CSV経営とは?企業事例とメリットを徹底解説
昨今、企業が社会課題の解決に取り組む事例が非常に増えています。Batteryでもこれまで、SDGsやソーシャル・イノベーションといった社会課題の解決に関する用語を解説してきました。
本稿では、従来のCSRに代わって主流となりつつある、「CSV」について紹介いたします。
CSVの概要
はじめに、CSVの概要について説明します。CSVとは、Creating Shared Valueの略称で、「共通価値の創造」を指しています。
5つの競争要因やバリューチェーンなどの考え方を提案してきたマイケル・ポーター教授が、ハーバード・ビジネス・レビューで提唱した概念で、経済的価値と、事業を通じて社会課題を解決する「社会的価値」の両立を目指す考え方です。
これまで、企業の目的は利潤を追求し、経済的価値を生み出すことにあり、既存市場の枠外にある社会課題の解決を企業が主導することは、相容れないことだと考えられてきました。
CSVは、困難だとされてきた「経済的価値と社会的価値の同時追求」を可能だと主張するものであり、革新的なフレームワークなのです。
CSRとCSVの違い
「CSV」を初めて見聞きした方でも、「CSR」という用語には馴染みがあるのではないでしょうか。ここではCSVはCSRと何が異なるのか、整理していきます。
CSR | CSV |
Corporate Social Responsibility 「企業の社会的責任」 | Creating Shared Value 「共通価値の創造」 |
企業は、ステークホルダー(利害関係者)からの要求に対し適切に対応する責任を持つ | 経済的価値と社会的価値を共に創造していくことを目指す |
従来、企業の社会貢献のあり方として主流だったのが、Corporate Social Responsibilityの略称であるCSR、「企業の社会的責任」です。
企業には、消費者や取引先、地域住民をはじめとするステークホルダー(利害関係者)からの要求に対し、適切に対応する責任があることを意味します。
これは単に、自社やその関係者の利益を上げることができれば良いというものではなく、人権や地球環境への配慮も含め、企業が「社会的存在」としての役割があるとする考え方で、具体的には環境保護のための活動や災害支援といった、本業とは別の位置づけで取り組むケースが多いです。
CSR活動そのものでは収益につながらず、むしろコストがかかるため、大企業などが義務感をベースとして、イメージアップのためにも取り組んでいるというのが実態ではないでしょうか。
マイケル・ポーター氏は、CSRとCSVについて以下のように比較しています。
どちらも社会貢献につながると言えますが、上図のように整理してみると、CSRは企業の価値を維持する(マイナスにしない)ための活動、CSVは社会的な課題へのコミットを通じて企業の価値を高めていく(プラスにする)ための積極的・能動的な活動と言えます。
また、CSRは企業内の一部門が取り組むケースが多いのに対し、CSRは「CSR経営」と言われるように、企業としての方針を策定した上で、事業を通じて直接的に取り組むことが多いことも相違点として挙げられます。
CSV経営に取り組むメリット
CSVは、経済的価値と社会的価値を共に創造しようとする考えであるため、当然企業側にとってメリットがあります。事業とのシナジーの高さがCSVの特徴の一つです。
・バリューチェーンの生産性向上
企業のバリューチェーンは社会課題の悪化に影響することが多くありますが、バリューチェーンを見直すことで社会課題の抑制とコスト削減・競争力強化につながります。
・新たな機会の獲得
社会課題を解決するサービス・製品を提供するという観点から新規事業開発を行うことで、新たな市場や利益を得ることができます。
・消費者からの信頼・評価
事業が社会の便益に反していないことは消費者の安心感の醸成につながり、企業の社会課題解決への前向きな姿勢に対し、ファンがつくことも考えられます。
・認知の向上
単なるビジネスではなく、社会課題に取り組み、成果を上げていることで企業の社会的認知度が高まります。また、社会課題や地方創生といったテーマに関心を持つ人は一定数いるため、採用活動においても優位にははたらくでしょう。
CSV経営の事例
最後にCSV経営に取り組んでいる企業の事例を紹介します。
ネスレ
コーヒーなどを扱っているネスレは、本格的にCSVを体現している企業として有名です。専門の部署は存在せず、社員一人ひとりがCSVと向き合うことを大切にしています。
ネスレでは「栄養」「水」「農村開発」をCSVとして注力する分野を定め、長期的に取り組んでいます。
母乳育児が困難な乳児に対して栄養ソリューションを提供したり、カカオ農家の世帯収入向上のためにプロジェクトを行ったりと様々な取り組みを行っています。
キリン
キリンはグループとして全社的な方針を定めており、グループとして取り組むべき課題、長期経営目標を達成するための指針、中長期アクションプランを明確にしています。
課題としては「酒類メーカーとしての責任」という前提に加え、「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」を設定しています。
特筆すべきは「コミットメント」と言われる、重点課題に対する中長期アクションプランで、下記のように成果指標を含めたアプローチを落とし込んでいます。
単に分野を特定して方向性を示すだけでなく具体化して意思を表明することは、社会課題の解決に向けた熱意を世間に伝えるという点においても効果的でしょう。
まとめ
CSVとは、経済的価値と社会的価値を共に創造しようとする考え方です。社会課題に取り組むことは、社会にとってはもちろん、企業にとってもメリットをもたらします。
経営者や新規事業担当者は、社会課題を事業の「機会」として捉え、具体的な取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
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