「実は、ずっと“両輪”で経営してきた」事業共創カンパニーRelicが選んだ、両輪経営(Dual Leadership)という必然ー代表取締役CEO 北嶋 貴朗 × 代表取締役CTO 大庭 亮 対談
2026/1/14

23社が連なり、売上高は100億円を超え成長を続けるRelicグループの中核である株式会社Relicは、2026年1月1日より、代表取締役CEO 北嶋 貴朗と、代表取締役CTO 大庭 亮による両輪経営(Dual Leadership)体制へと移行しました。創業期からCTOを務めてきた大庭が、新たに代表取締役に就任する形です。
一見すると、経営体制の変更を告げるニュースとして受け止められるかもしれません。あるいは、この意思決定を「節目だから変えたもの」と捉える方もいるでしょう。
しかしRelicにとってこれは、これまで10年以上にわたり実態として行ってきた経営のあり方を、あらためて言語化し、構造として明確にしたものでした。
なぜ今、両輪経営なのか。そしてRelicにおける「両輪」とは、何を意味しているのか。創業から現在に至るまでの歩みを振り返りながら、2人の言葉で掘り下げていきます。
10周年だから、ではありません。実態に名前をつけただけ
——今回の体制移行は、創業10周年という節目と重なりました。このタイミングでの決断には、どのような背景があったのでしょうか。
北嶋
よく『10周年だから体制を変えたのですか』と聞かれますが、違います。9周年でも11周年でも、同じ状況であれば、同じ判断をしていたと思います。今回の意思決定は、節目だから何か新しいことをやろうという話ではなく、実態に名前が追いついたという感覚のほうが近いですね。
ここ数年のRelicの経営を振り返ると、多くの経営メンバーが関わる中で、BizとDevそれぞれに最終的な責任を置く形が、実態として機能していました。組織の構造や収益の成り立ち、意思決定の流れにおいても、BizとDevが密に連携しながら、それぞれの専門領域で責任を担う形が以前から成立していました。開発に関する最終的な判断は大庭が行い、ビジネス側は私が責任を持つ。そういう役割分担が、かなり前から機能していたんです。
大庭
そうですね。開発組織の採用や評価、技術投資の判断についても、以前から自分の裁量で検討し、意思決定してきたものが多くありました。
その際に常に意識していたのは、「もし自分が代表として最終責任を負う立場だったら、どう判断するか」という視点です。そういう意味では、今回の体制変更によって、日々の仕事の向き合い方が大きく変わるという感覚はあまりない、というのが正直なところですね。もちろん、「もし自分が代表だったら」と仮定することと、実際にその重責を担うことでは重みが全く異なりますが、私自身、代表を務める覚悟は持っていました。なので、打診があってすぐに「やります」と返答しましたね(笑)
北嶋
実は数年前、大庭に「副社長」を打診したことがありました。すぐに断られてしまいましたが(笑)

大庭
当時は、まだ『代表として背負う』ところまで、組織も事業も揃い切っていなかった感覚がありました。だから一度、その案は見送ったんです。
北嶋
ただ、「副社長」だとどうしても実態とズレる。責任範囲や意思決定の重さを考えると、「副」という肩書きは現実を正しく表していなかったんです。なので今回、実態に合った形にしたほうがいいと考えました。
創業期から、経営は一貫して“両輪”だった
——「両輪経営」という言葉自体は、今回初めて対外的に用いられました。しかし、その考え方は創業当初からRelicの中に存在していたのでしょうか。
北嶋
Relicって、創業当初からずっと“両輪”的な経営をしてきた会社だと思っています。どちらか一方に振り切る、という選択をほとんどしてこなかった。“両方を回す”という発想は、プロジェクトの取り方にも、組織の作り方にも、プロダクトの作り方にも表れています。
BizとDev、支援や共創と、自社の事業やプロダクト、
構想や戦略と、実行や実装、
短期の収益や成果と中長期の投資や仕込み。
これらを「どちらか選ぶ」のではなく、同時に回すことを前提にしてきた。AかBとなったときに、教科書どおりの選択と集中ではなく、AもBも両方取る、もしくはAとBを統合して昇華したCを取る、そんな経営を意識的に続けてきました。経営としてはシンプルではありませんが、その複雑さを超えた「統合」こそが、結果的に競争力になってきたと思っています。
大庭
経営としては、どちらかに振り切った方がシンプルですし、分かりやすいと思います。ただ、私たちは創業時から『それはRelicらしくない』という感覚がありました。最初から、支援や共創で得た知見を自社事業に活かし、自社で培った技術を再び支援や共創に還元する。その循環を作りたかったんです。
外から見ると、あえて難しい経営を選んでいるように見えるかもしれません。でも、僕らにとってはそれが自然だった。事業をつくるには、BizだけでもDevだけでも足りない。だから最初から、両方を内側に持つ前提で設計してきた、という感覚です。
北嶋
組織、事業、経営。全部に“両輪”がある会社なんですよね。だから今回の体制変更も、すごくRelicらしい決断だと思っています。
——Relicの特徴として語られることの多い「BTC組織(Business・Technology・Creative)」。これも経営思想の延長線にあったのでしょうか?

大庭
よく「BTC組織」という言葉を使いますが、創業当時はそんな言葉はありませんでした。ただ、企画から開発、デザイン、実装、運用までを一気通貫でやれる組織がないと、新規事業開発は成立しない、という感覚は、それまでの経験から強く持っていました。これは創業メンバー全員の共通認識です。
開発組織は、ビジネスの“付随機能”として置かれたことは一度もありません。最初から、事業を成立させるための当事者として存在していました。
北嶋
人数比で見ても、ずっとBizとDevはほぼ半々ですし、開発組織が利益を生み、事業の意思決定に深く関与してきた歴史があります。このバランスは、意図的に作ってきたものですね。
「Bizが主、Devが従」という誤解との向き合い
——それでも、外からは「一輪」に見えてしまっていたのはなぜか?
大庭
ただ、社外から見ると、どうしても「Bizが強い会社」に見られてきたな、という違和感はありました。実態としては、開発組織が売上の4割前後を担い、意思決定もフラットに行われている。それなのに、「Bizが引っ張って、Devがついていく会社」という見え方をされてしまう。
北嶋
この“実態と認知のズレ”は、ずっと課題でした。Relicの一番の強みであるBTC組織が、正しく伝わっていない。それは機会損失でもあるし、何より会社を正確に表現できていない状態だと感じていました。このギャップが、今回の意思決定の大きな背景でした。

両輪経営は「守り」ではなく「攻め」の選択
——世の中では、共同CEOや複数トップ体制が「創業者引退」「後継不在」といった文脈で語られることも少なくありません。しかしRelicの場合、その意味合いは大きく異なります。
大庭
僕らの場合は、どちらかが抜けた穴を埋めるためではなく、すでに機能している両輪を、より強く回すための体制です。だから感覚としては、かなり“攻め”の判断だと思っています。
実際、開発領域における意思決定のスピードや投資判断は、年々重要性を増しています。AI、クラウド、ハードウェアなどといった複数の技術領域が交差する中で、技術経営をCEO一人がすべて担うことには、限界も見え始めていました。
北嶋
正直に言うと、技術領域がここまで広がってくると、僕一人で最終判断をするのは難しい。だからこそ、開発の最終意思決定者として大庭が代表取締役になることは、経営としても自然な流れでした。
両輪経営がもたらす変化
——両輪経営で、何がどう変わるのですか?
大庭
日常業務が劇的に変わるかというと、正直そこまでではありません。むしろこれまでやってきたことに、ようやく名前と責任が明確についた、という感覚に近いです。ただ、確実に変わるのは『誰が決めるのか』と『投資判断のスピード』だと思っています。
これまでRelicでは、BizとDevが実態として分担しながら意思決定を行ってきました。一方で、最終的な判断の所在が経営体制上は見えにくい場面もありました。両輪経営への移行によって、領域ごとの最終責任と意思決定権が明確になり、判断のスピードと質を両立できる体制へと進化しています。
北嶋
今回の体制変更は、何かを新しく始めるためというよりも、これまで実態として回っていた経営を、そのままの形で言語化し、構造として示したものです。だからこそ、現場の日常が大きく変わるわけではありません。一方で、意思決定の前提が揃うことで、これまで以上に迷いなくアクセルを踏めるようになる、という感覚はあります。
こうした変化の中で、経営としてこれまで以上に明確に向き合う必要が出てきたテーマがあります。それが、中長期の視点に立った技術領域への投資判断です。
——なぜ「技術投資」が今後のRelicの経営において重要なテーマになるのでしょうか?
北嶋
新規事業を考えたときに、単一の技術だけで完結するケースは、正直かなり減ってきています。複数の技術やケイパビリティを掛け合わせて、はじめて競争力や価値を発揮する事業が増えている。その意味で、いまRelicが向き合うべき挑戦は、“技術の掛け算”を前提にした領域だと考えています。
こうした領域に取り組むには、短期的な収益性だけを基準にすると、どうしても判断できなくなる場面が出てきます。だからこそ、中長期の視点で投資する覚悟を、現場任せにせず、経営として引き受ける必要がある。その判断をきちんと背負うこと自体が、両輪経営の大きな意味だと思っています。

大庭
北嶋が話したように、新規事業を取り巻く前提条件そのものが大きく変わってきている中で、どの技術領域に、どの時間軸で向き合うのかを考えること自体が、いまは経営にとって重要なテーマになっていると感じています。
Relicとしても、技術を単なる手段としてではなく、事業を成立させる前提条件としてどう捉えるかは、これまでもずっと考えてきたテーマです。その中で、結果的にいま向き合っているのが、AI、クラウド、ハードウェアといった技術を前提にした領域だと思っています。
これらはいずれも、それぞれ単体でも大きな可能性を持つ技術ですが、事業として持続的な価値を生み出すためには、複数の技術をどう組み合わせ、どう設計するかが重要になります。その分、短期的な成果指標だけでは判断しづらい難しさもあります。
だからこそ、どこにリソースを投下し、どこまでやり切るのかを、現場の判断に委ねるのではなく、経営として引き受ける必要がある。明確な責任と時間軸を設定し、数年単位でケイパビリティを積み上げていく。その意思決定と実行に、代表取締役CTOとして責任を持つことが、今回の体制変更における自分の役割だと考えています。
そして、その覚悟の先にあるのが、「技術の掛け算」を通じて、どんな事業価値を生み出せるのか、という問いです。
——技術の掛け算がもたらす事業価値とは?
大庭
昨今の科学技術は非常に専門性が高く、進化のスピードも驚くほど速くなっています。ただ、技術が深まれば深まるほど、それがユーザーにとっての心地よい価値に直結するかというと、実はそうではありません。
だからこそRelicでは、価値提供の手段をスマホやブラウザの画面に限定せず、ガジェットやIoTデバイスといったハードウェアまで選択肢に広げてプロダクトを構想していきます。この「技術の掛け算」によって、日常に溶け込む洗練された体験を創出すること。それこそが、他には真似できない独自の事業価値に繋がると信じています。
次の10年へ。両輪で描く未来
——最後に、次の10年を見据えたとき、Relicはどのような挑戦を描いているのでしょうか?
北嶋
これからのRelicは、たぶん今以上に“説明しづらい会社”になっていくと思います。グループ会社は増え続け、事業領域は多様化し、広がり続ける。これまで以上に何屋なのか、何をやっている会社なのかが一言で言い表すことが難しくなる。ただ、その複雑さとその裏にある一貫性のあるストーリーやコンセプトこそが、誰にも真似できない競争力になると思っています。単純化された機能やコモディティ化しやすいプロダクトではなく、いくつもの概念や機能や要素を統合的に、全方位的に回し続けていく。それが、これまでの10年で培ってきたRelicのやり方ですし、これからも変わらないと思っています。
大庭
単一の強みだけで勝ち続けるのは、本当に難しい時代になっています。一方で、事業開発、技術、デザインといった複数のケイパビリティを掛け合わせて価値を出せる会社は、そもそも成立させる条件が厳しい。だからこそ、成立したときには簡単に真似されない強さを持てると思っています。
両輪経営は、その前提条件を整えるための体制です。2人で並んでいること自体が目的ではなく、複雑な挑戦を続けるために、そういう構造を選んだ、ということですね。
北嶋
どちらかを選ばず、両方を回し続ける。その難しさから逃げないことが、Relicらしさなんだと思っています。これからも、その姿勢は変わりません。
両輪経営(Dual Leadership)はゴールではありません。それは、Relicが次の複雑さへ進むための前提条件であり、10年間積み上げてきたBTC組織の価値を、AI時代においても理想的な形に進化させ、経営の言葉として社会に提示するための選択でもあります。
どちらかを選ばず、両方を回し続ける。その難しさを引き受けることで、他にはない競争力をつくってきたRelicは、これからも両輪で走り続けます。BizとDevを並走させ、複数の技術とケイパビリティを掛け算しながら、事業を共に創る力を経営の中枢で回し続けていくために。

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Relicは、BizとDev、支援や共創と、自社の事業やプロダクト、短期の収益や成果と中長期の投資や仕込み。
どちらかではなく、両方を回し続ける会社です。
複雑さを引き受けながら、事業を共に創る。
そんな挑戦に面白さを感じる方と、次の10年をつくっていきたいと考えています。
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