2023.11.17

自主制作映画を作って公開するまでの方法や費用まとめ

自主制作映画を作って公開するまでの方法や費用まとめ

庵野秀明、犬童一心、園子温など、今や日本を代表する映画監督らは、もともと自主制作映画を経て商業映画の世界へと進出しています。自主制作映画は若手監督の登竜門とも言われており、業界人の多くは常日頃、注目を寄せています。では、こうした自主制作映画を作って公開するまでの方法や費用とは一体どのようなものなのでしょうか。早速見ていきましょう。

映画制作の手順

まず、商業映画や自主制作映画に関わらず、映画制作の手順を紹介していきます。

企画(ディベロップメント)

映画制作の第一歩は企画/構成を考えるところからです。映画のテーマ、アイディア、タイトル、ストーリー、キャスティング、予算の調達、撮影スケジュール、上映方法など、映画を制作しヒットさせるまでの道のりを企画します。これらは基本的にプロデューサーに一任される役割ですが、制作現場においては監督が最高リーダーであるため、ある程度監督にも権限が任せられています。

シナリオ・絵コンテ

映画のテーマやコンセプトが固まったら、シナリオ作成に移ります。内容が面白いのはもちろんのこと、一つのシーンを長回しし続けると、観てる側が飽きてしまうため、テンポの良い場面展開を念頭にシナリオ作成に打ち込むのも一つの手です。また、シナリオが完成したら、それを実際に映像化するための絵コンテを作成します。邦画の長編映画の場合、だいたい600〜700ほどのカット数があるため、その分の絵コンテが必要となってきます。

準備(プリプロダクション)

映画はたくさんのスタッフの協力のもと作られています。予算やスケジュールを管轄するプロデューサーや現場のトップである監督などの制作チームに加え、衣装・大道具・小道具・メイクなどの美術チーム、カメラ・照明・音声・編集などの技術チームが集って制作されます。それぞれのスタッフが話し合い、打ち合わせやロケハンなど十分な準備を行う必要があります。その間、キャストは顔合わせや本読みを行い、スタッフ同様、撮影に向けた準備を同時進行で行います。

撮影(シューティング)

全スタッフ・キャストが集結し、いよいよ撮影です。一般的な邦画の場合、100分ものでだいたい600〜700カットあると言われており、ハリウッド映画ともなれば3,000以上のカット数があります。自主映画の場合だと比較的スケジュールに余裕がありますが、人気タレントを起用した商業映画だと、詰め詰めのスケジュールの中撮影が行われることがほとんどだそうです。

編集(ポストプロダクション)

撮影が全て完了したら、あとはそれを作品として完成させるための編集作業です。主に撮影現場で撮った出演者の声とBGM/効果音を重ねる音響効果、膨大な量のカットを一つにつなぎ合わせていく視覚効果の2種類の編集が行われます。

上映

最後に、編集を終え完成した映画の上映です。ミニシアター・名画座などで披露したり、配給会社を通じて全国映画館で公開したりします。また、劇場での上映に加え、映画祭やコンペへの出品も行います。

映画制作にかかる費用

つぎに、映画を制作する際にかかる費用について説明します。

機材費

撮影を行うために必要なカメラや音響、照明などの機材にかかる費用です。ツテがなく一から始める場合、全てを準備しなければならないため、その分機材をレンタルする費用も多くなってきますが、日本映画大学や日本大学芸術学部など、本格的な映画制作に取り組んでいる学生が映画を作る場合、大学側や自治組織などによって機材の貸し出しが無料で行われることもあるようです。

ロケ費

屋外スペースや屋内スタジオなど、撮影を行う場所にかけられる費用も必要です。道路での撮影を行う場合、所轄の警察署に道路使用許可申請・道路使用料金の支払いが必要となります。また、スタジオや施設なども同様に、使用許可願いを提出しなければ貸してくれないため、申請の承認などを考慮して余裕を持ったスケジュールを立てましょう。

衣装費

自主映画の場合だと、役者の私物を使用するケースが多いですが、一般的な映画であれば、衣装・デザイン担当がつき、題材によっては数百万円単位のお金がかけられることもあります。

美術費

大道具、小道具、メイク、電飾、フリップなどの撮影中に使われるものと、CGや模式図など編集中に挿し込まれるものの2種類があります。

人件費

映画に出演するキャスト、映画を作るスタッフ、協力してくれる地域の方々など、とにかく映画を制作する際にかかる人件費は膨大なものです。また、撮影現場での食費や、現場までの交通費、遠方での撮影であれば宿泊費なども加算されてきます。メインキャストだけでなく、たとえばエキストラを100人出演させるといった場合、100人分の出演料・食費・交通費が加わってくるため、はなから低予算での制作となればあまり人件費をかけられません。

保険費

映画撮影に関係するフィルム保険費や、撮影中の事故などを考慮した傷害保険などです。

納品費

最後に、映画を納品する際に必要となる納品費がかけられます。パッケージ化されたDCP(デジタルシネマパッケージ)を、HDD(ハードディスクドライブ)などに格納化して、劇場に納品する作業です。映画館上映ではなく、WEB動画で配信する場合は”コーディング費”が発生し、動画を手元に残すのであれば、DVDなどの”メディア費”がかかります。

さらに、テレビCMのような大規模なものになると、”プリント費”と呼ばれるコストが発生し、また、完成した動画をアーカイブとして残す場合には、”管理費”が別途で必要となります。

予算の調達手段

では、そうした制作過程を経て作られる映画に必要な予算は、どのような手段を持って調達されるのでしょうか。

自己資金

自主制作映画と言うだけあって、制作予算を自己資金に頼るといった方も多いようです。特にツテがない状態で自主映画を作っている人であれば、100%自己資金で制作しなければならないため、映画作り以外の時間は全てアルバイトに当てているという方もいます。

助成金・補助金

文化庁による文化芸術振興費補助金および日本芸術文化振興会など、映画制作に対する支援制度があらゆる場所で行われています。劇映画・記録映画及びアニメーション映画等の日本映画への支援、そして、映画による国際文化交流を目指した国際共同製作映画への支援を実施中です。

スポンサーシップ

プライベートフィルムではなく、劇場を抑えて上映する場合、セールスポイントとして活用すればスポンサーをつけることも難しくはありません。エンドロールの協力企業に名前を出すことはもちろん、作中にスポンサーとなる企業/お店を登場させるシーンがあるなど、何かしらの諸条件は必要となってきますが、映画の評価・スポンサーの認知度がともにアップする相乗効果も期待できます。

クラウドファンディング

近年、クラウドファンディングを活用した映画制作事例は増えています。学生の自主制作映画のみならず、有名俳優を起用した商業映画でも活用されているようです。特にMotionGalleryやCAMPFIRE、Makuakeなど、国内で人気の高いクラウドファンディングサイトでも映画にまつわるプロジェクトは多く実施されています。

クラウドファンディング×自主映画

そんなクラウドファンディングを活用した自主映画プロジェクトをいくつか見てみましょう。

90年生まれの若き映画監督が、“言葉にならない空気感”を繊細なタッチで描く。短編映画『atmosphere』制作支援プロジェクト

https://www.booster-parco.com/project/35

映画監督の石橋夕帆さんは、1990年生まれの若手女性監督。このたび、パルコが運営するクラウドファンディングサイト・BOOSTERにて、自主制作映画「atmosphere」の実現に向け、表題のプロジェクトを立ち上げました。

この映画は、東京の下町にある染色工場で働く、とある女性が主人公の物語。石橋さんは監督として、この作品で「なかなか言葉にならない、溢れ出てくる想い」というものを描きたいと思い、プロジェクトを進めています。

本プロジェクトは、1,310,000円もの資金調達に成功し、無事制作に向けたプロセスを踏むことができました。同作はアマチュア作品にしてさまざまな人たちから好評を得ており、あの岩井俊二監督も絶賛コメントを寄せているほど傑作だそうです。

http://www.atmosphere-film.com/

古新舜が贈る!長編映画「あまのがわ」〜分身ロボットOriHimeと自分探しの旅〜

https://camp-fire.jp/projects/view/9350

いじめと引きこもりを経験した古新舜監督。自身の体験も交えながら企画した長編映画「あまのがわ」制作のため、CAMPFIREを通じて資金調達を開始しました。同作は、いじめで自分を見失った女子高生の史織が、遭遇した分身ロボットのOriHimeと屋久島へ旅立ち、幻想的な場所で人や自然、食の大切さを体感、自分らしさを取り戻していくストーリーです。

古新監督にとって今作は、2013年の「ノー・ヴォイス」以来となる長編2作目。過去には倉科カナや天野浩成などの人気俳優が出演した経験もあり、注目の映画監督の一人として認知されています。そんな期待あふれる古新監督の長編映画というだけあって、本プロジェクトには多くの支援者がサポートに協力し、1,677,777円もの出資金を集めることに成功しました。

http://amanogawa-movie.com/

まとめ

日本の商業映画の平均制作費は5,000万円だそうです。しかし、一方アメリカや中国では、学生の自主映画でも1億円ほど予算をかけるといいます。かつてより日本映画はお金がないと言われていますが、クラウドファンディングのような新しいサービスが活用されるようになった今、日本映画が再び偉大なエンタテインメントとして花を咲かせるようになるでしょう。

<参考にしたサイト>

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