仮説検証の方法とは?検証コストを最適化した進め方について解説

新規事業開発の核と言っても過言ではない仮説検証。今回は、仮説検証に着手する前に理解しておくべき検証コストを最適化する方法についてご紹介します。
仮説検証とは
仮説検証とは、ある時点で最も確からしい”仮”の結論(仮説)を、データを集めたりヒアリングしたりすることで事実確認(検証)することを指します。まだ世にないものを創る新規事業開発は、仮説検証の繰り返しです。特に初期フェーズの「誰の、どの課題を、どのように解決するのか」を具体的に定義していくプロセスの実施事項は、ほとんどが仮説検証と言っても過言ではありません。
新規事業開発における仮説検証の要件
顧客ニーズが絶えず変化しプロダクトの寿命が短くなっている現代の新規事業開発では、いかに短期間で仮説検証を繰り返し、市場に受け入れられるプロダクトを創り上げられるかが重要です。労力も最小であるに越したことはありません。
また、新規事業開発では実際にヒアリングなどのアクションを通じて気づくことが多く、考えすぎてアクションできないより、アクションしながら考える方が重要ですが、仮説検証はその準備から実行まで大きなコスト(時間/労力)がかかります。簡単なヒアリングやちょっとした調査など小さなコストで可能なものは良いですが、大きなコストがかかる仮説検証を思いつきで実行してしまうのは非効率ですので、コストが最適になるよう検証方法を設計する必要があります。
さらに、仮説検証で完全に想定通りの結果が出ることは稀なため、検証結果に応じて撤退やピボット(方向転換)する前提で取り組む必要があるのです。
仮説検証コストを最適化する方法
それでは、撤退やピボットも踏まえて検証コストを最適化するにはどうすれば良いのでしょうか。
仮説検証の順番とポイントを押さえる
新規事業開発は4つのフェーズに分けられ、フェーズ別に注力すべき検証事項も異なります。
検証コストの最適化には、下記フェーズの順番で仮説検証を進めることが重要です。
1.事業アイデアの検証(Idea Verification)
(課題に立脚したアイデアになっていることや、顧客・課題・解決案の仮説があることを事業
アイデアの最小形として)
- 想定している解決案は実現可能か
- すでに代替案がないか
2.顧客課題の検証(Customer Problem Fit)
- 想定顧客は誰か
- 課題が本当に存在しているか
- お金を払ってまで解決したい質の高い課題か
3.解決案の検証(Problem Solution Fit)
- 解決案で顧客課題を本当に解決できるのか
- 独自の提供価値があるか
4.市場受容性の検証(Product Market Fit)
- 市場に受け入れられるプロダクトか
- ピボットが必要か
- ピボットが必要であればどのようなピボットが適切か
例えば、男性のひげ剃りに手間がかかるという課題について、少しの労力でひげを剃れる電気シェーバーといった解決案がありますが、それらも解決できていない「自分でひげを剃るのは手間がかかる」ということを課題、「寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置」を解決案とした事業アイデアの仮説があるとします。想定顧客は「成人男性」、課題は「自分でひげを剃るのは手間がかかる」、解決案は「寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置」です。
そもそも「寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置」の開発が技術的な観点や安全性の観点(寝返りなどの動きがある睡眠中に刃物を使用したひげ剃りを無人装置が行うのは危険など)から実現が難しければ、事業アイデアは成り立ちません。また、すでに課題を解決する代替案があるのであれば、解決案である装置は求められません。そのためデスクリサーチなどで、想定している解決案は実現可能か、すでに代替案がないかを最初に検証すべきなのです。
解決案が実現可能で代替案も存在しないとして、最初から顧客課題と同時に解決案まで検証する、または解決案から先に検証するとどうなるでしょうか。仮説検証には自動ひげ剃り装置のプロトタイプの開発が必要になります。もし顧客や課題の仮説が大きく外れていれば、当然解決案は受け入れられず失敗し、開発費用や時間など無駄なコストをかけてしまうことになります。そのため解決案の検証前に、インタビューやアンケートなどを通じて顧客と課題を検証する必要があるのです。
同様に、解決案の検証を経ずにプロダクトを市場に出すことも高いリスクがあります。解決案の仮説が外れていれば、まったくプロダクトが売れず開発費用や時間などが無駄になってしまうからです。ここでも先にテストマーケティングなどで解決案が適切かを検証することが重要です。検証コストの最適化には、前述した仮説検証の順番とポイントを押さえ、前提となる条件を先に検証していくことが重要なのです。
仮説検証に着手する前にストーリーを設計する
検証コストを最適化するには、仮説検証の前にストーリーを考えておくことも重要です。検証と修正を繰り返すことで精度の高い仮説を構築していく一連のプロセスが仮説検証ですが、そのプロセスを通して発生しうる想定結果と、それを受けて次に何を検証していくのか、複数の検証を通して結果的にどのような仮説を導き出せるのかというストーリーを初期に設計しておくことで、プロジェクトの見通しを良くし、効率的に仮説を磨き上げていくことができます。
ストーリーを設計するには、まず検証したい仮説を因数分解、構造化して検証する優先順位を考えていく必要があります。優先順位が高いのは「多くの仮説の前提条件になっている未検証の仮説」の検証です。例えば、前述した男性のひげ剃りにおける顧客と課題の仮説について検証する場合、仮説の背景を以下のように因数分解することができます。
- 成人男性は80%の比率で、毎日ひげ剃りをしているだろう」
- 「ひげ剃りは苦痛であり、手間をできるだけ減らしたいと思っているだろう」
- 「既存ソリューションとしてT字のひげ剃りや電気シェーバーがあるが、朝の忙しい時間に少しでも時間をかけることを面倒だと感じているだろう」
- 「既存ソリューションとしてT字のひげ剃りや電気シェーバーがあるが、ジェルやクリームを塗ることを面倒だと感じているだろう」
- 「寝ている間に自動的にひげ剃りをしてくれる装置があったら、2万円でも買いたいと思ってくれるだろう」
ここでの「多くの仮説の前提条件になっている未検証の仮説」は、「成人男性は80%の比率で、毎日ひげ剃りをしているだろう」です。そもそも毎日ひげ剃りをしている成人男性が全体の10%であれば、90%の人には課題がなく解決案を必要としていないことになります。ニッチな10%を捉えてソリューション提供していきたいという新規事業であれば良いですが、そうでない場合は顧客と課題を考え直す必要があります。
検証の結果、毎日ひげ剃りをしている成人男性の比率が想定とほぼ同じであれば、次に毎日ひげ剃りをすることにどのような課題を感じているか(b-d)、その課題の解決にいくら払えるか(e)を検証していきます。因数分解、構造化しストーリーを事前に設計しておくことで、検証コストを最適化することができるのです。
また、優先順位が高い仮説の検証結果が想定と異なった場合に、この領域から撤退すべきなのか、新たに発見された課題に対して改めてソリューションを考え直すべきなのか(ピボットすべきなのか)の判断は、全社戦略や会社のビジョンも踏まえて検討が必要です。すぐに答えを出せるものではないため、ストーリーの一部として仮説検証前に「最重点であるこの仮説が反証されてしまったら撤退を決断しよう」などの条件や方針をステークホルダーと合意しておくことが重要です。
仮説検証コストを最適化し、できる限り短期間で市場に受け入れられるプロダクトを創り上げるには、仮説検証の順番とポイントを理解し、事前に検証ストーリーを設計することが大切です。仮説検証の際にはぜひ試してみてください。この記事が新規事業開発や仮説検証のお役に立てば幸いです。
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