2024.4.24

新規事業の発想方法とは?アイデアを出すためのフレームワークを徹底解説

新規事業の発想方法とは?アイデアを出すためのフレームワークを徹底解説

新規事業開発の中で「どの市場に参入すべきか?」「どんな新規事業に取り組むべきか?」といった抽象的なテーマを考える際に、何から考えて良いかわからず困り果てたことがある方は多いのではないでしょうか。

本記事では、抽象的なテーマを検討する際に活用できる、論点整理を用いた検討設計について説明します。

そもそもアイデアとは何か

私たちは日常で「アイデア」という言葉を使うことがあります。

「仕事でアイデアが必要になった」
「革新的なアイデアを出したい」
「素晴らしいアイデアが閃いた」

では、そもそもアイデアとは一体なんでしょう。

「アイデアはどこからやってくるのか」の著者であるジェームス・ウェブ・ヤングは、アイデアを以下のように定義しています。

定義1:アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせでしかない。
定義2:アイデアとは無関連に見えるものの間に関係性を見出すことである。

つまり、アイデアを発想するためには、どんな手法で考え出すのかを考えるのではなく、「既存の要素」と向き合うことが大切なのです。

新規事業のアイデア発想段階で考えるべきこと

理想の世界を思い描く

新しいアイデアを考えるためには、日頃から自身の考える理想の世界を思い描く癖をつけておくと良いです。

「こんなサービスがあったら救われる人がいるかもしれない」と想像することがきっかけで新しいアイデアが浮かんできます。

ユーザーニーズから考える

解決策から考え始めてしまった場合、実際に必要としている顧客がいなかったという事態に陥るリスクがあります。斬新なアイデアを出したとしても、それを実現することだけに注力せず、まずは顧客のニーズがあるのかを考えることが重要です。

ユーザーのニーズを満たすアイデアを生み出すために、ターゲットになりきるのもポイントです。あらゆる状況や嗜好を持つユーザーの立場になって必要なものを考えてみるとアイデアが出てくることがあります。

既存事業を意識しすぎない

大手企業や老舗企業は、既存事業を意識しすぎる部分があります。新規事業に取り組むことによって新たな収益源を得られるように、既存事業を活かすことは一旦考えず、アイデアを出してみましょう。

理想様々な要素を掛け合わせる

新しい商品やサービスの中には、既存のものを掛け合わせて生み出されたものが多くあります。常識にとらわれずに身の回りのものを掛け合わせてみると、新しい発想が生まれる可能性があるのです。

新規事業のアイデア発想フレームワーク

オズボーンのチェックリスト

オズボーンのチェックリストとは、ブレインストーミングの考案者でもあるアレックス・F・オズボーン氏がアイデアを新たな視点から見る上でまとめるためのチェックリストです。

アイデアを発想する際にチェックする項目は次の9つと定義しています。

  • 転用(Put to other uses)
  • 応用(Adapt)
  • 変更(Modify)
  • 拡大(Magnify)
  • 縮小(Minify)
  • 代用(Substitute)
  • 置換(Rearrange)
  • 逆転(Reverse)
  • 結合(Combine)

オズボーンのチェックリストは新規事業の立案に向けたブレインストーミング、及び新商品開発におけるブレインストーミング等、新しくアイデアを抽出する際に利用することができます。

  • 転用(Put to other uses)

自社で扱っている商品でも、「自社で把握していること以外に利用方法は無いだろうか」ということを考えてみることが「転用」にあたります。

  • 応用(Adapt)

「自社が扱っている商品と似たものは他に無いだろうか、あるとすれば一部アイデアを自社に適用することは出来ないか」という発想が「応用」にあたります。

  • 変更(Modify)

自社商品の色や、形、使い方等を修正することで、「新しい何かを作れないか」という発想が「変更」にあたります。

  • 拡大 (Magnify)

「既存の商品をサイズを大きくしたり、規模を大きくするなど出来ないか」という発想が「拡大」にあたります。

  • 縮小(Minify)

上記の「拡大」とは逆で、「小さくすることで新しいものが出来ないか」という発想が「縮小」にあたります。

  • 代用(Substitute)

今扱っている商品がなかったとしても「代替出来るものはあるだろうか」という発想が「代用」にあたります。

  • 置換(Rearrange)

「配列、レイアウト、パターン等を変えてみることは出来ないか」という発想が「置換」にあたります。

  • 逆転(Reverse)

「既にある商品を逆さにしてみてはどうか、逆の発想は出来ないか」という発想が「逆転」にあたります。

  • 統合(Combine)

「既にあるものを組み合わせて新しいモノが作れないか」という発想が「統合」にあたります。「オズボーンのチェックリスト」について詳しく知りたい方はこちらの記事もご一読ください。

KJ法

KJ Method

KJ法は、アイデア発想法と言うよりは発想をするための情報整理フレームワークということができます。

ポイントは、ブレインストーミングの参加者がアイデアを出し合い、それぞれのアイデアを意図的にグルーピングすることで新しいアイデアを生み出すヒントができるというものです。

KJ法とは主に4ステップの手順で進めていきます。

ステップ1: アイデア単位化
① 議論するべきテーマを設定します。
② 模造紙とカードを用意します。
③ そしてブレインストーミング時に参加者ひとりずつにカードを渡していきます。
④  次に1人1人がカードにアイデアを書いていきます。ポイントは1カードにつき1つのアイデアという点です。
⑤ 出てきたアイデアカードを大きい模造紙上に広げます。

ステップ2: アイデアのグループ化
⑥ それぞれのカードを大分類・中分類までグループ分けし、グループ化されたカードの1番上に別の色のカードでグループ名を記載します。アイデアとグルーピングは納得するまで何度も繰り返していくことがポイントです。
⑦ それぞれのグループを模造紙上において適当な間隔をあけます。

ステップ3: 図解化
⑧ それぞれのグループ間の関係性を模造紙上に記載します。
記載の仕方として例えば下記のとおりです。

  • A→B:AによってBがある(一方的因果関係)
  • A⇔B:AとBの相互的に成り立っている(双方的因果関係)
  • A>–<B:AとBは対立している(対立関係)
  • A-B:AとBには何かしらの関係性がある

ステップ4: 文書化
⑨ 上記により整理した内容を基にアウトプットを文書化します。
模造紙上の全体像を見たうえで、更に新たなアイデアを発想するか、もともとあったアイデアの気づかなかった良さを見つけることができます。
これによって新たなるアイデアのヒントを得ることができます。

マインドマップ

Mind Map

マインドマップとは1つのことから様々なことを連想して発想していくものになります。

例えば、自分自身で新規事業の企画書をあげようと考えた際に、自分自身がやってみたいことは1つだけに絞れないということが多いかと思います。

そこで、「自分がやりたいこと」を起点として自分自身の思考を可視化することがマインドマップでは可能となります。

まずは発想の基となる中心とする概念を決めます。

例えば、「新入社員を手助けできるもの」とした場合、そのまわりに新入社員が求めるものをキーワードとして書いていきましょう。

基本的に作成する上でのルールはないですが、思考整理が目的であり、人に見せることがメインな目的では無いため綺麗に描く必要がないことがポイントです。

発想の軸となるテーマ設定を行い、自由に思いついたことをとにかく書き出してみましょう。

PMI法

PMI Method

PMI法とは、プラス(PLUS)、マイナス(MINUS)、興味(INTEREST)のそれぞれの頭文字を取ったもので、アイデアをそれぞれの視点から評価することで、新たな視点やアイデアを発見するものです。

既にブレインストーミングやディスカッションを重ねた結果、出てきたアイデアを評価する際に主に利用されるフレームワークです。

また、出てきたアイデアを評価していく過程において新たなアイデアが生まれてくることも期待できるため、有効な発想法フレームワークでもあります。

次の3要素を、自社にて考えたアイデア、商品について挙げていきます。

例えば、「飲食店の国内における店舗数増加の是非」をテーマとした場合、次の通り挙げられます。

PLUS(良い点)
更なる顧客増加を見込むことができる
日本全国へのブランドイメージの拡大を強化できる
売上網の拡大を見込むことができる

MINUS(悪い点)
設備投資拡大によりキャッシュアウトが増加する
新店舗での従業員教育にかけるコストが拡大する

INTEREST
特定の商品を専門に販売する店舗展開を行うことはできるか
NSやTV等のメディアを活用した販売促進を行うことができるか
店舗展開以外の売上獲得機会がないか

シックス・ハット法

Six Hat Method

シックス・ハット法とはマルタの心理学者エドワード・デボノにより発案された発想法で、「平行思考」という思考法を利用した発想法です。議論のテーマを設定したあとの議論を進めていく方法がこの発想法のポイントになります。大雑把な事業案が幾つかある中で、より深掘りをする際に利用できます。

主に議論の進行についての方法ですので、テーマを設定したうえできちんと深く議論をすることが出来るのがメリットになります。中でも、よくアイデアはたくさん出る人が多いけど全体の進行役がいない、分析する人がいない、といった場面で役立つ方法になります。

「シックス・ハット」とは6色の帽子を人数分用意し、議論段階に応じて全員で同じ色の帽子を被ります。

それぞれの色には議論する方向性が定めてあり、これをメンバー間で揃えることで、議論の進行を統一します。

具体的な色ごとの議論内容は次の通りです。

ステップ1:テーマ設定
最初に議論するテーマを設定します。

議論進行方法がカギだと言いましたが、飽くまでもこれは発想法であるため、テーマは大雑把にすることが適しています。

ステップ2:「白の帽子」の人
「白い帽子」を被っている人の役割は「情報」や「データ」等の客観的事実を確認することです。例えば、「今後流行る食べ物」というテーマだった場合に、事実として現状流行っている食べ物はどういうものがあるか、過去にどのようものが流行っていたか、ということを確認して共有します。この段階ではアイデアや提案、他アイデアの良し悪しの評価をしてはいけません。

ステップ3:「赤の帽子」の人
「赤い帽子」を被っている人の役割はアイデアやテーマに対する「気分」や「感情」を確認することです。例えば、「今後流行る食べ物」の議論の中で「見た目にインパクトがあるラーメン」というアイデアが出てきたとします。そこで「美味しくなさそう」であったり「面白そう」であったりと、本人が感じたことを発信・共有することが「赤の帽子」の役割です。そのため、合理的な反論や批判は発信してはいけません。直感的な感情を共有するのがこの段階においては重要です。

ステップ4:「黄の帽子」の人
「黄色い帽子」を被っている人の役割は「楽観的見解」を発信することです。

どんなアイデアに対しても長所や、アイデア実現後の利益等の便益を発信するのが役割になります。また、メリットを出したあとには優先順位付けも行います。

ステップ5:「黒の帽子」の人
「黒い帽子」を被っている人の役割は「悲観的見解」を発信することです。アイデアの欠点や最悪のリスク等を発信することが役割です。また、デメリットを出しきったあとには重要度をそれぞれつけていきます。

ステップ6:「緑の帽子」の人
「緑の帽子」を被っている人の役割はアイデアに対する「発展」「想像」「可能性」を発見し、発信することです。先に出た、メリットや強みを如何にして活かしていくか、それをどよのうにして最大化するか、ということを考えたり、デメリットやリスクに対する備えをどのようにすればいいか、等を考えていきます。全員が納得するまで議論を何度も何度も繰り返すことが可能で、これによって本発想法のメリットである議論の深掘りが出来るようになります。

ステップ7:「青の帽子」の人
「青の帽子」を被っている人の役割は、議論の進行があっているかどうかを確かめることです。例えば議論に詰まってしまった時に、どこから話し合うべきか、ということなどを議論したい時に被ります。

以上が「シックス・ハット法」の流れになります。ポイントとして帽子はいつ変えても構わないという点です。

議論の進行役を1人置くことで、「次にどの帽子をかぶるべきか」ということを先導する人物がいればなお良しでしょう。

新規事業アイデアを検証する

アイデアを発想した後は、生まれたアイデアがちゃんとビジネスとして機能するかを検証しなければなりません。まずは、簡単にビジネスモデルとして成り立つかどうかを考えることができれば、素早い意思決定が実現できます。

検証論点の整理

論点整理とは、答えをだすべきテーマ(=問い)を、細かい粒度の要素(以下、論点)に分解し、結論を出すために考えるべき具体的な検討項目を明らかにするテクニックです。

このテクニックを実践することで、 抽象的な問いに対しても答えを考えることが出来るとともに、答えに無関係な調査を省いた効率的な検討が可能となります。

あわせて、各検討項目に対して現在の仮説、調査方法をあらかじめ設定することで、スムーズな検討が可能となります。

作業の流れ】

1. 問いを明確にする
まずは、問い(これから答えを検討するテーマ)を明確にします。問いの設定を間違えてしまうとその後の検討が無駄になってしまうため、とても重要なステップです。

問いが適切か自信が持てない際は、プロジェクトの社内での位置付け、およびプロジェクトの目的を整理した上で、 改めて問いが適切かを考えましょう。

(例)

あなたは、所属事業部で運営している社内新規事業コンテストへの応募数が少なく、応募数を増やす施策を検討する必要を感じている。

検討に入る前に立ち止まってコンテストの位置付けを考えると単体収益化事業を3年以内に3つ以上生み出すという事業部目標に対する一手段でしかなく、コンテストの成功自体は目的ではないことを思い出した。

そこで、「コンテストへの応募数を増やす適切な施策はなにか?」ではなく「短期的な黒字化を見込める新規事業案の効率的創出方法は何か?」を問いとして定義し検討した結果、

コンサルティングファームへのアイディア創出委託という、コンテスト運営の改善よりも遥かに効率的な施策を設定することができた。

2. 問いを論点に分解する (論点整理)
1で設定した問いを、一段階細かい粒度の要素(以下、論点)に分解します。

この時、次の三点に注意してください。

  • 各論点に答えが出れば、問いに対する答えも明らかになる様に分解する
  • 問いに対する答えに直結しない、無関係な論点は設定しない
  • 論点の抜けを防ぐために、急に細かな論点に分解しない。

(良い分解例)


(悪い分解例)

この分解作業は1回で終わるのではなく、論点に対する検討方法がイメージできる粒度になるまで繰り返します。

<アウトプット例>

3. 各論点に対する仮説を設定する
分解が完了したら、各論点に対する仮説を設定します。

これにより、仮説思考を用いた効率的な検討が可能となります。

仮説思考とは?
論点に対してあたり(仮説)をつけて、その証拠を調べていく調査アプローチで、情報を網羅的に集めて答えを検討するよりも効率的に答えを出せることが多いです。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

4. 末端の論点に対する調査アプローチを設定する
最後に、末端の論点に答えを出すためのアクションを設定します。各論点に結論をだせる方法のなかで、できるだけ時間・お金のかからない方法を設定しましょう。

<アウトプット例>

以上のステップを通じて、問いに対する答えを出すための、必要最小限のアクションを明らかにすることができます。

論点整理を用いた検討設計設定は、ジャンルを問わず、抽象的な問いを考える際に活用可能なテクニックですので、ぜひ様々な場面で活用してみてください。

検証方法例

▼収益性の検証方法例 

フェルミ推定による市場規模検証

市場規模を推定する方法としてフェルミ推定があります。これは、すでに判明している情報をもとに、市場規模などの予測値を導き出す方法です。

普段アイデア出しを行う時は、ビジネスで機能するのかという点まで含めてアイデア出しを行う必要があります。そうすることで、非常に具体性の高いモデルを浮かべることができるようになります。

・ユニットエコノミクスの検証

ユニットエコノミクスとは、いくらで顧客を獲得することができて、その結果いくらの売上を生み出すことができるのかという指標です。単純に1度の購買で獲得できる利益だけでなく、定期購買型のビジネスモデルでは継続的にお金を支払ってもらうので、指定期間における継続的に立つ売上を簡易的に計算します。検証する期間は、1年に設定する場合もありますし、ビジネスモデルによっては2年、3年で計算する場合もありますが、業界特性に合わせて使い分ける必要があります。

▼MVP検証を通じたプロダクト価値の検証

MVPとは、Minimum Viable Productの略称で、日本語にすると実用最小限の製品のことを指します。スタートアップ界隈でよく使われる単語で、MVPでトラクション(一定数の顧客を獲得できるのかという指標)が集まるかの検証を行い、そのプロダクトの成長が見えてきた段階でVCやエンジェル投資家から調達するのが定石です。初期から多額のコスト投下するのはリスクでしかないため、まずは小さくビジネス検証をし、丁寧に顧客の声に向き合い製品を作るというプロセスです。 

これさえうまくできれば他はいらないと考えられるくらい重要なのが、「プロダクトがなくても営業をしてみること」です。そもそも、ビジネスはどの領域にあっても、顧客ありきで成り立っています。顧客に買ってもらえない、ましては提案できないような内容であればビジネスにするべきではありません。

提案資料を詳細に作ることも重要ですが、まずは口頭でもいいので顧客にサービス案をぶつけることから全てが始まります。既存事業の延長にあるビジネスモデルの場合、様々な切り口で提案してみましょう。顧客に提案する最中で、どんな切り口が刺さりやすいのか、ニーズがあるのか、価格はいくらくらいだと興味を持ってもらえるのかなど多くの視点が見えてきます。

新規事業では顧客も今までの顧客と全く違ってゼロベースであるという場合もあると思います。まずは、とにかく色々な人に提案をぶつけてみましょう。何かしらのフィードバックが得られるはずです。

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