2023.12.29

「購入型」クラウドファンディングとは?仕組みやメリット/デメリットを解説!

「購入型」クラウドファンディングとは?仕組みやメリット/デメリットを解説!

クラウドファンディングは、「やりたいことはあるけど資金がない」という人の夢の実現を助ける新たな資金調達の形として活用が広まっています。一般社団法人日本クラウドファンディング協会の動向調査によると、2017年は77億円だった購入型クラウドファンディングの市場規模が、2020年にはなんと6.5倍501億円にもなっています。

ただクラウドファンディングと一口に言っても、その種類は多岐に渡ります。今回は、その中でも皆様に一番馴染みの深いであろう「購入型」クラウドファンディングに焦点を絞り、仕組みやメリットについて解説していきます。

購入型クラウドファンディングの仕組みとは?

そもそもクラウドファンディングとは、事業やプロジェクトの実施に必要な資金を、インターネットを介して、不特定多数の方から小口で資金提供や協力を得ること全般を指します。

支援者側は、クラウドファンディングサイトに掲載されているプロジェクトの中から、応援したいと思うものを自由に選ぶことができ、購入型クラウドファンディングの場合は、資金を提供する代わりに、サービスや製品をリターンとして入手することが出来ます 。

起案者側は、クラウドファンディングサイト運営者に支払われる手数料(決済手数料を含む)を除いた分の支援金を受け取ることが出来ます。(図1参照)。

※手数料はクラウドファンディングサイトによって異なりますが、決済手数料を含め12〜25%に設定されている場合が多いと言われています。

※各クラウドファンディングサイトの手数料比較はこちら

図1:CAMPFIRE 購入型クラウドファンディングの仕組み

All or Nothing型とAll In型

購入型クラウドファンディングには2つの種類があります。

まず1つ目は、「All or Nothing型」で、目標達成型とも呼ばれます。これは、期間内に目標金額に達することができない場合、集まった資金を受け取ることができない方式で、目標額に1円でも達しなければ、プロジェクトは終了となり、支援金は返金されリターンは発生しません。

もう一つが「All In型」(実行確約型)で、この形式では、期間内に集まった金額が目標額に達していなくても、その時点で集まった支援金を全額受け取ることが可能です。そのため、目標額に達しなかった場合でもプロジェクト自体は終了とならず、プロジェクト・リターンの履行は必ず実施されます。

※All or Nothing方式とAll In方式の詳しい違いはこちら

支援金の対価としてリターンが用意されている

購入型クラウドファンディングの大きな特徴は、実行者と支援者との間に、リターンに関する売買契約等が締結され、資金提供をする代わりにプロジェクト実施後に金銭以外のリターンが発生する点です。

代表的な購入型クラウドファンディングのリターンとしては、制作物などのプロダクト、イベントへの招待といった経験/体験、メッセージや電話でのお礼といったものがあります。

※より詳しいリターンの説明はこちら

購入型クラウドファンディングのメリットは?

支援者側のメリット:製品やサービスを安く/先駆けて手に入れることが出来る

支援者側の大きなメリットの1つは、魅力的なリターンです。資金援助をする代わりに、割引の効いた製品を手に入れることが出来たり、まだ世に出ていない、ないしは支援者限定の製品を入手することが出来ます。

例として、「1100年を超える伝統を守るために。『京都祇園祭山鉾行事』の応援サポーター募集」というプロジェクトが挙げられます。来場者の安全を確保するための警備費や保険料の増加が財政がひっ迫し、祇園祭が開催できなくなるという懸念から、祇園祭山鉾連合会がプロジェクトを立ち上げ、支援金を募りました。

そのリターンにとして、「厄除け粽(ちまき)」や「神紋、左三巴と木瓜の扇子」といった祇園祭の時にだけ販売される限定品や祇園祭山鉾連合会の関係者にしか渡されないという貴重なものが用意されていました。さらに「八坂神社の正式参拝、神社内常磐新殿にて神職様より講話、祇園祭山鉾連合会役員との交流昼食会」という京都ファン・神社仏閣ファンには嬉しいリターンも設定されており、10万円と高額なリターンでしたが、20個全ての枠が完売しました。結果的に約1,200人から目標金額の4倍を超える1,370万円の支援金が集まりました。

起案者側のメリット:新たな方法で資金調達が出来る

もし自己資金が不足している状態で何かを始めたければ、銀行から借り入れる、ないしは外部の投資家やベンチャーキャピタル等に出資してもらうのが一般的です。ただ、そのような手段を取らずとも資金を集めることができるため、新しい資金調達の在り方として、注目されています。また、金融機関など融資を断られた案件でも資金調達できる可能性があるのに加え、融資やローンと違い返済のリスクが少ないのも、クラウドファンディングでの資金調達の特徴です。

起案者のメリット:テストマーケティングを行うことが出来る

資金調達だけではなく、企業がテストマーケティングとしてクラウドファンディングを活用する事例も増えています。

企業が新たな製品・サービスを開発したとしても、それが市場に受け入れられなければ、失敗に終わってしまいます。当然ながら自分達でもインタビューなどの調査を通じ、需要があるかどうかの検証は行っているとは思いますが、実際に市場に出した時の反応は未知数です。そこで、クラウドファンディングを実施し先行販売をすることで、開発された製品や事業アイデアを顧客がどれだけ気に入ってくれるかを検証することができるのです。

クラウドファンディングにかかる費用は、登録費用や資本金など諸々の資金が必要な新規事業・起業と比べて、圧倒的に安く済みます。また、在庫を持たずに起案も出来るため、低リスクで始められることもクラウドファンディングの人気に拍車をかけた1つの要因なのかもしれません。

加えて、クラウドファンディングは投資家やマスコミをはじめ、学生や主婦、アーティスト、政治家など、様々な属性の方が利用しているため、もしその製品のブランドのコンセプトや品質などが話題になり、多くの顧客の共感を得て多額の資金調達に成功すれば、ニーズの確認やPR効果にとどまらず、さらなる顧客や提携企業の獲得にも繋げることも可能です

実際の活用例として、熊本県天草市でお茶屋を営む「松下園」が開発したイルカ形のティーバッグがあります。この頃若い人を中心に緑茶離れ、日本のお茶処の売上低下が深刻化していることを受け、若者にもお茶を飲んでもらえるようと開発されたのが、このイルカ型のティーバックでした。茶葉に「ブルーマロウ」という青い色の出る茶葉を使用しており、お湯を注ぐとティーポットの中をイルカが泳いでいるように見えるような仕掛けになっています。このクラウドファンディングプロジェクトを開始した当初は、まだ商品化が決定していない検討段階で、市場からの反響を見るためのものでしたが、結果的に若い女性を中心にSNSでバスり、約2カ月で目標金額の5倍を超える250万円もの支援金を集めました。これを受けて商品化が決定し、東急ハンズが展開する「HANDS EXPO」や、通販サイトでも販売が開始されました。

※企業によるクラウドファンディングの活用事例はこちら

購入型クラウドファンディングのデメリットは?

目標金額が達成されない可能性がある

クラウドファンディングの特性を考慮すれば当たり前ですが、支援者からの資金援助が集まらなければ、設定した目標金額に到達しない可能性もあります。もし目標金額に満たない場合、プロジェクトは頓挫、あるいは規模を縮小せざるをえないというリスクがあります。

資金調達に時間がかかる

クラウドファンディングで資金調達をすることが出来ますが、実際に資金として手元に入るのは、プロジェクト掲載後数カ月後になる可能性があります。そのため、クラウドファンディングでの資金調達を考える場合は、資金調達にかかる時間を見込んで、計画を立てること、また全ての資金をクラウドファンディングで集めようとするのではなく、あくまでも資金の一部を調達するための手段として用いることが重要です。

管理コストが高い

クラウドファンディングは、ただプロジェクトを掲載しさえすれば、お金が集まるものではありません。プロジェクトページの作成準備(画像・動画など)、支援者へのリターン履行はさることながら、資金調達後も支援者との信頼関係保全のために、活動報告を通じ、支援者に製品の開発がどれくらい進んでいるのか、具体的に集まった資金を使用してどのような活動を行ったのかといったことを随時報告する必要があるため、プロジェクトそのものの管理コストが少なからずかかってきます。

アイデアが盗まれる

クラウドファンディングでは、掲載したプロジェクトをより魅力的に見せるために、新しく開発する商品やサービスについて詳しく説明を載せることが多くあります。そのため、資金調達前に、掲載者よりも先に商品やサービスを開発されて市場に出されたり、類似品を作られたりする可能性があります。このような事態を防ぐためにも、特許を出願しておくといったアイデア守るための予防線を予め張っておく必要があります。

他のクラウドファンディングとの違いは?種類ごとに比較しながら解説!

寄付型クラウドファンディングとの違い

寄付型クラウドファンディングと購入型クラウドファンディングとの大きな違いは、支援者へのリターンの有無です。寄付型はその名の通り、寄付を目的としたクラウドファンディングであるため、プロジェクトの起案者に対し、見返りのない寄付を支援者が提供するという仕組みになっています。原則的に、物品や金銭によるリターンは設けられておらず、お礼メールや活動報告のみを受け取ることが出来ます。したがって支援者は物品やサービスの形でメリットを得ることはありませんが、支援金額に応じた寄付控除証明書の発行により、寄付金控除を受けることができます。

金融型クラウドファンディングとの違い

金融型クラウドファンディングとの違いは、リターンの内容です。金融型は株式型、投資型、融資型に大別され、それそれ、株式、利子、配当といった金銭的なリターンを資金提供の対価として享受することが出来ます。そのため、プロジェクトは法律(金融商品取引法)に基づいて実施され、プロジェクトの立ち上げのためには金融商品取引業者としての登録・認可をクリアする必要があります。現在の日本で最も市場シェアが高いのはこの金融型クラウドファンディングです(図2)。

図2:消費者庁 クラウドファンディング(購入型)の動向整理

購入型クラウドファンディングの代表的なサイト

さてここでは日本における代表的な購入型クラウドファンディングサイトを4つご紹介いたします。

CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

CAMPFIREは、「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。」という思いの元、立ち上げられたクラウドファンディングサイトで、年間支援件数がNo.1、これまでに6.2万件以上のプロジェクトが立ち上がり、710万人以上の人から560億円以上の支援金を集めた、国内最大の規模を誇っています。地域活性化を目指す「CAMPFIRE ふるさと納税」、継続的な支援を行なう「CAMPFIREコミュニティ」、クリエイターの思い描くアイデアの商品化を目指すSPA(製造小売)型クラウドファンディング「CAMPFIRE Creation」など、複数のプラットフォームも提供しています。

READYFOR(レディーフォー)

READYFORは、日本におけるクラウドファンディングの草分け的存在と言われており、医療や福祉、地域活性化など社会貢献型を中心としたプロジェクトが多いのが特徴です。対価性のないリターン(寄付型)での成功事例も豊富にあります。フルサポートプランでは、クラウドファンディングのプロである“キュレーター”が、担当者として準備〜終了まで伴走してくれるプランも用意されています。

Makuake(マクアケ)

サイバーエージェントグループの新規事業としてスタートした「Makuake」は、累計プロジェクト数2.2万件、累計応援総額500億円以上(2021年12月現在)を誇る日本大手のクラウドファンディングサイトです。ジャンルとして、ガジェット系に強みを持っていることが特徴です。近年では全国100社以上の金融機関との連携し、日本各地の事業者が活用しているほか、国内外の流通パートナーとも連携し、プロジェクト終了後も事業が広がるよう支援しています。

ENjiNE(エンジン)

ENjiNEは、一般的にクラウドファンディングのプロジェクト成功率は30〜50%と言われている中で、80%以上の成功率でプロジェクトを成功に導いています。また、豊富な実績を持つスタッフやキュレーターがサポートを担当し、各プロジェクトのアイデアの発掘・起案~プロジェクト成功、その後の事業化~成⻑まで、一貫した支援が可能です。

※より詳しいクラウドファンディングサイトの比較はこちら

まとめ

さて今回はクラウドファンディングの中でも、購入型に焦点を当てて仕組みやメリット/デメリットを解説してきました。購入型クラウドファンディングは個人・法人問わず誰でも簡単に始められるからこそ、特徴を把握した上で活用しないと、炎上したりトラブルに発展するケースもあるのです。理解を深めた上でプロジェクトを行い、資金調達やPR、テストマーケティングに活用することをおすすめします。

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