AWS

事業構想から検証へ、検証から商用化へとBizDevが一体となって伴走し立ち上がったcoordimate

2024/4/24

概要

株式会社NTTドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」とRelicの共創で生まれたファッション相談アプリ「coordimate(コーディメイト)」は、自分のコーディネート写真を投稿するだけで「この服アリ?ナシ?」など、サクッとリアルな声が聞けるファッション相談アプリです。

ドコモで法人営業やM&A・PMIを通じた出資先企業の経営に携わる中で、新規事業へ関心を強く持つようになった株式会社coordimateの飯野氏が、さまざまなアイディアを検討する中で生まれたcoordimateはdocomo STARTUP 第一号案件群として4/1にドコモよりスピンアウトし、着実に事業を前に進めています。

参考プレスリリース:
事業共創カンパニーのRelic、「docomo STARTUP」との共創で展開するファッション相談アプリcoordimateがスピンアウト、100年間変わらない試着体験の変革に挑戦

事業構想から検証の具体化・検証プロトの開発、そして現在まで伴走し続けるRelicとの共創と、スタートアップがAWSを活用するメリットをお伝えします。

<インタビュアー>

株式会社Relic
プロダクトイノベーション事業本部 テクノロジープラットフォームグループ エンジニア 熊田

■お客様の課題

  • 事業検証フェーズで何を検証できると、事業は前に進むのかわからない
  • 担当者はひとりだけ、開発人材不在の中で開発
  • スピード感ある事業推進のためのアセットとノウハウを持っていない

■解決したこと

  • 事業構想から継続的なメンタリング支援により検証フェーズを打破し事業化を実現
  • 要件定義から開発支援を開始し2か月で商用版アプリをリリース
  • BizDevの境目の無い総合的な事業開発支援を継続

ファッション相談アプリ「coordimate」はどのように生まれたのか?

Q.事業アイデアの原点を教えてください。

飯野:
NTTドコモでは全社員を対象にしたアイデア創出コンテストを毎年開催しており、私はそこで自身の趣味であるサッカーにまつわる事業など、さまざまなアイデアを検討していました。

事業アイデアは、私が原体験を持っているか、市場規模が大きいか、データの価値が大きいかという、3つの軸で考えていて、ファッション市場に当たりをつけた後は、トップスタイリストの知見を学習したAIによるファッションのレコメンデーションなどを検証していました。

しかし、当時ドコモ社内でプレゼンをした際、一定の評価は得られた一方で『この事業は、本当に飯野君がやりたいこと?飯野君の良さが活きてないのでは?』とも問いかけられたんです。そこから、もう一度自分が何を解決したいのかを深掘りしたとき、思い出したのが、自分自身が過去に服装で失敗した経験の数々でした。

大学で上京した時に、「ファッションがダサい」と言われた経験から、これを何とか解決したいと立ち上げたのが「coordimate」なんですが、インタビューをしていくと、ファッションに自身を持つ人は過去に異性からフィードバックをもらう経験が多い人が相対的に多いことがわかりました。パートナー以外にも、母親や姉や妹、ショップ店員さんなどですね。逆に自身の無い人は、異性からのフィードバックをもらう経験が少なく、自分ひとりでは自身に似合う服を選ぶことができない課題があることがわかりました。

それなら、フィードバックをもらえる機会を提供できると良いのでは、と考え生まれたのが「coordimate」です。

思想としては、コーディネートを「カッコいい」と思われたいのではなくて、「ダサい」と思われたくない。加点して欲しいのではなく、「減点されたくない」気持ちをフォローするサービスです。

何を検証するのか?何で検証するのか?新規事業を作る過程で直面した課題

Q.事業アイデアが固まった、そこからはスムーズに事業化へと進みましたか?

飯野:
いいえ、「coordimate」にたどり着くまでの別の事業アイデアでもそうでしたが、アイデアが固まったのはいいが、次に何が検証できると次のステップに進むことができるのかが最初はわかりませんでした。手当たり次第にやっていくんですけど、とても非効率でしたね。

以前からメンタリング支援をRelicから受けていて、何が検証できると、次に進めるのかということをずっと議論しながら学んできました。

そこで「coordimate」の時には、そもそも人って相談って誰かに自分の知らない人に服装って相談できるのか?それは運営者が介在しなくても自発的に相談できるものなのか?この仕組みはコンセプトがしっかりしていればユーザーは入ってくるのか?という3点を検証すればよいと見え、検証を行ってきました。

Q.検証過程で課題はありましたか?

飯野:
検証する内容を3つに絞ることはできたので、そこから実際に検証する際に、「どのようなツールを使えば、低価格で検証を実現できるのか?」という点で壁にぶち当たりました。仮に無料ツールを使ったとしても、そのツールはcoordimate用に作られているわけではないので、技術検証した上で、検証項目にマッチする使い方を見極める必要があります。

当時は私ひとりで進めていた事業アイデアでしたので、開発人材もおらず、Relicに支援してもらいました。

クイックに事業検証するためのツールの見極めからプロトタイプの制作をしてもらい、実際に男性ユーザーにファッション相談を体験してもらうことができました。できる限り予算をかけず検証回数を最大化することができ本当によかったです。その後、簡易的なランディングページとサービスのプロトタイプを用いた検証では、想定の2倍のアクセス数とコンバージョン率を達成しました。

商用化決定からサービス提供開始までの紆余曲折

Q.サービス提供開始までの開発模様をお聞かせください。

飯野:
2022年の7月にサービス提供を開始したのですが、商用化が決まったのはその年の2月、開発に着手したのは4月でした。

2月からの2か月間は1ミリも開発項目を決めずに、ミッションビジョンの策定に費やしました。

最終的にビジョンを「coordimateはファッション市場に限らず、さまざまな市場において、安心して失敗できることで、自信を持って決められる人が溢れる世界をつくる。」と定めました。策定までに多くの時間を費やしましたが、開発が始まってから、どのような機能が必要か考える時にも「これって本当に安心して失敗できる仕様になってるのか?」という観点で議論し原点に立ち戻ることができたので良かったと感じています。

開発はRelicに全面的に支援していただき進んだのですが、当初予定していなかった要望をどんどん追加してもらったりと、だいぶ無理を聞いてもらいました。

4月に開発を開始し6月末のサービスリリースで進めていたのですが、5月のGWあたりに「ユーザーを集めたβテストをさせて欲しい」と言いました。ユーザー30人を集めて、ステージング環境で使ってもらい、そこで集まったフィードバックや改善点を一度整理し、残りの1か月半ほどで再度やり直してもらうと…。いま思い返してもすごい無茶振りをしてしまいました。

βテストではオンラインだけでなく、実際にユーザーの方に会議室に来ていただき、使っている模様をずっと撮影したり、私たちの定例会議に参加してもらい意見を聞かせてもらったりと、かなりユーザーインタビューに力を注ぎ、それらを都度サービス開発へと反映してもらいました。

ユーザーが本当に使いやすいものって何なんだみたいなのを突き詰めて考えていき、無事に2022年7月にサービスリリースすることができました。

初期投資で強く意識したのはマーケティングではなく「データ基盤の構築」

飯野:
実はサービス提供開始当時、マーケティングする前に投資したのがデータベースの構築です。実際にマーケティングを開始したら、だんだんとユーザーが増えてファッション相談が増えてくる、その時にどのような行動がみられるのか。そこはインタビューでは図りきることはできないので、きちんと把握するために先にデータベースを作成してもらいました。そこもRelicに依頼したところですね。

お金をかけて外部ツールを使うことも検討しましたが、せっかくNTTドコモには世界有数のデータサイエンティストが在籍しているのだから、自分たちでデータを取ることができればいかようにも活かすことができると考え、Relicに開発してもらいました。

分析サービス群を活用してダッシュボードを作成し視覚化を組んでもらい、何時にどれくらい相談がきているのかや、何曜日が一番相談件数多いのか、ポスト数やコメント数など細かに数値を把握できています。そうしたことで、初期サービスリリース時から詳細なユーザー行動を集計し、改善点を見つけやすくなりました。

また、マーケティングが加速し一気にユーザーが増加した時も適切に分析ができたので、事業立ち上げ当初にしっかりと基盤を作って本当によかったなと感じています。

なぜ共創パートナーにRelicを選んだのか?

Q.アイデア構想段階から具体化、事業立ち上げから現在までとかなり長い間Relicがご一緒していますが、どうしてRelicをパートナーに選ばれたのでしょうか?

飯野:
出会ったのはcoordimateのアイデアが生まれるよりも何年も前で、さまざまな事業アイデアで社内のアイデア創出コンテストへ挑戦していた時で、その時からRelicにはメンタリング支援してもらっていました。

当時はRelicの取締役CROの大丸さんにずっとメンタリング支援をしていただき、coordimatの検証時から執行役員CCOの黒木さんに支援いただきましたね。現在はエンジニアやデザイナーの方々にサービス開発から実証実験の運営など幅広く支援いただいています。

Q.RelicのBizDev両面での支援についてどのように感じましたか?

飯野:
確かにRelicからはBizDev両面で支援いただいているのですが、端的に言うとBizDevの境目が無いなと感じています。

例えば先日、ららぽーと海老名で二回目の実証実験を行ったのですが、そこに向けたエンジニアやデザイナーによる開発はそこまで多くなかったんですね。一方でビジネス側の業務は山積みで、テナント向けの説明会の開催から実際の運営、会場の準備や接客など、やることが盛りだくさんでした。そういった泥臭い現場仕事も、Relicのエンジニアやデザイナーのみなさんと一緒に進めています。

現場での声をすぐに拾い、サービスに活かすにはどのような機能として加えるかを議論し、それらをそのまま技術検証し、開発につながっていくなど、エンジニアやデザイナーの方が現場をそのままサービスに活かしてもらうことができます。

なので、BizDevを連携した支援というよりは、BizDev一体となった支援をRelicから受けています。ユーザーインタビューもエンジニアやデザイナーのみなさんに担ってもらうこともありますし、泥臭くユーザーのニーズや体験を開発していく、一緒のチームとして動いています。

ベンチャー/スタートアップへのサポートも手厚いAWS

Q.coordimateにも導入したAWSを活用する良さはどのような点にありますか?

飯野:
やはりAWSは利用シェアが最も高く信頼感がありますね。使いづらいという点が見当たらないです。また、ベンチャーやスタートアップ企業に向けたサポートも手厚く、さまざまなセミナーやコミュニティがあり安心できます。

熊田:
弊社RelicもAWSの定義するカテゴリとしてはスタートアップに属しており、担当の方たちには色々と相談にのって頂いたりととてもよくして貰っています。

また、ご指摘されたように公式による情報だけでなくAWSはユーザコミュニティが非常に活発的で、新しいサービスのやってみた事例や実際に運用した際の知見などが多く発信されております。そのお陰もあって自身のユースケースに対する解に辿り着くまでの時間を短縮出来るイメージです。

そういった意味でもスタートアップがアプリケーションを開発して事業検証したい場合、AWSならではの初速の出しやすさがあると考えております。

また、「coordimate」では0 -> 1フェーズだけでなく事業が軌道に乗っていく1 -> 10フェーズなどにも対応可能なスケーラビリティを備えたECS on FargateやAurora Serverlesv2を用いたサーバーレスな構成を採用しているので、事業者と開発者がそれぞれのミッションに集中できるようAWSを使って整えています。

インタビューにご協力いただいた企業

株式会社NTTドコモ

「この服アリ?ナシ?」など、サクッとリアルな声が聞けるファッション相談アプリ「coordimate」について

「coordimate」は「この服アリ?ナシ?」のリアルな声がサクッと聞けちゃうファッション相談アプリです。相談者は、自身のファッションを「coordimate」に投稿すると、数分で一般女性達(mate)から「アリナシ」のリアクションやアドバイスといったフィードバックをもらえます。

「coordimate」は、NTTドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」において企画・事業検証を進めている事業で、2022年7月より本格展開を開始しています。2024年4月、docomo STARTUP 第一号案件群としてドコモよりスピンアウトしました。

NTTドコモグループは、新規事業創出の取組を通じて新たな価値を提供し続け、社会を変える事業創出をめざして取り組んでいきます。

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