2023.12.20

サーキュラーエコノミー、環境に配慮した循環型経済とは?

サーキュラーエコノミー、環境に配慮した循環型経済とは?

SDGsに代表されるように、今を生きる企業は利益を追い求めることだけでなく環境に配慮した取り組みまでもが求められています。今回は、その環境に配慮した経済モデルである「サーキュラーエコノミー」について解説します。

サーキュラーエコノミー、環境に配慮した循環型経済とは?

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーとは日本語訳で、「循環型経済」を意味します。従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」を基本とする「線形経済」と比較すると、サーキュラーエコノミーは「3R(削減/Reduce、再利用/Reuse、再生/Recycle)」の考え方に重きを置いています。

サーキュラーエコノミーは、持続可能な成長を実現するための新たな経済モデルとして世界中で注目を集めています。ヨーロッパでは「サーキュラーエコノミーパッケージ」が採択され、経済成長政策の中心になるほどサーキュラーエコノミーの考え方が重要とされています。

サーキュラーエコノミーの実現には、メーカーや小売など幅広い業界・業種の連携が必要となります。それに加え、製品の回収やリサイクルにおいては消費者側の協力も必要となり、業界や立場を横断したさまざまな人たちの協力が欠かせません。サーキュラーエコノミーの推進を行うことで、異業種・異分野での連携が生まれ、オープンイノベーションの発展も期待されています。

サーキュラーエコノミーが注目される理由

サーキュラーエコノミーは、現在、多くの観点から注目を集めています。

地球環境保護への取り組み

近年、世界各地で急激な気温の変化や異常気象など、地球温暖化の影響で、環境問題が深刻化しています。このことに伴い、これまで以上に環境問題が大きな問題として取り上げられるようになっています。サーキュラーエコノミーの廃棄物を出さないような仕組みづくりは、温室効果ガスの排出量減少やゴミ問題に大きな改善をもたらすことが期待されています。

経済面と環境面での利益の一致

経済的な面と環境的な面で両方ともに恩恵を受けることは、非常に難しく、不可能に近いとされていました。しかし、技術の発展により、サーキュラーエコノミーを導入することで、「持続可能性」を維持しながら、経済効果を得られることが明らかになりました。

現在は、ヨーロッパをはじめとする多くの国々で、サーキュラーエコノミーへの転換が政策的に推進されています。「3R(削減/Reduce、再利用/Reuse、再生/Recycle)」に基づく、循環型の経済活動が社会から評価され、全世界でサーキュラーエコノミーに対する企業の注目度が高まっています。

サーキュラーエコノミーの3原則

国際的なサーキュラーエコノミー推進機関として有名なエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として、下記を挙げています。

  1. Regenerate natural systems(自然のシステムを再生する)
  2. Keep products and materials in use(製品と原材料を捨てずに使い続ける)
  3. Design out waste and pollution(廃棄と汚染を出さない設計)

1つ目の「自然のシステムを再生する」については、自然への負荷を減らすことを目指すのではなく、自然にとってプラスになる仕組み作りを行うという意味です。本来、自然界には「ごみ」は存在しません。全ての生き物が死後は何らかの栄養分となり、循環し続けています。そのような意味で、自然界はサーキュラーエコノミーを体現しているということができます。しかし、自然界のように経済の仕組みが再生可能なシステムになっているとは言えないため「自然のシステムを再生する」という考え方が重要になってきます。

2つ目の「製品と原材料を捨てずに使い続ける」については、「3R(削減/Reduce、再利用/Reuse、再生/Recycle)」などを通じて経済の中で可能な限り、繰り返し使用し続ける必要があるということを意味しています。

3つ目の「廃棄と汚染を出さない設計」については素材を選ぶところから、誰と協力するか、製品を標準化することは可能か、使用後の製品に対する規制は存在するかなど、システム全体の設計を意味しています。環境への負荷の大きさや、「3R(削減/Reduce、再利用/Reuse、再生/Recycle)」に取り組みやすかどうかなど、サーキュラーエコノミーをどこまで実現できるかは初期の設計の段階で決まってしまいます。そのため、「廃棄と汚染を出さない設計」を最初の段階で考えることが残り2つの原則を実現するためにも必要不可欠となります。

サーキュラーエコノミーのビジネスモデル

サーキュラーエコノミーのビジネスモデルは、アクセンチュアの分類によると、5つの種類があるとされています。

モデル1. サーキュラー型のサプライチェーン

現在、企業が最も多く採用しているサーキュラーエコノミーのビジネスモデルの1つが「サーキュラー型のサプライチェーン」になります。リサイクルができない原材料を、環境への負担が少ない原材料に置き換えることで、原材料が枯渇するリスクの軽減などのメリットがあります。

ナイキでは原材料のイノベーションが進んでおり、現在製造されているスポーツシューズとスポーツウェアの約73%がリサイクル素材を含んでいるとされています。さらに、製造廃棄物の99.9%は廃棄処分されることなく再び使えるような工夫がされています。

モデル2. シェアリング・プラットフォーム

製品と資産の稼働率を最大に上げる方法の一つとして、共同所有、共同利用をすることが挙げられます。

akkipaは、個人宅やマンション、事業所などの空いているスペースを所有している人が、akippaに駐車場の登録・掲載行い、駐車場を利用したい方に提供することができる、今までにない新しいシェアリングサービスです。空きスペースを利用しているため格安の料金で駐車場を利用できます。

このように、普段使っていない資産を有効活用するビジネスが現在盛り上がっています。

モデル3.サービスとしての製品

企業が製品の所有権を保持したまま、その価値を「製品サービス・システム」上で顧客に提供することを意味します。これにより、企業の関心は製品を売ることから製品の機能を売ることに転換してきています。

家具・家電のサブスクを展開する「CLAS」のというサービスを例にあげます。「CLAS」の家具は、修理をする前提で制作されているため、家具を長い期間使えば使うほど、月々に支払う料金が安くなる仕組みが用意されています。

製品自体を販売するという従来のビジネスモデルとは異なり、製品の「機能」を消費者に販売するという新しいビジネスモデルになります。家具を売り切るビジネスモデルの場合、使用しなくなった物は廃棄されることがほとんどです。しかし、CLASの場合、家具はあくまでCLASの所有物なので、消費者から帰ってきた後、修理やクリーニングを行うことによって、その製品を長持ちさせることが可能になり、再度レンタルに回すことができます。

モデル4. 製品寿命の延長

修理や部品交換を可能にすることや、2次市場で再販できるようにすることで、意図的に製品の使用期間を延ばす取り組みのことを指します。製品の寿命を伸ばすことは、企業の既存のビジネスモデルを大きく変更させる手間もなく、修理依頼などの新しい収益につながります。

パタゴニア社では、修繕のプロによるサービスを提供しています。さらに、修理や洗濯方法などのセルフメンテナンスのやり方をウェブサイト「WORN WEAR」で紹介するといった環境を意識した取り組みも行っています。

モデル5. 回収とリサイクル

企業が寿命を迎えた製品を回収し、価値のある素材や部品、エネルギーを取り出して再利用する取り組みのことを指します。

飲料業界では、使用済みペットボトルから新しいペットボトルへ半永久的に再生できる「ボトルtoボトル」リサイクルが拡大しています。従来は、回収されたペットボトルの多くがフィルムやシート、繊維などにリサイクルされ、その後は焼却処分されていました。現在は、回収されたペットボトルから新たにペットボトルを作り出す技術が生まれ、飲料連合会は、2030年度までにペットボトルの100%有効利用を目指すとしています。

新規事業開発の場面において、ご紹介した5つのビジネスモデルに当てはめて考えると新しい事業案のヒントになるかもしれません。また、既存の事業を環境に配慮したものに方向転換していく際も、このビジネスモデルを参考に新たな視点から事業を見つめ直すことができるでしょう。

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