2023.12.2

新規事業の評価基準とは?評価の軸や方法を設計する際の考え方を徹底解説

新規事業の評価基準とは?評価の軸や方法を設計する際の考え方を徹底解説

新規事業の評価、上手く回らずに困っていませんか?

新規事業の評価でよく陥ること

新規事業を行う際の「評価」を皆さんはどうやって決めていますか?
既存事業の物差しを用いて始めてみたはいいけれど、無理が出てきて困ったりしていませんか?

この話はよく書籍やサイトでも取り上げられ、そこには「既存事業の物差しで新規事業を評価してはいけない」などと書かれていることがあります。
そこでは新規事業とは既存の物差しで測れない領域に挑戦するもので、既にある事業を発展させていくのと、ゼロから事業を生み出すのとではその手法も考え方も全く異なります。そのため、既存事業の売上や利益といった物差しで新規事業を評価することは適切でないとしていることがあります。
これを見て一度既存事業のものさしでうまく行かなかった方は「全く新しく考えなければ」といざやってみたはいいけども、また上手くいかない、何でだ!なんて話を結構耳にします。

何故このようなことが起きるのでしょうか?
どちらも不正解で別に正解があるのでしょうか?
いいえ。我々Relicでは多くの方が上手くいかない要因は別にあると考えています。

その要因とは何なのか?

これを知るには、まず新規事業というものを正しく把握することが必要です。
今更何をと思われるかもしれませんが、意外と誤解している方や色々と見過ぎてごちゃごちゃになっている方もいるかもしれないので、改めて整理をしてみましょう。

新規事業とはなにか?

何か新しいことを始めた場合、新規事業と一括りにされることが多いのですが、企業内で行われる全ての事業は、既存事業含め大きく4つの形式に分類することができます。この分類を定義したのがアンゾフの成長マトリクスです。

※引用:https://www.sbbit.jp/article/cont1/30111

①市場浸透:
既存の市場、顧客に対し既にある製品やサービスそのまま販売し、購入頻度や単価、購買数を上げることで売り上げの拡大を図る戦略。既存製品の認知度が低いなどの要因で、市場シェアの拡大の余地が見込める場合には有効な手法です。アップセルやクロスセルがこれにあたります。既存のアセットを最大限に活用でき通常は既存事業に分類されます。

②市場開拓:
既存の製品やサービスを、新たな市場や顧客層に販売しマーケットの拡大を図る方法。製品やサービスのアセットは既存のものを活用し、ターゲットの属性や年代、to C、to Bなどターゲットを拡大することで新市場を獲得する戦略。国内向けに販売していた商品を海外市場で販売するといった戦略がこれにあたります。

③製品開発:
開拓済みの販路やマーケットを利用し、新たな商品やサービスを投入しマーケットを開拓する戦略。季節で商品を追加変更するアパレルなどはよくこの戦略が見られ、常に商品が開発、追加されています。市場マーケティングについては既存のアセットが活用できます。

④多角化:
市場、製品共に既存のアセットを全く使わずに新たな市場をターゲットに新製品や新サービスを投入する戦略。この戦略には、新製品の投入だけでなく、異業種への参入も含まれており、最も難易度が高い新規事業といえます。既存のアセットや経験が殆ど使えない場合も多く、スピードを重視し企業買収や業務提携といった手法が使われることも多々あります。

分類から分かること

①は明確に既存事業、④は新規事業だと分かりますが、②③はどうでしょう?
製品開発や市場開拓という既存事業の市場、製品どちらかの軸を新たな領域に伸ばす戦略も新規事業の1つと考えるか、あるいはそれは既存事業の範囲内だとするかは、今記事を読んで頂いている皆様の中でも意見が分かれると思います。

これが上手くいかない要因の1つになり得るのです。新規事業という認識そのものが、本の作者と読み手側でズレていては結果が違ってくるのも当然です。

既存事業の評価軸は本当に活用できないのか?

仮に②③を新規事業とした場合、既存事業の評価軸は本当に活用できないのでしょうか?

いえ、我々はそうは考えていません。
既存のアセットが活用できるという話をしました。つまりアセットを活用した時の経験はある程度共通化して使えるという見方をしています。

例えば、市場開拓戦略では製品は既存のものを展開するのですから、製品やサービスのアセットはそのまま利用できるはずです。そのため評価も既存のものをそのまま活用しても軸は大きくブレる事はないでしょう。新規事業だから既存の評価を破棄して新しい評価手法を用いるとした場合、それまで蓄積した製品、サービス開発で培ったせっかくのノウハウも活かすことができないでしょう。
逆に④の多角化は、既存の経験やアセットがほとんど活かせないことが多いため、既存事業の評価手法をそのまま当てはめようとすると、どこかで無理が生じて適正な評価が行えなくなる可能性が高くなります。

つまり、新規事業だから既存事業のアセット(評価軸)が全く使えないと決めつけるのは結論を急ぎ過ぎで、変わる部分と共通化できる部分を正しく認識することが必要です

事業の目的や考え方

新規事業の目的も企業ごとに様々です。利益を最重要とする場合、社会的貢献や事業創生力の蓄積など収益を目的にしない場合と同じ新規事業でも大きな違いがあります。前者の利益を目的とした事業の場合、大半の企業は収益を主体的な目的としているため、数字に関しては既存の評価軸を活かすことができるでしょう。

しかし、後者の社会的貢献や事業創生力の蓄積、新しい企業文化の形成、人材育成が目的の場合には収益を見ても全く意味がありません。この場合の評価は、いくつ事業を立ち上げたか?何個ナレッジを蓄積できたか?既存事業へのシナジーといったことが評価指標として適切になってくるでしょう。
また、収益は目的としているが、新規事業とのシナジー効果で既存事業側の収益や効率化を図る事が主たる目的の場合、評価軸は既存事業の延長になる場合が多くなるはずです。

これが上手くいかない要因の2つ目になり得るのです。上記程分かり易い違いであれば言われなくても気が付くと思いますが、多くのステークホルダーが関わり指示系統が複雑な場合や、事業推進者と評価を策定する人間が別の場合、途中でコミュニケーションロスが起きることも考えられます。

評価の期間も長期、短期どちらが適しているかはプロジェクトの目的により異なります。収益を目的としたプロジェクトと、社会的貢献や事業創生力の蓄積を目的としたプロジェクトでは、目指すものがそもそも異なるために評価期間も異なってきます。社会的貢献や事業創生力の事業が四半期程度で評価できる程の定量的成果を出せる訳もなく、多くの収益プロジェクトと同じ様に月末のPLを見つめる評価には何の意味もありません。

つまり、企業の考えや戦略によってそもそもの新規事業の目的が異なるということを理解し、カテゴリ区分が〇だからと画一的な思考をしないことが大切です。

新規事業の評価を考える方へ

正しい評価軸を決めるためには、新規事業の「目的」「規模」「期間」「会社としての事業に対する考え」を正しく分類、認識することが必要になります。
会社として立ち上げる新規事業が収益を目指すのか、社会的貢献や事業創生力の蓄積を目指すのかによって評価の方法は変わってくることを意識し、使えるアセットは最大限活用し、事業と同じく新しく作らなければならない軸はゼロベースで考える。本に書いてあったから、他の事業では成功していたから、と画一的な思考に陥らないように注意が必要です。

これから新規事業を立ち上げる、評価制度の構築をするという方は上記の考えを参考にしてみてください。

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