2023.12.1

マーケティングに活用できる行動経済学を有名な理論などの事例も含めて徹底解説

マーケティングに活用できる行動経済学を有名な理論などの事例も含めて徹底解説

経済学は、経営環境を正しく把握し、今後の経営戦略を立案するためになくてはならない学問です。しかし、従来型の経済学では説明できない消費者行動も明らかになってきました。

そこで注目されているのが「行動経済学」です。この記事では、マーケティングにも応用可能な行動経済学について解説します。

マーケティングにも応用可能な行動経済学とは?一般的な経済学との違い

経済学は、「人間は合理的である」ことを前提に置いています。人間が経済的合理性に基づく行動をとるからこそ、神の見えざる手に導かれるように、価格によって需要と供給が均衡するのです。

しかし、実際はどうでしょう。私たちの消費者行動を見てみると、いつも合理的な行動をとるといえるでしょうか。

多少値段が張っても高級な食事を選択したり、明らかに不健康なタバコやお酒が止められなかったり、ときに人間は合理的ではない行動をとります。

行動経済学では、合理的ではない人間の行動に焦点を当てています。そんな人間の行動について、心理学と経済学を組み合わせて「現実的な経済活動について研究を行う」という目的のもとに生まれたのが行動経済学なのです。

行動経済学のマーケティングへの活用

現在、大量生産大量消費の時代は終わりを迎え、「安いから買う、便利だから買う」といった経済合理性だけでは、消費者行動を予測できなくなりました。

モノが溢れ、成熟した社会では、購買の動機として、値段や便益を超えた「共感」や「見栄」などが挙げられます。もはや、消費者の心理にまで踏み込んでいかないと、ビジネスの世界での成功は難しい時代が訪れています。

そして、現在の消費者行動分析の限界を乗り越える可能性を「行動経済学」が持っています。マーケティングの施策であるブランディング、価格づけ、売場、広告、プロモーションに応用できるものとして注目を集めています。

マーケティングに応用できる行動経済学

アンカリング効果

アンカリング効果とは、最初に数値などを提示してそれを相手に強く印象づけることによって、次に提示するものの印象が変わる効果のことです。アンカリングの語源は、アンカー(錨)であり、船が打ち込んだ錨の範囲内でしか動けなくなるように、アンカーを打ち込み消費者の行動も制限することを可能とします。

出典:マーケティング活動に活かせる行動経済学の基礎知識5選

広告で良く使われる「通常価格からXX%オフ!」といった値下げ表示をよく目にすると思います。これはアンカリング効果を狙った戦略です。

また、値下げ幅が大きいほど魅力的に見えるので、あえて通常価格を高額にして表示する手法も考えられます。

プロスペクト理論(損失回避性)

例えば、以下のような、お金を得られることに関する2択の質問について考えます。

質問:どちらかを選んでください。

  • 無条件で1万円をもらえる。
  • コインを投げて表が出たら2万円もらえるが、裏が出たらお金はもらえない。

このような質問をすると、多くの人が「無条件で1万円をもらえる」を選び、2万円をもらう賭けに出るよりも確実に1万円を手に入れようとします。

次は反対に、お金を失うことに関する2択の質問を考えます。

質問:今、あなたは無条件で1万円を得たとします。どちらかを選んでください。

  • コインを投げて表が出たら更に1万円もらえるが、裏が出たら手元の1万円は没収。
  • コイン投げは行わない。

こちらの質問では、コイン投げを行って1万円を没収されても実験前から考えればプラスマイナス0ですが、「コイン投げは行わない」を選ぶ人が多数を占めます。

つまり人間は、利益が手に入る可能性のある場面では「利益が手に入らない」ことを、損失の可能性がある場面では「損失すること」を回避しようとする傾向を持ちます。このような人の性質を説明しているのがプロスペクト理論(損失回避性)です。

出典:マーケティング活動に活かせる行動経済学の基礎知識5選

プロスペクト理論をマーケティングで応用している事例として、景品のプレゼントや商品の値下げに関して「先着XX名様限定」のように制限を設ける方法があります。

早めに申し込まなければ「受けられたはずのプレゼントや値下げが受けられなくなる」という損失を被る、と消費者に思わせることで、商品の購入に繋げられます。

おとり効果

おとり効果とは2つの選択肢しかない場合に、おとりを用意することで、ユーザーに意図する選択をさせやすくなる効果のことです。

おとり効果を利用した手法は、非常に簡単です。例えば、飲食店で1,000円のお弁当を売りたいとします。

このとき、

  • 梅:1,200円
  • 竹:1,000円
  • 松:800円

このようにお弁当のリストを用意します。そうすると、消費者には、「梅は高すぎるけど、松だと物足りないから、竹にしよう」という心理が働き、客単価を上げやすくなるのです。

このように、おとり効果は「松竹梅の法則」とも呼ばれています。一番売りたい商品の前後に松と梅の「おとり」を紛れ込ませ、真ん中の商品である竹を買ってもらうよう仕向けることがコツとなります。

ただ「おとり」といっても、商品一覧に掲載した時点で販売しなければなりません。高価な方も格安な方も、手を抜かずに、しっかり売れるものを用意する必要があります。

サンクコスト

サンクコストとは、支払が完了し回収ができない費用のことです。消費者は、お金を回収できない分、他の要素でなんらかの便益を得ようとする行動をとりやすくなります。

例えば、1,000円を払って映画を鑑賞しに行った場合、開始10分で明らかにつまらない場合でも、1,000円をサンクコストにしたくないため、頑張って最後まで見続けた経験はないでしょうか。また、同様に、3,000円の食べ放題に行った場合、元を取るために無理して食べることもサンクコストがもたらす消費者行動といえるでしょう。

「一回やってみようかな」と思わせて商品やサービスを体験させ、そこから「かけた時間やお金がもったいない」と思わせるところまで持っていくことがサンクコストを利用する手法のコツです。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、流行や周りの評判がもたらす効果のことです。ひとたび流行すると、バンドワゴン効果で多くのユーザーを獲得できるかもしれません。

日本人は、同調意識が強いためバンドワゴン効果を発揮しやすいといわれています。行列をみると、ついつい並んでしまうのは、典型的なバンドワゴン効果であるといえるでしょう。2020年、「鬼滅の刃」が社会的現象といえるほどに大ヒットしたのも、バンドワゴン効果の影響があるかもしれません。

その一方で、みんなが使っているから使いたくないという消費者心理のことを、スノッブ効果と呼びます。消費者ニーズが多様化するなかでは、あえてスノッブ効果を狙ったマーケティングが効果を発揮することもあるはずです。

まとめ

従来型の経済学の視点から、経営環境を分析することはもちろん重要です。しかし、人間の行動原理までをも考慮に入れた経営戦略の立案が求められています。

持続可能性が盛んに議論されるようになった成熟社会においては、良いものを安く売るだけでは、消費者に受け入れられなくなっています。

今回ご紹介したのは行動経済学の一部です。さらに多くの理論を知れば、より幅広いマーケティング施策の創出に役立つでしょう。

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