2023.11.19

クラウドファンディングで研究費の資金調達が行われている事例について解説

クラウドファンディングで研究費の資金調達が行われている事例について解説

映画やアニメといったエンターテイメント業界から、復興支援やイベント開催など、様々なことで資金調達が行なわれているクラウドファンディング。最近では「研究費」の資金調達目的としても活用されているようです。では一体どのようなプロジェクトがあるのでしょうか。早速見ていきましょう。

クラウドファンディングで研究費を集める方法

従来の研究費調達と言えば、日本学術振興会の科学研究費補助金のように、専門家が申請書を審査して採択するか判断します。しかし、クラウドファンディングでは、必ずしも専門知識をもたない一般の人でも資金調達を広く呼びかけることができ、研究内容を平易な言葉で説明して、いかにその研究が重要なものか示す必要があります。

クラウドファンディングで研究費を調達する場合は、専用のウェブサイトに内容を掲載します。一般から研究費を集める場合には、寄付という手段もありますが、クラウドファンディングでは寄付と異なり、出資者にリターンを提供するのが一般的です。報酬はさまざまですが、学術系というジャンルにちなんだオリジナルのグッズや、フィールドワークの招待、研究室見学、論文の謝辞掲載などがあります。

クラウドファンディングで資金調達するためのコツ

研究費を調達するクラウドファンディングの多くは、目標額を数十万円から数百万円に設定されており、科研費で行なうような大規模な研究よりも、その前段階にあたる装置の開発やフィールドワークのための渡航費などが主となっています。ただ、なかには数百万円を調達できた医学研究もあるので、いかに魅力的にアピールするかが肝となります。

そのためには、通常のクラウドファンディング同様、科研費の申請書のようなテキストのみの掲載ではなく、写真や動画も用意する必要があります。また、掲載したウェブページを知ってもらうために、TwitterやFacebookなど、SNSでも積極的にPRがオススメです。

主な学術系サイト

では、研究費を集める目的で設立された代表的なクラウドファンディングサイトをいくつか紹介していきます。

  • academist

2014年4月にスタートした「academist(アカデミスト)」は、 日本で初めて”研究費の獲得”に特化したクラウドファンディングサイトです。第一弾のプロジェクト「深海生物テヅルモヅルの分類学的研究」は、世界中に生息するといわれるキヌガサモヅルを、DNA解析で分類する研究を行なうための試薬購入費用を募り、支援額に応じて受け取ることのできるお礼品「モヅルTシャツ」「モヅル乾燥標本」などが人気となりました。

設立から3年半の間、academistは数理物理学、歴史学、考古学など、基礎研究を中心とした実績を重ねており、これまでにおよそ30名の研究者が、約3000名の支援者から3000万円以上の資金調達に成功しています。

  • Experiment

2012年4月に開始したアメリカ・シリコンバレー発の「Experiment(エクスペリメント)」は、世界で最も規模の大きい研究費獲得のためのクラウドファンディングサイト。これまで743件のプロジェクトが成功しており、40,218名の支援者から累計$7,578,144(約8億6056万円)を集めています。

資金調達に成功した案件数は全体の47.1%であるため、成功する確率はそれほど高いとは言えませんが、資金調達に成功すれば大規模なプロジェクトとなり、実際、2013年に行なわれた、蒸気機関車から出ている排気ガスの状況を調べるプロジェクト「Do coal and diesel trains make for unhealthy air?」では、線路周辺に住む住民の方々を中心に261名から資金が寄せられて、$20,529を集めたため、話題となりました。

  • Sciencestarter

「Sciencestarter(サイエンススターター)」は、ドイツ初の学術系クラウドファンディングサイトで、2016年からStartnextというサイトの内部でサービスを展開するようになりました。これまではドイツ語のみでの運営でしたが、現在では英語/ドイツ語の2ヶ国語に対応しています。

これまで実施されたプロジェクト件数はおよそ40件程度ですが、人文・社会系や大学を盛り上げるためのプロジェクトなど、多種多様なプロジェクトが立ち上げられており、幅広い研究に特化しているのが特徴的です。

  • VERKAMI

スペイン発のクラウドファンディングサイト「VERKAMI(ベールカミ)」は、サイトそのものが学術系に特化しているわけではありませんが、科学技術のカテゴリーが充実しており、研究費の調達を行なうプロジェクトがいくつか存在しています。サイト内はガリシア語、バスク語、カタルーニャ語、カスティーリャ語、イタリア語、英語があり、主にヨーロッパの人を中心に人気を博しているようです。

まとめ

好きな研究テーマで必要な資金を募ることができる、研究費を集めるためのクラウドファンディング。もちろん長所だけではなく、研究アイデアを公開するにあたり、アイデア盗用のリスクも伴われ、研究者の立場からすれば、チャレンジ自体が負担になることもあります。

しかし、ただ単に研究費を集めるだけではなく、クラウドファンディングで研究内容を宣伝した結果、メディアから取材を受けた事例や、講演依頼を受けた事例、共同研究者募集に成功した事例など、派生的な活動につながったプロジェクトも多いようです。

国家予算が削減されていくなかで、科研費や運営費交付金、民間助成金以外の選択肢として、クラウドファンディングが最たる手段になりつつあるのではないでしょうか。

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