高野秀敏氏が語る〜大企業の新規事業を成功させる秘訣〜(後編)

前編「キープレイヤーズ代表高野秀敏氏が語る~大企業の新規事業が失敗する3つの要因~」では、大企業の新規事業が失敗に終わる要因についてキープレイヤーズ代表高野氏に解説いただきました。
後編となる今回は、大企業の新規事業を成功させる秘訣について語っていただきます。
スタートアップ・ベンチャーの動向
(Battery編集部)
大企業において新規事業がなかなか上手くいかないことは先程お話いただいた要因が関係しているかと思いますが、一方でスタートアップ・ベンチャーにおける新規事業やイノベーション創出はどうでしょうか?
(高野氏)
最近はスタートアップ・ベンチャーブームと言われているように、年々スタートアップやベンチャーによる新規事業やイノベーション創出は加速していると感じています。
特に次の3つの影響が大きいと思います。
1つ目は「スタートアップ・ベンチャーに優秀な若者が流入するようになってきた」ことです。
「優秀な若者」とは、一流大学を卒業後に大手企業に入って出世階段を登ってきた、いわゆるエリートコースを歩んできた若者のことです。
私自身未だにキャリアコンサルタントとして現場とつながっていますが、大手企業で新規事業を立ち上げようとしたが、組織的な要因で上手くいかなっかった等の理由でスタートアップ・ベンチャーへ転職する、独立して起業するといった若者をこれまで多くサポートしてきました。特に最近は「大学卒→大手企業→ベンチャー・スタートアップ」のルートを進む若者が増えてきていると私自身肌で感じています。同じく、新卒でスタートアップ・ベンチャーを志望する優秀な学生の割合も増えてきていますね。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000033607.html
(高野氏)
2つ目は「スタートアップ・ベンチャーの立ち上げと成長を支える周辺組織・仕組みが一定水準に達した」ことです。
最近、ベンチャーキャピタルを中心とするリスクマネーの拡充やインキュベータ╱アクセラレータ、専門メディア、コワーキング・スペースといった組織が相次いで立ち上がっています。
例えばベンチャーキャピタルによる投資は6年連続で増加しており、2018年度には国内投資額が1,640億円に達しています。
しかし、大企業の場合、企業全体として多額の資金を保有しているものの、そこから新規事業部、新規事業部の中でも複数の新規プロジェクトへと資金が割り当てられますので、結果的にスタートアップ・ベンチャーがかけられる資金よりも少なくなることが多々あります。
ベンチャーキャピタル以外だと、エンジェル投資家による投資も増えています。
日本ではエンジェル投資家が極端に少ないといわれてきましたが、起業経験者が徐々に増え、彼らがエンジェル投資家に転身するケースが増えているのが要因です。
3つ目は大手企業がオープンイノベーション追求の一環としてスタートアップ・ベンチャーとの連携に動き始めていることです。
スタートアップにとって大手企業は、事業提携や共同研究、資金調達、販売パートナー開拓、エグジット先という観点からから存在意義が大きいです。
ここ最近スタートアップとの連携を行うために、コーポレート・ベンチャーキャピタルの設立やアクセラレータ・プログラムの提供に乗り出す大手企業が増えています。
その他に大手企業とスタートアップの出会いの場や機会も増えていると感じます。
例えば、大企業とスタートアップ・ベンチャーをつなぐためのウェブ上のコミュニティサービスを提供する企業も出てきていますし、ピッチ・イベントやハッカソンなどが以前に比べ頻繁に開催されるようになりましたね。
大企業の新規事業を成功させる秘訣
(Battery編集部)
新規事業やイノベーション創出を成功させる為に、今後大企業はどうすればよいと
思われますか?
(高野氏)
先程お話した「意思決定スピードの遅さ」「新規事業を成功させた実績やノウハウを持つ人材がいない」「結果へのコミットが弱い」という3つの要因を自社もしくは外部からの協力を得て改善することが必要ですね。
「意思決定スピードの遅さ」については先程も触れましたが、「完全なトップダウン型」か「完全に現場に任せるボトムアップ型」で進めることで意思決定にかかる時間や労力を軽減しスピードアップを図ることができます。
「新規事業を成功させた実績やノウハウを持つ人材がいない」ことに対しては、例えばスタートアップ・ベンチャーで新規事業立ち上げやイノベーション創出に必要な経験やスキルを持った人材を獲得することも選択肢として考えられます。採用までに時間がかかるのであれば新規事業立ち上げに強いコンサルティング会社を活用することも有効ですね。
「結果へのコミットが弱い」ことについては、「組織」と「人」の側面から改善が必要だと思います。
「組織」については事業アイデアを考えた人が事業化・グロースまで担当できるような組織にすることも有効だと思います。
そうすることでオーナーシップや事業への愛着が高まり、結果へのコミットも変わってくるのではないでしょうか。
「人」については大企業とスタートアップ・ベンチャーとの交流です。
オープンイノベーションにより大企業とベンチャー・スタートアップとの交流の機会は増えています。その際に、スタートアップ・ベンチャーで働く人のオーナーシップや事業への愛着、結果へのコミット力等を大企業で働く人に肌で感じてもらう。そういった人の感情に訴えるアプローチも有効だと思います。
挑戦する人を支援する
(Battery編集部)
最後に今後高野さんが特に注力していきたいことは何でしょうか?
(高野氏)
「挑戦する人」を支援することですね。
キャリアカウンセリング、アドバイザー、エンジェル投資等、様々なことに取り組んでいますが、手法は違うだけでその根底にあるのは挑戦する人をサポートすることです。
特に新規事業を創出したい・イノベーションを起こしたいという想いを持った若い人を応援したいと思っています。
いつでも相談を受けることができるようにtwitterやfacebookのメッセージを受けられるに設定しているので、身構えてしまうかもしれませんが勇気をもって連絡をしてきてほしいですね。
【高野 秀敏 氏 プロフィール】
1999年に株式会社インテリジェンスへ入社。2005年に株式会社キープレイヤーズを設立。3,500名以上の経営者の相談と、10,000名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。また、55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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