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2020.5.12

株式会社電通 片山 智弘氏が語る 〜新規事業におけるデジタルテクノロジーとの適切な距離感〜(後編)

株式会社電通 片山 智弘氏が語る 〜新規事業におけるデジタルテクノロジーとの適切な距離感〜(後編)

前編では株式会社電通の片山氏に「イントレプレナーとして事業を成功に導く秘訣」について語っていただきました。
後編では「新規事業におけるデジタルテクノロジーとの適切な距離感」についてお伺いします。


(Battery編集部)
デジタルテクノロジーというと広義な言葉ですが、片山さんはどのように定義されているのでしょうか?

(片山氏)
私がデジタルテクノロジーと呼んでいるのは、ICTを使った技術領域とサービス両方を指しています。RelicさんのBatteryで使われているソースコードなんかもデジタルテクノロジーです。
もちろんFinTechやEdTechなどの技術領域、AI、ブロックチェーンなどの技術単体の言葉もすべて包含して呼んでいます。個々の内容はもちろん全然違うものではありますが、起こる変化やメタ化した時の捉えるポイントは共通です。

近い将来壊れる3つの壁

(Battery編集部)
現在数多のデジタルテクノロジーが世に出ていますが、テクノロジーによって私たちの生活の何が変わるのでしょうか?

(片山氏)
月並みですが、デジタルテクノロジーによって3つの壁が破壊され、デジタルとリアルの境界がなくなるのではないかと考えています。
最終的にはどちらで暮らしているか自分で認識できなくなる人も出てくるかもしれません。

①リアルの壁

現在はリアル色の強いライブイベントでさえも、デジタル上でリアルと同質に近い体験を提供する技術があり、ここまでがリアル、ここまでがデジタルという境界はますます取っ払われていくと思います。

②ハードの壁

ハードとソフトの役割の境界も今後さらに変化していくとみています。例えばですが、サーバーを構築するにあたり、昔はオンプレミスがスタンダードでしたが、今ではクラウドが当たり前にあります。サーバーはハードウェアでなければならないという物質的な壁がなくなってきています。

③時間の壁

時間の壁も今後ますますなくなっていくと思います。例えば、ランチを食べたい人の位置情報を分析し、タイムリーに飲食店の情報を届けようというマーケティングサービスを検討しているとして、GPSやbeaconの位置情報は何十メートルの単位でズレていたり、プッシュサーバーにデータを送るまでに約15分もかかったりと、なかなかやりたいことが実現できていませんでした。これが量子コンピュター×5Gの組み合わせでは、本当にオンタイムで出力できるようになります。

テクノロジーのキャッチアップ方法

(Battery編集部)
今後はリテラシー面でついてこれなくなってしまう人もでてくるのではないかと思いますが、デジタルテクノロジーが急速に普及する中で、我々がテクノロジーと共存していくために実施すべきことはなんでしょうか?

(片山氏)
難しく捉えずにメタ的に捉えることが重要だと思います。
様々なデジタルテクノロジーが出てきていますが、基本的に4つの構造は変わりません。

①インプット:デジタル空間への情報入力の動作

②スループット:変換/計算/保存等データ内部の動作

③アウトプット:必要に応じてデータを出力させる動作

④メソドロジー:①-③で一貫して適用されている理論や方法論

特定の理論や方法論上で、情報が入り、処理されて、アウトプットされる流れは、少なくとも30-40年は変わっていません。
エンジニアや研究者ではないため、私も最先端技術の詳細を聞くと訳が分からないこともありますが、メタ化すると構造は変わらないので、怖がらないで知ろうとすることが第一歩だと思います。

(Battery編集部)
4つの基本構造を押さえて着実に理解していけば良いのですね。
片山さんはどのようにデジタルテクノロジーの知見をアップデートしているのでしょうか?

(片山氏)
一般的なニュースメディアや論文、書籍なども読みますが、とにかく一次情報を取得するようにしています。
そのために、知りたい技術を持った企業の問い合わせフォームから直接「教えてください」と連絡することもあります。
そこから人との繋がりができたりするので、面白いです。

新規事業におけるデジタルテクノロジーとの適切な距離感

新規事業に活用するテクノロジーの選別方法

(Battery編集部)
メタ的に捉え、積極的に情報収集することが大切なんですね。
数多あるデジタルテクノロジーの中で、新規事業に活用するテクノロジーはどう選別すれば良いのでしょうか?

(片山氏)
大企業とベンチャー・スタートアップで大きく分かれると思います。大企業での新規事業では、前編でも語りましたが、プロローグの背景にアイデンティティやリソース、アセットがありますので、それらに相性の良いテクノロジーがあるはずです。本気で取り組むべきテクノロジーなのか、折を見て取り組めば良いのか、あまり関係がなく取り組む必要がないのか、大切なのは事業とテクノロジーにおける距離感の見極めです。

テクノロジーに取り組むべきタイミング

(片山氏)
ガートナー社(*1)のハイプ・サイクル上で言うと、会社のアイデンティティに合致しているのであれば、ハイプ・サイクルの黎明期から注視し、取り組むべきです。
折を見て取り組むのであれば、ハイプ・サイクルの頂点、バズっている時ですね。
既存事業の延長線上など手堅く収益化やコスト削減などを狙うのであれば、生産性の安定期で十分です。

例えば電通であれば、「Integrated Communication Design」という事業領域があって、そこから考えてみると、大量のデータをデジタル・コミュニケーションの分析や打ち手として利用した方がいいわけで、ビッグデータの情報処理やそれに関係する量子コンピューターなどは取り組むべき重要なテクノロジーと言えると思います。
反対にやや極端な例ですが、メニュー30種類程度の飲食店などで量子コンピューターが必要かと言われると情報量的にちょっと微妙ですよね。

「技術の発展度」と「事業との距離」の2軸のマトリクスで考えると良いと思います。私も新しい技術が出てきたら、電通やセガ、クロシードデジタルとの距離感を考えるようにしています。

※図:ガートナー社のハイプ・サイクル

*1 米国スタンフォードに本社を置く世界有数のリサーチおよびアドバイザリー企業

最後に

(Battery編集部)
テクノロジーではなく、事業を軸に考えることがポイントなんですね。
最後になりますが、片山さんの今後の目標や実現したいことを教えてください。

(片山氏)
今後は事業家として精進しながら、2つの目標を追っていきたいと思っています。

①新しい技術を社会に出していきたい
学生時代からの想いであり、一生かけて取り組もうと思っています。

②自分が考えたフレームワークや理論を世に出したい
誰もが知っているキャズム理論やSWOT分析などと同じくらい世に広まるオリジナルのフレームワークや理論を考え出したいです。

(Battery編集部)
長いお時間インタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました。

(インタビューを終えて)
前編は「イントレプレナーとして事業を成功に導く秘訣」、後編は「新規事業におけるデジタルテクノロジーとの適切な距離感」についてお伺いしてきました。イントレプレナーにとって大切なことは、所属している会社のアイデンティティやリソース、アセット、バイアスなど自社を深く理解すること、そしてデジタルテクノロジーも含めそれらが担当している新規事業にどのような影響を与えるのか常に考えて行動することでした。イントレプレナーとして新規事業にチャレンジしている方は、今一度自社独自のアイデンティティや最新のデジタルテクノロジー、それらが新規事業に与える影響について見直してみてはいかがでしょうか。困難な局面を打開する新しい発見があるかもしれません。

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