世界のクラウドファンディング市場規模を比較してみました

今回は主要各国のクラウドファンディングの市場規模比較について考察していきます。
国内ではクラウドファンディングは2011年から正式に開始された新しいものという印象が強いですが、海外では長きに渡って存在しているサービスとして認知されています。また、他国と比較すると日本のクラウドファンディングの規模はそれほど大きくなく、先進国の中ではむしろ小規模と言える位置にあります。
では海外、とりわけ主要国におけるクラウドファンディングの市場規模は一体どれほどのものなのか。
比較しながら見てみましょう。
Contents
アメリカの市場規模
クラウドファンディングの生みの親ともいえるのが”アメリカ”です。KickstarterやIndiegogoなどは近年世界的にも有名なクラウドファンディングサイトとして知られており、ひとつのプロジェクトでも2000万ドル以上の資金調達に成功するほど、アメリカのクラウドファンディングは大規模なものとなっています。
2012年の時点で、世界のクラウドファンディングの市場規模の成長に関して、アメリカの資金調達額は約1,800億円でした。全体の資金調達額は3,000億円だったため、過半数以上はアメリカが占めています。また、2013年にも世界のクラウドファンディング市場はおよそ5,000億円を誇りましたが、アメリカはそのうち2,600億円を占めており、アメリカは実に世界のクラウドファンディングの半分に貢献していると言えます。
2014年以降もアメリカは人気クラウドファンディングサイトを中心に成長を続けております。
イギリスの市場規模
ヨーロッパ全体でおよそ30億ドル以上の支援額を募る中、ドイツやフランスを抑え突出しているのが、投資型クラウドファンディングの先駆けでもある”イギリス”です。2016年のEU離脱に伴い、融資型クラウドファンディングの投資に対する影響は少なからず考えられますが、依然としてイギリスのクラウドファンディングは世界レベルで見て好調のままにあります。
また、近年世界中で知名度と活用率を上げている*P2Pレンディングはイギリス発祥の投資商品であり、たとえば2005年に設立された”zopa”というソーシャルレンディングサービスによる現在の運用総額は実に800億円以上の業績を誇っています。ソーシャルレンディングをはじめ、イギリスのクラウドファンディングはヨーロッパ最大級であり、2013年の統計データによると世界のクラウドファンディング市場の34%はイギリスが占めていました。今後も衰退するどころか、ますます上昇の一途を辿ることでしょう。
(*P2Pレンディング:ウェブサイトを通じてお金を貸したい人とお金を借りたい人を結び付ける融資手法。)
日本の市場規模
国内クラウドファンディングの市場規模は年々上昇しており、年間の総支援額に関して言えば、2012年が71億、2013年が120億、2014年が216億、2015年が363億、2016年が477億円であり、5年間で急速な成長を遂げています。
国内初のクラウドファンディングプラットフォームであるReadyfor?は2011年からサービスを開始しましたが、当時は年間の資金調達額が1,000万円だったにも関わらず、2016年までに累計で33億円の支援額を集めています。
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中国の市場規模
ここ数年の間、中国のクラウドファンディング市場は拡大しており、資金調達額も年々倍増する勢いで成長しています。2011年より始まった中国初のクラウドファンディングサイト・DemoHourは、「中国版Kickstarter」と言われるほど海外からの支持も高く、その他ファッション専門のクラウドファンディングサービス・ZAOZAOや、中国初のオンライン投資型サイト・AngelCrunchなど、あらゆるサイトが多くのプロジェクトを成功させているため、近年人気を博しています。
下記の図で分かる通り、2013年の時点では年間資金調達額が5,200万ドルでしたが、2014年には1億4,800万ドル、2015年には3億3,000万ドル、2016年には6億6,000万ドル、2017年には13億2,000万ドルの規模を誇っており、将来的な話をすれば2025年の資金調達額は500億ドルを越すのではないかと予測されるほど、現在中国のクラウドファンディングは勢いを増しています。
南米の市場規模
2011年8月、アルゼンチン発祥の”南米最大”クラウドファンディングサイトであるidea.meが運営を開始しました。idea.meは「BE PART OF THE COMMUNITY THAT BOOSTS CREATIVE IDEAS(創造的なアイデアを強化する共同体の一部になる)」をコンセプトにしており、まさに創造性に富んだプロジェクトがいくつも実行されています。idea.meは創設からたった1年半の間で180以上のプロジェクトを施行しており、現在はおよそ25,000人のサイト利用者、5,000人の出資者が募るほどの人気ぶりを誇っています。
2012年の段階では南米のクラウドファンディングの資金調達額は80万ドル程度でしたが、3年後の2015年のデータによると8,574万ドルと100倍以上に成長していることが分かります。KickstarterやIndiegogo(アメリカ)、Canada Media Fund(カナダ)など、北米地域のクラウドファンディングと比較してしまうと、まだまだ小規模ではありますが、南米地域におけるクラウドファンディングの今後の伸びしろには大きな期待が寄せられています。
オセアニアの市場規模
2012年の統計ではオセアニア全体のクラウドファンディング市場規模は7,600万ドルであり、その頃からオーストラリアやニュージーランドなどで多くのサイトが運営を開始し凄まじい業績を誇っています。たとえば、世界で一番歴史のあるオーストラリアの投資型クラウドファンディング・ASSOBでは創設から8年間で130億円以上の投資に成功しており、同じくオーストラリアのPozibleでは仮想通貨のビットコインを使用しています。また、ニュージーランドのGivealittleでは、昨年8月に『New Zealand beach bought by crowdfunding is given to public』というニュージーランドの自然を守るプロジェクトで、同国におけるクラウドファンディングで歴代1位となる支援金額 1億7,500万円を集めることに成功しました。
いくつかのプラットフォームでは年々規模を大きくしている一方、失敗に陥るケースも多いせいか、2015年のデータでは前年の成長率が59%、全体の資金調達額は6,680万ドルと、オセアニア全体のクラウドファンディングを見てしまうと、波に乗れていないのが現状です。
アフリカの市場規模
2015年、アフリカのクラウドファンディング市場規模は33億円でした。これは他の地域や国家と比べると小規模ではありますが、その3年前にあたる2012年の統計では7億3,000万円だったため、それを考えれば随分と成長を感じられます。また、アフリカのクラウドファンディング市場をここまで上昇させた背景には、アフリカの経済を支えているSMEs(Small and Medium-Sized Enterprises )と呼ばれる、アフリカの労働人口を多く吸収している中小企業による資金調達が伺えます。
市場規模が徐々に拡大しているとはいえ、未だアフリカ国内ではエジプト、ナイジェリア、ケニア、南アフリカなどが主にクラウドファンディングを活用しており、その他の国ではほとんど活用されていないなど、普及率に関していえば依然低いままにあります。プロジェクトごとの平均資金調達額も1,500ドルと、とても高額とは言い難いものばかりです。その一方で、アジアやヨーロッパ、アメリカが運営しているプラットフォームでは、”アフリカ”にまつわる社会的なプロジェクトが多く実行されており、アフリカ国内で運営されたプロジェクトの3倍以上の資金調達が海外で行なわれています。
中東の市場規模
アラブ首長国連邦を構成するドバイに本拠地を置くEureecaは、国際的なクラウドファンディングキャンペーンを実施しており、中東地域をはじめ、とりわけUAEのビジネスや投資家にとって良い機会を提供しています。設立から5年で500件以上のプロジェクトを担っており、世界各国のさまざまな人々から支援を受けネットワークの幅を広げつつあるEureecaの動きは、今後も展望に期待が寄せられるばかりであります。また、イスラエル発のプラットフォーム・OurCrowdは、2013年の設立以降、エクイティクラウドファンディング(equity crowdfunding: 株式投資型クラウドファンディング)として飛躍的に上昇しており、昨年のとあるプロジェクトでは7,200万米ドルの資金調達に成功を収めるなど、世界的な事業拡張に取り組んでいます。
そんな中東地域のクラウドファンディングの動きはここ数年の間で著しい成長を遂げており、特にAR/VR分野における地域別のクラウドファンディング流通金額推移では、2014年から2015年にかけて1,000万円以上の伸びを見せています。こうしたAR/VR分野をはじめ、近年では中東のプラットフォームも勢いを増すばかりであり、将来的にはさらなる市場規模の拡大が予想されています。
まとめ
今回は主要各国のクラウドファンディング市場規模比較について紹介しました。近年、海外だけでなく日本でもクラウドファンディングの規模は大きくなってきており、2011年以降毎年200%を越える成長を遂げております。
北米や欧州では一般市民による積極的な投資が見られますが、日本では不景気という状況が相まってか、他国と比べるとあまり投資や寄付は少なく、弊社Relicが運用するENjiNEのような購入型クラウドファンディングが主に注目されています。しかし、近年国内のクラウドファンディングの市場規模は全体を通して確実に向上しているため、今後ますます成長すると期待を寄せられるでしょう。
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