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新規事業のフェーズとは? 0→1/1→10/10→100の全体像と各段階の進め方

2026/3/6

新規事業開発は、一本道のプロジェクトではありません。アイデア着想から収益化、そして事業の確立に至るまで、求められる打ち手も判断基準も、フェーズごとに大きく変わります。

PwCコンサルティングの「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025」によると、投資回収まで至っている新規事業案件を持つ「成功企業」は全体の2割程度にとどまります。さらに、アビームコンサルティングが実施した調査では、取り組んだ新規事業のうち累損解消に至った割合はわずか7%という結果も出ています。

こうした厳しい現実の背景には、「フェーズごとに異なる論点を正しく捉えられていない」という構造的な課題があります。本記事では、新規事業開発のフェーズを「0→1(事業構想)」「1→10(事業化)」「10→100(成長・拡大)」の3段階に分け、各段階で何を検証し、どう判断すべきかを体系的に解説します。

【本記事の要点】

  • 新規事業開発は「0→1 / 1→10 / 10→100」の3フェーズで論点が異なる
  • 各フェーズには固有の検証項目があり、段階に応じた評価基準の設計が不可欠
  • 0→1は「顧客と課題の発見」、1→10は「プロダクトと市場の適合」、10→100は「持続可能な成長構造の構築」が主題
  • 大企業特有の失敗パターンを理解し、フェーズに応じた体制と意思決定プロセスを整えることが成功確率を高める
  • 外部パートナーの活用はフェーズと課題に応じた選定が重要

新規事業開発におけるフェーズの全体像

なぜフェーズを分けて考えることが重要なのか

新規事業開発が難航する企業の多くに共通するのは、事業の成熟度に関係なく、同じ評価軸・同じ意思決定プロセスを適用してしまうことです。

たとえば、まだ顧客課題の仮説すら固まっていない段階で売上計画の精緻さを求めたり、逆にすでに初期顧客が付いている段階で「まだ検討中」と判断を保留し続けたりするケースは珍しくありません。PwCの調査では、売上高10億円から1兆円以上の国内企業は3年で新規事業の成否を判断する傾向にあることが明らかになっています。限られた時間軸の中で成果を出すには、フェーズごとに「今、何を検証すべきか」を明確にし、リソース配分と判断基準を切り替える必要があります。

新規事業開発のフェーズを適切に分解することで、以下のメリットが得られます。

  • 不確実性の段階的なコントロール:初期は不確実性が高く、フェーズが進むにつれて不確実性を下げていく設計ができる
  • 投資判断の合理化:フェーズごとに「次に進むべきか、撤退すべきか」の移行判定基準を設けられる
  • チーム・体制の最適化:各段階で必要な人材・スキルセットが異なることを前提に体制を組める

3つのフェーズ「0→1 / 1→10 / 10→100」の定義

新規事業開発のプロセスは、大きく以下の3つのフェーズに分けて捉えることが実務上有効です。書籍『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(北嶋貴朗著、日経BP)では、これを「フェーズの3C」として体系化しています。

フェーズ 名称 概要 主な検証テーマ
0→1 Concept(事業構想) 顧客課題を発見し、解決策の仮説を構築する段階 顧客と課題(Customer & Problem)、提供価値と解決策(Value & Solution)
1→10 Creation(事業創出・事業化) 仮説をプロダクトに落とし込み、初期顧客を獲得して事業化する段階 プロダクトと市場(Product & Market)、事業性・収益性(Feasibility)
10→100 Complete(成長・拡大〜完成) 事業を拡大し、持続可能な成長構造を確立する段階 成長・拡大可能性(Scalability)、持続可能性(Sustainability)、戦略との親和性(Unifiability)

重要なのは、これらのフェーズは必ずしも一方通行ではないという点です。1→10で市場の反応が想定と異なれば0→1に立ち返ることもありますし、10→100に進んだ後も市場変化に応じて軌道修正が求められます。


Concept(事業構想)フェーズ:0→1で押さえるべき論点

顧客と課題の発見が起点となる

0→1フェーズの最大のテーマは、「誰の、どんな課題を解決するのか」を発見し、定義することです。

新規事業開発と聞くと、アイデアの独自性やビジネスモデルの巧みさに注目しがちですが、事業構想の質はその土台となる「課題の質」に大きく依存します。アビームコンサルティングの2023年調査においても、「顧客課題の理解の深さが最も重要な成功要因である」ことが改めて確認されています。

課題を発見するためには、以下の4つの調査手法を多角的に組み合わせることが有効です。

  1. デスクリサーチ:業界構造や市場動向の大枠を素早く把握する。あくまで広く浅く、深掘りの方向性を決めるために活用する
  2. エキスパートインタビュー:特定分野の有識者から、短時間で全体観や希少性の高い情報を得る
  3. 顧客インタビュー:想定顧客に直接対話し、思考・心理・感情の生の一次情報を得る。不確実性の高い新規事業開発では必須のプロセス
  4. 顧客の行動観察:顧客自身が言語化できない潜在的な課題やストレスを発見する手法

特に顧客インタビューでは、「聞ける人/聞きやすい人」ではなく「聞くべき人」に聴くこと、自分の仮説を押し付けず誘導尋問をしないこと、オープン・クエスチョンを中心に設計することの3点が重要です。

課題の質を評価する4つの観点

発見した課題が事業として取り組む価値があるかを判断するためには、以下の4つの観点で検証を行います。

観点 問い 検証方法の例
課題の広さ 同様の課題を抱える人や企業はどの程度存在するか 定量アンケート、SNSでの反応、顧客インタビューでの出現率
課題の発生頻度 その課題はどの程度の頻度で発生するか 定量アンケート、行動ログ分析
課題の深さ/深刻さ 顧客はどの程度困っているか、対価を払ってでも解決したいか 顧客インタビュー(定性調査)、代替策の利用状況確認
課題の発生構造 課題は一過性ではなく、構造的に存在・拡大し続けるか マクロトレンド分析、産業構造の変化調査

「広さ × 頻度 × 深さ」が高い課題は、事業としてのポテンシャルが高いといえます。そして、その課題が構造的に存在し続けるかどうかが、事業の持続性を左右します。

0→1フェーズのチェックリスト

0→1フェーズの終了時点で、以下の項目を確認しましょう。

  • ■ 顧客像やセグメントが明確に定義されているか
  • ■ 課題の「広さ×頻度×深さ」が検証によって裏付けられているか
  • ■ 課題に対する解決策(提供価値)の方向性が定まっているか
  • ■ 解決策に対する顧客の受容性や有効性を示す兆し(トラクション)があるか
  • ■ 自社のビジョンや戦略との親和性が明確か
  • ■ 次のフェーズに進むための資金使途と検証計画が設計されているか

Creation(事業創出・事業化)フェーズ:1→10で乗り越えるべき壁

MVP開発からPMF達成までの道筋

1→10フェーズの核心は、構想段階で立てた仮説を「動くプロダクト」に転換し、市場との適合(PMF:Product-Market Fit)を確認することです。

この段階では、最初から完全なプロダクトを目指すのではなく、MVP(Minimum Viable Product:実用最小限のプロダクト)を素早く構築し、実際の顧客に届けてフィードバックを得ることが重要です。MVPを市場に投入し、フィードバックを得て改善するリーンスタートアップの手法を徹底すること、そして致命傷にならない範囲で大胆かつ高速に仮説検証を回すことが、PMFへの最短ルートとなります。

プロトタイピングの手法は多岐にわたります。ランディングページやコンセプトムービーで顧客の受容性を確認する方法から、ノーコード・ローコードツールを活用した機能試作まで、検証したい仮説に応じて最適な手法を選択することが効率的です。

初期顧客の獲得と収益化の両立

PMFの兆しが見えたら、次は初期顧客の獲得と収益モデルの検証です。ここでは「ユニットエコノミクス」の成立、すなわちLTV(顧客生涯価値)がCAC(顧客獲得コスト)を上回る状態を目指します。

KPI設計もフェーズに応じて変化させる必要があります。

フェーズ区分 主な焦点 KPI例
初期顧客獲得 顧客の反応・受容性 獲得顧客数、コンバージョン率、初回利用率
獲得顧客の定着 継続利用・満足度 継続率、チャーンレート、NPS
収益化 事業性の検証 LTV、CAC、MRR(月次経常収益)

アビームコンサルティングの調査では、様々な苦労を乗り越えてローンチした案件においても半数以上は黒字化を達成できていないという結果が出ています。ローンチはゴールではなく、収益化に向けた検証の始まりに過ぎないという認識が重要です。

1→10フェーズのチェックリスト

  • ■ MVPが顧客に提供され、実際のフィードバックを得ているか
  • ■ PMFの兆候(継続利用、紹介、有料転換など)が確認できているか
  • ■ ビジネスモデルが明確に設計され、収益化の見通しが立っているか
  • ■ ユニットエコノミクス(LTV > CAC)が成立する見込みがあるか
  • ■ 事業化に必要なチーム体制(開発・マーケティング・営業)が構築されているか
  • ■ 撤退基準が事前に設定されているか

Complete(成長・拡大)フェーズ:10→100で問われる持続可能性

ユニットエコノミクスの成立が前提条件

10→100フェーズでは、検証済みの事業モデルを拡大し、企業の中核事業へと育てていくことが求められます。しかし、拡大フェーズで最も陥りやすい罠は、「顧客数は増えたが、増えるほど赤字が拡大する」という状態です。

ユニットエコノミクスが成立しない状態での規模拡大は、損失の拡大を意味します。マス広告を含むあらゆるチャネルを検討する際にも、個別のチャネルごとの効率に固執しすぎず、全体として「LTV > CACの状態を担保したまま顧客数を最大化できるか」という視点で判断することが重要です。

自立的な成長を実現する3つのアプローチ

事業を中核事業として確立するためには、投資原資を他事業に依存せず、自立した成長を実現する構造が求められます。そのための主要なアプローチは以下の3つです。

【1. 顧客セグメントの拡大】

初期に重視していた特定の顧客セグメントから対象を広げ、より多くの市場へプロダクトを展開します。TAM(総市場)におけるSAM(ターゲット市場)の割合を拡大するアプローチです。

【2. LTVの最大化】

アップセルやクロスセルを通じて、顧客あたりの収益を向上させます。主な課題に付随する周辺課題を解決するオプションや関連サービスの提供も有効です。高い継続率を前提に、深い顧客理解に基づく適切な提案が求められます。

【3. スイッチングコストの構築】

ネットワーク効果やデータ蓄積を通じて、顧客がプロダクトから離脱しにくい状態を構築します。多額の顧客獲得投資を続けなくても事業が安定的に成長する構造を作るためには、不可欠なアプローチです。

10→100フェーズのチェックリスト

  • ■ ユニットエコノミクスが安定的に成立しているか
  • ■ 顧客数の拡大と収益性が両立できているか
  • ■ 自立的な投資(事業のP/Lから生み出された利益)で成長率を維持できる見通しがあるか
  • ■ 全社KGI/KPIへの貢献が明確に定義されているか
  • ■ 事業の持続可能性(人材・組織・技術・競争環境)に関するリスクが評価されているか
  • ■ 全社戦略との親和性が高く、シナジーを創出できているか

大企業が新規事業フェーズで陥りがちな失敗パターンと回避策

失敗パターン①:フェーズに応じた評価基準がない

大企業では「一度ゲートを通過した計画は変更不可」という硬直的な運用になりがちですが、新規事業は「やってみたら違った」という発見の連続です。

既存事業と同じ精度の事業計画や収益見込みを0→1の段階から要求すると、検証すべき仮説が「上層部を説得するための数字づくり」にすり替わってしまいます。フェーズごとに「この段階で明確にすべきこと」と「今後検証すべきこと」を分けて評価基準を設計することが肝要です。

【回避策】 ステージゲートの各段階で、「必須の評価観点」と「今後検証すべき観点」を明確に分離する。初期フェーズでは課題の質やトラクション(兆し)を重視し、事業性・収益性の精緻な検証は後のフェーズに委ねる。

失敗パターン②:実行人材の不足で事業が形にならない

新規事業の失敗理由として「アイデアの質の問題」が約21%、「社内調整の不備」が約20%と上位に挙がっている調査結果もあります。しかし、現場でさらに深刻なのは、戦略やアイデアがあっても「それを実行し、形にできる人材」がいないという課題です。

新規事業開発には、事業構想力だけでなく、プロダクト開発、マーケティング、営業など多岐にわたるスキルが求められます。既存事業で成果を上げている人材が新規事業でも活躍できるとは限りません。

【回避策】 新規事業に必要なスキルマップを定義し、社内で確保できない機能は外部パートナーとの連携で補完する。ビジネス(B)×テクノロジー(T)×クリエイティブ(C)が一体となったチーム編成を意識する。

失敗パターン③:社内調整に時間を取られスピードが出ない

既存事業の論理やしがらみは、新規事業のスピードを阻害する最大の要因となり得ます。既存の評価制度や決裁フローをそのまま適用すると、リスクを避ける力が働き、イノベーションが生まれにくくなります。

PwCの調査では、成功企業とそれ以外の企業の間で最も大きな差が出たのが「全社戦略の打ち手として位置付けたうえでの新規事業推進」でした。経営レベルのコミットメントがなければ、現場は社内調整に忙殺され、市場と向き合う時間を失います。

【回避策】 新規事業チームを既存組織から制度的に独立させた「出島」的な体制を構築する。評価軸を「売上」ではなく「学習量」や「検証の進捗」に置き、意思決定権限を現場リーダーに委譲する。経営層のスポンサーシップを明確にし、社内調整コストを構造的に下げる。


新規事業の各フェーズで外部パートナーを活用する際の選定観点

パートナー選定の5つの判断軸

アビームコンサルティングの調査では、コーポレート部門が新規事業を担う場合は多くのナレッジを外部調達して成功に導いている傾向が見られます。自社だけで完結させることにこだわるよりも、フェーズと課題に応じて適切なパートナーを選定することが合理的な判断です。

外部パートナーを選定する際は、以下の5つの判断軸を参考にしてください。

判断軸 確認すべきポイント
1. 対応フェーズの範囲 0→1に強いのか、1→10に強いのか、全フェーズを横断できるのか
2. 戦略と実行の一貫性 戦略立案だけでなく、プロダクト開発や営業まで実行を伴えるか
3. 新規事業開発の実績 類似のフェーズ・業界での実績があるか、再現性のある知見を持っているか
4. チーム編成の柔軟性 事業の進捗に応じて体制を変えられるか、必要な専門人材を配置できるか
5. 当事者意識とリスク共有 外注先としてではなく、事業の成功にコミットするパートナーとして伴走できるか

自社のフェーズと課題に合わせた選び方

上流の戦略策定や市場分析を主な強みとするパートナーと、アイデアの具現化やプロダクト開発、仮説検証の実行に強みを持つパートナーでは、提供できる価値の領域が異なります。自社が今どのフェーズにいて、どこにボトルネックがあるのかを見極めた上で、「必要な機能を、必要なタイミングで」調達する視点が重要です。

たとえば、事業共創カンパニーRelicは、新規事業開発に特化したSaaS型プラットフォーム「インキュベーションテック」、事業の課題に一気通貫で伴走する「事業プロデュース」、投資や協業を通じて事業を共創する「オープンイノベーション」の三位一体で、0→1から10→100までの全フェーズを横断的にカバーする体制を構築しています。大企業からスタートアップまで5,000社以上との取引実績を持ち、「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」として体系化された独自の新規事業開発プロセスを基盤に、事業構想から成長・拡大まで一貫した伴走を行っている点が特徴的です。

ただし、すべての企業に同じパートナーが最適とは限りません。自社の状況に合わせて複数の選択肢を比較検討することをおすすめします。


まとめ:フェーズを見極め、正しい打ち手を正しい順序で

新規事業開発の成功確率を高めるために、最も重要なことの一つは「今、自分たちはどのフェーズにいるのか」を正しく認識し、そのフェーズに適した打ち手を選択することです。

新規事業にまつわる体系的な思考法や取り組み方について一定のリテラシーが醸成された状態にもかかわらず、成功ケースはわずかであり、再現性を含め成功率を高められていないのが実態です。この壁を越えるためには、フェーズに応じた判断基準の設計、適切な人材・体制の確保、そして仮説検証のスピードを上げる仕組みづくりが欠かせません。

新規事業開発は「十中八九うまくいかない」世界です。しかし、しなくてもよい失敗を回避し、避けられない失敗からは素早く学ぶことで、成功の確率は着実に高まります。フェーズを見極め、正しい打ち手を正しい順序で実行する。その積み重ねが、不確実性の高い新規事業開発を「再現性のある挑戦」へと変えていく原動力となるはずです。

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この資料で分かること

  • Relicが提唱する「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」の全体像
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参考文献

Web:PwCコンサルティング合同会社『新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年』、2025年

Web:アビームコンサルティング『「新規事業取り組み実態調査」から見えた新規事業の成功と失敗を分けるもの』、2024年

Web:ダイヤモンド・オンライン『日本企業の新規事業は93%が失敗、「なぜうまく行かないのか?」に対する現状打破の第一歩とは』、2024年

Web:文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)『全国イノベーション調査2022年調査統計報告』NISTEP REPORT No.200、2023年

Web:株式会社ソフィア『大企業の新規事業は成功率向上ではなく挑戦回数と体制構築こそがカギ』、2025年