シリアルイントレプレナー LIFULL SPACE 代表取締役奥村氏が 大切にする「利他主義」と「サバイバル力」
日本最大級のトランクルーム検索サイト「LIFULLトランクルーム」や収納スペースのシェアリングサービス「収納シェア」など、スペースの新たな価値を創出し、一人ひとりに最適なスペースが見つかる仕組みを創ることであらゆる人の暮らしや働き方を豊かにする事業・サービスを運営する株式会社LIFULL SPACE。
同社の代表取締役であり、株式会社LIFULL内では、新規事業コンテスト歴代最多受賞と、数々の新規事業を生み出してきたシリアルイントレプレナーである奥村周平氏に新規事業を立ち上げる上で大切にしてきた「利他主義」と「サバイバル力」について語っていただきました。ぜひ最後までご覧下さい。
Contents
「人の役に立ちたい」大学時代
(Battery編集部)
韓国の大学に4年間通われていましたがどのような想いや目的を持たれていたのでしょうか?
(奥村氏)
当時、私は、自分に自信がなく、やりたいこともなかったので、人と変わったことがしたい、自分を変えたいと思っていました。そこでふと、幼少期にお世話になっていた韓国の方を思い出し、韓国の大学に行くことを決意しました。
大学時代は「韓国の方向けに日本語を教えるサークルの会長」、「日本人学生向け就活支援サークルの立ち上げ」、「フィジーでの村おこし」など様々なことにチャレンジしました。
(Battery編集部)
本当に様々なことにチャレンジされてこられたのですね。その背景には自分を変えたいという想い以外もあったのでしょうか?
(奥村氏)
そうですね、すべてに共通しているのは、「何かをより良くしたい、役に立ちたい」という思いです。
学生時代、大学に通うすべての費用(学費、渡航費、生活費など)を自分で稼ぐ必要があり、大学の長期休みで日本に戻ってきてはアルバイトで必死に稼いで韓国に帰るという生活を送っていました。
短期間で学費を稼ぐ必要があったので完全歩合制の営業を行っていたのですが、お金は稼げてもお金のためだけに働くことで心がすさんでいくのを感じていました。
そんな時、韓国では周囲に日本語を勉強したいという人たちが多くいました。そこで、自分の強みを活かして現地の方に日本語を教えていたのですが、とても喜んでもらえたんですね。
この経験から、「人の役に立つこと」は自分の心も豊かになると思い、それからは人の役に立つことにチャンレンジし続けています。
「利他主義」を体現するLIFULLでの挑戦
(Battery編集部)
大学卒業後に株式会社NEXT(現LIFULL)に入社されましたが、その決め手は何だったのでしょうか?
(奥村氏)
入社を決めた理由は、「利他主義を掲げる社是への共感」と「チャレンジを推奨してくれる環境」の2点ですね。
大学時代の経験から、人の役に立つ仕事をしたいという想いを持ち続けていましたので。
(Battery編集部)
入社後はどのようなことに取り組まれてきたのでしょうか?
(奥村氏)
入社後は主に、新規事業であった地域情報サイトの営業を行っていました。今でいうぐるなびや食べログのようなサイトで、飲食店への飛び込み営業を行っていました。学生時代の営業経験があったため飛び込み営業には臆しませんでしたが結果を出すのは非常に大変でした。当時「NEXT」は不動産業界ではかなり知られていましたが、飲食店業界では全く知られておらず、またサービスも始まって間もなかったためとても苦労しました。
(Battery編集部)
そのような状況をどのように乗り越えられたのでしょうか?
(奥村氏)
特に意識していたのは、「商品やサービスを売らない」「役立つ情報を作成して提供する」「紹介でつながる」という3点ですね。
最初は対象の飲食店に通い、その都度店舗に役立つ情報を持っていきました。そうすると、3回目ぐらいには飲食店の方から声をかけてもらえるようになります。そこで初めて事業の説明をし、結果としてご契約につながりました。さらに良い評判が生まれ様々な方を紹介していただけるようになったんです。最終的には街を歩くだけで契約が取れるほどの状態になり、トップセールスを獲得することが出来ました。
(Battery編集部)
その後、株式会社LIFULL SPACEの代表取締役に就任されたと思いますが、そこに至った背景について教えていただけますでしょうか?
(奥村氏)
LIFULLグループでは「子会社経営やグループ経営をすることで、社員に経営者としての経験を積ませることが将来のためになる」という考えを非常に大切にして、子会社化、グループ会社化を推進しています。
私が最初に考えた事業はトランクルームの検索サイトでした。当時私はルームシェアをしていて荷物の多さに悩んでいました。トランクルームの広告を街中ではよく見かけたのですが、ネットで調べてみると、まったく情報が見つかりませんでした。これでは、比較検討もできない。日本は狭小住宅が多いため、私と同様に困っている人が多いはずだと思い、事業プランを考え始めました。市場調査をすると、アメリカのトランクルーム市場は約2兆円と巨大に成長していたのです。とても可能性を感じ、LIFULLの新規事業提案制度「SWITCH」でこのプランを提案し、優秀賞を獲得しました。そして周りの先輩から力を借り、事業計画をブラッシュアップし事業化にこぎつけました。事業化してから3年後に、子会社化して現在に至ります。
代表取締役になった今も、新規事業提案制度にはたびたび応募していて、歴代最多受賞・シリアルイントレプレナーとしていくつかの事業の立ち上げを経験し、今ではアクセラレーターとして事業創出の支援もしています。
新規事業立ち上げ時に求められる「行動力」と「サバイバル力」
(Battery編集部)
シリアルイントレプレナーである奥村様の考えるイントレプレナー、そしてアントレプレナーに必要な能力とは何でしょうか?
(奥村氏)
私は必要な能力というものを決めつけてしまうと可能性を狭めてしまうと考えています。そのため能力よりも、「何か思ったら動いてみること」が一番大事だと考えています。当然、能力の有無や性格的な向き不向きはあると思いますが、能力が無い、向いてないと諦めるよりは動いてみることが大事であると考えています。動くことで結果として後から能力がついてくると思います。
ただ、向き不向きはあるので、私が考える性格的に向いている人でいうと
「好奇心旺盛(なんでを深堀りすることが出来る)」
「素直さ(否定から入らない、意見を受け止めて進める力)」
「熱意・成長意欲」
「こだわりが強い(気になったことを突き詰めて調べる)」だと思います。
能力に関してはすべて有るに越したことはないのですが、「サバイバル力」があると生き残りやすいと思います。その他にロジカルシンキングなどの能力は、あったほうが効率よく物事が進むとは思いますが、それは動き続けていれば徐々に身に着けていけると思います。
また、イントレプレナーの最も大切なところはステークホルダーがアントレプレナーとは異なることです。イントレプレナーも経営方針によって異なるとは思いますが、ステークホルダーが社内の人物となることも多いため「社内調整力」が必要となります。
また、社内調整力に通じる部分として、「若いうちにやる」ということが大切であると思います。なぜなら、若くして熱量を持って取り組むことで、周囲を味方につけ、応援してもらいやすく、良い環境を作り、進めることが出来るからですね。
新規事業立ち上げ時に必要となる着眼点
(Battery編集部)
これまでご自身でいくつかの新規事業を立ち上げられ、また、LIFULLの新規事業提案制度「SWITCH」のアクセラレーターとして数多くの新規事業アイデアやビジネスプランを見てこられたと思うのですが、特にどのような点を重要視されているのでしょうか?
(奥村氏)
新規事業のフェーズによって異なってきますが、最初のアイデア検討フェーズでは2つあると思っています。
1つめは、「誰の」「どんな課題」を解決したいのかが明確になっているかです。これが検討された上で明確になっていないと、進めている途中でぶれてしまうからです。
2つめは、「なぜその人がやるか」です。これは熱意にも紐づいてくるのですが、やはり体験があると熱量が高くなりますので結果も変わってくることが多いです。
この2つを合わせたうえで、なぜこのソリューションなのか?を洗い出し、納得感を持って進めていくと、良い事業計画が生まれ自信を持って進めていけます。その後、市場規模や優位性、競合との差別化、収益性などといった部分を考えていきます。
今後のビジョン
(Battery編集部)
最後に、今後のビジョンについて教えていただけますでしょうか?
(奥村氏)
0→1を創る機会をこれまで与えてもらいその幸せや楽しさを感じてきたので、0→1をこれからも創りながら、これからの若い人たちにも挑戦できる環境を整えていきたいと考えいます。
LIFULLグループでは社会課題を解決する事業案であれば、ヒト、モノ、カネのリソースを支援し、既存事業とシナジーが少ない領域での新規事業も推奨してくれます。しかし、既存事業が重要視され、新規事業へヒト、モノ、カネのリソースがなかなか割かれにくい状況に陥っている企業もあります。また、新規事業の評価軸として既存事業とのシナジーばかりがフォーカスされてしまうケースもあるかと思います。このような現状を今後変えていきたいと個人として考えています。
そして、LIFULL SPACEとしては、もっとスペースの価値を知ってもらい、よりうまく活用してもらえるようにサービスを展開していきたいと思っています。弊社では「収納シェア」というサービスを展開していて、使っていないスペースを収納スペースとして貸し借りできるサービスを展開しています。現在ヤマト運輸様と、ヤマト運輸様の店舗の遊休スペースの活用について実証実験を行っており、対応店舗は徐々に増えています。今回の新型コロナウイルス感染症拡大によって、家にいる日々が続き、物が多いなと改めて思った人も多いと思います。日常的に使わないモノは外に預けて、家の中は快適な空間にして過ごす。ということが当たり前の世界を作り、少しでも生活を快適にできるよう貢献していきたいと思っています。
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