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起業に、もっと選択肢を。Relicが提唱する多様性と持続可能な挑戦のかたち

2025/4/21

「不幸な起業」を生まないために

「起業」という言葉が広く知られるようになった一方で、日本における起業のあり方には、いまだに“ひとつの正解”が色濃く残っていると感じています。ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を前提とし、急成長を目指すスタートアップこそが「成功」という固定観念が根強く存在しているのが現状です。しかし、本当にそれだけが正解なのでしょうか。そして、それは起業家にとっての「幸せ」と言えるのでしょうか。

Relic代表・北嶋は創業当初から、起業における「多様性」「再現性」「可逆性」という3つの価値観を大切にしてきました。その中でも、「起業にはさまざまなスタイルがあるべきだ」という信念は、私たちの支援の根幹をなしています。

本記事では、Relicが定義する経営スタイルの分類を紹介しながら、多様な起業のあり方を認める社会の必要性、そして私たち自身がどのようなスタイルを選び、貫いているのかを北嶋の経験や視点を交えながらご紹介します。

「自分らしい起業」を支援するために

北嶋は創業以来、「起業の多様性」を重視し続けています。
その背景には、彼自身が経験した起業支援の限界や課題意識があります。かつて日本における起業支援の多くは、VCによる資金提供とハイリスク・ハイリターンのスタートアップを前提としたものでした。もちろん、そうした支援は大きな成功を生む可能性がありますが、必ずしもすべての起業家に適しているわけではありません。

「大きな資本を調達し、急成長を目指すスタートアップが成功することは素晴らしいことです。しかし、すべての起業家がそのスタイルを目指すべきだとは思いません。本来、起業にはさまざまなスタイルがあって然るべきです。自分や事業に合わないやり方で無理に起業してしまえば、本人も周囲も不幸になってしまいます。」と北嶋は語ります。

北嶋がRelicを立ち上げた理由のひとつは、起業家自身の志や目的に合った「自分らしい起業」をサポートすることでした。事業規模や成長スピードだけに囚われず、それぞれの起業家が自分の理想とする形で成功を目指せるような環境を提供すること。それがRelicの原点です。

経営スタイルには、多様な「型」がある

Relicでは、起業や新規事業のスタイルを以下のように分類しています。それぞれにメリットと制約があり、どれが優れている・劣っているというものではありません。重要なのは、起業家自身の志や状況に応じて、最適な型を選ぶことです。

1.ブートストラップ型
自己資金による運営を基本とし、家業的な事業や地域密着型の商売など、小規模で堅実なビジネスを長期的に安定して続けていくスタイルです。利益率や持続性を重視し、生活や地域と密接に結びついた起業モデルといえます。

このスタイルは「スモールビジネス型」と呼ばれることもありますが、その言葉がもつ無意識のイメージが、「小さくまとまるもの」「成長志向ではないもの」として扱われてきた側面も否めません。結果として、このスタイルを選ぼうとする起業家自身が、自分の選択に誇りを持ちづらくなったり、周囲の理解を得にくくなってしまっている可能性があります。私たちは、そうしたバイアスを取り払い、堅実で自立した挑戦を支える意味を込めて、このスタイルを「ブートストラップ型」と呼んでいます。

2.スタートアップ型
外部資金(主にVC)を活用し、短期間でのスケーラブルな成長やイグジットを目指すハイリスク・ハイリターン型のスタイルです。技術革新や市場創造を軸に、新しい産業を切り拓くモデルでもあります。

3.ソリッドベンチャー型
創業直後から売上と利益を出し黒字化を実現しながら、大きな成長曲線を目指していくスタイル。VCファンドを手掛けるエンジェルラウンド株式会社が提唱した概念です。
参照:エンジェルラウンド株式会社「ソリッドベンチャーとは?Jカーブビジネスのスタートアップとは創業時の売上の考え方が全く違う会社のこと」

4.ムーンショット型
技術革新や社会変革を目的とし、非常に長期的かつ大規模な投資を伴うスタイルです。リターンは不確実ですが、実現すれば大きなインパクトをもたらします。国家プロジェクトやディープテック系スタートアップに多い型です。

5.イントレプレナー型(社内起業)
既存企業の中で新規事業を立ち上げる起業スタイルです。大企業や中堅企業の経営資源を活用しながら、スタートアップ的な挑戦をするモデル。安定した環境の中で実践できる“もう一つの起業のかたち”として注目されています。

ここで紹介した5つの型以外にも、たとえば利益と社会性の両立を目指すゼブラ型、社会課題の解決に特化したソーシャル/インパクト型、事業承継を起点に経営変革を図るネクストプレナー型、地域に根ざした価値創出を担うローカル型など、起業には多様なスタイルが存在します。

加えて、社会や市場の課題はより多様化・局所化しており、「ひとつの成功モデル」では対応しきれなくなってきています。

しかし現実には、「スタートアップ型」しか支援の対象とされない、あるいは他の型の起業が「本気じゃない」と見なされてしまう風潮も根強く残っています。

私たちは、そうした単線的な見方こそが“挑戦する人を減らしている”と考えています。志ある起業家が、自身のペースで、自分に合ったスタイルで挑戦できる社会。Relicが目指しているのは、そんな「多様性を許容する起業環境」の実現です。

Relicが貫く、ソリッドベンチャーというスタイル

Relic自身は、数ある経営スタイルの中でも「ソリッドベンチャー型」を創業当初から貫いてきました。これは、急激なスケーラビリティや短期イグジットを追うスタートアップ型とは異なり、堅実な黒字経営と長期的な価値創造を両立させるスタイルです。

この経営スタイルを選んだ背景には、起業における「成功の再現性」を高めたいという想いがあります。Relicの創業者・北嶋がこれまでに数多くの起業支援の現場に立ち会う中で感じてきたのは、スタートアップ偏重の資本構造が、結果として「起業の多様性」や「持続性」を損なう場面が少なくないという現実でした。

私たちは、外部資本に依存せず、自己資本をベースに持続可能な成長を目指す方針を採っています。これは一貫して「非上場」という経営方針ともつながっています。上場によって資本市場からの資金調達を可能にする一方で、短期的な利益追求や株主価値への最適化が求められることになり、長期視点に基づいた事業開発や社会貢献がしづらくなるリスクがあると考えているからです。

もちろん、上場そのものを否定するものではありません。しかし、Relicが目指すのは「事業共創による社会変革」であり、そのためには、より柔軟で、中長期的な視野での意思決定が可能な経営環境が必要でした。私たちはあくまで「自社が信じる価値に集中するために、非上場という選択をしている」という立場を取っています。

その実践として、Relicは事業単位での投資回収や連携スキームを設計しながら、40社以上への出資・共創を展開してきました。それらはすべて、財務上のリターンだけでなく、社会的インパクトやシナジー創出を目的としたものであり、短期のキャピタルゲインを狙ったものではありません。

Relicはまた、挑戦の“可逆性”を重視し、それを支える独自の仕組み構築しています。詳しくは後述します。

私たちの経営スタイルは、「成長すること」と「続けること」のバランスに重きを置いた、志ある挑戦を持続可能にするための設計です。だからこそ、単に短期の成功事例を積み上げるのではなく、挑戦が“文化として根づく”状態を目指し続けています。
経営スタイルと直結するもう一つの重要な要素が、挑戦を支える仕組みそのものです。

起業の「可逆性」を支える仕組み

Relicでは、「挑戦が一度きりで終わらないこと」を非常に重要視しています。失敗を経ても何度でも立ち上がり、再び挑戦できるような環境設計が、起業や新規事業において不可欠だと考えているからです。

そのために私たちは、挑戦の「可逆性」を支える仕組みを構築しています。具体的には、起業支援の一環として提供する一定の資金(上限1,000万円)を活用し、もし事業がうまくいかなかった場合でも、Relicが運営する事業開発プロジェクトに参画しながら次の挑戦へとつなげていくことが可能です。

単なるセーフティネットではなく、次に活かすための「現場」での学びを提供する仕組みであり、実際にこのモデルを活用して再挑戦を果たした起業家も複数存在しています。初回の失敗を通してより深い市場理解やチーム構成の見直しを行い、再チャレンジで黒字化を実現した事例もあります。

北嶋
「私たちが重視しているのは、失敗を許容することだけでなく、挑戦を経た人材が再び起業や事業開発に戻ってくることです。連続起業家やEXIT経験者、あるいは失敗から再挑戦する「リスタート起業家」が増えることは、エコシステム全体にとっても、よりよい事業を生み出すうえで非常に重要だと考えています。経験を持つ挑戦者が、学びを次に活かしていくサイクルを社会の中に根づかせること。それこそが、Relicが可逆性の設計にこだわる最大の理由です。

一般的に、起業にはリスクがつきものです。特に日本においては、一度失敗すると再挑戦が難しいという社会的な空気や仕組みが根強く存在しています。挑戦を「一回勝負」にせず、何度でも挑めるようにする。その環境こそが、挑戦者を増やし、事業の質を高める土壌になると私たちは信じています。」

北嶋自身も創業初期に、「挑戦を支える仕組みが不足している」という課題を強く感じたといいます。VCからの資金提供を前提としたビジネスモデルは、急成長を求められる一方で、失敗に対する寛容さがほとんどありませんでした。資本を提供する側としても、リターンを早期に求める構造であるため、起業家に対して過度なプレッシャーを与えてしまうことがあります。

このような状況を打破するためにRelicが掲げているのが、「可逆性」という思想です。これは、単に心理的・制度的に“再挑戦ができる”柔軟性を提供するだけでなく、資本政策や株主構成といった、通常は「後戻りできない」とされる領域に対しても可逆性を持ち込むことを目指しています。

たとえば、Relicは株主として、資本構成の見直しやセカンダリー引受けを通じて再挑戦を支えたり、状況に応じて買収や追加出資といった選択肢も提示することで、起業家にとって“やり直し”が可能な土壌を実務面からも支えています。

失敗を「終わり」と捉えるのではなく、あくまでプロセスの一部と見なす。そうした前提を制度としても支えることが、Relicの考える「可逆性」です。

挑戦を一過性のイベントにせず、「何度でもやり直せること」を構造化することで、Relicは起業家にとっての心理的安全性と、持続的な挑戦の両立を可能にしています。

志あるすべての挑戦者へ

Relicは、「事業共創カンパニー」として、これまで4,000社を超える企業と20,000以上の事業を支援してまいりました。私たちの使命は、単なる起業支援にとどまらず、新規事業開発やイノベーション創出を通じて、社会に新たな価値を提供することです。

私たちは、挑戦者一人ひとりの志やビジョンに寄り添い、その実現に向けて全力で伴走します。Relicの提供するインキュベーションテックや事業プロデュース、オープンイノベーションなど、多岐にわたるサービスを通じて、みなさまの挑戦を支えます。

あなたの志に、私たちは本気で向き合います。一緒に、よりよい未来を創造していきましょう。