2023.12.20

企業イノベーションとは?意味と戦略について徹底解説

企業イノベーションとは?意味と戦略について徹底解説

2010年代のスタートアップブーム、プロダクトライフサイクルの短命化、テクノロジーの加速など、近年、企業におけるイノベーションの必要性が議論されています。これらによって既存市場に長年腰を据えてきた企業は安定した座を維持することが難しくなり、小さな組織のイノベーションによって淘汰される可能性が高まりました。

本記事でのリサーチで大企業の経営幹部はイノベーションの必要性や重要性を重々に理解している事が分かりました。しかしイノベーションの実現は非常に困難であり成功例もごくわずかです。本記事では、国境を超え、企業内イノベーションの状況とそれらの成果をさまざまなデータを見ながら分析し、イノベーションが失敗する根本的原因を紹介します

企業のイノベーション戦略

経営者の見解

マッキンゼーによると、経営幹部の80%は、現在のビジネスモデルが脆弱であり、近い将来破壊的なイノベーションによって塗り替えられるリスクがあると考えています。さらに、経営陣の84%が、成長戦略にとってイノベーションが重要であると述べています。

イノベーションに関する経営者の見解

イノベーションが企業に及ぼすメリット

OECDのイノベーションと成長に関するレポートからも伺えるように、イノベーションは長期的な経済成長を引き起こす要因であり、多くの企業の重要な戦略的テーマとなっていると述べています。さらに、Booz&Co.(現在Strategy&)2011 Global Innovation 1000レポートでは、イノベーションに積極的に取り組んでいる企業と取り組んでいない企業の、収益(11%)とEBITDA(22%)の両方の成長に明確な違いがあることが明記されています。

*EBITDA(イービットディーエー)とはEarnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略で、税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益を指します

イノベーション ebitda revenue

イノベーション戦略の重要性

イノベーションは、成功確率が低いため、一度失敗すると継続的にイノベーションに取り組む姿勢を失ってしまうことがあります。しかし、上記の数字が示すように、イノベーションは多くの企業の戦略的重要課題であると同時に、イノベーティブな企業は他の企業よりも収益性がよく長期的に成長を遂げます。成長の維持やマーケットの地位の確保を目的としている企業はイノベーション戦略が必要不可欠になります。

2010年代はスタートアップブームが世界各国で起こり、僅か5・6年でユニコーンまでに成長するケースが多く見られました。近年のスタートアップは多額の出資を受け破壊的なイノベーションを巻き起こし市場を一気に席巻することによって、長年腰を据えてきた大企業のビジネスモデルを一晩で塗り替えます。アメリカのS&P 500に登録されている企業の内半分が今後10年で入れ替わるという予測から分かるように、このトレンドは今後も続くだけでなく加速すると予測されています。

*S&P500(スタンダードアンドプアーズファイブハンドレッド)とは米国株式市場の動向を示す株価指数のひとつであり、時価総額をベースにした上位500企業を示すものです。

自社の戦略的優先事項の中でイノベーションがない場合、改めてイノベーション戦略の再検討をすることをお勧めします。

イノベーションの成果

イノベーションの失敗確率

イノベーションに取り組むのは間違いなく挑戦的であり、成功させるのは困難です。

ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授によると、企業のイノベーションの95%が失敗すると示唆しています。また、スタートアップゲノムレポートによると、企業のイノベーション戦略だけでなくスタートアップも92%が失敗すると示唆しています。

イノベーションやスタートアップの失敗する確率は失敗の定義とレポートによって多少のずれが生じます。しかしイノベーションに取り組む企業の内10~20社の内1社のみが成功すると思うといいでしょう。

また、前述のマッキンゼーのグローバルイノベーションサーベイによると、失敗確率が高いだけでなく、イノベーションの成果に満足している経営者は6%のみと言われています。

さらに、2017年の PwCイノベーションベンチマークによると、企業の54%がイノベーション戦略でのビジネスと既存のビジネス戦略のギャップを埋めるのに苦労していると言われています。そのため、イノベーションは大企業・スタートアップ問わず大きな課題であることは明確であり、成功確度を上げるメソッドなどの研究が必須です。

新規事業の失敗確率

イノベーションの失敗要因

しかし、なぜ失敗する確率が高いのでしょうか?

大企業のイノベーションの成功確率を上げるには、スタートアップの真似事をすればいいわけではありません。スタートアップの様に速いPDCAを回す柔軟性は重要です。しかしスタートアップの経営戦略は大企業と本質的に違っています。スタートアップは限りなく少ないリソースを有効活用しつつ速いPDCAを回しながら検証し、自社事業の蓋然性を実証する必要があります。

大企業はスタートアップと違い、イノベーションに投じる資金には困らないですし、豊富なリソースがあるはずです。豊富なアセットを活用しイノベーションに取り組めることはスタートアップにはない大企業の利点です。しかし留意しなければいけないのは資金の潤沢さがイノベーションの成功に繋がるとは限らないということです

前述の2017年のPwCイノベーションベンチマークと2011年のグローバルイノベーション1000レポートによると、研究開発に投じた資金はイノベーションの成功に繋がらないことを示唆しています。

BCG 2015 Global Innovation Surveyによると、イノベーションパフォーマンスの上位6つの障害は、「自社の既存事業とシナジーが見込める適切なアイデアの選択及び実行」と「企業のカルチャー」に帰結することが分かります。

イノベーションの失敗要因

イノベーションの課題

上記のリサーチに加えデロイト社の 2016 Global Board Surveyによると、上記の問題は、上層部のタレントマネジメントとイノベーションの R&D戦略の理解の乏しさを問題に挙げています。これらのイノベーション課題は上層部の問題に起因しています。イノベーションの課題が上層部の問題に起因しているという結果は、スペンサースチュアート社の2016 Global Board of Directors Surveyでも同様に記載されています。

上層部の理解の乏しさはイノベーションの経営戦略とその結果に影響が出ていることは2015年のアクセンチュアの調査で分かっています。82%の組織が、既存事業で取り扱っている戦略をイノベーション戦略にも反映し実行していることがわかりました。既存事業の経営戦略と同等の戦略を取っていた企業の内72%が重要な成長機会を見逃していることを認め、60%が過去の過ちから学ぶことに苦労しているなど、更なる課題に繋がることが分かってます。

イノベーション戦略や新規事業の立ち上げは、スタートアップの真似事はもちろん、既存事業の経営戦略をそのまま反映すればいいとは限りません

イノベーションの成功確度を上げるためには

イノベーションを成功させるためには、たくさんの正しい決断が求められます。イノベーションや新規事業に取り組む方は新しいアイデアの考案、アイデアの評価と選択、およびそれらのアイデアの開発と商品化に精通していなければなりません。

上記に加え、イノベーションで取り組む事業は既存の事業とシナジーが見込めるものであると同時に、リソースの有効活用が必須になります。自社の競合優位性や得意とするドメイン、持っている人材を分析し、どの市場でどのアイデアにそれらを投じるかをしっかりと決める必要があります

新規事業やイノベーションへの取り組みは、既存事業で培ってきた戦略のノウハウをそのまま活用すること出来ず、新規事業ならではの特殊なスキルとノウハウを必要とします。また、それらに取り組む上層部の皆さんにはそれ相応のリーダーシップが求められます。

イノベーションリーダーシップの責任とは常に、計画と実行のサイクルを隅々まで把握する必要があります。更に、イノベーションを重要な戦略的課題である考えている経営者は、今まで述べてきたイノベーションにおける課題を念頭にしつつ、企業が直面する課題と直視し、新規事業に取り組む必要があります

まとめ

本記事では、日本だけでなく、世界を視点にイノベーションの状況を俯瞰しました。今回のリサーチで分かったのは、イノベーションの必要性を訴える経営者がたくさんいるにもかかわらず、実現できない要因としてスキルやノウハウが足りないことを上層部がそれらを認知せずに対策を講じていないことです。続編の記事データからみる成功するイノベーション)では、本記事で紹介したイノベーションの状況や課題を踏まえつつ、イノベーションが成功する要因を紹介します。

株式会社Relicは、イノベーションや新規事業領域で課題のある企業を支援しています。イノベーション戦略の策定のみならず、事業検証からプロダクト開発まで一気通貫したサービスを提供しているので、新規事業やイノベーションに取り組みたい方は是非気軽の下記フォームからお問い合わせください。

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