新規事業のKPI設計完全ガイド|フェーズ別の指標設定から運用・撤退基準まで
2026/3/6
新規事業のKPIをどう設計すべきか。多くの大企業の新規事業開発責任者が頭を抱える、この問いには明確な答えがあります。
結論から申し上げると、新規事業のKPIは、事業フェーズに応じて「測るべき指標」と「目標水準」を変えながら設計・運用する必要があります。既存事業の売上・利益を初期段階から追いかけてしまうと、事業の芽を摘んでしまうリスクが高まります。
【新規事業KPI設計の要点:】
- フェーズごとに重視すべきKPIは異なる(0→1は「学習量」、1→10は「PMF達成度」、10→100は「ユニットエコノミクス」)
- KGI(最終目標)からKPIツリーで因数分解し、行動可能な粒度まで落とし込む
- 定量指標だけでなく、定性的な検証項目も含めて設計する
- 撤退基準をKPIとセットで事前に策定しておくことが不可欠
- KPIは固定せず、仮説検証の結果に応じて柔軟に見直す
アビームコンサルティングの調査(2018年)によれば、大企業が取り組んだ新規事業のうち累損解消に至った割合はわずか7%とされています。この厳しい現実を直視すれば、感覚的な進捗管理ではなく、フェーズに最適化されたKPI設計が不可欠であることは明白です。
本記事では、新規事業のKPIに関する基礎知識から、フェーズ別の具体的な指標例、KPIツリーの作り方、そして大企業ならではの運用上の留意点まで、実務で活用できる形で体系的に解説します。
新規事業のKPIとは? KGI・KSFとの違いと基本構造
KPI・KGI・KSFの定義と関係性
新規事業のKPI設計を正しく行うためには、まず関連する指標の違いを明確にしておく必要があります。
| 指標 | 正式名称 | 定義 | 新規事業での具体例 |
|---|---|---|---|
| KGI | Key Goal Indicator(重要目標達成指標) | 事業として達成すべき最終ゴールを定量化した指標 | 年間売上○億円、市場シェア○%、黒字化達成 |
| KSF | Key Success Factor(重要成功要因) | KGI達成のために特に重要なプロセスや要因 | 初期顧客の定着、ユニットエコノミクスの成立 |
| KPI | Key Performance Indicator(重要業績評価指標) | KGI達成に向けたプロセスの進捗を測る中間指標 | 月間新規顧客獲得数、顧客継続率、CAC |
KGIは企業が目指す最終的な目標を定量的に評価するための指標であり、KPIはKGIを達成するために必要なプロセスや行動を評価するための指標です。
新規事業においては、この3つの関係性を正しく構造化することが、KPI設計の出発点になります。
新規事業のKPIが既存事業と本質的に異なる3つの理由
既存事業のKPI管理手法をそのまま新規事業に適用してはならない理由は、主に次の3点です。
【1. 不確実性の高さ】
新規事業は市場・顧客・ビジネスモデルのすべてにおいて仮説段階からスタートします。既存事業のように過去データから精緻な予測を立てることが困難なため、「計画どおりに進んでいるか」ではなく「仮説がどの程度検証できたか」を測る必要があります。
【2. フェーズによって「何が成果か」が変わる】
新規事業ではすぐに売上や利益が発生するとは限りません。新規事業の立ち上げフェーズで売上・利益をKPIに設定すると、モチベーション低下の可能性があるため、段階に応じた指標の切り替えが重要です。
【3. 「学習」が最大の成果になるフェーズがある】
事業構想フェーズ(0→1)では、売上よりも「顧客の課題が実在するか」「ソリューションに受容性があるか」といった学習成果こそが真の進捗指標です。
KPIツリーの基本的な作り方
KPIは一つに設定しなければならないという決まりはなく、複数設定することも可能です。また、事業フェーズや状況によってKPIを柔軟に変更する場合も存在します。
新規事業のKPIツリーを作成する基本ステップは以下のとおりです。
ステップ1:KGIを設定する
事業として目指す最終目標を定量的に定義します。
ステップ2:KGIを因数分解する
KPIを適切に設計するためには、新規事業開発に取り組む目的やゴールを定義し、その達成に向けたプロセスを測る指標を「因数分解して網羅」していくことが重要です。
ステップ3:各KPIの計測方法と目標水準を決める
KPIごとに「誰が」「どのように」「どの頻度で」計測するかを事前に設計します。
ステップ4:レビューサイクルを設定する
KPIは事業のフェーズや環境変化に応じて柔軟に見直すべきです。週次・月次・四半期ごとなど、適切な振り返りの頻度を定めておきましょう。
ここで注意すべきは、新規事業ではKGI自体が定性的なビジョンや状態目標である場合も少なくないという点です。その場合は、まず定性的な目標をKGIとして定量化した上で、因数分解を進めていく段階が必要になります。
フェーズ別KPI設計|0→1・1→10・10→100で何を測るか
新規事業のKPI設計で最も重要なのは、フェーズに応じて指標を切り替えることです。書籍『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(北嶋貴朗著)では、新規事業開発のプロセスを「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」として体系化しています。この枠組みに沿って、各フェーズで重視すべきKPIを整理します。
事業構想フェーズ(0→1)のKPI|「仮説の質」を測る
該当プロセス: Insight → Define → Ideation → Prototyping
このフェーズのゴールは、「質の高い課題仮説を見つけ、ソリューションの方向性を定め、顧客の受容性を確認すること」です。
| KPI候補 | 計測の目的 | 目標水準の考え方 |
|---|---|---|
| 顧客インタビュー実施数 | 課題仮説の検証量を確保する | 最低30件程度の一次情報 |
| 課題仮説の検証率 | 仮説のうち蓋然性が確認できた割合 | 複数仮説のうち1〜2つに収束 |
| プロトタイプに対する顧客反応スコア | ソリューションの受容性を定量化 | NPS・購入意向等で基準設定 |
| 検証サイクルの回転数 | 仮説→検証→学習の速度を確保する | 週次で1サイクル以上 |
| 事業構想書の完成度 | 投資判断に耐えうる事業プランの練度 | 社内審査通過を基準に |
このフェーズでは売上をKPIにしないことが鉄則です。重要なのは「いくら稼いだか」ではなく「何を学んだか」です。検証すべき項目としては、書籍では「顧客と課題(Customer & Problem)」および「提供価値と解決策(Value & Solution)」が挙げられています。
よくある失敗パターン: 初期段階で「3年以内に売上○億円」というKGIのみを設定し、売上に直結しないプロトタイプ検証に投資判断が下りない。結果として、仮説が検証されないまま開発フェーズに突入し、顧客不在のプロダクトが出来上がってしまう。
事業創出・事業化フェーズ(1→10)のKPI|「PMFの兆し」を測る
該当プロセス: Development → Launch → Monetize
このフェーズのゴールは、「プロダクトを市場に投入し、初期顧客を獲得し、収益化の道筋を確認すること」です。
| KPI候補 | 計測の目的 | 目標水準の考え方 |
|---|---|---|
| 初期顧客獲得数 | 市場でのトラクション(兆し)を確認 | ターゲットセグメントから一定数 |
| 顧客継続率(リテンション率) | プロダクトの定着度を測る | 業態により異なるが70%以上が目安 |
| NPS(ネット・プロモーター・スコア) | 顧客推奨意向を定量化 | 業界平均以上を基準に |
| CAC(顧客獲得コスト) | 1顧客あたりの獲得効率 | LTVとの比率で判断 |
| MRR/ARR | 定常的な収益の積み上がりを確認 | 月次成長率10〜20%が健全な目安 |
| ユニットエコノミクス(LTV/CAC) | 事業としての採算性を判断 | 3以上が健全とされる |
一般的に、SaaSビジネスにおいて健全とされるユニットエコノミクスの目安は「3以上」、つまりLTVがCACの3倍以上である状態とされています。ただし、ユニット・エコノミクスが高すぎると「さらにCACを上げて顧客獲得を行うべき状態」という可能性もあるため、一概にユニット・エコノミクスが高い=よい状態とはいえない点には注意が必要です。
ユニットエコノミクスの計算式:
- LTV = 顧客平均単価 ÷ チャーンレート(解約率) ※SaaSの代表的な計算式
- CAC = 顧客獲得にかかった総費用 ÷ 新規顧客獲得数
- ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
書籍の枠組みでは、このフェーズの検証項目は「製品と市場(Product & Market)」および「事業性/収益性(Feasibility)」に該当します。PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の達成を確認するために、顧客の反応を複数の定量指標で多面的に捉えることがポイントです。
成長・拡大フェーズ(10→100)のKPI|「スケーラビリティ」を測る
該当プロセス: Growth → Exit → Core
このフェーズのゴールは、「投資による成長の加速と、持続可能な事業構造の確立」です。
| KPI候補 | 計測の目的 | 目標水準の考え方 |
|---|---|---|
| 売上成長率(CAGR) | 事業の成長ペースを確認 | 年率30%以上が高成長の目安 |
| 市場シェア(SOM/SAM比率) | ターゲット市場内での獲得状況 | TAM・SAM・SOMの階層で管理 |
| 顧客単価(ARPU)の推移 | アップセル・クロスセルの効果を測る | 右肩上がりのトレンドを確認 |
| チャーンレート | 顧客基盤の安定性を確認 | 月次2%以下が一般的な目標 |
| 営業利益率 | 自立的な成長を確認 | フェーズに応じた段階的目標 |
| 全社KGI/KPIへの貢献度 | 中核事業への成長ポテンシャルを測定 | ROA改善、他事業へのシナジー |
書籍では、このフェーズの検証項目として「成長・拡大可能性(Scalability)」「持続可能性(Sustainability)」「戦略との親和性(Unifiability)」の3つを挙げています。特に「自立的な投資による成長を実現する」こと、つまり事業自体のP/Lから生み出された原資で成長できる状態を作り上げることが重要な到達点とされています。
TAM・SAM・SOMによる市場規模の階層管理:
- TAM(Total Addressable Market):総市場規模
- SAM(Serviceable Addressable Market):自社がアプローチ可能なターゲット市場
- SOM(Serviceable & Obtainable Market):実際に獲得可能な市場シェア
成長フェーズでは、SOM拡大に留まらず、SAMの拡張やTAM自体の再定義(アップセル・クロスセルによる市場拡張)も視野に入れたKPI設計が求められます。
KPI設計で陥りやすい5つの失敗パターンと回避策
失敗1|初期から売上・利益をKPIに置いてしまう
最も多い失敗です。ある調査では、新規事業において最重要KPIの上位は「利益」「売上」「新規市場・顧客の開拓」で、この3項目が全体の約7割を占めることが分かっています。
しかし事業構想フェーズで売上を追うと、「売りやすいが本質的でない顧客」に寄ってしまい、結果としてPMFから遠ざかります。初期は「学習KPI」(インタビュー数、仮説検証サイクル数)を主軸にすべきです。
【回避策】 フェーズごとにKPIを段階的に切り替えるルールを事前に策定し、経営層と合意しておく。
失敗2|KPIとKGIが連動していない
KPIを達成しているのにKGIが未達、という本末転倒な状況は珍しくありません。適切なKPIが設計できていたとしても、それらを正しく計測・可視化して事業リーダーやプロジェクトメンバーが把握できる状態になっていないケースも多いのが実態です。
【回避策】 KPIツリーを作成し、各KPIがKGIとどのように因果関係で結びついているかを可視化する。KPIが10%改善すればKGIもそれに比例して改善するか、のチェックを行う。
失敗3|KPIを一度決めたら変えない
新規事業は「やってみたら違った」の連続です。計画変更のたびに膨大な承認プロセスが必要な環境では、市場の変化に対応するスピードが失われてしまいます。KPIも同様に、検証結果に基づいて柔軟に見直す必要があります。
【回避策】 四半期ごとのKPI見直しを標準プロセスとして組み込む。「KPIを変えること=失敗」ではなく、「学習に基づく進化」と捉える組織文化を醸成する。
失敗4|定量KPIだけに偏り、定性情報を見落とす
数字だけを追いかけると、「なぜその数字になっているか」の洞察が失われます。顧客からの生の声やフィードバック、チームの状態、競合環境の変化など、定性的な情報もKPIと並行して収集・評価することが不可欠です。
【回避策】 定量KPIと併せて、「定性チェックリスト」(顧客インサイトの更新、仮説の棄却・修正履歴など)をレビューの項目に含める。
失敗5|撤退基準をKPIとセットで設定していない
新規事業においてKPIの設計と同じくらい重要なのが、「どの段階で、どの基準を満たさなければ撤退するか」を事前に決めておくことです。サンクコスト(埋没費用)に囚われて撤退判断が遅れ、結果的に全社へのダメージが拡大するケースは枚挙にいとまがありません。
【回避策】 KPI設計と同時に、撤退基準を「客観的・定量的」に定め、経営層と事前合意しておく。判断が属人的にならないよう、基準は文書化して共有する。
新規事業KPIの具体的な指標一覧|フェーズ×ビジネスモデル別
指標一覧チェックリスト
以下は、フェーズ別に設定を検討すべきKPI候補の一覧です。自社の事業特性に応じて取捨選択してください。
【【0→1フェーズ(事業構想)】】
| カテゴリ | 指標例 |
|---|---|
| 学習・検証 | 顧客インタビュー実施数、仮説検証サイクル数、ピボット回数 |
| 顧客反応 | プロトタイプへの反応スコア、ウェイティングリスト登録数、LOI(意向表明書)獲得数 |
| スピード | アイデアからプロトタイプまでの所要期間、1検証サイクルあたりの日数 |
【【1→10フェーズ(事業化)】】
| カテゴリ | 指標例 |
|---|---|
| 顧客獲得 | 新規顧客数、CAC、チャネル別獲得効率 |
| 定着・利用 | DAU/MAU、継続率(リテンション)、NPS、利用頻度 |
| 収益化 | MRR/ARR、ARPU、ユニットエコノミクス(LTV/CAC)、解約率 |
【【10→100フェーズ(成長・拡大)】】
| カテゴリ | 指標例 |
|---|---|
| 成長性 | 売上成長率(CAGR)、顧客数成長率、市場シェア(SOM/SAM) |
| 収益性 | 営業利益率、LTV推移、スイッチングコスト指標 |
| 全社貢献 | 全社KGI/KPIへの貢献度、ROA改善効果、他事業へのシナジー |
ビジネスモデル別のKPI設計ポイント
ビジネスモデルによって重視すべきKPIは異なります。代表的なモデル別のポイントを整理します。
SaaS・サブスクリプション型:
ユニットエコノミクスは「金額」「期間」の両面を変数として含むため、中長期的に期待できるユーザーあたりの利益や損益分岐点を把握できます。MRR、チャーンレート、ARPU、LTV/CACが中核的な指標です。
マーケットプレイス型:
供給側(出品者)と需要側(購入者)双方のKPIが必要です。GMV(流通総額)、テイクレート、リピート率、両サイドのNPSを並行して管理します。
ハードウェア・製造業の新規事業:
開発リードタイムが長いため、初期はマイルストーン管理(技術検証完了、試作品評価、量産試作等)を中心に据え、販売開始後にユニットエコノミクスへ移行します。
大企業特有のKPI運用課題と突破のアプローチ
課題1|既存事業の評価基準を新規事業に適用してしまう
多くの企業が3年で新規事業の成否を判断していることがPwC Japanの調査で明らかになっています。しかし、既存事業と同じ財務基準(売上・利益・ROI)で短期的に評価すると、不確実性が高い新規事業の芽を早期に摘んでしまうリスクがあります。
突破のアプローチ: 新規事業専用の評価基準を策定し、フェーズごとに段階的に財務指標の比重を高めていく「段階的投資判断プロセス」を導入する。初期は「仮説検証の進捗度」、中期は「PMF達成度とユニットエコノミクス」、後期は「売上・利益・全社貢献度」と、評価軸を明確に切り替えます。
課題2|社内調整に時間がかかり、検証速度が上がらない
新規事業推進部署のミッション達成に向けて立ち塞がった壁として、「ノウハウの不足」「既存事業の非協力・部署間の壁」が上位に挙がっていることが実態調査で示されています。
KPIとして「検証サイクルの回転速度」を設定しても、意思決定プロセスがボトルネックになっていては改善の余地がありません。
突破のアプローチ: 新規事業チームに一定の裁量権を付与し、既存の稟議プロセスとは別の意思決定ルートを設計する。書籍で紹介されている「インキュベーション戦略」の考え方では、「既存事業の干渉を受けない新規事業開発への投資原資を確保する」ことが原則として挙げられています。
課題3|撤退判断が属人的になり、「ゾンビ事業」が残り続ける
明確な撤退基準がないまま事業を続けると、サンクコストバイアスにより「ここまで投資したから止められない」という判断に陥りがちです。書籍では「しなくてもよい失敗は事前に予防して回避すること、そして避けられない必要な失敗はなるべく早く、致命傷にならないようにして、そこから得た学びを活かすことが重要」と述べられています。
突破のアプローチ: 以下のような撤退判断チェックリストをKPI設計時にセットで策定します。
撤退判断チェックリスト(例):
- ■ 設定した検証期間内に、主要KPIが基準値に達しなかった
- ■ 顧客インタビューで課題の存在が否定された(課題仮説が棄却された)
- ■ PMFの兆しが一定期間内に確認できなかった
- ■ ユニットエコノミクスが改善トレンドを示さない
- ■ 事業の独自性・優位性を構築する見通しが立たない
- ■ インキュベーション戦略との整合性が失われた
撤退を「失敗」ではなく「健全なポートフォリオ管理の一環」と位置づけることで、組織として合理的な判断が可能になります。書籍では「仮に新規事業に失敗しても、そこで得た知見や経験を元にチームやイノベーター人材は成長し、さらに質を高めた再挑戦を繰り返すことができる」という健全なエコシステムの考え方が示されています。
KPI設計から運用まで|明日から使える実践テンプレート
5ステップで作るKPI設計シート
新規事業のKPI設計を実践的に進めるための5ステップを紹介します。
ステップ1:インキュベーション戦略との整合確認
全社ビジョンとの関連性、なぜ今この事業に取り組むのか、どの領域を狙うのかを明確にします。書籍では「7つのSTEP」として、ビジョン策定から投資ポートフォリオの設計までを体系化しています。
ステップ2:フェーズの特定と検証項目の選定
現在の事業がどのフェーズにあるかを判定し、対応する検証項目(Customer & Problem、Value & Solution、Product & Market等)を選びます。
ステップ3:KGI・KSF・KPIの構造化
KGIから逆算して、KSFを特定し、各KSFに紐づくKPIを因数分解していきます。
ステップ4:撤退基準・移行基準の策定
各フェーズの「卒業条件」(次のフェーズに移行するための基準)と「撤退条件」をKPIと紐づけて定義します。
ステップ5:レビューサイクルの設計
KPIの計測頻度、レビュー会議の頻度と参加者、KPI見直しのトリガー条件を決定します。
KPIレビュー会議のアジェンダ例
KPIを設計しても、運用が形骸化しては意味がありません。以下は、効果的なKPIレビュー会議のアジェンダ例です。
| 議題 | 所要時間 | ポイント |
|---|---|---|
| KPI実績の共有 | 10分 | ダッシュボードで視覚的に共有 |
| 差異分析(計画vs実績) | 15分 | 「なぜその数字なのか」の洞察を議論 |
| 顧客の声・定性情報の共有 | 10分 | 定量だけでは見えない変化を捕捉 |
| 仮説の更新・アクション決定 | 15分 | 次のスプリントでの具体アクションを決定 |
| KPI自体の見直し要否 | 10分 | 指標の適切性を定期的にチェック |
新規事業開発においては、どれだけ事前に検証活動を重ねていたとしても、いざ本格的な事業化に向けて実行していくフェーズに入ると、必ず想定外の結果や反応に次々と遭遇することが前提です。KPIレビューは「計画との乖離を詰める場」ではなく、「学習を加速し、次の打ち手を決める場」と位置づけることが重要です。
新規事業KPIの設計を成功させるために|外部パートナーの活用という選択肢
パートナー選定で重視すべき3つの観点
新規事業のKPI設計・運用は、社内リソースだけでは十分な知見や人材が確保しにくい場合があります。コーポレート部門は多くのナレッジを外部調達して新規事業を成功へ導いていることがアビームコンサルティングの調査でも確認されています。
外部パートナーを選定する際に検討すべき観点を整理します。
| 観点 | チェックポイント |
|---|---|
| フェーズ適合性 | 0→1の構想段階から10→100の拡大まで、自社が今いるフェーズに強みを持つか |
| 実行力 | 戦略立案だけでなく、プロダクト開発・マーケティング・営業まで一気通貫で伴走できるか |
| 当事者意識 | アドバイザーではなく共同創業者のような姿勢で、リスクを共有しながら推進できるか |
戦略の方向性を描くアドバイザリー型のパートナーと、実行・具現化まで伴走するパートナーでは、提供価値が大きく異なります。自社のフェーズや課題に応じて、最適な組み合わせを検討することが重要です。
事業共創カンパニーRelicのKPI設計・伴走アプローチ
事業共創カンパニーRelicは、大企業〜スタートアップまで5,000社以上の新規事業開発に携わってきた実績を持つ企業です。代表の北嶋貴朗氏は、新規事業開発のプロセスを「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」として体系化し、著書『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』(4万部突破)で広くその方法論を公開しています。
Relicの特徴は、KPI設計を含む戦略立案にとどまらず、ビジネス(B)×テクノロジー(T)×クリエイティブ(C)が一体となったBTC組織により、プロダクト開発やマーケティング・営業まで一気通貫で事業を共創する点にあります。新規事業開発に特化したSaaS型プラットフォームであるインキュベーションテック事業も展開しており、SaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォーム「Throttle」は大企業を中心に2,000社以上が導入しています。
新規事業のKPI設計や仮説検証の進め方に課題を感じている方は、Relicの知見やフレームワークを参考の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ|新規事業KPI設計のチェックリスト
最後に、本記事の内容を「明日から使えるチェックリスト」として整理します。
新規事業KPI設計チェックリスト:
- ■ KGI・KSF・KPIの違いを理解し、構造化できているか
- ■ 現在のフェーズ(0→1 / 1→10 / 10→100)に適したKPIを選定しているか
- ■ KPIツリーを作成し、KGIとの因果関係を可視化しているか
- ■ 定量指標だけでなく、定性的な検証項目も含めて設計しているか
- ■ 初期フェーズで売上・利益に過度に依存していないか
- ■ ユニットエコノミクス(LTV/CAC)の計測準備ができているか(事業化フェーズ以降)
- ■ 撤退基準をKPIとセットで事前に策定し、経営層と合意しているか
- ■ KPIのレビューサイクル(頻度・参加者・アジェンダ)が設計されているか
- ■ KPI自体を定期的に見直す仕組みが組み込まれているか
- ■ 必要に応じて、外部の知見やパートナーの活用を検討しているか
新規事業のKPI設計は、一度作って終わりではありません。仮説検証を繰り返しながら、事業の成長に合わせて進化させ続けるものです。本記事が、読者の皆様の新規事業開発を前に進めるための一助となれば幸いです。
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新規事業のKPI設計やフェーズ別の推進方法について、より具体的な方法論や事例を知りたい方に向けて、事業共創カンパニーRelicの会社概要資料をご用意しています。5,000社以上の新規事業開発で蓄積された知見を、体系的にまとめた資料です。
この資料で分かること:
- 新規事業開発の全フェーズに対応するRelicの事業共創アプローチと方法論
- 「3つのフェーズ・7つの検証項目・10のプロセス」に基づく体系的な事業開発プロセス
- インキュベーションテック、事業プロデュース、オープンイノベーションの三位一体の提供価値
こんな方におすすめ:
- 新規事業のKPI設計・評価基準の策定に課題を感じている方
- 事業構想から事業化、グロースまで一気通貫で伴走できるパートナーを検討している方
- 自社の新規事業開発プロセスを体系化・高度化したいと考えている方
参考文献
Web:PwC Japanグループ『新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025年』、2025年
Web:アビームコンサルティング『「新規事業取り組み実態調査」から見えた新規事業の成功と失敗を分けるもの』、2023年
Web:ダイヤモンド・オンライン『日本企業の新規事業は93%が失敗、「なぜうまく行かないのか?」に対する現状打破の第一歩とは』、2024年
Web:マッキンゼー・アンド・カンパニー『マッキンゼーが明かす「新規事業開発」のすべて、KPIや人材など「秘伝メソッド」公開』(ビジネス+IT掲載)、2024年
Web:michinaru株式会社『大企業の新規事業 立ち上げ初年度に関する実態調査(2023)』、2023年
Web:グロービス経営大学院『ユニット・エコノミクス』
Web:文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)『全国イノベーション調査』
新規事業の営業戦略|フェーズ別に見る「売り方」の設計と初期顧客獲得の実践手順