2023.12.2

SaaSの超重要指標一覧|KPI設計の際のコツと注意点を徹底解説

SaaSの超重要指標一覧|KPI設計の際のコツと注意点を徹底解説

新規事業開発において指標を設けることは非常に重要です。サービスやプロダクトの成長度合いを測るだけでなく、課題を把握し早期に改善する機会を与えてくれます。それ以外にも顧客セグメントの理解を深めたり、優れた競合他社やその他の優良企業のパフォーマンスと比較・分析することもできます。

今回は新規事業の指標案内第一弾は「SaaSビジネスモデル」に焦点を当て重要な指標についてご紹介したいと思います。

新規事業の指標・KPI設計の注意点

新規事業では数多の指標がある中、何を測るかを絞る必要があります。ご存知の方が多いと思いますがKPIはKey Performance Indicatorのことを指します。ここで示す「Key」というのは事業パフォーマンスの善し悪しを測る「重要な鍵」と考えるといいでしょう。

新規事業は不確実性が高く、直感に反するものが多いです。想定していた仮説を覆すことがあります。そのために顧客のタッチポイントや収益関連の指標の重要ポイントを絞り、なぜ「事業パフォーマンスが悪いのか」、又は、「なぜ事業パフォーマンスがいいのか」を示す「解」を導き出す必要があります。ビジネスモデルの重要ポイントと落とし穴を抑えた上で、測る指標を3~4つに絞り、新規事業開発に取り組むことを意識しましょう。

SaaSとは

SaaSとはクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーに定額制で提供するサービスのことを指します。SaaSを利用する顧客は通常、アプリケーションにアクセスするために、サブスクリプション料金(多くの場合は毎月)を支払います。一部のサブスクリプションでは、データの利用量、アプリケーションにアクセスするユーザー数、または必要なテクニカルサポートのレベルによって変動します。SaaSを提供する有名企業にマネーフォワード、セールスフォース、SanSanなどがあげられます。

SaaSビジネスモデルの特徴

SaaSのビジネスモデルはサブスクリプションモデルと同様に、長期間(利用期間中)にわたり継続的な収益が見込めるビジネスモデルです。

SaaSにおける重要項目と主要指標

SaaSビジネスは伝統的なビジネスよりも複雑であり、従来使われている指標ではSaaSビジネスのパフォーマンスを正確に測り分析することができません。SaaSビジネスを存続させるためにはSaaSビジネスに求めらていることや落とし穴をしっかりと理解することが必要になってきます。

それらを理解するために、まずはSaaSビジネスの全体の収益構造を俯瞰し、重要な項目把握しましょう。下記の図を見てもらうと分かりますが、アーリーステージのSaaSで優先して分析する項目は「SaaSの収益性」「顧客獲得コスト(CAC)の回収期間」「SaaSの事業成長性」の3点です。詳しくは後ほど解説しますが、この3つの項目がSaaSビジネスの黒字化やPMF達成のカギとなります。

SaaS Revenue Model

一つ目の「SaaSの収益性」ではSaaSビジネスモデルのキャッシュフローが大半を占めるため、継続利用関係なく新規の顧客が毎月増えているのかを見る必要があります。

二つ目の「顧客獲得コスト(CAC)の回収期間」とは、顧客獲得のために打った広告費用、マーケティング活動費用、営業活動費用等の「回収期間」を意味します。複数のチャネルを設けている場合、どのチャネルが新規顧客の獲得に効果的であったか分析する時に使います。

最後の「SaaSの事業成長性」は3点の中で最も重要な項目になります。事業成長性では新規顧客の獲得よりも解約率(churn率)の低下を重点的に見ます。SaaSの顧客一人あたりからのキャッシュフローは少額で且つ累積的であるため、解約率を抑え継続して使ってもらうことが必要になります。

①SaaSの収益性

SaaSビジネスの収益の大部分は顧客数と顧客一人当たりの売上に依拠すると言えます。SaaSの収益を増大させるにはSaaSを利用する顧客を増やすことが重要になります。SaaSの収益性を測るのに最も重要な指標と言えるのがMRR(Monthly Reccuring RevenueARR(annual recurring revenue)です。

②顧客獲得コストの回収期間(キャッシュ)

キャッシュはSaaSビジネスで赤字と黒字を左右する最重要項目になります。なぜならSaaSビジネスの多くは顧客獲得のための初期投資(現金支出)が高くなりがちである上にそれを回収するのに時間がかかると言われています。投資された額は長期間にわたり定期的に少額で回収されます。(下図参照)

SaaS顧客一人当たりのキャッシュフロー

顧客一人当たりの累積的キャッシュフロー

新規事業では赤字を出来るだけ避け黒字転換を早めたいところではありますが、SaaSビジネスでは顧客獲得のためには赤字に耐えることが重要になってきます。ここが見落としがちな罠であると言えます。しかし、一方でSaaSビジネスの利点は獲得した顧客数によって黒字転換した際の成長率が変動するのです。(下図参照)

成長度合いによるP/LとCSに及ぼすインパクト

SaaSビジネスを始める際は「赤字を最低限に抑えリスクを避けたビジネス展開」をするか「赤字に耐えビジネスの成長を優先」するかの二点を天秤にかけ戦略を練る必要があるでしょう。

上記を踏まえ、SaaSビジネスのキャッシュの観点ではCAC(顧客獲得コスト)とその回収率やROIをみるPaid CACとその回収期間を指標として立てるのが重要になります。理想となる顧客獲得のために打ったマーケティングキャンペーン費用や営業活動費用の回収期間は12か月と言われています。

顧客獲得期間の公式

③事業成長性

SaaS事業の成長性は市場独占性(マーケット・リーダーシップ)において重要な項目です。SaaSの成長において「新規顧客の獲得」が重要だと前述しましたが、SaaS事業の成長においては「新規顧客の獲得」に加え「既存の顧客の継続利用」が非常に重要になってきます。

SaaSのビジネスモデルでは顧客一人当たりの収益が顧客満足度と顧客継続率に依拠しているため、顧客満足度が高ければ、顧客継続率が上がり、顧客一人当たりの収益が累積的に増大します。しかし、その一方で、顧客満足度が低ければ、即座に解約され、収益が顧客を獲得するにあたって投資した顧客獲得コストを下回ることがあります。

SaaSビジネスの成長性において新規顧客獲得だけでなく継続利用が大きなファクターとなり、顧客一人一人に継続利用してもらうということとサービス解約率を毎月下げていくことが目標になります。

SaaSの事業収益と顧客の解約率の両方を把握する上で重要になってくるのがGross MRR Churnという指標になります。ChurnはSaaSのビジネスにおいて非常に重要な概念です。よく顧客維持率と混同されがちですが、Churn Rateは解約率を示すので全体の顧客から顧客維持率を引いた差分となります(1-顧客維持率=Churn Rate)。

SaaSビジネスモデルで重要になる指標の計算方法

MRR(マンスリーリカーリングレベニュー)

月間定額収益のことを指し月ごとに得られる収益を意味します。 クラウドサービスなど契約ベースのビジネスで使用される指標です。MRRを測ることで新規顧客獲得と定着、解約などの成長性を確認することが出来ます。「毎月決まって発生する売り上げ」の事を指すので一回切りの追加購入費用やコンサルティング費用などはMRRには含まれません。

計算方法は以下の通りになります。

MRR計算方法

ARR(アニュアルリカーリングレベニュー)

毎年決まって発生する1年間の収益、売上のことを指します。MRRと同様に「毎年決まって発生する収益、売上」であり、初期費用や追加購入費用、コンサルティング費用などは含まれません。

計算方法は以下の通りになります。

ARR計算方法

Gross MRR churn

Churnとは顧客の解約を意味します。Gross MRR ChurnとはSaaSのサブスクリプションプランのダウングレードやキャンセルによって失った金額分の比率の事を指します。

計算方法は以下の通りになります。

Gross MRR Churnの計算方法

顧客を獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用のことを指します。CACにもorganic CAC(自然に増えた顧客獲得コスト)やblended CAC(自然増と支払った顧客獲得コスト)など様々な種類がありますが、SaaSのビジネスモデルでは新規顧客獲得で支払ったコストが重要になってきます。なぜならSaaSビジネスの収益は定額で月ごとに繰り返されるので、投資した額の回収期間とROIを考慮することが重要なのです。

計算方法は以下の通りになります。

Paid CAC計算方法

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回(第一弾)はSaaSのビジネスモデルを軸に新規事業における指標の案内をいたしました。

ビジネスにおいて指標はプロダクトやサービスがうまく回ってるかどうかを測る事以外に、顧客や競合を理解し、ビジネスにおける戦略を練る事にも繋がります。皆さんも上記で紹介した指標を新規事業に活用してみてください。

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