2024.2.16

NTTドコモの最新技術を活用したメタコミュニケーションサービス「MetaMe」はどのような事業共創スキームから生まれたのか?

NTTドコモの最新技術を活用したメタコミュニケーションサービス「MetaMe」はどのような事業共創スキームから生まれたのか?

2023年11月8日に行われた新規事業・イノベーションのサミット「NEXT Innovation Summit 2023 in Autumn」(主催:Spready株式会社)内の講演「大企業の新規事業開発を劇的に加速する事業共創スキーム DUALii〜NTTドコモとRelicの共創事例〜」では、NTTドコモの最新技術を活用したメタコミュニケーションサービス「MetaMe」の共創事例が株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)と株式会社Relic(以下、Relic)によって話されました。「MetaMe」はどのようなスキームで生まれたのか、また大企業の新規事業開発にはどのような難しさが存在するのか。

今回は、その講演レポートをお届けします。

今回お話を伺った方々

株式会社Relic CRO 大丸 徹也(写真左)

フューチャーアーキテクトにてITコンサルティングやシステム開発のPMを多数経験した後、DeNAにて主にEC事業領域での新規事業や大手小売業とのオープンイノベーションによる新規事業の運営責任者を歴任。その後Relicを共同創業し、主に大企業を中心とした新規事業開発支援やインキュベーションプログラムの設計等において多数の実績を持つ。2023年より、現職。

株式会社Relic DUALii事業責任者 武内 康範(写真中央)

株式会社リクルートの住宅領域にてPjMやPdMとして、既存メディアの運営・新規事業の立ち上げなど、幅広い職務・事業フェーズで経験を積む。その後Relicに参画し、大企業を中心に新規事業開発やイノベーションの共創・支援や、事業の成長戦略や中長期のプランニング・事業企画や事業計画策定の支援で多数の実績を残す。2023年より、現職。

株式会社NTTドコモ R&D戦略部担当部長 吉田 直政様(写真右)

NTTドコモでインフラ開発、サービス開発、新規事業創出に従事。オープンイノベーションをリードする新規事業創出プログラム「39works」「トップガン」の企画・設計・実行を担当し、7年間で40以上のプロジェクト事業化挑戦に寄与。さらに技術を核にサービス企画、事業創出に携わり社内外のメンバーと20以上のプロジェクトを社会実装するなど、社内外を巻き込んだ革新的な新規事業を生み出す仕掛け人。

本記事ではNTTドコモとRelicの共創事例を通して、どのような仕組みにより新規事業が世に生まれていったのか、大企業における新規事業の難しさはどんな点にあるのか紹介していきます。

共創事例であるNTTドコモの最新技術を活用したメタコミュニケーションサービス「MetaMe」がどのようなサービスなのか詳細についてはMetaMe公式noteをご覧ください。

事業が生み出す仕組み「DUALii」とは?

武内:

今回、両社による新規事業の共創で活用された「DUALii」は、 Relicが事業主体となりサービスをローンチし、その後仮設検証を推進していく業界初の事業共創スキームです。

Relicがサービス主体として運営することによって、ステイクホルダーからの契約ないしは支払い調整をします。また、カスタマーだったり、顧客から頂く問い合わせをRelicが一時受付することによって、 既存事業へのブランド既存リスクを回避することが可能です。 

その他様々な最適な関与スキームを提供しており、Relicが主体で事業を検証することや事業運営をしていくことも可能です。

売り上げの一部を、レベニューシェアという形で販売し、事業化を進めていくケースもあれば、事業化に伴いお客様の既存部署ないしは既存の会社にお戻しするケースもあります。

その他の手段も提供しており、新たに子会社を設立する、ないしは、ジョイントベンチャーを設立し、そこで事業運営をしていく形を取ることも可能です。またRelicホールディングスの子会社として事業運営をしていくこともできます。

お客様から頂くご要望の一例として、若手のメンバーを育成していきたいというようなご要望もあります。

その場合、お客様の企業からCXOという形で経営メンバーに入ってもらう「出向起業」という制度を取り入れています。

その他、昨今話題になっているEIRの活用だったり、様々な形で関与スキームを提供し、会社運営体制を構築しています。


 DUALii活用事例

次に、共創スキームのDUALiiを活用し実際に生まれた3つの事例を紹介しました。

1.聴覚障がい者向け外出支援デバイス/アプリ

起案企業様とRelicの役割分担としては、様々なパターンがあります。本件は某企業様の社内新規事業プログラムによって、起案されたアイディアがベースになっています。

そのため、事業アイデア立案であったり、活動予算の獲得、また事業の戦略だったり、仮説検証の設計といったところは、我々のクライアント企業様、起案企業様に担ってもらいました。

一方Relicでは、迅速な事業検証を優先するため、我々自身が事業主体となってRelicのサービスとして世の中に提供しています。

そのほか、事業戦略の立案や仮説検証の設計支援も行いますし、具体的に実証実験する現場の手配やPoCも行なっています。

また、万が一お客様に対して、損害が発生してしまうこともゼロではないため、そういった可能性を回避するための損害賠償保険の加入であったり、それ以外のオペレーションも我々が提供しています。

2.フィールド全面映像によるコーチングサポートサービス

こちらのコーチングサポートサービスでは、サービスアイデアが本当に顧客にとっての価値提供となるのかを検証すべく、ゼロから製品を作るのではなく、既存製品を活用しコストをかけずに検証を行いました。

事業アイデアの起案等における活動予算の獲得は、起案企業様に行なっていただきつつ、 お互いにタスクを持って、推進していく点がDUALiiの特徴になっています。

例えば、導入先の開拓として、活用していただけそうなスポーツチームを洗い出し、どういったスポーツチームからまず優先的に提案していくのか。また、提案する際の営業資料であったり、提案スクリプトなどを両社で作り、PDCAを回しながら良いものにしていきます。

3.フィールド全面映像によるコーチングサポートサービス

本件は起案企業様で発案されたアイデアで、アプリの要求/仕様/定義までしていただき、実際にアプリケーションを要件定義に落とし込んだり、設計や開発、テストを繰り返し、世の中に出す品質にまで高めていくエンジニアリングの部分を全てRelicが担います。

また、開発だけでなく、お客様に届けるため、サービス/サイトの設計であったり、デザインや改善作業も我々が行なっています。具体的にどういったマーケティングチャネルからお客様に提供していくのか、どのような訴求メッセージが最適かを考えながら、データを取得し、 また振り返り改善施策を考えて、お客様に提供していくということを繰り返しています。

NTTドコモはなぜDUALiiを利用したのか?

講演ではNTTドコモ R&D戦略部担当部長 吉田様に共創事例「MetaMe」について具体的にお話を伺いました。

※MetaMeとは?

自分らしい趣味や表現、会話をきっかけに、共通の価値観を持つ人同士で繋がることができる、新しい形のコミュニケーション空間です。利用者の価値観を反映する「Identity World(アイデンティティ・ワールド)」と、コミュニケーションの場となる「Community World(コミュニティ・ワールド)」の2つの概念から構成されています。

DUALiiを活用し、サービスの提供および運営を行っており、2023年2月にドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP™」の取り組みの一環として、β版先行提供による事業検証を開始しました。

新規事業開発のフェーズによって求められる職能が変わるからこそ、パートナーと組むミックスのチーム編成が重要

大丸:

R&D研究開発の技術をなるべく早くマーケットに投下しようと思った背景や考えを教えてもらえますか?

吉田:

私たちは、技術の魅力と社会実装の距離をいかに早く埋めるかが非常に重要だと思っています。

昨今、技術の進化スピードが非常に早く、そこを乗り越えるためには、実際にこの技術を社会実装しつつ、ユーザーの声であったり社会の声というものをいち早く理解し、技術自体も改善/ピボットしていく流れを作った方が良いのではないかと考えました。

大丸:

ドコモさんは、大きな経営資源も持たれていて、人材や技術もお持ちですよね。自社完結で事業をマーケットに生み出していこうと考えたときに、課題や乗り越えなければいけないハードルはどんなところにあったのか、お伺いできますか。

吉田:

新規事業を開発する上では、様々なケイパビリティが必要となります。また、技術の価値とユーザー/顧客の価値を完全には結び付けられていないが仮説は持っている場合に、その中で事業を社会実装するためには、例えばマーケティング能力であったり、制度設計能力などそういった全てを併せ持つというのはなかなか難しいです。その部分を補完しあえるようなパートナーと一緒にチームを組み、まずはマーケットに迅速に出していくため、今回DUALiiを活用して進めました。

大丸:

私どもも、新規事業開発のフェーズによって、求められる職能が変わることが大きなポイントと感じています。内部の体制で用意できるタイミングもあれば、なかなかそれが用意できないタイミングもある中で、私たちRelicにはその辺りを補完できるプレイヤーとしてご期待いただいてるのでしょうか。

吉田:

そうですね。全てのケイパビリティを揃えること、もしくは育成することも無限の時間とリソースがあればもちろんできますが、最小のリソースで1番早くスピードを出すためには、やっぱり今回のDUALiiの仕組みであったり、我々が持ってるリソースは我々自身が出すといった、ミックスのチーム編成ができることがスピーディーに新規事業を立ち上げるのにはすごく重要かなと感じました。

多くのパートナー企業がある中でなぜRelicを選んだのか?

大丸:

多くのパートナー企業がある中でなぜRelicを選んでいただいたのでしょうか。

吉田:

パートナー企業それぞれ、様々なケイパビリティを持っていますが、Relicは局面局面でとにかくチームとしてのマルチスタックのチームを作れるところが1番魅力かなと思ってます。

例えば、2週間後にLPを作らなければならず、デザイナーが必要になった時。もしくは、認可申請など事業を前に進めるための手続きが必要になった時など、そういったタイミング都度で柔軟に適切なメンバーをアサインいただけるだとか、 そういった相談ができる点は、RelicさんのDUALiiの魅力であり、我々としてもサポートいただいた大きな点になってると思います。

MetaMeにおけるRelicとドコモの役割分担

大丸:

局面によって求められる役割が変わるという話がありましたが、現状はドコモさんとRelicでどういう役割分担で事業運営をしていますか?

武内:

Relicとドコモさんとの役割の住み分けでいくと、研究開発を軸にしたサービスなどの企画等はドコモさん主体で動いています。

一方で、不確実性がとても高い初期のフェーズのため、高速に仮説検証を進める必要があり、 そこはドコモさんとRelicがそれぞれ仮設検証結果だったり、これまでのデータを用いてお互いに提案し、事業のグロースを目指しています。

吉田:

企業間の関係性の中で一定の仕切りは必要なところはあるものの、実際に現場は仮説を立て社会に当てて、それをフィードバックする流れをとにかく回していかなくてはいけません。そのため、会社間というよりは1つのプロダクトメンバーとしての関係性を作れていることは大きな特徴ですね。

大企業が新規事業に挑戦する当たっての壁

大丸:

大企業が新規事業に挑戦する難しさを教えてください。

吉田:

私がこれまで関わってきた経験で言うと、今の社内運営上、どうしても既存事業側に引っ張られてしまうことがあります。もちろんそれによって守られてるもの、もしくは安心安全というブランド価値が出来上がってるものもありますが、分離してもいい領域もあると思っています。

いわゆる大企業だからこそ持ってる強さというものが、逆に新しいことをやるためには、 障壁となっている部分もあります。

ただし、裏目で見ると、様々なアセットであったり、もしくは、ガバナンスがあるからこそ、安心/安全のブランドイメージであったり、新規事業ではなかなか獲得できないケイパビリティもあるはずで、そこをうまいタイミングで掛け合わせていくことが重要ではと思います。

大丸:

大企業の方々が新規事業に挑戦する上で、吉田さんが「ここは挑戦するべき」と考えられているポイントがあれば教えてもらえますか。

吉田:

技術であっても事業であっても、時代の流れが本当に早いのですよね。この先の未来を創造した時、おそらく3年後ぐらいは予想がつきますが、10年後は世の中の制度も技術やサービスも変わってると思います。そういった中で、自分の価値を上げる上で、自分自身でサービスや事業を立ち上げるという経験は、どんなに世の中が変わったとしても、必ず役に立つものだと思っています。立ち上げの挑戦を1回するということは、今後の自分自身のキャリアの中でも必ず役に立ちます。また、新規事業は辛くもあるんですけど、非常に楽しい面もあります。そのため、その経験ができるチャンスが与えられる大企業があるのであれば、挑戦して損は必ず無いと思い、メンバーにもそのように伝えてます。

「新規事業が前に進まない」そんな時は

武内:

DUALiiには今回のケース以外にもさまざまな相談が寄せられます。MetaMeの事業と同じように、ビジネス/テクノロジー/クリエイティブいずれかのピースが欠けていて、ピースを埋めながら一緒に事業を作っていくケースや、会社の意思決定スピードと新規事業開発のスピードがなかなか合わず、とにかくスピード感を持って事業を進めていきたいという課題感をご相談いただくケースもあります。

他にも、若手社員の方の育成の場として、責任を持って1つのプロジェクトを推進してほしいといった形でお声がけいただくケースも。その場合、社員の方にCXOで入っていただいて、実際にRelicでファンクションをしながら進めていく、そんなケースもあります。

DUALiiでは、個別に無料相談会を実施していますのでお気軽にお問い合わせください。

一緒に新規事業を前に進めていきましょう。

<DUALiiサービスサイト>

https://relic.co.jp/services/dualii/

MetaMeからお知らせ

MetaMeでは、一緒に空間を提供していく企業様を募集しています。
実際に、MetaMeを体験いただき、HPから運営会社へお問い合わせください。
https://official.metame.ne.jp/

<MetaMeについて>
価値観マッチングや、超多人数接続など、基礎研究で培われた技術を基盤を用いて、メタバース空間、NFTマーケットプレイス、仮想通貨などのサービスを提供しています。


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