2023.12.22

インキュベーションとは?事例や意味を徹底解説

インキュベーションとは?事例や意味を徹底解説

新規事業に携わっている方であれば、「インキュベーション」という言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか?インキュベーションとは、事業の創出や起業を支援する行為のことであり、実施する人のことをインキュベーターといいます。このインキュベーターによる支援を上手く活用していくことで、事業の成功確度を高めることができます。本記事では、このインキュベーションについて、その定義から支援内容、重要性についてご説明していきます。

【事例つき】今話題の「インキュベーション」とは?

インキュベーションとは「事業を支援すること」

インキュベーションの意味

そもそもインキュベーションとは、英語で「孵化、卵をかえす」という単語です。親鳥が卵を大切に温めて育てるという意味を、新しいビジネスを育てる様子に重ねられたことで、特に新規事業の立ち上げにおいて使われるようになりました。これは「BI(ビジネス・インキュベーション)」とも呼ばれます。

ビジネスの世界で用いられるようになったのは、1950年代にアメリカで生まれたサービスがきっかけとされています。日本では、バブル以降に広く知られるようになりました。

インキュベーションの目的

インキュベーションの目的は、創設まもないベンチャー企業や社内で新規事業開発を行う人への総合的な支援を行い、企業価値を向上させることです。

単に起業や事業創出をスムーズに進めることだけでなく、企業が長期的かつ継続的に存続、成長できる仕組みを構築することを目指します。

新規事業開発の成功確率は「1勝9敗」や「3%」と言われるように、とても低いものです。しかし、企業の成長、ひいては社会全体の成長のためには新しい事業を生み出すことが必要です。それは、既存事業はいずれプロダクトライフサイクル上の衰退期に入ってしまうためです。

そこで、新規事業開発を社内外から支援し、成功する確度を高めることが必要であり、そのためにインキュベーションが行われています。

インキュベーションは誰が行っているのか?

では、そのインキュベーションとは誰が実行・推進しているのでしょうか?インキュベーションを提供する団体・組織を「インキュベーター」と呼びます。

その例としては、ベンチャーキャピタル(VC)や、独立行政法人 中小企業基盤整備機構、地方自治体、企業内の新規事業関連部署などが挙げられます。

インキュベーターの目的は、新規事業の立ち上げを検討している組織や企業に対して、彼らに不足しているリソース(資金やモノ)を提供し、事業の成功確度を高め、ゆくゆくは企業の価値を向上させることです。

支援内容については、別章で詳しく説明していきます。

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家との違い

インキュベーターと似ている役割として、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家がいます。ベンチャーキャピタルの中にインキュベーターにいる場合があるので混同しやすいですが、エンジェル投資家も含めて彼らは「資金」を中心に支援しています。資金調達に関する問題はサポートしてくれますが、新規事業開発のノウハウや知見がないといった問題については支援の対象外です。

インキュベーターは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が支援する資金調達の方法も含めて、事業を成功に導くために必要な支援を総合的に行います。そのため、支援内容がより具体的かつ広範囲という点が、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家との違いです。

インキュベーションの支援内容

インキュベーションの支援は、大きく分けて「人」「物」「金」「情報」の4つがあります。これらの観点で、インキュベーションの具体的な支援内容について紹介していきます。

「人」の支援

新規事業開発に携わる方の多くが、新規事業についての経験がないということがあります。だからこそ、「何から始めていいか分からない」「アイデアはあるけど、事業化に向けて何をすればいいか分からない」という状態になってしまうことが少なくありません。

そこで、社内/社外問わず、新規事業開発を支援した経験やノウハウを持っている人の力を借りることが重要です。

インキュベーターの多くは、起業家や新規事業創出を行う企業に対して「インキュベーションマネージャー」と呼ばれる支援担当者を配置します。

このインキュベーションマネージャーとは、新規事業を創出するうえで必要となる領域について知見やノウハウを持つ専門家のことを言います。起業家や事業の担当者は、実際の経験に基づくアドバイスを受け、事業の創出からスケールまでサポートしてもらうことができます。

なお、インキュベーションマネージャーには、インキュベーション機能をもつ企業であれば、社内ベンチャー制度に取り組んだことのある社員、社外の専門家であれば新規事業支援コンサルティングを提供している企業のメンバーがアサインされる傾向にあります。

株式会社Relicでは、事業経験とコンサル経験を持ったメンバーを中心に、日頃から新規事業開発支援を行っております。大企業や自治体へのご支援の事例が豊富ですので、新規事業開発にお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

「物」の支援

特に資金があまり豊富にない創業初期のスタートアップにあることですが、事業に最適なオフィスや作業場所を用意できないことがあります。事業が軌道に乗っていない段階では、家賃を払う余裕がないことに加えて、そもそも場所を借りるための信用がないというケースもあります。しかし、スタートアップが事業を成長させていくうえで場所の確保は重要であり、いかに費用を押さえることができるかがポイントです。

物(場所)の提供を提供しているインキュベーターも存在しており、新規事業を創出するうえで必要な施設を安価で借りることができます。家賃相場は約3~5万円で、普通にオフィスを借用するよりも格安で事業を始めることが可能です。安いからといって施設の設備が整っていないということはなく、オフィスとして使っていくために必要な電源やその他の設備はしっかり整えられています。なかには、会議室が整備されている施設もあり、事業を作っていくために十分な環境を借りることができるのです。

最近では、インキュベーションのための施設も増えてきています。それらを「インキュベーション施設」と言いますが、創業初期の起業家や事業立ち上げを行う人への支援を目的に、場所を低価格で提供するだけでなく、アドバイスをくれるインキュベーターを配置しており、いわば起業家のための総合的な支援がついたレンタルオフィスになっています。

インキュベーション施設については、その概要と、メリット・デメリットについて以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

▼企業のインキュベーション施設とは?メリット・デメリットをまとめました
https://relic.co.jp/battery/articles/7637

「金」の支援

新規事業の立ち上げに際しては、資金不足に悩まされるということが往々にして起こります。どれだけ良いアイデアを持っていても、専門的な知識を有していたとしても、資金が足りなければ事業の推進はおろか創出もままなりません。そこで、銀行やベンチャーキャピタルなどから資金調達を行うことになります。

インキュベーターによる支援には、資金についての支援も含まれます。事業に必要な資金を直接支援するだけでなく、資金調達の方法やノウハウ、金融機関との交渉についてのアドバイスなども提供するケースがあります。助成金の専門家に無料で相談できるサービスを提供しているインキュベーションプログラムも存在します。

なお、資金調達には、出資・融資・個人借入・クラウドファンディングなどさまざまな方法があります。より詳細に知りたいという方は以下の記事を参照ください。

▼クラウドファンディングを使用して、資金調達に成功した新規事業の事例集!https://relic.co.jp/battery/articles/7325

「情報」の支援

新規事業創出において悩まされるのは、場所や金だけではありません。情報を集めるのに苦労するというケースはとても多くあります。また、不確実性が高い道のりになるため、目的の達成までに難しい問題に直面することも少なくありません。インキュベーションでは、情報の提供も支援に含まれるため、そういった問題に対して有効な解決策になり得ます。

インキュベーションで提供してもらえる情報とは、ターゲット顧客の属性情報や市場動向などの無形資産であったり、著作権や特許に関するデータ、技術や専門的なノウハウなども含まれます。インキュベーションを受けることで、これらの情報をインキュベーターから提供してもらうことが可能です。

また、起業家が集まるミートアップやセミナーなどのイベントに招待してもらえるケースもあり、さまざまな業界・業種の起業家と交流するきっかけを得ることができます。志を同じくする起業家と交流することで、お互いに有益な情報を交換できたり、難しい問題に直面したときの思いを共有して理解してもらえます。また、何らかの大きな気付きやヒントを得ることもできるかもしれません。

インキュベーターによる支援を受けるには

ここまでインキュベーターから受けられる支援についてご紹介してきましたが、そもそもそのような支援を受けるにはどうすればよいのでしょうか。先にご紹介した社内外のインキュベーターに依頼することも1つの手段ですが、最近では、インキュベーターが支援プログラムを提供しているケースもあるため、そちらを活用するのも有効です。

この支援プログラムを「インキュベーションプログラム」と言います。インキュベーションプログラムは、新規事業の立ち上げを行う起業家や事業会社の担当者を対象として、リソース(資金やモノ、コンサルティング、開発及びデザイン)を提供するなど、総合的に事業創出をサポートするプログラムです。

日本では、ベンチャーキャピタルが中心となり約半年間のプログラムを提供することが主流でした。しかし最近では、ソフトウェア開発会社・コンサルティングファーム、地方自治体などのオープンイノベーション事業を推進する組織がプログラムの提供を行うケースも増えてきています。

インキュベーションの重要性と課題

日本は、欧米諸国と比較してインキュベーションの重要性が高いとされています。なぜ重要なのか、そして現状まだ課題として残っていることについて説明していきます。

重要性

新規事業創出を包括的に支援し、近年では総合的な支援プログラムとして展開する組織も増え始めているインキュベーションですが、海外と比べるとまだまだ企業数が少なく、起業に対する意識は依然として弱い状況と言えます。そのため、起業や新規事業創出に関するノウハウはまだ十分に溜められているとは言えず、インキュベーターによるサポートが必要になってきます。

インキュベーションを受けることで、いろいろな手間やリスクを低減させることが可能ですし、不安要素や不確定要素を極力排除して事業創出に臨めるため、事業成功の確度を高めることができます。

課題

海外と比べて、日本ではインキュベーションに課題が残っているのが現状です。上述のように、これまで起業家を支援する仕組みがなかったこともあり、起業や事業創出のあらゆるフェーズ、パートをサポートできるインキュベーションマネージャーが少ないのです。そのため、ハード面でのサポートが充実している一方で、ソフト面でのサポートが脆弱になりがちで、思うような支援を受けられないケースも存在しているのが実状です。インキュベーションマネージャーが解決できない課題は、外部の専門家を別に雇うというケースも多く、インキュベーションマネージャーの育成がどの経営主体にとっても課題となっています。

新規事業を成功させるにはインキュベーションが重要

ここまで、インキュベーションの定義や支援内容について見てきました。インキュベーションの定義が「事業支援」であること、目的は「社会貢献」であることは押さえておくべきポイントです。

新規事業開発には、人・場所の確保や資金繰りなど、リソース面でさまざまな課題がついてまわります。事業を拡大させていくにはどうしたらいいか迷うことも少なくなく、単なる勢いだけでは成功するのが難しい領域です。インキュベーションを上手く活用できれば、有用な設備を利用でき、専門家からのアドバイスも得られるため、事業の成功確度を高めるためにはとても有効な手段と言えます。起業を考えている人、企業において新規事業を担当している人はぜひチェックしてみてください。

なお、サイト「Battery」では、新規事業に関する記事を多く掲載しています。他の記事も併せてご覧ください。

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