2024.3.14

リスクの洗い出しによる分析結果を可視化するフレームワーク『リスクマップ』とは?リスクマネジメントの実践方法を解説

リスクの洗い出しによる分析結果を可視化するフレームワーク『リスクマップ』とは?リスクマネジメントの実践方法を解説

昨今の企業・組織を取り巻くリスクは多種多様であり、対応すべきリスクの優先順位は異なります本記事では、事業案のリスクを事前に把握し、対応の方向性を決定するための手助けとなるツール「リスクマップ」について取り上げ、ご説明していきます。

リスクマップとは

リスクマップとは、リスクの発生頻度・リスクの影響度を俯瞰的な視点で分析できるように整理したフレームワークです。
リスクマップは、考えられるリスクを洗い出し、分析、評価した内容をまとめたアウトプットの一つの形です。リスクマネジメントを行う際の課題である、対応すべきリスクの優先順位づけや絞り込みに役立ちます。

既存の事業案のリスクマネジメントを行う場合や、新たな事業案を考え、比較検討する場合のどちらにおいても、事業案を取り巻くリスクは画一的なものではありません。
企業経営は一つの事業で成り立っているわけではないため、新規事業を考える際は、既存事業を踏まえた経営分析を行う必要があります。例えば、新たな事業の減価償却費を踏まえた中長期戦略方針や営業利益など、経営の観点からの再検討が重要でしょう。

リスクマップの種類

リスクマップには様々なフォーマットが存在します。

地域に関連したリスクの場合、リスクを地図上の色で表現する場合もあります。

(出典:外務省「海外安全ホームページー中東地域海外安全情報」
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcareahazardinfo_13.html

最も一般的なリスクマップは、縦軸に「リスクの影響度・発生したときの損害規模」を、横軸に「発生頻度・可能性」をとります。

リスクをマップ上に記載した後どのようなマトリクスに分解しても問題ありません。
よく用いられるのは、後ほど詳しくご紹介する4つの象限に分ける方法です。

新規事業におけるリスクマップ利用

①既存事業との兼ね合い
新たな事業やサービスを検討する際、既存事業とのカニバリズムや既存取引先/自社内部とのコンフリクト発生のリスクを検討することが大切です。
例えば、これまで代理店を通じて販売を行っていたメーカーがECサイトを開設した場合、代理店や営業部隊から反発される可能性があります。その結果、協力が得られなくなり新規事業のみならず既存事業の失敗につながることもあります。
このようなリスクを避けるためには、新規事業を始めることで生じるリスクを幅出しし、その発生頻度と売上などへの影響度の高さをリスクマップで検討し、新規事業を始めるべきかを検討すると良いでしょう。

②サービスの仕様検討
プロトタイプの仕様を検討する際にも、リスクマップは役立ちます。プロトタイプは検討/検証に必要な機能に絞り込んで仕様を設計していきますが、その際にービスの成立においてその機能/仕様がどれくらい重要かを検討する必要があります。つまり、「顧客の不満」というリスクにあまり影響がない機能/仕様が何かをリスクマップで使って整理することで、適したプロトタイプを開発することができます。

リスクマップの作り方

①リスクの洗い出し

まずは発生しうるリスクを洗い出します。
その際に、大きく4つのカテゴリに分けて整理するとリスクを洗い出しにつながります。
自社の組織体制や事業案に合う形に調整しながら、ぜひ参考にしてみてください。

a.基幹プロセスリスク
 :事業のサービス・商品といった主要素の内的要因に起因して発生するリスク
 例)製品欠陥リコール、物流関連事故、技術開発遅延

b.支援プロセスリスク
 :事業のサービス・商品を提供する周辺の支援要素に起因して発生するリスク
 例)労働災害、データの消去・改ざん、不正競争防止法違反、ソフトウェア障害、契約不備

c.外部環境リスク
 :事業を取り巻く外的要因に起因して発生するリスク
 例)景気低迷、為替変動、盗聴、自然災害、原材料価格高騰

d.経営プロセスリスク
 :企業経営の計画・遂行に伴って発生するリスク
 例)設備投資の失敗、事業戦略の失敗、人材育成遅延

②リスクの算定

洗い出した項目を整理したのち、影響度(損害規模)」と「発生頻度」の算出方法を決め、なるべく定量的に算定していきます。

③マップを作成する

算定したリスクをマッピングしていきます。
カテゴリごとに色を変えておくと視覚的に見やすい図表になるのでお勧めです。

リスクごとの対応方向性

今回は象限ごとの対応方針をご紹介します。

(A)リスクの回避 <高損害・高頻度>
ここの象限に入っているのは高い発生頻度で大きな影響を及ぼすリスクなので、右上に配置されているものほど早急な対処と事前の対応プランを考えておく必要があります。
リスクの発生頻度や損害規模のどちらかを小さくするという対処法もありますが、できるだけリスクを回避する(=取り除いて発生させない)という方法が望ましいです。

(B)リスクの移転 <高損害・低頻度>
この象限のリスクは、BCP(事業継続計画)や危機管理の発想が有効な対策手段になりやすいと言えます。
例を挙げると、自然災害などがこのエリアに当てはまります。
こうしたリスクは発生可能性や頻度をコントロールすることは難しいため、危険性に対して事前に対策方法を考えておくことが必要になります。

しかし、そもそも発生頻度が少ないため、対応方法について学習サイクルを回してブラッシュアップしていくことが難しい領域です。
発生可能性のある損害の経済的な部分に関して保険を購入し、リスクの移転を図ることが得策となっています。

(C)リスクの低減・予防 <低損害・低頻度>
影響度が低いとはいえ、高頻度で発生していてはいつ大きなリスクに転換してもおかしくありません。発生回数を減らす施策を検証し、手を打っておくことが必要です。

また、発生頻度が多いということはリスクへの学習サイクルが回しやすいという意味でもありますので、最適な施策を見つけられるよう仮説を持って複数案試してみましょう。

(D)リスクの保有 <低損害・低頻度>
最後に、左下の象限にあるリスクは発生可能性も影響度も小さいことがわかっているため、多少であれば受容する、対応の優先順位の低いものとなっています。

最後に

リスクマップは、自社が抱えているリスクを洗い出し、優先順位や対応策を検討することに役立つツールです。
リスクマネジメントの初期段階において有用なこのツールは、その後のリスク対応が検討・実装されてこそ意味があるものなので、リスクマップを作って安心してしまわないように注意が必要です。

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