AWS

複雑な業務の可視化から共創開発へ──Too社とRelicが挑んだ攻めのDXとAWS活用

2025/4/24

企業のIT・クリエイティブ環境を支える株式会社Too(以下、Too社)では、法人向けMacのLCMサービス「UTORITO」を展開しています。slackやExcelなどを使用した従来のコミュニケーションから、Web上で全てのやり取りが完結するSaaSプロダクト「LCMポータル」を開発するため、Relicとともに複雑な業務オペレーションのDX化に取り組んでいます。Relicとの共創、そして既存業務のDX化においてAWSを活用する良さを、株式会社Too 野村様、寺坂様を迎えお話を伺います。

<インタビュイー>
株式会社Too 野村 光寛 様(以下、野村さん)
株式会社Too 寺坂 絢 様(以下、寺坂さん)

<インタビュアー>
Relic プロダクトイノベーション事業本部 プロダクトディスカバリー事業部 志和 敏之

■お客様の課題

  • 提供しているUTORITOのオペレーションコストが大きい
  • 担当者に開発経験がなく、開発側のPdMが必要
  • 実現したい開発内容に対してエンジニア部隊が不在

■解決したこと

  • 複雑な既存業務フローのマニュアルを作成し、要件要求を整理
  • ユーザー・事業の両面の視点を持つ開発支援でスムーズに推進
  • Relicの伴走型支援でLCMポータルの開発・導入を実現し、事業成長を加速

Q. Too社の事業概要を教えてください。

野村:

弊社は、デザイン・クリエイティブ製品全般を取り扱う総合商社です。その中で提供する「UTORITO」は、ベンチャー・スタートアップ企業向けのソリューションで、情報システム部門やIT管理部門のMac運用業務をアウトソーシングし、コア業務に集中できる体制を整えます。

具体的には、調達から導入・運用・返却まで、Macの運用負荷を軽減し、担当者がコア業務に専念できる仕組みを構築しています。

Q.DXを進めるに至った理由を教えてください

野村:

弊社が提供する「UTORITO」は、お客様のデバイス管理をトータル支援することを目的としていますが、運用面では課題が多くありました。まず、slackやメール、Excelなど複数のコミュニケーションツールを使い分けていたことで、情報が分散し、連携ミスやタイムラグが生じていた点です。これにより、業務の効率が上がらず、結果としてお客様のオペレーションコストの削減が難しく、解約につながる可能性がありました。

また、アナログな作業が多く残っていたため、人的ミスが発生しやすく、業務が煩雑化していました。さらに、顧客数が増えるにつれて、現行のToo側のオペレーション体制では限界が見え始め、将来的な拡大を阻む要因になりかねないという危機感を抱いていました。

こうした背景のもと、私たちは業務を一元管理し、標準化・効率化を図る必要があると考え、「UTORITO」に導入する「LCMポータル」というSaaSプロダクトの構築を通じて、DXに本格的に取り組むことを決意しました。

Q.なぜRelicをパートナーに選んだのでしょうか?

野村:

「LCMポータル」の開発にあたり、複数のパートナー候補に声をかけていました。その中で、Relicさんを選んだ理由は大きく2つあります。

ひとつは、Relicさんが新規事業支援の実績を豊富に持つ会社であり、システム開発だけでなくビジネス全体を見据えた提案ができる点に魅力を感じたこと。もうひとつは、Relicさんがすでに「UTORITO」のユーザーであり、ユーザー目線で開発に携わってもらえると確信できたことです。

とくに、実際に「UTORITO」を使っていたエンジニアの佐々木さんが、要件定義の段階から参画してくれたことが非常に心強かったです。

Q.開発をご一緒する中で感じた「Relicの特徴」を教えてください。

野村:

プロジェクトは、Relicの佐々木さんとデザインメンバー1名によるヒアリングから始まりました。社内では運用全体を俯瞰できるメンバーが限られていたため、まずはマニュアルを作成してもらい、業務の流れを「As is / To be」ベースで整理するところからスタートしました。

マニュアルによって具体的な運用イメージが可視化され、チーム全体の共通認識が生まれたことで、実現可能な要件定義へと進むことができました。

寺坂:

その後、開発チームが本格的にジョインし、プロダクト開発が加速していきました。我々にとってプロダクト開発を進めるのが初めてだったものの、Relicさんが丁寧に伴走し、単に「言われたものを作る」のではなく、目的や意図をくみ取りながら進める姿勢に安心感を持てました。

開発されたLCMポータルは、まだ正式リリース前ではあるものの、操作性の面でも一定の手応えを感じており、社内外からも好意的な反応が寄せられています。

Q.DXに取り組むにあたって、印象的だったことを教えてください。

寺坂:

現状のオペレーションの棚卸しがとにかく大変でした。各部署にオペレーションのヒアリングを実施しましたが、他の部署のオペレーションの解像度が低かったため、一度のヒアリングでは全体像を把握できず、何度も聞き取りを重ねる必要がありました。そのため、全体のオペレーションを明らかにするのに苦労しましたね。

また、すでにUTORITOを導入いただいているお客様が数社いらっしゃったのですが、それぞれのオペレーションに違いがあり、共通フォーマットにする作業も難しさがありました。

志和:

関係部署へのヒアリングやオペレーションの差異に関する情報をもとに、何度も議論を重ね共通のフォーマットやオペレーションを一緒に模索したことは私も印象に残っています。

また、個人的にもPjMとして数多くの新規事業のサービス開発を手がけてきましたが、新規事業開発支援のノウハウを攻めのDXの実務でも活かせたことは印象深かったですね。

Relicでは、「デジタライゼーション」も“攻めのDX”と捉えています。その上で、新規事業開発と攻めのDXは、ともに新たな価値を創出し、企業の成長を推進するという点で共通していると考えています。

今回は、「デジタライゼーション」に分類されると思いますが、開発と並行してヒアリングを進めていく中で、新たな事実が明らかになったり、抽象度の高かったシステムのフローが徐々に形になってくることで、「こうしたい」という具体的なご要望をいただいたりして、柔軟に開発内容を変更していきました。このような、柔軟性を保った開発は、新規事業のサービス開発においてよく見られるものであり、Relicが培ってきた新規事業開発支援のノウハウをうまく活かすことができたと感じています。

Q.開発に際しAWSを導入されています。AWSを活用する良さはどのようなところにありますか?

志和:

AWSの豊富なサービス群を活用することで、「LCMポータル」の開発を迅速かつ柔軟に進めることができました。Relicでは、標準となるインフラアセットをAWS CDK(AWS Cloud Development Kit)を用いてコードで定義、管理しているため、設計や実装に着手するまでの準備期間を短縮できた点は非常に助かりました。また、開発の途中で要件が変更された場合でも、即座に対応できたのは大きなメリットでした。

さらに、AWSが提供する多彩な機能を活用することで、Too社内の既存システムとの接続も柔軟に設計ができ、データ連携もスムーズに進みました。アーキテクチャの柔軟性が高いため、今後プロダクトをアップデートしていくうえでも大きな可能性を感じています。

Q.「UTORITO」の今後の展望は?

野村:

LCMポータルのリリースを目前に控えた現在、実際にご利用いただいた契約者の方からは「便利になりそう」といった前向きな声をいただいています。一方で、まだ改善できるポイントも多く、今後さらに利便性を高めていきたいと私たちは考えています。

今後のサービス拡大に向けては、「作業コスト削減」に加えて「オペレーションコストの削減」もお客様に伝えていける可能性があると感じており、営業面での訴求ポイントとして活用していきたいと考えています。また、「UTORITO」をより多くのお客様に知っていただくために、Webでの情報発信や販促活動にも積極的に取り組んでいく方針です。

現在は、Relicさんの開発担当(志和さん)とマーケティング担当(足達さん)がそれぞれの分野で支援してくださっており、私たちとしても「目的やゴールをしっかり共有したうえで、それぞれの専門性を活かしてご支援いただけていることがとても心強い」と感じています。プロダクトの開発と発信を一体で進められるこの体制は、今後の事業拡大にも大きく寄与していくと期待しています。

インタビューにご協力いただいた企業

※記載の内容は2025年3月現在のものです。

株式会社Too

サイト:https://www.too.com/
UTORITOサービスサイト:https://utorito.too.com/