ジョブ理論とは?活用フレームワークを徹底解説
昨今、多くのマーケターやビジネスマンに注目されているのが、「ジョブ理論」です。ジョブ理論は、顧客の課題やニーズを理解する上でとても役に立ちます。
新規事業開発においては、サービス・製品の価値を感じてもらうために、顧客の解像度をできる限り高くすることが重要となります。
本記事では、「ジョブ理論」について、新規事業開発の視点も含めて紹介していきます。
Contents
ジョブ理論とは
ジョブ理論は、破壊的イノベーション論の提唱者で、名作『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセン教授によって、提唱されました。
この理論では、「人はなぜその商品を買うのか?」「なぜあの商品を買わないのか?」という、人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かしています。
出典:ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
具体的には、以下のように考えます。
・ある特定の状況下で、人(顧客)が望んでいる進歩、改善したい事柄を「ジョブ」と呼ぶ
生活の中で発生している様々な「用事」が、ここでいう「ジョブ」として扱われます。
・ジョブを片付ける手段として、人は特定のサービス・製品を購入する。その行為を「雇用」(ハイア)」とする
ジョブ理論では、「雇用」という表現で、サービス・製品の消費を説明します。「雇用」という比喩で捉えることで、サービス・製品を購入は課題解決の手段であることが明確になります。
つまり、人(顧客)はやり遂げたい「ジョブ」があり、ジョブを解決するために商品を「雇用」します。ジョブがどのような状況下で発生するかを理解することが、顧客理解の鍵になります。
ジョブとニーズは同じなのか?
「ジョブ理論」では、顧客が望む進歩や改善したい事柄など、生活で発生する様々な「用事」をジョブと捉えます。これは、普段我々が使い慣れている「ニーズ」と同じものと捉えて良いのでしょうか。
当然ながら、クリステンセン教授が「ジョブ」を新たに定義付けたことから、ジョブには、ニーズにはない「独自の視点」があると考えて良いでしょう。
ニーズは、基本的に何らかのサービス・製品を主語として、その有無や程度について測りますが、ジョブではサービス・製品の存在を前提にしません。前者は、あくまでもサービス・製品目線で評価しようとしますが、後者では、徹底した「顧客目線」で考えます。
ジョブとは、顧客が解決したいと思う「課題」そのものであると捉えられます。また、ジョブは多くの場合、ニーズを生み出す源泉となり得ます。
つまり、高い解像度で顧客を理解するためには、サービス・製品を起点に考える「ニーズ」よりも、「顧客が何を求めているか」に目を向ける「ジョブ」が相応しいのです。
ジョブ理論の具体例(ミルクシェイクの事例)
ジョブ理論について概念的に説明してきましたが、具体的にイメージができるよう、ジョブ理論の具体例として取り上げられるが多い「ミルクシェイク」の事例を紹介します。
とあるファーストフード・チェーン店は、「ミルクシェイクの売上」をどう拡大させるかについて悩んでいました。
過去に、アンケートを実施することで顧客からフィードバックを受け、それをもとに味などを改善しましたが、ほとんど効果は見られませんでした。
顧客を観察する中で、あるパターンを発見しました。それは、ミルクシェイクを買っていたのは、朝の時間帯に車で立ち寄った一人の客が多かったということです。また、インタビューを通じ、「会社に向かう退屈な車運転の時間において、気を紛らわせられる」「空腹を埋め合わせてくれ、かつ手を汚さないもの」としてミルクシェイクが「雇用」されていることがわかりました。
この結果をもとに、長い時間楽しめるミルクシェイクを開発。ミルクシェイクの売上拡大を実現しました。
記事の冒頭で、ジョブを「ある特定の状況下で、人(顧客)が望んでいる進歩、改善したい事柄」と定義しましたが、「車の運転時間」という特定の状況を理解したことが、成功につながったのです。
逆に、顧客がどのようなジョブを持っているかを、この調査を通じて特定できていなければ、いつまでも顧客を絞り込めず、適切な方向性での商品の改良も難しかったことでしょう。
いつ・どのような場面で、何を目的に「雇用」されるかを理解することが、顧客に選ばれるサービス・製品を実現する第一歩になります。
新規事業開発におけるジョブ理論の有用性
ここまでご紹介してきた「ジョブ理論」は、新規事業開発にとても有用です。以下のような理由で、新規事業開発に役立つと考えられます。
新規事業のアイデア創出に活かせる
新規事業開発において、最初の山場となるのがアイデアの創出です。「どのようにアイデアを考えたら良いのか分からない」「良いアイデアが思い浮かばない」というように、ここでつまずく企業・担当者もいるかと思います。
「ジョブ理論」の考え方を適用し、人々の「ジョブ」に着目することで、より本質的なアイデアが発想しやすくなります。
ニーズのズレを解消できる
新規事業を立ち上げる中で致命的となるのが、企業側の視点から見たサービス・製品へのニーズの理解と、顧客側にとっての実際のニーズに乖離があることです。「ニーズのズレ」を検知しないまま開発を進めてしまうと、貴重なリソース(金・時間・人員等)を無駄にしてしまいます。
ここでもジョブに着目し、早期に顧客の解像度を上げることで、サービス・製品を「雇用」してもらう確率を効率的に高めることができます。
ジョブを発見するヒント
「ジョブ理論」は具体的にどのように実践したら良いのでしょうか。ジョブを見つけるヒントを二つ紹介します。
・無消費に着目する
市場において、ジョブがあるにも関わらず、既存のサービス・製品を購入していない人がいます。「無消費」と言われる領域です。
なぜ自社のサービス・製品が選ばれていないのか、他者のサービス・製品が購入されていないのか、その理由を掘り下げることが重要です。
・購入動機を探る(行動観察・インタビュー)
ミルクシェイクの事例では、行動観察やインタビューを通じ、「購入動機」を探っていました。
顧客が無意識に行っていることも含めて顧客の行動や感情を徹底的に調査し、「本当の購入動機」を知ることで、「ジョブ」を見つけやすくなります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ジョブ理論は、人(顧客)はやり遂げたい「ジョブ」があり、ジョブを解決するために商品を「雇用」していると考えます。
新規事業開発においてジョブ理論は、アイデアを発想したり、ニーズのズレを解消する解消したりする上で非常に役立ちます。
ぜひ、ジョブ理論の視点・考え方を取り入れながら、新規事業開発を進めてみてはいかがでしょうか。
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