新規事業開発における企業向けヒアリングの方法
Contents
背景
新規事業開発において、”顧客と課題”は非常に重要です。”顧客と課題”の検討内容や確からしさといった質次第で、新規事業の成功確度が変わると言っても過言ではないでしょう。質の高い”顧客と課題”を見つけたり、”顧客と課題”を検証したりするためには、二次情報(webや書籍から得ることのできる情報)に触れるだけでは不十分。二次情報で得られる”顧客と課題”は、世に広く認知されているものがほとんどです。また、自分が”想定している顧客の課題”と全く同じ課題の情報を得ることは基本的に難しいためです。
質の高い”顧客と課題”を見つけるためには、想定顧客へのヒアリングが必要になります。想定顧客が”企業”の場合、知り合い経由でヒアリング先を紹介してもらう方法では限界がある場合が多く、企業のホームページからの問合せやテレアポ等の方法で、企業へヒアリングを依頼する必要があります。この場合、企業は、”自分達にとって有益な情報を与えてくれるのか?”と考えてヒアリングに臨むため、様々な点を考慮する必要があります。本記事では、企業とのアポイントメントを獲得した後に、どのようにヒアリングすべきかをまとめています。
前提条件/活用シーン
既にヒアリング対象の顧客がリストアップされており、アポイントメントも取れている状態を想定しています。
その上で、想定顧客である”企業”に対して、課題の発生する背景や課題の具体的な内容を把握するために、どのようにヒアリングを進めれば良いかをまとめています。
企業は何を考えヒアリングに臨んでいるか?
ヒアリング先が知り合いであれば、これまでの関係性によって、こちらから一方的にヒアリングするだけでも問題無く終えることができるでしょう。しかし、今まで関係性のない企業に対してヒアリングする場合、彼らは「自社にとって有益な情報を得たい」と考えていることを意識する必要があります。単なるヒアリングに終始してしまうと、彼らは「情報を抜かれただけだ」と考えて、反感を買いかねないので注意する必要があります。場合によっては、途中でヒアリングが中止になるかもしれません。
そのような事態にならないように、粗くても良いので、”顧客の抱える課題”に対する”解決策”を準備しておくことが推奨されます。そうすれば企業は、「自分達の抱えている課題に対して、こんな解決策が考えられているのか。社内で共有しよう。」と考え、有益な情報を得ることができた場と考えてくれるでしょう。
どのような準備をしてヒアリングに臨むか?
①ヒアリング項目シートの作成
何も準備せずにヒアリングに臨むと、聞き漏れが発生することはもちろん、そもそものヒアリングの目的を達成できない可能性があります。ヒアリングをスムーズに進め、目的を達成するための事前準備として、あらかじめヒアリング項目をまとめておくことが望ましいです。作成手順は以下の通りです。
- ヒアリング結果を集めて示唆を出した後のゴールイメージを明確にする
- ゴールイメージから逆算して必要なヒアリング項目をざっと洗い出す(必要十分な項目を意識する)
- 5W1Hの観点で、”課題が発生してる前提条件”と”課題の具体的な内容”を確認し、抜け漏れがないかチェックする
- ”現在検討中の解決策は課題を解決しているか”、”解決策についてどれくらいの金額を支払えるか”を確認する設問を設ける
- 質問の想定時間と優先度(高/中/低)を記載する
- 優先度「高」の項目のみで、バッファ(約10分)込みの想定時間に収まっているかを確認する
- 先方が回答しやすい順番に各項目の質問順序を決める
作成例(一部抜粋)
②サマリシートの作成
ヒアリング件数が増えていくことで、おのずと顧客の抱える課題についての理解が深まっていきますが、「結局これらのヒアリング結果から何が言えるのか?」を考えるためには、ヒアリング項目シートの粒度は細かすぎます。
そのため、ヒアリング結果をまとめた”サマリシート”を作成することが望ましいです。また、結果のみをまとめるのではなく、仮説を基にサマリシートを記載しておくことが望ましいでしょう。こうすることで、全体感を持ってヒアリングに臨むことができます。大まかな作成手順は以下の通りです。
1.どのようなヒアリング結果になれば次フェーズへ進められるか/進められないかを仮説を元に整理する
2.整理結果をもとに、”観点”と”サマリ”に分けて記載する
3.記載した内容を元に、次フェーズに進めることができるか改めて確認する
作成例(一部抜粋)
ヒアリングはどのような流れで行うか?
前半でも触れたとおり、ヒアリングでは元々予定していたヒアリング項目について確認することはもちろん、企業に「このヒアリングを受けて良かった」と思ってもらう必要があります。もちろん、単純にヒアリング項目を読み上げるだけでは達成できません。以下の順序を意識して、ヒアリングを実施しましょう。
- アイスブレイク
- 取り組みの背景を説明
- 自然な流れで優先度の高い項目のうち、課題周りからヒアリング ※解決策を先に話すのはバイアスがかかるためNG
- 解決策の内容を説明
- 先方からのQAに丁寧に対応し、先方の目的を達成させる
- 残りのヒアリング項目を確認していく
- 残り時間わずかでヒアリング項目が残っている場合、「もう少しお時間いただけますか?」と確認し、適宜延長してもらう
- 忙しい中協力いただいたことに対して丁寧にお礼をお伝えし、クロージング
- お礼メールをヒアリング後なるべく早く送付する(本件について進捗があり次第、適宜ご連絡させていただけますと幸いです。といった内容)
ヒアリング中に注意することは?
ヒアリングを進める中で、予定通りいかないことは多々あります。想定より時間がかかる、質問内容が伝わらない、過去にヒアリングした企業と全く別の回答をもらった、回答内容が理解できない、等です。こういった事態に対処すべく、注意すべき事項を以下にまとめます。
- 想定時間をオーバーすることを想定して、ヒアリングの時間枠の後に予定を入れない(相手企業によっては、乗り気でヒアリングを延長してくれることもある)
- こちらが認識している課題/解決策の概要を説明しつつ、自然な流れでヒアリングする
- 時間切れになることが大半であることを事前に考慮の上、必ずヒアリングで確認したい項目を整理しておく
- 細かい視点ではなく「森から木」という順番で、大きなことから順にヒアリングする
- 他の企業と回答が異なる場合は、その背景を確認する
- 「分かったふり」をしない。分からないことは正直に確認する(貴重な示唆につながる情報になることが多い)
ヒアリングを終えた後にすることは?
①ヒアリング項目シートへの反映方法
- ヒアリングを終えたら、ヒアリング項目シートへ結果を記載します。記憶が新しいうちに実施することが望ましいので、遅くとも当日中に対応しましょう。その際、以下の点に注意して反映しましょう。
- 複数回のヒアリングを重ねていく上で、質問の内容が伝わりにくいと感じた場合はチューニングする
- ヒアリング先の企業によって回答が変わらない質問項目が明らかになった場合は、優先度を下げて他の質問項目の優先度を上げる
- 元々の仮説と回答内容が異なることが多い場合、必要に応じて質問項目を更新する
②ヒアリング結果のサマリシートへの反映方法
- 続いて、サマリシートを更新します。こちらも記憶が新しいうちに実施することが望ましいため、①を実施した後にすぐに実施しましょう。その際、以下の点に注意して反映しましょう。
- 企業ごとにヒアリング結果が共通していることと、共通していないことを抽象化して、明確にする
- 共通していないことの理由を元に顧客セグメントを分割する
- N=1(ヒアリング数が1)の内容だとしても貴重な示唆に繋がるなる可能性があるため、特記事項として残す
まとめ
いかがでしたでしょうか。記載した通り、企業向けのヒアリングは、一般消費者向けのヒアリングに比べ、注意を払って進める必要があります。ヒアリングに応じてくれた顧客が、初めての顧客になる可能性も考慮して、企業のメリットを第一に考えヒアリングを進めていただければ幸いです。
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