2023.11.17

クラウドファンディングの仕組みやビジネスモデルを徹底解説

クラウドファンディングの仕組みやビジネスモデルを徹底解説

現在、世界中で注目を集め続けているクラウドファンディング。

最近では、映画の予告編の製作費をクラウドファンディングで集めたことでも話題になりましたが、

一体なぜクラウドファンディングが注目されているのか。一体どのような仕組みによってビジネスとして成り立っているのか。

今回はクラウドファンディング自体の仕組みやビジネスモデルの概要について触れていきます。

今までご紹介してきた通り、クラウドファンディングとは一般的には次のように定義されています。

「不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である」

この定義からも分かるように、クラウドファンディングはインターネット上で不特定多数の人から資金を集められる仕組みです。

クラウドファンディングにおける3つの立場

クラウドファンディングは下記の3つの立場に分類できます。

  • プロジェクトの起案者・事業者
  • プラットフォーム運営業者
  • 出資者/支援者

クラウドファンディングにおける資金調達の流れ

まず、「プロジェクトの起案者・事業者」が、「プラットフォーム運営業者」に申請し、審査を受けます。審査を通過すると、クラウドファンディングサイトにプロジェクトを掲載してもらうことができます。

その後、「プロジェクトの起案者・事業者」と「プラットフォーム運営業者」はそのプロジェクトにお金を払って支援してくれる出資者/支援者」をサイト上で募り、それによって集まった資金を「プロジェクトの起案者・事業者」に渡します。

その際、「プラットフォーム運営業者」は集まった資金の何割かを手数料として受け取ります。この手数料は事業者によって異なります。

ここからは、それぞれの立場から見てクラウドファンディングとは一体どのような仕組みなのかを見ていきます。

プロジェクトの起案者・事業者

起案者・事業者にとって、クラウドファンディングは資金調達をすること以外にも、様々な意味を持っています。

まず、クラウドファンディングでプロジェクトを公開することは大きなPRになります。SNSなどを通じて情報が拡散されることで、プロジェクト実行前から不特定多数の人の共感を得ることができます。

また、プロジェクトを実行する前に、顧客のニーズを把握することができます。これは事業者にとって在庫リスクや売れ行きの低迷といったリスクの軽減にも繋がります。

クラウドファンディングプラットフォームの中には、「All or Nothing (目標達成型))」「All in(実行確約型)」という方式を採用しているところがあります。

■All or Nothing(目標達成型)

出資者から集めた資金が目標金額に到達した場合、プロジェクトを実行します。

仮に予め設定した期間内に、出資者から集めた資金が目標支援額に達しなかった場合、

出資者に資金を全額返金し、リターンも提供しません。

 

■All in(実行確約型)

目標金額は設定するものの、目標金額の達成の有無に関わらず、プロジェクトを実行します。

プラットフォーム運営業者

手数料が主な利益となるクラウドファンディング運営業者は、クラウドファンディングサイトを多くの人に利用してもらうために、サイトの信用性を高めなければなりません。

そのため、プロジェクトの内容を綿密に審査した上で、そのプロジェクトの魅力を不特定多数の人に最大限伝えることが重要です。

また、クラウドファンディングそのものの市場拡大も非常に重要になってきます。

出資者/支援者

クラウドファンディングの問題点として、事業者が集めた資金を、出資者の意に反して持ち逃げしてしまうケースや、倒産などによって貸し倒れが起きてしまうケースがあります。

出資者はこれらのリスクもきちんと把握した上で、出資を判断しなければなりません。このように、出資者にとって、クラウドファンディングでの出資は、通常の株式に投資するのに比べてリスクも高いです。

そのため、基本的に見返りの無い寄付型はもちろん、リターンを受け取ることができる購入型や投資型においても、「応援したい、支援したい」という共感や善意に依るところが大きいと言えます。

しかし一方でこの特徴は、出資者が同じ考えを持つ仲間を得られるというメリットでもあります。これは出資を受ける側も同様で、出資者と出資を受けた側との繋がりは単なる取引以上のものとなり、これもクラウドファンディングが持つ魅力のひとつとなっています。

このように、クラウドファンディングには3つの異なる立場が存在し、それぞれがこの仕組みにメリットを見出すことで、ビジネスとして成り立っています。どの立場にもメリットがあり、特有の魅力もあるクラウドファンディングは、今後も世界で市場を拡大させていくことを期待されています。

クラウドファンディングの分類

ここまでは、「クラウドファンディングにおける資金調達の流れ」と「クラウドファンディングにおける3つの立場」を詳しく紹介しました。ここからはクラウドファンディングの3つに分類し、それぞれのビジネスモデルと特徴を説明します。

クラウドファンディングは、大きくは購入型/寄付型/金融型の3つに分類することができます

3つの分類としては下記のような違いがあります。

  • 購入型クラウドファンディングは集まった支援に対して製品/サービスなどのリターンを出資者に提供する
  • 寄付型クラウドファンディングは出資者に対してリターンが提供する必要がない
  • 金融型クラウドファンディングは集まった支援に対して金銭的なリターンを提供する

また法的な規制も違うため、各クラウドファンディングの具体的な違いを紹介します。

購入型クラウドファンディング

購入型クラウドファンディングのビジネスモデル

購入型クラウドファンディングは企業やクリエイターが起案者として、クラウドファンディングサイトに製品やサービスをプロジェクトという形で掲載し、支援者が「支援」という形で購入をします。

購入型クラウドファンディングサイト運営者が「集まった資金の一部を手数料(決済手数料含む)」を徴収し、集まった支援に応じて起案者が支援者の方へリターンとして製品やサービスを提供する仕組みが整っています。

※クラウドファンディングサイトによって手数料が異なりますが、

  合計12〜25%(決済手数料)に設定されている場合が多いと言われています。

購入型クラウドファンディングの特徴

近年、他社とのオープンイノベーションや、テストマーケティングを活用することで、

顧客が求めるモノを一緒に作り上げたいといった企業側のニーズが高まっています。

その影響もあり、国内の購入型クラウドファンディング市場は肩上がりの急成長を続けており、2020年には市場規模が500億円(前年比約300%)を突破しています。

※2021年7月9日 一般社団法人日本クラウドファンディング協会 クラウドファンディング市場調査報告書より

購入型クラウドファンディングは、通常のECサイトと比較すると、起案者・事業者には下記の4つの利点があります。

  • リスクを抑えたテストマーケティングの実施
  • 商品やサービスのブランディング
  • プロモーション/PRの強化
  • 販売チャネル開拓

リスクを抑えたテストマーケティングの実施

テストマーケティングとは、開発された新商品を本格的に販売する前に、「商品の改良」や「本格的に量産して製造するかどうかの判断」を行うために限られた場所で販売し、消費者の生の声を聞くことです。

通常、調査会社や協力機関のリサーチ代や、リサーチ結果を集計/分析するための費用などで、テストマーケティングには高い費用がかかると言われています。

クラウドファンディングの場合、低コストでテストマーケティングを行う事ができ、市場の反応を把握することができます。

またクラウドファンディングサイトによっては、既存商品であっても、限定価格/限定カラー/ノベルティをセットにして販売するなどの方法でテストマーケティングを行うことも可能です。

商品やサービスのブランディング

クラウドファンディングでは、出資者から集めた資金が見える化しているため、商品やサービスのブランディングに繋がります。

新規事業や新しくブランドを立ち上げる際、クラウドファンディングを活用し「共感」を得ることで、リスクを抑えた状態で初期顧客(ファン)を獲得する事ができ、立ち上げ初期に必要な資金も一部調達できる可能性があります。

プロモーション/PRの強化

クラウドファンディングの場合、出資者は「支援」という形で商品を購入する事が多いと言われています。

そのため、購入後、出資者がSNSでの配信なども行い、出資者の知り合いや友人からさらなる「PR」や「支援」を得られる可能性があります。

またプロジェクトの支援金額が見える化しているため、多くの資金が集まると他メディアに人気の商品・サービスとして記事に取り上げやすくなっています。

販売チャネル開拓

プロジェクトが成功すると、実績としてクラウドファンディング終了後も市場に商品を出した際、小売店や他販売チャネルとの交渉が上手くいきやすいと言われています。

例えば、小売店に商品を卸す際、在庫の拡充や商品棚の中でもお客さんの目に付きやすい場所に商品を配置するような交渉や、オンラインサイトにはサイトトップに表示してもらうように交渉が行えるかもしれません。

プラットフォーム運営業者は、自社でクラウドファンディングサイトを運営することで、自社会員を獲得し、会員向けのサービスやキャンペーンなどを実施、上記の利点を活かし自社のブランドを展開することが可能だと言われています。

寄付型クラウドファンディング

寄付型クラウドファンディングのビジネスモデル

寄付型クラウドファンディングは自治体や学校法人などの団体が起案者として

災害支援や社会課題の取り組みなどの公益性のプロジェクトを立ち上げ、

出資者から資金を支援を「寄付」として受け取ることができます。

寄付型クラウドファンディングサイト運営者が「集まった資金の一部を手数料(決済手数料含む)」を徴収しますが、購入型と違い、集まった支援に応じて起案者が支援者の方へリターンを提供する必要はありません。

※クラウドファンディングサイトによって手数料が異なりますが、

  合計12〜20%(決済手数料)に設定されている場合が多いと言われています。

寄付型クラウドファンディングの特徴

寄付型クラウドファンディングの場合、税制上の優遇措置の対象となれば、プロジェクトの起案者・事業者は確定申告を行い、寄附金控除となる場合があります。

起案者が個人の場合は贈与税が発生する可能性があり、起案者が法人の場合は形態によって寄付金も課税対象になりえます。

金融型クラウドファンディング

金融型クラウドファンディングのビジネスモデル

金融型クラウドファンディングは資金調達を行いたい非上場企業や不動産会社が起案者として、

物件や株式をプロジェクトという形で掲載し、

出資者から資金を支援を「融資」「投資」として受け取ることができます。

金融型クラウドファンディングサイト運営者が「集まった資金の一部を手数料(決済手数料含む)」を徴収しますが、購入型/寄付型と違い、集まった支援に応じて起案者が支援者の方へ「金銭的なリターン」を提供することが可能です。

金融型クラウドファンディングの特徴

一言で金融型のクラウドファンディングといっても、「不動産投資型クラウドファンディング」

「株式投資型クラウドファンディング」「融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」と、細かく分類することができ、それぞれ特徴や強みが異なります。

不動産投資型クラウドファンディング

不動産投資型クラウドファンディングは、出資者から資金を集め、起案者・事業者はその資金をもとに物件を購入・運営します。

一般的に、不動産投資には多額の資金を必要とします。

対して不動産投資型クラウドファンディングは、出資者は少額から不動産投資を行う事ができ、入居者から得られる家賃収入などの利益と投資金額を合計した金額を出資者・投資家に分配します。

また不動産投資型クラウドファンディングは、取得した不動産の売却をし、賃料収入を併せた利益を得ることも可能です。

株式投資型クラウドファンディング

2015年5月に非上場企業の株式の発行を通じた投資が可能となりました。

株式投資型クラウドファンディングは、非上場企業の起案者・事業者が株式の発行を通じ、起案者に投資を募る事ができます。

株式投資型クラウドファンディングでは、出資者のメリットは2つあります。

  • 未上場株に投資が可能
  • 株主優待を受け取れる

未上場株に投資が可能

株式投資型クラウドファンディングでは、急成長が期待できる未上場企業に投資することが可能です。

通常、未上場の株式を購入する場合、高度な交渉力や膨大な資金を必要としますが、株式投資型クラウドファンディングでは、10万円程度から未上場株を購入することが可能です。

株主優待を受け取れる

株式投資型クラウドファンディングでは、出資先の企業から株主優待を受け取れる可能性があります。

※株主優待とは出資先の企業が株主に対し自社サービスの商品などをプレゼントしてくれる特典のことです。

株式投資型クラウドファンディングでは、出資者デメリットは3つあります。

  • 投資に対するリスクが大きい
  • 投資額に上限が設けられている。
  • 長期目線での投資が前提となる

投資に対するリスクが大きい

株式投資型クラウドファンディングによって投資可能な企業は、上場企業と比較すると、経営が安定していない場合があり、投資リスクも高い傾向があると言われています。

 投資額に上限が設けられている。

1人の出資者・投資家が起案者・事業者に年間で出資できる上限の金額が50万円と決まっており、

資金が豊富な投資家は分散投資を行っています。

長期目線での投資が前提となる

出資先の企業がIPOやM&Aなどのイグジットをするまでに時間がかかる場合が多く、

短期的に膨大な利益を得ることが困難な場合が多いです。

一方で、資金を集める起案者・事業者には下記の2つのメリットがあります。

  • 短期間で資金調達できる
  • 基本的に経営権を取られにくい

短期間で資金調達できる

一般的に、株式投資型クラウドファンディングの募集期間は1ヶ月から3ヶ月ほどとなっており、

短期的に資金調達を行う事ができます。

 経営権を取られにくい

金融商品取引法によって、1人の出資者・投資家が起案者・事業者に年間で出資できる上限の金額が50万円と決まってきているため、起案者・事業者からすると経営権を取られにくい仕組みになっていると言われています。

起案者・事業者には下記の2つのデメリットがあります。

  • 調達できる金額に上限がある
  • 手数料がかかる

調達できる金額に上限がある

金融商品取引法により、株式投資型クラウドファンディングでは年間で1億円未満と調達可能な金額に上限が設けられています。

手数料がかかる

株式投資型クラウドファンディングは、プラットフォーム事業者へ手数料を支払います。

※審査料は10万〜20万円、システム利用手数料は資金到達金額に対し10〜20%程度かかります。

融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)

金融型のクラウドファンディングの中でも、「融資(貸付)」をスキームに組み込んだクラウドファンディングを融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)と言われています。

出資者・投資家から集めた資金は、プラットフォーム事業者により、起案者・事業者に貸し付けられ、返済の際に支払われる利息が、リターンとなります。

銀行などの融資と比較し「短期間で資金調達できる」「地域復興などのCSRなどの取り組みが評価されやすい」といったメリットがあります。

また融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)において、プラットフォーム事業者の主な収入源は「融資における利益」となります。

プラットフォーム事業者は、融資先企業に対する貸出金利を投資家に対する利回りより大きく設定します。

※プラットフォーム事業者の利益は1.5%〜5%程になるように設定しています。

例えば、投資家への期待利回りが5%とします。

プラットフォーム事業者が、融資先への貸出金利を6.5%に設定すると、差し引き1.5%の利ざやがプラットフォーム事業者の利益になります。

※同じ融資型クラウドファンディングサイト内でも、案件により貸出金利が異なります。

まとめ

今回はクラウドファンディングに関する3つの立場をもとに、様々なクラウドファンディングのビジネスモデルと特徴を紹介しました。

インターネット上で不特定多数の人から資金を集められるクラウドファンディングは、近年急成長をしており、新たな資金調達方法として注目を集めています。

今後、クラウドファンディングに関した施策を行う際に、今回の記事を役立てていただけますと幸いです。

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