新規事業アイデアを整理するフレームワークについて徹底解説

新規事業開発は、事業アイデアの仮説構築とその検証の繰り返しです。「事業アイデア」と言っても、その定義は組織や個人によって異なりますが、どのように整理すれば事業アイデアを端的に示すことができるのでしょうか。
今回は、事業アイデアの重要観点を整理するフレームワークについて解説します。
Contents
事業アイデアを整理するメリット
フレームワークを用いて事業アイデアを整理するメリットは複数あります。言語化により自分の思考を整理できるだけでなく、以下でご紹介するようなメリットがあり、新規事業開発の推進に大いに役立ちます。
一度整理して終わりではなく、仮説構築と検証のサイクルを回すごとに整理すると良いでしょう。

重要観点の検討漏れを防止できる
「事業アイデア」の定義は組織や個人によって異なりますが、骨子として押さえるべき重要な観点は共通しています。押さえるべき観点が定型化されたフレームワークで整理することで、重要観点の検討状況を可視化でき、検討漏れを防ぐことができます。また、整理することで、副次的に各観点の整合性が取れているかのチェックにもなります。
プロジェクトメンバー間で共通認識を構築できる
新規事業開発は、投下できる予算やリソースの兼ね合いから、少数精鋭のチームで進めるケースが多いです。
少人数のためプロジェクトメンバーとは比較的コミュニケーションが取りやすいですが、事業アイデアについて口頭だけで共通認識を構築できていると高を括っていると、後々認識違いが露呈し、思わぬトラブルを招くことがあります。フレームワークで整理し、事業アイデアを可視化することで、確実にメンバー間で共通認識を構築することができるでしょう。
簡潔に事業の骨子を伝えることができる
新規事業開発では、企業/部署からの予算獲得や投資家からの資金調達、実証実験の協力依頼、提携の打診など、プロジェクトメンバー以外の人に事業アイデアを説明しなければならない場面が必ず存在します。その際に、フレームワークで整理した内容を説明/提示することで、簡潔に事業アイデアの骨子を伝えることが可能です。
事業アイデアを整理するフレームワーク
それでは、どのように整理すれば事業アイデアについて端的に示すことができるのでしょうか。今回は事業アイデアを整理するフレームワークを3つ紹介します。
リーンキャンバス
リーンキャンバスは、特に新規事業の仮説整理に向いたフレームワークです。シリコンバレーの起業家であるアッシュ・マウリャ氏の著書『Running Lean』の中で紹介されました。プロダクトとその勝ち筋にフォーカスしており、以下9つの観点を1枚のシートで整理します。
1.課題
事業(プロダクト)は、その顧客の何らかの課題を解決することで価値を提供するものですが、解決する課題を重要度の高い1〜3つに絞って記載します。
2.顧客セグメント
課題を特に抱えている顧客層を記載します。個人の場合もあれば法人の場合もあります。また、マッチングモデルなどの事業では顧客層が2つになる場合があります。
3.独自の提供価値
事業(プロダクト)を通じて顧客へ提供したい独自性のある価値を記載します。
4.解決案(ソリューション)
顧客セグメントの課題を解決し、独自の提供価値をつくる具体的な方法を記載します。複数考えられる場合は、重要度の高い上位3つ程度に絞って記載します。
5.チャネル
顧客セグメントにリーチするチャネルを記載します。
6.収益の流れ
どのように収益を得るのか(マネタイズモデル)や提供価格などを記載します。
7.コスト構造
事業によって比重が大きいコストは異なりますが、その事業における主要コストの項目を記載します。
8.主要KPI
事業にとって成長の指標となる項目を記載します。
9.圧倒的な優位性(競合優位性)
競合に対する優位性やそれを構築する要素について記載します。
リーンキャンバスの記載例:対話型デジタルサイネージ
※色がついている観点は、後に紹介するビジネスモデルキャンバスとの差異です
※各観点に番号を振っていますが、検討すべき順番を示しています
※アイディエーションの方法によっては検討順が前後するケースもあるため、絶対にこの順番で検討しなければならないわけではありません
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、Strategyzer創設者であるアレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール教授が開発したフレームワークです。2人の著書『Business Model Generation』の中で紹介されました。主要リソースや主要活動、主要パートナーなど、提供価値を実現する要素にフォーカスしており、以下9つの観点を1枚のシートで整理します。
1.顧客セグメント
価値を提供したい顧客層を記載します。個人の場合もあれば法人の場合もあります。また、マッチングモデルなどの事業では顧客層が2つになる場合があります。
2.提供価値
事業(プロダクト)を通じて顧客へ提供したい価値を記載します。
3.チャネル
顧客セグメントにリーチするチャネルを記載します。
4.顧客との関係(関係構築の手段)
顧客との関係を構築、維持、展開する手段を記載します。チャネルと類似していますが、チャネルは顧客との接点で、顧客との関係を構築する手段とは異なります。
5.収益の流れ
どのように収益を得るのか(マネタイズモデル)や提供価格などを記載します。
6.主要リソース
事業に必要な経営資源を記載します。経営資源を大別すると、ヒト、モノ、カネ、情報、知的財産などがあります。
7.主要活動
価値を提供するために必要な主要活動を記載します。
8.主要パートナー
事業に必要な代替できない提携先、協力者、サプライヤーなどを記載します。
9.コスト構造
事業によって比重が大きいコストは異なりますが、その事業における主要コストの項目を記載します。
ビジネスモデルキャンバスの記載例:対話型デジタルサイネージ
※色がついている観点は、前に紹介したリーンキャンバスとの差異です
※各観点に番号を振っていますが、検討すべき順番を示しています
※アイディエーションの方法によっては検討順が前後するケースもあるため、絶対にこの順番で検討しなければならないわけではありません
6W2H
6W2Hは、リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスよりも馴染みのある観点で、簡易に事業アイデアを整理できるフレームワークです。以下8つの観点を1枚のシートで整理します。
1.誰が(Who)
プロジェクトメンバーとその役割や、関係部署、協業先などを記載します。
2.誰に(Whom)
価値を提供したい顧客層を記載します。個人の場合もあれば法人の場合もあります。また、マッチングモデルなどの事業では顧客層が2つになる場合があります。
3.何を(What)
事業(プロダクト)を通じて顧客へ提供したい価値を記載します。
4.どのように(How)
顧客へ価値を提供するための具体的な方法(解決案)を記載します。
5.なぜ(why)
顧客へその価値を提供したい理由(顧客が抱えている課題)を記載します。
6.いつ(When)
特に価値を提供するべき(顧客が課題を感じる)タイミングを記載します。
7.どこで(Where)
顧客にリーチする場(チャネル)を記載します。
8.いくらで(How much)
どのように収益を得るのか(マネタイズモデル)や提供価格などを記載します。
6W2Hの記載例:対話型デジタルサイネージ
※便宜上、各観点に番号を振っていますが、この順番で検討しなければならないわけではありません
新規事業開発に最も適したフレームワーク
今回紹介した3つのフレームワークは、いずれも新規事業開発で活用できますが、それぞれフォーカスしている観点が異なります。
新規事業において大切なのは市場/顧客、競合、自社の3Cの観点です。事業によって重要観点の重みが異なるため一概には言えませんが、3つのフレームワークの中で唯一3Cの観点を網羅しているリーンキャンバスが新規事業開発に最も適していると言えるでしょう。
まとめ
事業アイデアを整理するフレームワークについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
新規事業開発では、仮説構築とその検証を繰り返し、事業アイデアをアップデートしていきます。重要観点の検討漏れ防止やプロジェクトメンバー間の共通認識の構築、外部への簡潔な説明のために、フレームワークを活用してみてはいかがでしょうか。この記事が皆さんの新規事業開発の一助となれば幸いです。
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