Case #10
AI×クラウド×ハードを“クロス”して、難題を総力戦で解く「x-AI事業部」とは
2026年1月、Relicに新設された「x-AI事業部(クロスAI)」は、クラウド・AI・ハードウェアという親和性の高い領域を一つに束ね、さらにBiz×Devの混成チームとして、上流から実装までを一気通貫で支援するために立ち上がりました。
そして今回話を聞いた臺は、同事業部を率いるだけでなく、自身が創業し代表取締役CEOを務めるPro3Labの取り組みも推進しています。Pro3Labは、Relicのスタートアップスタジオ「ZERO1000 Ventures」を活用して生まれたグループ会社であり、クライアントワークで培った知見を土台に、自社プロダクト開発にも挑戦してきました。
本記事では、x-AI事業部設立の背景や現在地、強みと課題、そして今後の展望に加え、後半ではPro3Labで進めるプロダクト開発についても掘り下げ、Relicが目指す「領域横断×事業化」の実像に迫ります。
登場人物プロフィール
臺 健太郎 | 事業部長
同志社大学経済学部卒業。国家公務員として省庁で勤務した後、東京都庁、福島県庁など複数の地方自治体においても政策立案・施策推進に従事。国・自治体双方の行政現場で制度設計と実務を経験する。その後、株式会社Relicに入社し、スタートアップ領域へ転身。グローバル展開するクラウドファンディング・ECプラットフォームの開発においてリードエンジニアを務めるほか、iOS/Androidアプリのバックエンド・インフラ開発の責任者として複数プロジェクトを牽引。SRE(Site Reliability Engineering)を主戦場とし、可用性・拡張性・運用性を重視した新規事業開発を強みとする。現在、クラウド・AI・ハードウェア技術を活用したソリューション提供を担うx-AI事業部の事業部長に就任。2023年12月株式会社Pro3Labを設立し、代表取締役CEOに就任。RubyWorld Conference 2022 に登壇者として選出され、技術コミュニティにおいても知見を発信。AWS Certified DevOps Engineer – Professional をはじめとする複数のAWS公式認定資格を保有。
「x-AI」とは?
——まず、x-AI事業部はどんな部署なのか、概要から教えてください。
臺:ひと言でいうと、AI・クラウド・ハードウェアを掛け合わせて、課題解決を“総力戦”でやり切る部署です。
もともと社内には、AWSを中心にしたクラウドのソリューションアーキテクト系チーム、AI領域を扱う部署、そしてハード×クラウド(IoT)構想がそれぞれ別の文脈で動いていました。
ただ実際の案件は、クラウドだけ、AIだけで完結しないことが多いです。そこで「一体的に動ける組織にしたほうが速いし強いよね」という発想から、統合して事業部化したのがxAI事業部です。
——「クロス」という名前には、どういう意味がありますか?
臺:二つあります。
一つは領域のクロスで、AI×クラウド×ハードウェアです。
もう一つは職種のクロスで、いわゆるBiz×Devです。今まで「開発だけ」「ビズだけ」みたいに分かれていたところを、同じ事業部の中で混ぜて、上流から開発まで一体的に提供できる形を目指しています。
統合で何が変わったのか——「分断」をなくし、提案スピードを上げる
統合前:親和性が高いのに、組織が分かれていた
——統合したことで、現場では何が一番変わりましたか?
臺:一番分かりやすいのは、リソースを融通しやすくなったことです。
以前は、AI案件が来たときにクラウドの知見が必要になったら別組織に相談して…という動きでしたが、同じ事業部なら最初から一緒に提案設計できます。情報の断裂も起きにくいです。
結果として「提案〜推進」のスピードが上がりやすい構造になりました。
もう少し現場感で言うと、統合前は「AI」「クラウド」「ハード」というテーマ自体は親和性が高いのに、組織が分かれていることで“相談のタイミング”と“情報の粒度”がズレることがありました。例えば、AI側が先にお客様の要望を整理して提案を進めたあとに「実はクラウドの設計が肝だった」と気づいてクラウド側に声をかける、あるいはクラウド側が「この構成ならいける」と設計を進めたあとに「データの作り方や運用が重要でAIの観点が必要だ」となる。
そうすると、どうしても提案が“つぎはぎ”になったり、後から前提がひっくり返って手戻りが起きたりします。これは誰が悪いというより、分断された状態だと起きやすい構造的な問題だと思っています。
統合後:最初から“総力戦の布陣”を敷けるようになった
——統合後は、具体的にどんな動きに変わりましたか?
臺:統合したことで変わったのは、提案の最初の段階から「この案件は、AIだけで語ると危ない」「クラウドの制約条件を初期に織り込んだほうがいい」「ハードやIoTが絡むなら、現実的な運用やネットワーク前提を先に置こう」といったことを、同じテーブルで同じ速度で揃えられるようになった点です。
要するに、提案が始まるタイミングで、最初から“総力戦の布陣”を敷けるようになりました。
——お客様への提案内容も変わった、ということですか?
臺:変わったと思います。統合前は、どうしても「まずは自分たちの守備範囲で提案を組んで、必要になったら他のチームに協力を仰ぐ」という順序になりがちでした。
でも今は、最初から「どういう価値の出し方が最短か」を基準に、クラウド・AI・ハードの観点を重ねて設計できます。例えば、AIの話に見えても、お客様の中ではセキュリティや既存環境の制約がボトルネックになっていることが多いので、クラウドの前提条件を先に置いたほうが話が早いこともあります。逆に、クラウドの更改に見えても、最終的にやりたいのはデータ活用や業務の自動化だった、というケースもあります。
そういうときに、後から人を呼ぶより、最初から横断視点で“論点の順番”を設計できるのは大きいです。
もう一つ、社内的にも良い変化があって、案件が進む途中で「あれ、これって誰に聞けばいいんだっけ?」となりにくいです。統合前は、問い合わせ先が分かれていることで「たらい回し」っぽく見えてしまう瞬間がありました。今は、少なくとも事業部としては一つの窓口で受けて、必要な人をこちらでアサインする形に寄せられます。
お客様から見ても、こちら側の動きがスムーズに見えるはずで、これは信頼にも効いてくると思います。

スピードの正体:早さよりも「手戻りを減らす」価値
——「スピードが上がる」以外にも、メリットはありますか?
臺:スピードの話に集約されがちなんですが、実はスピードって「早く動ける」だけじゃなくて、無駄な遠回りを減らせるという意味が大きいです。
統合前に起きていた“手戻り”や“認識の差”が減ると、結果として提案の品質も上がりやすいですし、プロジェクトが始まった後の推進もブレにくくなります。特にAIの案件は、やってみないと分からない部分が多いので、前提条件を早めに揃えておかないと、後半で一気に難易度が上がってしまいます。
だからこそ、最初から横断で組めることが、単なる効率化ではなく、成功確率を上げるための設計になっていると思っています。
体制は11名。いま伸ばしたいのは「実装の手数」
——現在の体制はどうなっていますか?
臺:いまは11名です。
クラウド(ソリューションアーキテクト)とAI(AX文脈)のグループはそれぞれ存在していて、ハードウェアはまず既存グループ配下で動かしながら、うまく回り始めたら独立させるイメージです。
——いま課題になっていることはありますか?
臺:正直に言うと、案件は入ってきている一方で、“ゴリゴリ開発して実装する手数”が不足しています。
上流・設計が得意なメンバーが多い分、開発フェーズで厚く入れる体制は強化中で、他の開発部門に協力をお願いするケースも出ています。
だからこそ、採用にはアクセルを踏んでいる状況です。
——お客様からの依頼はどういう経路で入ってきているのですか?
臺:大きいのはAWSパートナーとしての窓口です。そこから相談・商談が継続的に来ています。
加えて、社内でも「困ったら相談される」状態になりやすいです。対応範囲が広い分、横串の依頼が増えるのは自然だと思います。
目指すもの
——いまの目標を教えてください。
臺:短期(半年〜1年)でいうと、Biz×Dev連携のパターンを確立することです。
AI×クラウド×ハードの組み合わせ自体は、やろうと思えば作れます。ただ、BizとDevがどう役割分担して価値を最大化するかは、実は一番難しいです。
いま、まさに両方で入っている案件があるので、初動で要件とスコープをすり合わせたうえで、BizとDevが一体で進め方を設計し、型として磨き込んでいる最中です。ここで“型”ができると、提供価値も売上も伸びていくはずだと思っています。
長期的には、ハードウェア領域を一つのソリューションとして形にしたいと考えています。
売上が立ち、人も採用でき、そのソリューションが経営にとって大きな要となる——そんな状態まで持っていきたいです。ハードはソフトウェア中心の世界から見ると強烈で、だからこそ事業として磨く価値があると思っています。

もう一つの挑戦:Pro3Labのピボットと自社SaaS「Qaless(クアレス)」
——ここで少し話題を変えて、臺さんが代表を務めるPro3Labの取り組みも教えてください。
臺:Pro3Labは、以前はレベニューシェア型で開発を提供するモデルを試していました。ただ、何件かプロジェクトに取り組んだ結果、事業化・スケールには至りませんでした。構造的に、最初にこちらがリスクを負いすぎる形になってしまって、うまくいかないと納得感も得づらいと判断しました。
それなら「自分で作って、自分で売る」ほうがいいと考えて、自社SaaS開発にピボットしました。
——開発中のプロダクトが「Qaless(クアレス)」ですね。どんなサービスですか?
臺:「Qaless」は、社内のQA問い合わせや情報検索を減らすためのツールです。使い方は大きく2つあります。
1つ目は、従業員の方がまず、社内ナレッジを学習したAIに質問して自動回答を得て、それでも解決できない場合は担当者にシームレスに課題起票ができます。やり取りした内容は新たに自動でAIが学習して社内FAQが自動生成されていき、使えば使うほどAIにナレッジが溜まって精度が上がっていく点が特徴です。社内問い合わせをチケット化して、担当部門がさばける形にもできるので、社内問い合わせ業務の効率化がQaless内で全て完結できる点が大きな利点です。
2つ目は、ドライブなどに眠っている提案資料やナレッジを、質問ベースで掘り起こして要約まで返す使い方です。「過去に似た提案はない?」という問いに答えられるようにすることで、日々の提案資料の作成業務を効率化し、社内の重要な知見を漏れなく活用して受注率のアップに繋げます。
Qalessの独自性としては、これらの対応を全て、Slack/MicrosoftTeamsチャットで完結できる点でして、普段の通常業務に馴染む形で従業員に浸透しやすいのが利点です。
——導入の予定はありますか?
臺:まずはRelicグループ内の企業で2026年5月以降に全社トライアルを予定しています。完成度を上げて、外部への告知も進めていく計画です。
こうした挑戦を進められているのは、Relicグループのアセットを最大限に活用できる環境があるからだと思っています。ZERO1000 Venturesを活用して立ち上がったからこそ、事業開発や開発、ナレッジ、ネットワークまで含めてグループ横断で力を借りられる。プロダクトを「作る」だけでなく「届ける」までやり切るうえで、この環境は本当に心強いです。
おわりに
——最後に、採用に興味を持ってくださった方へメッセージをお願いします。
臺:Relicの開発組織には、事業家・起業家マインドを持ったメンバーがたくさんいます。クライアントワークの最前線で難題に向き合うだけでなく、プロダクトづくりや事業づくりにも手を伸ばす人が多いので、その中で切磋琢磨しながら成長できる環境だと思います。少しでも関心があれば、ぜひRelic採用サイトをご覧ください。
※ボタン設置※
xAI事業部は、AI×クラウド×ハードを束ね、さらにBiz×Dev混成で上流から実装までをつなぐことで、複雑な課題を“総力戦”でやり切るための組織です。立ち上げ期ならではの課題とも向き合いながら、統合によるスピードと再現性を武器に、領域横断の支援を磨き込んでいます。
xAI事業部のこれからの進化と、Pro3Labの挑戦が交差していく先に、Relicが目指す「領域横断×事業化」の次の景色が見えてきそうです。
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