリティであり、CEOの27%がそれを最優先事項に位置づけています。新規事業の成功率は決して高くないものの、企業の未来を切り拓くために不可欠な挑戦であることもまた事実です。

本記事では、大企業の新規事業開発責任者が「明日から使える」実践知として、新規事業の立ち上げにおける全体像、フェーズ別の進め方、成功確率を高めるための7つのステップ、そしてよくある失敗パターンとその回避策を体系的に解説します。

【本記事の要点】

  • 新規事業の立ち上げは「0→1(事業構想)」「1→10(事業化)」「10→100(成長・拡大)」の3フェーズで設計する
  • 成功企業は「全社戦略との接続」と「新規事業組織の強化」で差をつけている
  • 「しなくてもよい失敗」を事前に回避し、「必要な失敗」を早く安く回すことが鍵
  • 外部パートナー選定は「戦略立案の専門性」と「実行力」の両軸で判断する
  • 投資原資の独立確保、撤退基準の事前設定が、持続的な挑戦の土台になる

新規事業の立ち上げとは|定義とフェーズの全体像

新規事業の定義 ― 既存事業の延長線上にはない「新たな価値創出」

新規事業の立ち上げとは、企業がこれまでの事業領域とは異なる市場・顧客・ビジネスモデルに挑み、新たな収益の柱を創出する取り組みです。既存事業で確立した強みや経営資源を持つ一方で、新規事業には独自の困難さがあり、大企業ほど事業の意思決定プロセスが複雑であったり、既存の成功体験に縛られて変化に消極的になりがちです。

ここで重要なのは、「新商品の投入」や「既存サービスの改良」と、本質的な新規事業開発とを区別することです。書籍『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(北嶋貴朗著)では、新規事業のテーマ・領域を「市場/顧客」と「商品/ビジネスモデル」の2軸で分類し、不確実性の高さに応じて以下の4領域に整理しています。

領域 不確実性 概要
中核領域 既存の市場・商品の改善や拡張
隣接領域 中低 既知の顧客の顕在ニーズに新商品で対応
周辺領域 中高 同様の顧客の潜在ニーズ、または新市場へ既存モデルで展開
革新領域 市場もビジネスモデルも新規。最も不確実だが、大きな成長余地がある

自社がどの領域の新規事業に取り組むのかを明確にすることが、戦略策定の第一歩となります。

新規事業の3つのフェーズ ― 0→1、1→10、10→100

新規事業の立ち上げは、一直線に進むものではなく、フェーズごとに求められるケイパビリティや判断基準が異なります。全体像を把握するため、以下の3フェーズで捉えることが実務上有効です。

フェーズ 概要 主な検証項目
0→1(事業構想) 顧客と課題の発見、アイデア創出、プロトタイプ検証 顧客と課題の蓋然性、提供価値と解決策の有効性
1→10(事業化) プロダクト開発、初期顧客の獲得、収益モデルの検証 製品と市場の適合(PMF)、事業性・収益性
10→100(成長・拡大) スケール投資、組織体制の整備、持続的成長構造の構築 成長・拡大可能性、持続可能性、全社戦略との親和性

このフェーズ区分は、書籍で体系化されている「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」の考え方に基づいています。各フェーズの移行時には、次のステージに進むべきか、ピボットすべきか、撤退すべきかを判断する「ステージゲート」を設けることが、不確実性をコントロールする鍵になります。


なぜ今、新規事業の立ち上げが急務なのか

既存事業だけでは生き残れない時代の構造変化

日本では多くの産業で市場構造が成熟化しており、人口減少や可処分所得の伸び悩みが見られる中、既存事業の成長に停滞感を抱く企業が、新たな柱となる事業の姿を模索しています。

書籍でも「少子高齢化や人口減少に伴い、国内の既存市場が今後確実に縮小していくトレンドにある」という認識が示されています。加えて、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)時代においては、1つの事業やビジネスモデルの短命化が加速しており、企業は新たな事業の開発に取り組まなければ「継続的な成長はもちろん、現状維持すらも厳しい環境」に直面しています。

マッキンゼーのグローバル調査によれば、世界のCEOの62%が新規事業の構築を自社の3大優先課題の一つに位置づけています。もはや新規事業は「やれたらやる」ものではなく、経営戦略の根幹に据えるべきテーマとなっています。

大企業こそが新規事業の主役になるべき理由

新規事業やイノベーションというと、スタートアップの領域と思われがちです。しかし書籍では、「先進的な社会が抱える巨大で複雑な壁を乗り越えるための挑戦は、一部のスタートアップやベンチャー企業だけでは決してなし得ない」と述べられています。大企業には、技術・ブランド・顧客基盤・資金力・人材など、新規事業を推進するうえで強力なアセットが眠っています。

McKinseyの調査でも、現在の経済環境においては大企業が資金調達に苦しむスタートアップに対して相対的な優位性を持っていることが指摘されています。重要なのは、その「眠れるアセット」をいかに活かせる仕組みを構築できるかです。


新規事業の立ち上げを成功に導く7つのステップ ― インキュベーション戦略の策定

新規事業を「思いつき」で始めるのではなく、全社戦略と接続された方針として設計することが、成功確率を大きく左右します。PwCの調査では、成功企業と挑戦企業の間で最も大きな差が見られたのは「全社戦略の打ち手として位置づけたうえでの新規事業推進」でした。

書籍では、新規事業開発全体の方針・戦略を「インキュベーション戦略」と定義し、7つのステップで策定する方法論が提示されています。以下にそのエッセンスを実務に落とし込んで解説します。

STEP 1|全社ビジョンの明確化 ― どこへ向かうのかを示す

新規事業の立ち上げに先立ち、企業として中長期でどのような姿を目指すのか、全社ビジョンを明確にすることが出発点です。書籍では、魅力的なビジョンを策定するための5つの論点が示されています。

【ビジョン策定の5つの論点(チェックリスト)】

  • 有意義性:定量的な数値目標だけでなく、定性的な意義や社会的価値を示しているか
  • 貢献性:より良い未来や社会課題の解決につながっているか
  • 具体性/独自性:自社ならではの「らしさ」が反映されているか
  • 実現性:時間軸やロードマップが設計されているか
  • 透明性/公平性:策定プロセスがオープンで、ステークホルダーの納得感を得られているか

定量指標のみで定義されたビジョンは共感を生みにくく、人やリソースを引きつける力が弱くなります。「何のために」を語れるビジョンこそが、新規事業を推進するための原動力になります。

STEP 2|新規事業に取り組む意義の明示 ― なぜ今やるのか

ビジョンが定まったら、現状との差分(ギャップ)を明確にし、「なぜ今、新規事業に取り組まなければならないのか」を全社に示します。

書籍で印象的なのは、「イノベーションの緊急性とイノベーション実施の能力は、逆相関の関係にある」というスコット・D・アンソニー氏の指摘です。つまり、危機に瀕してからの新規事業着手では遅いのです。既存事業が好調なうちに投資を開始し、次の柱を育てる余裕を持つことが望ましいといえます。

STEP 3|投資原資の確保 ― 既存事業から独立した予算を守る

新規事業への投資は、既存事業の業績変動に左右されない形で確保することが原則です。「今期の業績が厳しいので新規事業の予算を削る」という判断が繰り返されると、中長期の成長投資が滞り、組織全体のモチベーションも低下します。

【実務でのポイント】

  • 新規事業用の投資枠を既存事業のP/Lと明確に分離する
  • 経営トップが「聖域」として予算を守るコミットメントを示す
  • 年度単位ではなく、3〜5年の中期視点で投資計画を設計する

STEP 4|テーマ・領域の定義 ― 「なんでもあり」は失敗の温床

「自由にアイデアを出してほしい」という号令は、一見すると創造性を尊重しているように見えますが、書籍では「このような取り組みから優れた新規事業が生まれた事例はほとんどない」と指摘されています。人間は制約がないと逆にアイデアが出にくくなり、良いものに絞り込むことが困難になるためです。

テーマ設定の際は、先述の4×4マトリクスを活用し、自社のアセットや外部環境を踏まえて「どの領域で勝負するか」を定義します。社内公募プログラムを運営する場合も、応募要件に一定の制約や条件をつけることで、アイデアの質と量が向上する傾向があります。

STEP 5|目標と時間軸の設定

「いつまでに、どの程度の成果を目指すのか」という目線合わせは、チームの推進力を生む基盤です。PwCの調査では、売上高10億円から1兆円以上の国内企業の多くが3年で新規事業の成否を判断している傾向が明らかになっています。

ただし、革新領域の新規事業に3年での黒字化を求めるのは現実的ではないケースもあります。領域の不確実性に応じて、短期のKPI(学習量・仮説検証の進捗)と中長期のKGI(売上・利益)を使い分ける設計が重要です。

STEP 6|アプローチの検討 ― 誰が、どのように取り組むか

新規事業開発のアプローチは一様ではありません。目的や前提条件に応じて、最適な手法を選択する必要があります。

アプローチ 適するケース
ボトムアップ型(社内公募・プログラム) 組織風土の醸成、人材育成も狙う場合
トップダウン型(経営主導プロジェクト) 戦略的に重要な領域に集中投資する場合
オープンイノベーション(外部連携) 自社にないケイパビリティを獲得する場合
M&A/CVC スピーディに事業基盤を獲得する場合

アビームコンサルティングの調査では、コーポレート部門が新規事業を担う場合は外部パートナーからのナレッジ調達が成功要因となり、事業部門が担う場合は自社ケイパビリティの活用が鍵になることが示されています。

STEP 7|ポートフォリオの設計 ― 何に対していくら投資するか

最後に、定義したテーマ・領域とアプローチを組み合わせ、投資のポートフォリオを設計します。不確実性の高い革新領域に投資を集中しすぎればリスクが過大になり、中核領域の改善にばかり投資すれば成長余地が限られます。

【ポートフォリオ設計の判断軸】

  • 投資原資と許容リスクのバランス
  • 短期回収が見込める案件と中長期投資案件の配分
  • 自社のケイパビリティと外部調達の比率
  • 既存事業とのシナジー(相乗効果)の有無

この7つのステップは一度策定して終わりではなく、環境変化に応じて柔軟にアップデートしていくことが前提です。書籍でも「完璧なものを作ろうとして時間をかけすぎるよりも、ある程度の柔軟性を持たせて運用しながら改善する姿勢で臨んだ方が不確実性の高い新規事業においては適切」と述べられています。


新規事業の立ち上げでよくある失敗パターンと回避策

新規事業の成功率を高めるには、「しなくてもよい失敗」を事前に予防し、「避けられない失敗」はなるべく早く・小さく経験して学びに変えることが重要です。

失敗パターン1|顧客不在のアイデアで走り出す

調査によれば、新規事業が成功に至らない理由として「アイデアの質の問題(約21%)」と「社内調整の不備(約20%)」が上位に挙げられています。

特に多いのが、技術やトレンドを起点にアイデアを構想し、「顧客が本当に困っていること」を検証しないまま開発に着手してしまうケースです。

【回避策】

  • プロダクト開発の前に、顧客インタビューを最低20件は実施する
  • 「作る前に売る」発想で、コンセプトテストやLP(ランディングページ)での反応検証を行う
  • 書籍にある「課題の質=広さ×頻度×深さ」のフレームで、取り組む価値のある課題かを評価する

失敗パターン2|既存事業の論理で新規事業を管理する

大企業では「一度ゲートを通過した計画は変更不可」という硬直的な運用になりがちで、市場の変化に対応するスピードが失われてしまいます。新規事業を既存事業と同じ評価制度・承認プロセスで管理すると、リスク回避の力が働き、挑戦が阻害されます。

【回避策】

  • 新規事業チーム専用の意思決定権限と評価基準を設ける
  • 評価軸を「売上・利益」ではなく「学習量」「仮説検証の速度」に設定する(特に0→1フェーズ)
  • 新規事業チームを既存組織から物理的・制度的に切り離した「出島」のような特区として扱うことが有効です。

失敗パターン3|撤退基準を決めずにズルズル続ける

中小企業白書のデータでは、損失が軽い企業ほど早い段階で新事業の中止・撤退を決断していることが分かっています。撤退基準を事前に設定しないまま投資を続けると、損失が膨らむだけでなく、次の挑戦に回すリソースも失われます。

【撤退基準の設定チェックリスト】

  • □ いつまでに、どのKPIがどの水準に達しなければ撤退するか
  • □ 撤退の判断は誰がどのプロセスで行うか
  • □ 「ピボット」と「撤退」の判断基準の違いは明確か
  • □ 撤退時の学びをどのように組織に還元するか

失敗パターン4|戦略は美しいが、実行が伴わない

戦略立案に多大な時間とコストをかけた結果、いざ実行段階になると「作れる人がいない」「売れる人がいない」という事態に陥るケースは少なくありません。書籍では「上流の概念や理論だけでなく、事業開発の現場における泥臭く地道な実践や実行を積み重ねる」ことの重要性が繰り返し強調されています。

【回避策】

  • 構想段階から「実行チーム」を巻き込み、実現可能性を担保する
  • ビジネス(B)×テクノロジー(T)×クリエイティブ(C)の三位一体で体制を組む
  • 「100ページの事業計画書」よりも「1週間で回せる仮説検証サイクル」を重視する

フェーズ別・新規事業の推進体制と実務チェックリスト

0→1(事業構想フェーズ)で押さえるべきこと

事業構想フェーズでは、質の高い「課題の仮説」を構築し、それをプロトタイプで検証して蓋然性を高めることが目標です。

【事業構想フェーズ終了時のチェックリスト】

観点 チェック項目
顧客と課題 顧客像と課題の解像度が高く、定義が明確か
市場規模 課題の質(広さ×頻度×深さ)が事業として取り組む意義があるか
提供価値と解決策 解決策に顧客の受容性や有効性があり、それを裏付ける反応があるか
自社の意義 自社のビジョンやインキュベーション戦略との親和性があるか
独自性/優位性 競合や代替品と比較して明確な差別化ができているか
実現性 技術的・法務的・財務的にリスクが許容範囲内か

1→10(事業化フェーズ)で押さえるべきこと

事業化フェーズでは、プロダクトを市場に投入し、PMF(Product Market Fit)を達成して収益モデルを検証します。

【このフェーズの核心指標】

  • ユニットエコノミクス:LTV(顧客生涯価値)がCAC(顧客獲得コスト)を上回る状態を目指す。書籍では「LTV ≧ CAC」の状態を担保したまま顧客数を最大化することが理想とされています。
  • 初期顧客の定着率:獲得した顧客が継続利用しているかを検証する
  • チャネル効率:顧客獲得チャネルごとの効率と規模のバランスを最適化する

10→100(成長・拡大フェーズ)で押さえるべきこと

成長フェーズでは、投資による事業拡大と持続的な成長構造の構築が求められます。書籍では、自立的な成長を実現するための3つのアプローチが示されています。

  1. 顧客セグメントの拡大:特定セグメントから対象を広げ、TAMにおけるSAMの割合を向上させる
  2. LTVの最大化:アップセル・クロスセルを通じて顧客あたりの収益を高める
  3. スイッチングコストの構築:ネットワーク効果やデータ蓄積により、顧客基盤が自然に維持・拡大する構造を築く

新規事業を推進する「人材」と「組織」の設計

新規事業人材に必要な3つの資質

新規事業の成功を左右するのは、戦略の巧拙以上に「誰がやるか」です。アビームコンサルティングの調査では、コーポレート部門・事業部門のいずれにおいても、役員クラスの関与が成功確率を高めていることが確認されています。

書籍では「事業構想やアイデアそのものよりも、その実現を担う起業家人材・事業家人材、すなわちイノベーター人材の質や量のほうが、より深刻なボトルネックになる」という危機感が示されています。

【新規事業リーダーに求められる資質】

  • 当事者意識:自ら責任を持って最後まで取り組む強い意志
  • 仮説思考と行動力:不確実性の中で仮説を立て、素早く検証を回せる力
  • 巻き込み力:社内外のステークホルダーを動かし、リソースを獲得する力

「出島」型組織で大企業の制約を乗り越える

大企業における新規事業開発の典型的な難所は、「社内調整に時間がかかる」「既存事業との利益相反が生じる」「レピュテーションリスクを過度に恐れる」といったものです。

これらの制約を乗り越える一つの手法が「出島」型の組織設計です。新規事業チームを本体から切り離し、独自の意思決定権限、評価制度、予算枠を与えることで、スピードと柔軟性を確保します。

全国イノベーション調査(2022年)の分析でも、企業規模が大きくなるほど「組織文化」や「社内の優先事項」がイノベーションの阻害要因となることが明らかになっています。制度的な分離なくして、大企業の新規事業が既存事業のスピードを超えることは極めて困難です。


外部パートナーの選び方|自社に最適な共創体制を構築するための判断軸

新規事業パートナーの4つの類型

新規事業の立ち上げにおいて、すべてを自社リソースだけで完結させることは現実的ではありません。コーポレート部門が新規事業開発を担う場合、多くのナレッジを外部から調達して成功に導いている傾向が確認されています。外部パートナーには以下のような類型があり、自社の課題や新規事業のフェーズに応じて最適な相手を選ぶ必要があります。

類型 主な提供価値 適するフェーズ
戦略コンサルティング 市場分析、戦略立案、経営層への「お墨付き」 構想初期・方針策定
事業開発伴走型 アイデア具現化、仮説検証、プロダクト開発、実行 0→1、1→10
開発会社(SIer等) システム設計・開発、技術実装 開発フェーズ
VC/CVC 投資、スタートアップとのマッチング オープンイノベーション

パートナー選定の5つの判断軸

外部パートナーを選定する際には、以下の観点で比較検討することを推奨します。

  1. 新規事業開発の実務経験:戦略立案だけでなく、事業を「形にした」経験があるか
  2. 一気通貫の実行力:ビジネス×テクノロジー×クリエイティブを横断的にカバーできるか
  3. 当事者意識の度合い:外注先としてではなく、事業の成否にコミットする姿勢があるか
  4. 大企業の制約への理解:社内調整、リスク管理、ガバナンスを踏まえた進め方ができるか
  5. 柔軟な契約スキーム:フェーズの変化に応じて体制やスコープを調整できるか

戦略の精緻さだけを追い求めると、実行フェーズで「絵に描いた餅」になるリスクがあります。一方、実行力だけに頼ると、方向性を誤ったまま走り続けてしまう危険もあります。戦略と実行の両方をカバーできるパートナーを選ぶこと、あるいは役割分担を明確にしたうえで複数のパートナーと組むことが現実的な選択肢です。

事業共創という選択肢 ― パートナーが「当事者」になるモデル

近年注目されているのが、外部パートナーが単なる受託者としてではなく、事業のリスクとリターンを共有する「共創」型のモデルです。共同出資やレベニューシェア型の契約を通じて、パートナーが事業成果にコミットする体制を構築します。

例えば、事業共創カンパニーRelicでは、新規事業開発に特化したSaaS型プラットフォーム「インキュベーションテック」、事業構想から実行まで一気通貫で伴走する「事業プロデュース」、投資や協業を通じて事業を共創する「オープンイノベーション」の三位一体で、5,000社以上の新規事業開発に携わってきた実績があります。また、Relicが事業の運営主体となることで大企業のレピュテーションリスクを回避しつつスピーディな仮説検証を可能にする出島共創スキーム「DUALii」のような独自の仕組みも展開されています。

こうした「共創」型のアプローチは、自社単独では乗り越えにくい大企業特有の制約 ― スピードの欠如、実行人材の不足、リスク許容度の低さ ― を構造的に解決する選択肢の一つとなり得ます。


まとめ|新規事業の立ち上げを「再現性ある挑戦」にするために

新規事業の立ち上げは、成功率が決して高くない厳しい挑戦です。しかし、企業が持続的に成長し、社会に新たな価値を届け続けるために、避けて通れない道でもあります。

本記事で解説したポイントを改めて整理します。

【新規事業の立ち上げ 実践サマリー】

テーマ 要点
全体設計 「インキュベーション戦略」として7つのステップで方針を策定する
フェーズ設計 0→1、1→10、10→100の各フェーズで検証項目と判断基準を変える
失敗回避 顧客不在のアイデア、硬直的な管理、撤退基準の不在、実行力の欠如を防ぐ
人材・組織 「出島」型の組織で大企業の制約を構造的に乗り越える
外部連携 戦略と実行を両立できるパートナーと「共創」の体制を構築する

書籍の中で、北嶋代表は「実戦に勝る教科書はない」と述べています。どれだけ理論やフレームワークを学んでも、最終的には実際に本気で取り組むことでしか、新規事業開発を実現し得る成長や成果は望めません。

大切なのは、「しなくてもよい失敗」を予防しながら、仮説検証のサイクルを素早く回し、学びを蓄積し続けることです。その先にこそ、「イノベーションの再現性」が生まれてきます。

大企業が変わり、大企業から新たな価値が生まれることは、日本の産業全体を活性化させる大きな力になります。本記事が、新規事業の立ち上げという勇敢な挑戦の一助となれば幸いです。

会社概要資料をダウンロード

新規事業の立ち上げにおいて、「戦略は描けたが、実行フェーズで壁にぶつかっている」「社内に新規事業を形にできる人材・体制が不足している」とお感じの方に向けて、事業共創カンパニーRelicの会社概要資料をご用意しています。新規事業開発の各フェーズにおける具体的なアプローチや、事業を形にするための体制・プロダクトの全体像をご確認いただけます。

この資料で分かること

  • Relicが提供する「インキュベーションテック」「事業プロデュース」「オープンイノベーション」三位一体の事業共創モデル
  • 0→1から10→100まで、各フェーズにおける伴走体制と具体的なソリューション
  • 5,000社以上の新規事業開発で蓄積した知見に基づく、事業開発プロセスの全体像

こんな方におすすめ

  • 新規事業の立ち上げを推進するにあたり、外部パートナーとの共創体制を検討されている方
  • 社内の新規事業プログラムや制度設計の見直しを考えている方
  • 事業構想から実行・成長まで一気通貫で伴走できるパートナーを探している方

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参考文献

Web:PwCコンサルティング合同会社『新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年』、2025年

Web:ダイヤモンド・オンライン『日本企業の新規事業は93%が失敗、「なぜうまく行かないのか?」に対する現状打破の第一歩とは』、2024年

Web:McKinsey & Company『Building new businesses: CEOs’ choice for growth』、2023年

Web:アビームコンサルティング『「新規事業取り組み実態調査」から見えた新規事業の成功と失敗を分けるもの』、2023年

Web:株式会社ソフィア『大企業の新規事業は成功率向上ではなく挑戦回数と体制構築こそがカギ』、2025年

Web:文部科学省 科学技術・学術政策研究所『全国イノベーション調査2022年調査統計報告』、2023年

Web:イノベーションワールド『全国調査から読み解く、日本企業のイノベーション実態と課題』、2025年

Web:中小企業白書 2017年版「新事業展開への取組及び成否の実態」