新規事業のリスクとは? フェーズ別の7大リスクと実践的な回避策を徹底解説
2026/3/6
新規事業開発は企業の持続的成長に不可欠な取り組みですが、その道のりには多くのリスクが潜んでいます。アビームコンサルティングが実施した調査(年商200億円以上の780社を対象)によれば、取り組んだ新規事業のうち累損解消に至った割合は7%です。また、PwCコンサルティングが日本企業1,000社を対象に実施した「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025」では、アイデア起案したもののうち、投資回収を達成した割合は21%にとどまる結果となりました。
こうした数字を前に尻込みする必要はありません。重要なのは、リスクの正体を正しく理解し、フェーズごとに適切な対策を講じることです。本記事では、新規事業開発における主要なリスクを体系的に整理し、「明日から使えるチェックリスト」と「判断軸」を提供します。
【本記事の要点】
- 新規事業の成功確率は定義や時間軸で大きく変わるが、累損解消ベースでは約7〜20%が目安
- リスクは「戦略・市場・財務・人材・組織・技術・法務」の7領域に分類できる
- フェーズ(0→1 / 1→10 / 10→100)ごとに顕在化するリスクが異なる
- 「しなくてもよい失敗」を予防し、「避けられない失敗」を小さく早くすることが鍵
- リスク管理は「回避」だけでなく「コントロール」する発想が新規事業には不可欠
新規事業のリスクとは何か? 既存事業との本質的な違い
新規事業特有の「不確実性」を理解する
新規事業のリスクとは、端的に言えば「不確実性がもたらす損失の可能性」です。既存事業のリスクが過去データに基づいて予測・管理できるのに対し、新規事業は前例のない領域に踏み込むため、リスクの輪郭そのものが見えにくいという特徴があります。
『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(北嶋貴朗著)では、新規事業と既存事業では「組織に関する考え方が180度異なる」と指摘されています。既存事業で「優秀」とされる人材が新規事業でも同様に力を発揮できるとは限らず、評価制度や意思決定の仕組みも根本的に見直す必要があるのです。
新規事業の成功確率はどのくらいか? データで見る実態
新規事業の「成功率」は、成功の定義や調査対象によって大きく異なります。以下に主要な調査データを整理します。
| 調査・出典 | 対象 | 成功の定義 | 成功率 |
|---|---|---|---|
| 中小企業白書(2017年) | 中小企業 | 自己評価で「成功」 | 約29% |
| アビームコンサルティング(2018年) | 年商200億円以上の大企業 | 累損解消 | 約7% |
| PwCコンサルティング(2025年) | 売上高10億円以上 | 投資回収達成 | 約21% |
中小企業庁の「中小企業白書2017」によると、新規事業を展開した企業のうち「事業が成功した」と回答した割合は約28.6%です。そのうち、経常利益率が増加したのは約半数にとどまっていることから、新規事業に取り組んで経常利益を向上できたのは、全体の15%程度と考えられます。
また、PwCの2025年調査では、投資回収まで至っている新規事業案件をもつ「成功企業」は全体の2割程となり、目標とする主力事業化にまで至っている企業は1割に満たないことが明らかになっています。
これらのデータから読み取れるのは、新規事業は失敗する確率の方が圧倒的に高いという事実です。しかし同時に、成功確率を高める方法論は存在します。書籍『新規事業開発マネジメント』でも「しなくてもよい失敗は事前に予防して回避すること、そして避けられない必要な失敗はなるべく早く、致命傷にならないようにして、そこから得た学びを活かすことが重要」と強調されています。
新規事業における7大リスクの分類と具体例
リスクの全体像を俯瞰する
新規事業の開始に伴うリスクには様々な種類がありますが、主に「戦略リスク」「財務リスク」「市場リスク」「技術リスク」「人材リスク」「法務リスク」「オペレーションリスク」に大きく分類できます。以下、新規事業で特に重要な7つのリスク領域を解説します。
| リスク領域 | 概要 | 新規事業での典型的な顕在化パターン |
|---|---|---|
| 1. 戦略リスク | 事業方針・ポジショニングの誤り | 市場ニーズとの乖離、参入タイミングのミス |
| 2. 市場リスク | 市場の需要変動・競合の台頭 | 想定市場が存在しない、顧客ニーズの誤読 |
| 3. 財務リスク | 資金繰り・投資回収の困難 | 開発費の超過、収益化の遅れ |
| 4. 人材・組織リスク | 適切な人材確保・組織運営の失敗 | 新規事業経験者の不足、評価制度の不整合 |
| 5. 技術リスク | 技術開発の遅延・品質未達 | MVP開発の遅延、技術的実現性の壁 |
| 6. 法務・コンプライアンスリスク | 法規制の変化・知財問題 | 新規領域での法規制の不確実性 |
| 7. レピュテーションリスク | ブランド毀損・社内外の信用失墜 | 既存事業ブランドへの悪影響、社内信用の低下 |
戦略リスク — 「何を、なぜやるのか」が定まらない危険
書籍『新規事業開発マネジメント』では、新規事業がうまくいかない最初の理由として「ビジョンや新規事業開発に関する方針・戦略がない」ことが挙げられています。全社的な方針や戦略が定義されていないと、自社に必要な新規事業の領域や要件を検討するための「判断軸」が存在せず、投資の可否も決められない状態に陥ります。
特に大企業においては、各部署や部門でバラバラに新規事業開発に取り組むことで、優先度の高い新規事業への投資の機会や原資を失ってしまうリスクがあります。この傾向は企業の規模や既存事業の数が大きいほど顕著です。
【戦略リスクのチェックリスト】
- ■ 新規事業の全社的な方針・目的・定義が言語化されているか
- ■ 投資対象とする領域・不確実性の許容範囲が明文化されているか
- ■ 経営層と現場の間で、新規事業に取り組む意義の認識が共有されているか
- ■ 既存事業との整合性やシナジーの観点が整理されているか
市場リスク — 「顧客不在」のまま進む落とし穴
スタートアップの撤退要因を調べた調査でも、「市場が存在しなかった」が第1位の撤退理由に挙げられています。これは大企業の新規事業でも同様です。
PwCコンサルティングの調査では、新規事業の失敗要因として「顧客ニーズに適合しない」「市場の規模の小ささや成長性の低さ」「市場の顕在化タイミングとの乖離」が増加傾向にあります。
書籍では、顧客セグメントの設定が「抽象的で広すぎる」場合、深い課題を発見するための洞察が発揮できなくなると指摘されています。大きな事業を生み出そうとするほど顧客セグメントを広く設定したくなる心理が働きますが、革新的な事業やサービスを生み出す場合には、思い切って顧客セグメントを絞り込むことが重要です。
人材・組織リスク — 大企業特有の「構造的な歪み」
michinaru社の調査では、新規事業推進部署の壁として「ノウハウの不足」(28件)、「既存事業の非協力・部署間の壁」(26件)が上位に挙がっています。
書籍『新規事業開発マネジメント』では、この問題の根本原因として、新規事業開発の経験を持たない経営陣やマネジメント層の下で、同じく経験を持たないメンバーが新規事業に取り組み、既存事業の考え方や論理に従って意思決定やマネジメントが行われる「構造的な歪み」の存在が指摘されています。
さらに、既存事業の減点方式の評価制度が新規事業に適用されることで、リスクを取って挑戦する人材が報われず、新規事業に挑戦しようという意志や気概を持った人材が出てこないという悪循環が生まれます。
財務・技術・法務・レピュテーションリスクの要点
財務リスクは、新規事業の予算が限定的であることに加え、市場調査や分析、顧客ニーズに応えるための製品の改良などの想定外の費用が発生することも多く、突発的なことに予算を割かなくてはならないことがあります。ユニットエコノミクスが成立しない段階で過大な投資を行うと、事業の継続自体が危うくなります。
技術リスクは、特にデジタルプロダクトの開発において、アジャイル開発とウォーターフォール開発の使い分けや、プロトタイピングによる早期検証が鍵となります。
法務リスクは、新しい技術を採用する場合、法律の「グレーゾーン」が存在する場合、事業運営において不確実性が発生する可能性が高いため、専門家との連携が欠かせません。
レピュテーションリスクは、大企業にとって特に深刻です。既存事業のブランドを毀損するリスクを恐れるあまり、新規事業への挑戦そのものが萎縮してしまうケースが少なくありません。
フェーズ別に見る新規事業リスクの変遷と対策
新規事業開発は、フェーズによって直面するリスクの性質が大きく変わります。書籍『新規事業開発マネジメント』が提唱する「Concept(事業構想:0→1)」「Creation(事業創出:1→10)」「Complete(成長・拡大:10→100)」の3フェーズに沿って整理します。
0→1フェーズ(事業構想)— 最大のリスクは「不確実性の扱い方」
このフェーズでは、顧客と課題の発見、提供価値の定義、プロトタイピングによる検証が中心となります。最大のリスクは、不確実性が最も高い段階で、過大な投資判断を行ってしまうことです。
【よくある失敗パターン】
- 「何から始めればよいかわからない」ので、とりあえず新規事業アイデアのコンテストを開催する
- 競合他社がやっているから、慌ててオープンイノベーションの取り組みを始める
- 顧客の声を起点にアイデアの検討に時間を費やし、大量のリソースを投下した後で「自社では実現できない」と判明する
【0→1フェーズのリスク対策チェックリスト】
- ■ 顧客セグメントを具体的に絞り込めているか
- ■ 課題の「広さ × 発生頻度 × 深さ」で質を評価しているか
- ■ プロトタイプによる検証を、本格開発の前に実施しているか
- ■ 事業プランの評価観点(顧客と課題、市場規模、自社の意義、実現性、リスク等)を網羅的に設定しているか
- ■ 撤退基準・判断基準を事前に関係者と合意しているか
1→10フェーズ(事業化)— 「死の谷」を越えるリスクマネジメント
事業構想の検証が進み、プロダクト開発・ローンチ・初期顧客獲得へと移行するフェーズです。ここでは「プロダクトマーケットフィット(PMF)を達成できるか」が最大の関門となります。
アビームコンサルティングの調査結果によると、大手企業の新規事業が立ち上げに至る確率は45%、単年で黒字化する確率は17%、累損解消に至る確率は7%、中核事業にまで育つ確率は4%と報告されています。
【1→10フェーズで特に注意すべきリスク】
| リスク | 内容 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| PMF未達のまま投資拡大 | 顧客に受容されていないプロダクトにマーケティング・営業投資を行う | PMFの定量的な判断基準を設定し、達成前の大規模投資を回避 |
| チーム編成の失敗 | 既存事業のエース人材をそのまま投入 | 新規事業に求められる人材要件を再定義し、外部リソースも活用 |
| 開発の肥大化 | MVP(実用最小限の製品)を超えた過剰開発 | アジャイル開発の採用、段階的なリリースと検証の反復 |
| 社内調整コスト | 既存部門との利害調整に時間を消耗 | 経営トップのコミットメント確保、意思決定権限の明確化 |
10→100フェーズ(成長・拡大)— スケールアップ時の落とし穴
事業性が一定程度検証された後の成長・拡大フェーズでは、リスクの性質が変わります。書籍では、このフェーズで「自立的な投資による成長を実現する必要がある」と述べられています。つまり、当該事業の損益計算書(P/L)から生み出された利益のみで成長できる状態を構築することが求められます。
PwCの分析では、最終的に主力事業化までたどり着けるのは中小企業で6.4%、超大手企業であっても17.1%にとどまります。
このフェーズでの主なリスクは以下の3つです。
- 収益性を無視した拡大投資:ユニットエコノミクス(LTV > CAC)が成立しない状態での顧客獲得投資
- 組織の硬直化:成長に伴い、スタートアップ的な柔軟性が失われる
- 全社戦略との不整合:事業が成長しても、既存事業とのシナジーが描けず孤立する
書籍では、成長を持続させるアプローチとして「顧客セグメントの拡大」「LTVの最大化(アップセル・クロスセル)」「スイッチングコスト向上による顧客基盤の自然維持・拡大」の3つが挙げられています。
大企業が新規事業のリスクを乗り越えるための5つの実践知
実践知1 — 「多産多死」を前提とした投資ポートフォリオを組む
成功確率7%では新規事業投資のROIはさすがに成立しません。新規事業を成功させるためには、ある程度は多産多死の前提で複数の新規事業テーマに取り組む(=打席に多く立つ)ことに加え、成功確率を上げるための取り組み(=打率を上げる)が不可欠です。
書籍でも、中長期の目線で多くの事業を生み出し、結果としてわずかな成功が生き残る「多産多死」を前提に事業を捉えることの重要性が強調されています。ただし、これを実現するためには以下の条件が必要です。
- 失敗に対して寛容で、挑戦が歓迎される組織文化の醸成
- 既存事業とは異なる評価制度(減点方式ではなく加点方式)
- リスクを取って挑戦する人材が報われる報酬設計
- 経営トップの強いコミットメントによる中長期的な投資
【投資ポートフォリオ設計のフレームワーク】
| 領域 | 不確実性 | 期待リターン | 投資配分の考え方 |
|---|---|---|---|
| 中核領域(既存事業の深化) | 低 | 安定的 | 収益基盤の維持・強化 |
| 隣接領域(既存事業の延長) | 中 | 中程度 | 既存資産を活かした成長 |
| 革新領域(新市場・新モデル) | 高 | 高い可能性 | 中長期の成長ドライバー候補 |
実践知2 — 撤退基準を「事前に」設定する
新事業を中止・撤退した時期を見ると、損失が軽い企業ほど、早い段階で新事業の中止・撤退を決断していることが明らかになっています。
多くの日本企業では一度プロジェクトが始まると「撤退」が失敗とみなされ、ズルズルと投資を続けて傷口を広げてしまうケースが散見されます。撤退は敗北ではなく「次の挑戦への切り替え」です。
書籍では、検証結果の判断基準を事前に設定し、プロジェクトチーム・評価者の間で事前に擦り合わせておくことの重要性が説かれています。
【撤退基準設定のテンプレート】
- KPI(例:初期顧客獲得数、有料転換率)の目標値と達成期限
- 検証予算・期間の上限
- 「Go / Pivot / Stop」の判断を行うタイミングと判断者
- 撤退後のリソース再配分計画
実践知3 — 「評価者」と「リスクテイカー」の一致を図る
大企業では、新規事業を検討するメンバーが案を作って、意思決定権者に上申をして承認を得るというプロセスがあり、意思決定権者は「評価者」となってリスクの高いアイデアは却下してしまうという構造的な課題があります。
アビームコンサルティングの調査では、取締役・執行役員および部長クラスが実質的なリーダーシップを発揮する場合において成功確率が高くなっていることが判明しています。つまり、意思決定権を持つ人物がリスクテイクの当事者であるほど、事業の推進力が増すのです。
実践知4 — 外部リソースを戦略的に活用する
アビームコンサルティングの調査では、自社にないものは積極的に外部パートナーを活用するなど、必要なスキル・アセット、ケイパビリティの獲得に躊躇しないことが新規事業の成功要因であると考察されています。
外部パートナーの活用は、特に以下のような場面で効果を発揮します。
- 社内に新規事業開発の経験者がいない場合のナレッジ補完
- プロトタイピングやMVP開発など、スピードが求められる実装フェーズ
- テストマーケティングや初期顧客獲得など、既存チャネルでは対応しにくい領域
- 社内の利害関係から距離を置いた客観的な事業評価
パートナー選定にあたっては、「戦略の立案」と「実行・具現化」は別のケイパビリティである点に注意が必要です。戦略コンサルティングファームは経営層への提言や戦略立案に強みを持つ一方、プロダクト開発や仮説検証の実行フェーズには別の専門性が求められます。自社の課題がどのフェーズにあるのかを見極め、適切な相手と組むことが重要です。
実践知5 — 既存事業の資産を「戦略的に」活用する
書籍では、スタートアップの事業開発を安易に模倣してしまう問題が指摘されています。すでに経営資源を保有する企業がそれらをまったく活かさずに新規事業を立ち上げるのは、自社の強みを放棄するに等しい行為です。
ただし「最初から自社の経営資源ありきでしか事業を考えない、顧客が完全に置いてきぼりになってしまっている、というのも問題」とも述べられています。最終的に自社の経営資源が事業の独自性や競争優位性の源泉になり得る事業こそが、企業内新規事業として目指すべき方向です。
【自社資産活用の判断フレーム】
- まず顧客課題から出発する(顧客起点)
- 次に、課題の解決策として自社資産が「独自の優位性」を発揮できるか検証する
- 自社資産が活きない場合は、外部連携やオープンイノベーションで補完する
- それでも優位性が見出せない場合は、テーマそのものを再検討する
新規事業のリスクマネジメント体制を構築する方法
リスクマップの作成手順
リスクマップとは、リスクの「発生可能性」と「影響度」を可視化した図表のことで、どのリスクが事業にとって重要かを一目で把握でき、対策の優先順位を決めるのに非常に役立つフレームワークです。
【リスクマップ作成の4ステップ】
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| Step 1:リスクの洗い出し | 7大リスク領域をベースに、自社の新規事業固有のリスクを列挙 | 現場メンバーと経営層の双方から意見を収集 |
| Step 2:影響度と発生確率の評価 | 各リスクについて「影響度(大/中/小)」×「発生確率(高/中/低)」をプロット | 完璧な精度は不要。チームの認識を揃えることが目的 |
| Step 3:対策方針の決定 | リスクごとに「回避・低減・移転・保有」を選択 | 新規事業では「保有(受容)」が適切なリスクも存在する |
| Step 4:定期的な見直し | フェーズの移行時や外部環境の変化時に更新 | 四半期ごと、または重要なマイルストーンごとに実施 |
「4つの対応方針」を新規事業に適用する
リスクの対応方法には、大きく分けて「リスクの低減」「リスクの保有」「リスクの回避」「リスクの移転」の4つがあります。
新規事業では、既存事業と異なり「リスクの全面回避」は事業機会そのものの喪失を意味します。むしろ、リスクを適切にコントロールしながら前進する発想が求められます。
| 対応方針 | 既存事業での適用 | 新規事業での適用 |
|---|---|---|
| 回避 | リスクの原因を排除 | 致命的なリスク(法令違反等)のみに限定 |
| 低減 | 発生確率・影響度を下げる | MVP・プロトタイプによる段階的な検証 |
| 移転 | 保険や外部委託 | パートナーとの協業、レベニューシェアモデル |
| 保有 | 受容し自己負担 | 「学びのための失敗」として計画的に許容 |
経営トップのコミットメントをどう引き出すか
書籍では、雇われ経営者の場合、任期の短期政権で終わることが多く、「大きな問題を起こすことなく任期を終えよう」とするインセンティブが働くため、リスクがある投資や大胆な改革に踏み切ることが難しいと指摘されています。
この構造的課題を乗り越えるためには、以下の実務的なアプローチが有効です。
- 新規事業の投資を「リスク」ではなく「ポートフォリオ運用」として経営会議で位置づける
- 「事業単体の成否」ではなく「組織能力の蓄積」「人材育成」を含めた複合的なKPIを設計する
- 経営層が定期的に新規事業チームと対話する場を制度化する
- 社内決裁に向けた丁寧な資料準備と合意形成プロセスを整備する
リスクを「コントロール」する発想 — 事業共創という選択肢
「しなくてもよい失敗」を減らすための仕組み
新規事業のリスクを完全にゼロにすることはできません。しかし、過去の多くの企業が繰り返してきた「共通の失敗パターン」を事前に知り、予防策を講じることは可能です。
書籍『新規事業開発マネジメント』では、「ケース・バイ・ケースの特殊解が頻出する新規事業開発とはいえ、多くの企業を支援していると、共通してぶつかる壁や課題が存在する。これらを乗り越えることができれば、新規事業開発を着実に前へ進め、その成功確率を高めることができる」という確信が述べられています。
こうした「共通の壁」を乗り越えるための知見を体系的に蓄積し、再現性のある形で提供するアプローチは、新規事業の成功確率を高めるうえで有効な選択肢の一つです。
パートナー選定の5つの観点
新規事業の伴走パートナーを選ぶ際には、以下の観点から比較検討することをおすすめします。
| 観点 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 1. 新規事業開発の実績 | 関わった事業の数、フェーズの幅(構想のみか、実行まで含むか) |
| 2. 実行力の有無 | 戦略立案だけでなく、開発・マーケティング・営業の実装まで対応できるか |
| 3. 大企業の制約への理解 | 社内調整、意思決定プロセス、リスク許容度への理解があるか |
| 4. 当事者意識とコミットメント | 成果にコミットする仕組み(レベニューシェア、共同投資等)があるか |
| 5. 柔軟性と継続性 | フェーズの変化に応じて体制やアプローチを柔軟に変更できるか |
事業共創カンパニーRelicのアプローチ(一例)
新規事業開発に特化した事業共創カンパニーRelicは、大企業の新規事業開発における「難所の理解と突破」を掲げ、5,000社以上の企業との取引実績を持つ企業の一つです。
Relicの特徴は、戦略立案にとどまらず、プロダクト開発・マーケティング・営業までBusiness × Technology × Creative(BTC組織)が一体となって新規事業の具現化に伴走する点にあります。また、Relicが事業運営主体となることで大企業のレピュテーションリスクを低減しつつ、スピード感ある仮説検証を可能にする出島共創スキーム「DUALii」など、大企業固有の制約を乗り越えるための独自の仕組みを構築しています。
もちろん、自社の課題や状況に応じて最適なパートナーは異なります。上記の5つの観点を参考に、自社に合った共創パートナーを検討してみてください。
まとめ — リスクを恐れず、リスクをコントロールする
新規事業開発におけるリスクは、「排除すべき脅威」ではなく、「コントロールすべき変数」です。リスクをゼロにしようとすれば、挑戦そのものが消滅します。一方で、リスクを放置すれば、致命的な損失につながりかねません。
本記事のポイントを改めて整理します。
- リスクの正体を知る:7大リスク領域を理解し、自社の新規事業に当てはめる
- フェーズで切り分ける:0→1 / 1→10 / 10→100で顕在化するリスクは異なる
- 事前に基準を決める:撤退基準、判断基準、KPIを「始める前に」設計する
- 多産多死を前提にする:単発の成否ではなく、ポートフォリオで成果を測る
- 外部の知見を活用する:経験者の知見は、「しなくてもよい失敗」を防ぐ最短経路
書籍『新規事業開発マネジメント』の著者・北嶋貴朗氏は、「企業やそこで働く人にとって、新規事業開発やイノベーション創出への挑戦は、まさに後世への最大遺物」であると述べています。リスクを恐れて一歩を踏み出さないことこそが、企業にとって最大のリスクなのかもしれません。
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新規事業開発のリスクマネジメントや体制構築について、さらに具体的な情報をお求めの方へ。事業共創カンパニーRelicでは、新規事業開発に関する知見やアプローチを体系的にまとめた会社概要資料をご用意しています。
この資料で分かること
- 新規事業開発を「構想から具現化」まで一気通貫で推進する事業共創の全体像
- 大企業特有のリスク(レピュテーション・社内調整・人材不足)を乗り越える独自スキームの概要
- 5,000社以上の取引実績から蓄積されたフェーズ別の伴走アプローチ
こんな方におすすめ
- 新規事業のリスク管理体制を見直したい事業開発責任者の方
- 戦略立案だけでなく実行まで伴走できるパートナーを検討中の方
- 自社の新規事業を「形にする」ために必要な機能やプロセスを整理したい方
参考文献
Web:PwCコンサルティング『新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年』、2025年
Web:アビームコンサルティング『「新規事業取り組み実態調査」から見えた新規事業の成功と失敗を分けるもの』、2023年
Web:中小企業庁『中小企業白書2017』、2017年
Web:科学技術・学術政策研究所(NISTEP)『全国イノベーション調査2022年調査統計報告』、2023年
Web:michinaru株式会社『大企業の新規事業 立ち上げ初年度に関する実態調査(2023)』、2023年
Web:PwCコンサルティング・日経BP『新規事業実態調査2016-2021』、2021年
Web:ダイヤモンド・オンライン『日本企業の新規事業は93%が失敗、「なぜうまく行かないのか?」に対する現状打破の第一歩とは』、2024年
Web:才流『新規事業がPMFできない12の理由』
Web:NTTデータ経営研究所『なぜ大企業発のイノベーションは起こらないか?』、2017年
Web:東京スタートアップ法律事務所『新規事業のリスク分析とリスクマネジメントの方法を解説』
新規事業の営業戦略|フェーズ別に見る「売り方」の設計と初期顧客獲得の実践手順