サービスブループリントとは?カスタマージャーニーマップとの違い
近年、組織の多層化や顧客とのオンライン上でのタッチポイントの増加などによって、サービス提供・享受の全体像を把握することが困難になっています。
本記事では、こうした複雑化するサービスの構造を、ユーザーおよび運営者の両者の視点から紐解き、改善につなげることができるツール「サービスブループリント」をご紹介します。
Contents
サービスブループリントとは
サービスブループリント:
あるサービスの提供プロセスにおける、サービス享受者(=ユーザー)とサービス提供者(=サービス運営に関わる全てのステークホルダー)双方の導線・タッチポイントを時系列で図示化したツールです。
サービスブループリントは、1980年代後半にG. Lynn Shostack(リン・ショスタック)氏が提唱しました。
ブループリントは日本語で「青写真」とも呼ばれ、設計図の複写に用いられた写真の一種であることから転じて、「未来の構想」「見取り図的将来計画」などの意味を持っています。
1つのサービスブループリントは、特定のユーザーのゴールに対応します。したがって、同じサービスでも、提供フローや手段が複数あれば、ブループリントを複数に分けることをおすすめします。
例えばファストフード店での食事提供において、ユーザーのゴールが食事の持ち帰りの場合と、店の中で食事していく場合のフローは異なるので、サービスブループリントも分けたほうが可視化しやすくなるでしょう。
サービスブループリントを活用するメリット
⑴課題の発見・予測
サービスのフローを、ユーザー視点でもサービス提供者視点でも確認できるので、どの導線で不備が発生している(発生しそう)か見つけやすくなります。
例えば、ユーザー視点では注文してから料理が出てくるまでの待ち時間が長い、サービス提供者視点では担当シェフへの注文の伝達がスムーズでないなどの問題を発見できます。
⑵サービス提供者側のタスク分解・役割への理解
各アクションの接点(タッチポイント)に複数の担当者や部署、外部の業務委託企業やサービスが存在する場合、サービスブループリントは特に効果を発揮します。
複雑な提供フローを時系列に俯瞰できるので、連携に無駄がないか、代替案はあるか、導線を入れ替えられないか、デジタル化で業務改善できる部分はあるか等様々な解決策を検討する土台にもなります。
サービスブループリントとカスタマージャーニーマップの違い
サービスブループリントとカスタマージャーニーはよく混同されることが多いですが、サービスブループリントは、カスタマージャーニーマップを用いた分析後に活用するツールだと言えます。
カスタマージャーニーマップは「ユーザー(サービス享受者)がサービスとの関わりの中でたどる一連のプロセスとそこで生まれる感情などを可視化したもの」であるのに対し、
サービスブループリントは「サービス提供者側の導線を追加し、サービス享受者とサービス提供者のタッチポイントまで可視化したもの」です。
3.新規事業でサービスブループリントを使うタイミング
新規事業開発においてサービスブループリントは主に2つのタイミングで利用されます。
①アイデア創出フェーズ
プロジェクト序盤、現状のユーザー体験を軸にサービス分析をし、どこに問題があるのか、どこに施策を考える余地があるのかを検討する際に役立ちます。これにより、新たな事業で現状の何を課題とし捉えるのかを考える助けとなります。
②人員・オペレーション設計
サービスの実際の提供フローを考える際、関係するステークホルダーの行動やその相互作用を考慮する必要があります。サービスブループリントでは、サービス提供側の役割や行動を分解して図示するため、オペレーションの詳細設計の助けとなります。
実際に作ってみよう
作り方はとても簡単です。
記載した図は「web上で注文・決済を済ませる飲食店のテイクアウトサービス」をサービスブループリントに落とし込んだものです。
ぜひ参考にしてみてください。
①基本要素4つをマッピング
(カスタマーアクション・フロントステージアクション・バックステージアクション・プロセス)
②詳細要素5つを必要に応じて追加
(矢印・時間・規制や指針・感情・指標)
①基本要素4つ
⑴カスタマー(ユーザー)アクション
ある特定のゴールを達成するために、ユーザーが行うプロセス全体のことで、選択ややりとり、活動等が含まれます。特定のゴールとは、「ファストフード店で食事をする」、「自宅でラジオ配信をする」など、「ユーザーが何を目的に行動しているか」が当てはまります。
カスタマーアクションは、観察調査やインタビュー、カスタマージャーニーマップなどから導き出すことができます。
⑵フロントステージアクション
ユーザーから直接見えるところで発生するサービス提供側のアクションで、二つの種類があります。
●人間対人間
:顧客担当の従業員が行うアクション
例)レストランの店員、コールセンターの就業員
●人間対コンピューター
:ユーザーがセルフサービステクノロジーとやりとりする際に実行されるアクション
例)モバイルアプリ、ATM、AIによるチャットサービス
ユーザとのタッチポイントにおいて必ずフロントステージアクションが起きるとは限らないので注意が必要です。
⑶バックステージアクション
フロントステージにおけるアクションをサポートするために行う、ユーザーが見えないところでのサービス提供側のアクションです。
レストランにおいて、同じシェフであっても、行動によって扱いが異なります。ユーザーから見えない厨房での調理ならばバックステージアクション、オープンキッチンでユーザーの目の前で料理を演出するならばフロントステージアクションとなるのでユーザーとの接点軸で整理しましょう。
また、ひとまとめにバックステージアクションとして記載すると情報を可視化しづらくなってしまうことがあります。
バックステージアクションが他部署・他企業(業務委託等)にまたがる場合、同じサービスブループリント内でバックステージアクションの欄を増やして表記しても良いでしょう。(フロントステージアクションも同様です)
⑷プロセス
上記3つの要素をサポートするための、サービス提供者の組織内でのステップ・活動がプロセスです。
例)クレジットカードの照合、価格設定、工場から店舗への製品の配送、品質テストの作成など
*境界線
❶〜❹の4つの要素は3つの境界線によってクラスターに分けられています。
ⅰ.インスタラクションの境界線
:ユーザーとサービス提供者間の直接のやりとりを表現
ⅱ.可視境界線
:ユーザーから見えるサービスと見えないサービスを区別
ⅲ.組織内のインタラクションの境界線
:顧客窓口担当の従業員と、ユーザーとのやりとりを直接的にはサポートしない従業員とを区別
②詳細要素5つ
⑴矢印
要素間の関係性・依存性を表すためとても重要です。片矢印は直線的な一方向だけのやりとりを示し、両矢印は合意の必要性や共依存関係を示しています。
⑵時間
時間経過がユーザー体験の満足/不満足に大きく関わる、つまりサービスの主要変数である場合は、アクションごとの見込み時間を記入しましょう。
例)料理の待ち時間、会計の待ち時間
⑶規制や指針
プロセスの完了方法に影響を与える規制や組織内の指針は記載しておきましょう。変更できるもの・変更できないものの判断ができるようになります。
例)食品の規制、セキュリティポリシー、接客指針
⑷感情
基本要素の各アクションに対して、ユーザーや従業員がどのような感情を抱いているかを示す要素です。「不満」と「満足」がわかれば十分なので、二種類の絵文字などを使って表現しましょう。
⑸指標
ユーザーのゴールに対する成功指標のことです。時間や金銭的コストなど定量的指標を設定すると課題発見・解決手法が明確になります。
サービスブループリントの作成に有効なツール
近年、オンライン上でも自由度の高い思考整理ツールが登場しています。
サービスブループリントは、サービス提供者側とサービス享受側の複雑なフローを書き出すため、操作性が高く、直感的に図示できるツールを使うことをおすすめします。
miroは操作はやや限定的なものの直感的な操作に優れているツール、Figmaはクリエイティブ業界で知名度が高いツールです。
使いやすいツールから始めてみてはいかがでしょうか?
⚫︎オフライン
ホワイトボード、紙
⚫︎オンライン
Figma、miro
まとめ
いかがでしたでしょうか?
サービスブループリントはユーザーとサービス提供者全体の情報を時系列に整理できるツールです。新規事業のアイデアを創出する際や、課題仮説や解決策を検証するためのプロトタイプ設計を行う際にぜひ使ってみてください。
また、新規事業を取り巻く顧客動向や競合動向などのミクロ環境の分析フレームワークについては、こちらにまとめておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
Facebookページから
最新情報をお届け
記事のアップデート情報や新規情報はFacebookページで随時配信されております。
気になる方は「いいね!」をお願いいたします。
新規事業・イノベーションガイドブック
4,000社、20,000の事業開発で得た新規事業立ち上げのノウハウを一部無料公開。
<本資料の主な解説事項>なぜ今、新規事業やイノベーションが必要なのか?
新規事業開発は、なぜうまくいかないのか