2023.11.18

最速・最短で事業化する方法。「事業成立条件」という考え方

最速・最短で事業化する方法。「事業成立条件」という考え方

新規事業は既存事業と比較して不確実性が高く、唯一絶対の答えは存在しません。そんな中、リスクを抑制しながら事業を立ち上げるため、検討・検証・精緻化を繰り返す必要があります。
ただし、やみくもに検討・検証・精緻化しようとすると、多大な工数が必要になり、いつまで経っても事業としてリリースすることができません。
そこで今回は、検討・検証・精緻化のポイントを特定し、必要最低限の道のりで事業化するための考え方「事業成立条件」をご紹介します。

なぜ事業化を目指す上で事業成立条件という考え方が必要なのか

新規事業開発にはリーンスタートアップ/リーンキャンバスやジョブ理論、デザイン思考など、様々な考え方やフレームワークがあります。
もちろん、これらの考え方やフレームワークは事業の検討・検証に有効ですが、事業化の意思決定をする経営層にとっては「結局この事業は収益を生み出せるのか」「本当に実現できるのか」「取り組む意義があるのか」、すなわち「事業が成立するための条件が揃っているのか」といった問いに十分な回答がなされているかどうかが重要です。

その点を踏まえると、「事業が成立するための条件が揃っているのか」という問いに対してダイレクトに回答していく進め方の方が、検討・検証をスピードアップさせられるケースが多くあります。
これを弊社Relicのメソッドとしてまとめたものが「事業成立条件」という考え方です。

事業成立条件とは何か

それでは、事業成立条件について詳しく紹介していきます。企業や事業内容によって多少変化はありますが、経営層の意思決定の際に問われるのは、3つの観点です。

A. 事業性:この事業は収益を上げられるのか
B. 実現性:この事業は現実的に構築できるのか
C. 取り組む意義:この事業は取り組む意義があるのか

仮にA. 事業性があり、B. 実現性があったとしても、C. 取り組む意義がなければ事業化の意思決定は引き出せないでしょう。他の組み合わせも同様で、いかにB. 実現性が高く、C. 取り組む意義が高かったとしても、A. 事業性がなければ、(CSRの一環として取り組む可能性はあるかもしれませんが) 事業化の意思決定を引き出すのは難しいと言えます。

これを言い換えると、提案者が事業アイデアを付議し、意思決定を引き出す際には、・事業性があると言える前提条件が揃っている
・実現性があると言える前提条件が揃っている
・取り組む意義があると言える前提条件が揃っている
という状態を目指すべき、ということになります。

さらにA. 事業性、B. 実現性、C. 取り組む意義はより具体的な観点に細分化することが可能です。

A. 事業性
 ・ある課題(不満・不安・不便など)を抱えた顧客は事業が成立する規模で存在するのか
 ・解決策は、その課題を解決するのに適切か
 ・その顧客は解決策に対して、事業が成立するのに十分なお金を払うのか
 ・一過性のものではなく、今後も継続的に発生する課題なのか
 ・競合/代替品に対して優位に事業を進められるのか など

B. 実現性
 ・法規制/慣習的に実現可能なのか
 ・技術的に実現可能なのか
 ・経済的に実現可能なのか など

C. 取り組む意義
 ・社会的に取り組む意義はあるのか
 ・自社にとって取り組む意義はあるのか など

事業成立条件を、いつ、どのように活用するか

事業成立条件は、事業アイデアが生まれた瞬間から事業化に至るまで、活動期間中ずっと活用できる考え方です。
常に事業成立条件の仮説を立て、検証し、検証結果を用いて事業成立条件の確からしさを上げていくことが重要です。
活動の流れに沿って活用方法を確認していきましょう。

① 事業アイデア検討時

事業アイデアを考え、検討・検証を行うことを決めたら、早速事業成立条件の仮説を考えてみましょう。ここでは「働くパパママの買い物/食事作りを、短納期の食材配達で楽にする」という事業アイデアを例に話を進めます。

A. 事業性
 ・買い物/食事作りに負担を感じる働くパパママは、事業が成立する規模で存在する
 ・買い物/食事作りに負担を感じる働くパパママは、負担を減らすためには多少お金がプラスアルファでかかってもいいと考えている
 ・共働きは今後もますます増えるので、買い物/食事作りに負担を感じる働くパパママはさらに増える
 ・同様の課題解決をクックパッドマートが行っているが、XXXの点でこの事業アイデアの方が優位 など

B. 実現性
 ・食事作りに負担を感じる働くパパママの課題解決は、法規制/慣習上、問題ない
 ・注文を素早く処理し、家もしくは家の近くまで素早く配達するためのオペレーションの構築が可能
 ・そのオペレーションを運用するだけのプラスアルファの値付けができる、もしくはコスト低減ができる など

C. 取り組む意義
 ・女性のさらなる社会活躍は、ダイバーシティの向上による社会の活性化に繋がるので、それを後押しするこの事業アイデアは取り組む意義がある
 ・自社の従業員満足にも繋がるため、自社にとっても取り組む意義がある など

上記はいずれも、特に調査をせずとも洗い出すことができます。また、この仮説をスピーディに洗い出すことで、直近何をどのように検証すべきか明確にすることができます。
例えば、「買い物/食事作りに負担を感じる働くパパママは、事業が成立する規模で存在する(という仮説)」に対しては、共働きの家庭がどの程度存在するのか、共働きの家庭が負担に感じていることは何なのか、デスクリサーチをすることに繋がります。

このように、事業アイデアを考えた瞬間に事業成立条件を洗い出すことで、今後のアクションを明確にすることができます。

② 顧客/課題/解決策検証時

次に顧客/課題/解決策検証の際は、検証結果を踏まえて事業成立条件を見直し、精緻化していくことが重要です。検証を通じて事業成立条件を常にアップデートしていくことで、事業化を見据えた最短距離での活動が可能になります。

例えば、技術的実現性に関する「注文を素早く処理し、家もしくは家の近くまで素早く配達するためのオペレーションの構築が可能」という仮説が棄却された場合を考えてみましょう。「家の近く」を家からコンビニまでの範囲だと仮定すると、かなりの数の配送先を確保することが必要になります。この配送先確保が難しい場合、解決策の再考が必要になります。解決策を再考した結果、事業性は改めて検討・検証が必要になります。さらに、取り組む意義が変わらず存在するのかどうか考えるきっかけも生まれます。
このように最終的に事業化するときに必要な判断材料を指し示し続けてくれるのが事業成立条件なのです。

③ 事業化付議時

さらに事業化の付議に際しては、この事業成立条件を意思決定者に端的に伝えることで、意思決定を引き出しやすくなります。
「X人にアンケートを取って、X%の人が使うと回答しました」という情報は重要ではありますが、その結果、事業性・実現性・取り組む意義があるのかどうかの方がより重要な情報です。
このように付議内容を検討し、伝達する際にも使えるフレームワークです。

④ 事業化時

付議の結果、事業化の承認が得られ、事業化に進んでからも事業成立条件を活用することができます。新規事業は不確実性が高いため、どこまで検証をしても、見立てが外れてうまく行かないケースがあります。

そのようなとき、「どの事業成立条件が見立てと違っていたのか」「事業成立条件の内容や基準を見直すことで事業を成立させることはできるのか」を考えるときのベースとして、当初考えていた事業成立条件が有効です。
事業成立条件が言語化されていないと、どこが見立てと違っていたのか、どの程度違っていたのか振り返りができない状況に陥ります。仮に事業を撤退するとなった場合も、事業成立条件を言語化しておけば、次の事業開発に繋がる「意味のある失敗」にできる可能性が高まります。

おわりに

これまで多くの「何でもかんでも検討・検証しようとして活動が複雑化するケース」、「手法論・フレームワークを使うことが目的化して本質的な検討・検証が不十分なケース」、場合によっては「検討・検証途中で活動停止に追い込まれるケース」を見てきました。
検討・検証・精緻化の短縮や、最短距離での事業化を目指す方々に「事業成立条件」という考え方を使っていただければこの上ない喜びです。

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