2024.3.14

新規事業で使えるPESTLE分析を徹底解説

新規事業で使えるPESTLE分析を徹底解説

PESTLE(ペストル)分析とは

新規事業を検討する際、ビジネスに影響を与えるマクロ環境について、漏れ無く十分に分析できていますか?

事業化した後に、思わぬ落とし穴にはまらないためには、6つの外部環境要因を分析し、事業案やその戦略に反映させていくことが大切です。

「PESTLEとは、次の6つの言葉の頭文字から構成された造語です。

  • Political(政治的)
  • Economic(経済的)
  • Sociological(社会的)
  • Technological(技術的)
  • Legal(法律的)
  • Environmental(環境的)

PESTLE分析は、事業が置かれているマクロ環境を6つの観点から分析し、急速な外部環境の変化を踏まえた判断を下すためのフレームワークです。

PEST分析との違い

PESTLE分析は、今から約20年前に誕生したPEST分析を発展させた分析手法です。

PEST分析は、「Political(政治的要因)」、「Economic(経済的要因)」、「Socialogical(社会的要因)」、「Technological(技術的要因)」の4つの要因から構成されています。

社会的要因から環境要因が、政治的要因から法律的要因が派生したのは、この2つの要素が新規事業やビジネス全般において見落とせない、重要な指標となってきたからです。

東京五輪に向けて日本の民泊関連法律の改正が行われたり、環境汚染問題から企業のCSR活動が活性化したように、これらの要素はビジネスの土台や顧客の消費行動に大きな影響を及ぼしました。

PEST分析をPESTLE分析に拡張することで、事業を取り巻く環境の変化に対して、抜け漏れのない分析を行うことができるのですPEST分析について詳しく知りたい方は下記の記事をご一読ください。

PEST分析とは?フレームワークに当てはめて、実在サービスを分析した事例も交えて解説

PESTLE分析のタイミング

ここまで述べてきたように、PESTLE分析は、企業や事業を取り巻くマクロ環境の変化を捉え、潜在的なリスクの把握や新たなビジネスチャンスの発見につなげることに貢献します。PESTLE分析を用いて、新規事業アイデアの創出にチャレンジをする場合、PESTLE分析はアイデア発想の種として、はじめに用いられる場合が多くあります。

自社の事業領域を対象に外部環境要因を分析することで、ある程度既存事業と関連性があるアイデアの創出が期待できます。自社にとって「飛び地」でのアイデアを求める場合は、対象を絞らずに、外部環境要因を分析してみると良いでしょう。

新規事業のアイデアや注目するマクロ環境の変化が決まれば、3C分析や5フォース分析、SWOT分析等を行うことで、業界の構造や自社の強み、事業の可能性などが明らかになっていきます。

ここで重要なポイントは、事業案をブラッシュアップしていく過程で、必要に応じて、同じ分析をやり直すということです。新規事業開発の場合、不確実性が特に高いため、多くの仮説のもと、事業案の検討が進められます。当初の仮説がそのまま証明されることはほとんどなく、常にアップデートを繰り返すことになります。そのため、PESTLE分析も一度実施して終わりではなく、アイデアの精緻化に伴い、必要に応じて実施していくことが重要です。

PESTLE分析の構成する6つの要因

⑴Political(政治的要因)

▼概要

事業を展開する国や対象地域・自治体の政治的方針が関与します。政府がどのように経済に介入するかを分析します。

▼関連要素

政策(貿易、社会福祉等)政治の安定性、政治団体の動向、地方分権化の動向

▼具体事例

①日本の民泊
東京五輪の影響で政策方針が変化し、2018年6月、民泊に関する法律が改正されました。「ホテル業は10室以上、旅館業は5室以上の空間が必要」という規制が撤廃されたので、より多くの建築物が民泊業に利用できるようになったのです。
参入障壁の低下により、多くのプレーヤーの市場への参入や業界構造の変化が予測できます。  

②SNS
日本では一般的なソーシャルメディアであっても、海外では法的に利用が禁止されていることがあります。例えばFacebookはイラン、ベトナム、北朝鮮で利用が制限されており、これらを利用したサービスや広告の発信はできません。

▼調べる方法

⑵Economic(経済的要因)

▼概要

経済成長や景気といった変化を指します。非常に流動的な要因なので、常に注視し、対策を練る取る必要があります。経済的要因は企業の経営に大きく影響するため、新規事業の成長角度にも影響を及ぼします

▼関連要素

為替レート、インフレ率、金利、GNP動向、マネーサプライ、賃金変化、雇用率・失業率、消費、物価

▼具体事例

①アメリカのLendUp
アメリカの「貧富の差が拡大している」という経済状況を鑑み、「資金力がない貧困層でも低金利でローンを組めるようにしたい」との課題を発見した「LendUp」。クレジット履歴だけでなく、住所やSNS利用状況等を考慮して信用情報を登録するというソリューションを打ち出し、ニーズを的確に捉えたため事業拡大に成功しました。

②価格調整
「ベーシックプラン/プレミアムプラン」や「新規登録者/リピーター」で価格帯に高低をつけたり、「買い切り型→月額課金(サブスクリプション)」に切り替えたり、経済状況を正しく把握することで様々な施策を打つことができます。   

▼調べる方法

⑶Sociological(社会的要因)

▼概要

SNSの普及によって個人の影響力が増した現在、ビジネスにおいても文化的側面は非常に大きな要素となりました。価値観等、定量的に変化を把握しづらい要因ではありますが、新規事業やビジネスモデルを考案する際、社会的・文化的に受け入れられるかどうかは特に重要です。

▼関連要素

生活水準、人口分布、健康意識、人口増加率、年齢分布、キャリア態度、収入格差、教育レベル、余暇の過ごし方、流行、ライフスタイルの変化、社会問題、新たな文化の出現

▼具体事例

①インドのBabajob
インドのインターネット普及水準は低い一方で、携帯電話はある程度普及しているという分析をしたBabajobは、携帯電話と電話番号さえあれば利用できる、SMSを通じた求人サービスを広めました。

②ギグワーク
ライフスタイルの変化から副業をする人口が増え、違った場所で短時間ずつ働きたいという新たなライフスタイルが生まれました。そのニーズをうまく拾い上げたのが日本の「ギグワーク」です。

▼調べる方法

⑷Technological(技術的要因)

▼概要

比較的理解が容易な技術的要因は、未来に向かって日々革新されている領域です。前述した要因と比べて今後の見通しがしやすく、事業アイディアにも直結していきます。インパクトが大きい分、乗り遅れや読み間違いは大きな痛手となってしまう可能性が高いです。十分に注意して検討しましょう。

▼関連要素

政府・業界の取り組み、研究開発活動、技術移転の速度、成熟度、自動化、技術的インセンティブ、インターネットの普及、5G、AI、IoT

▼具体事例

①Appleのユーザー認証
例えばiphoneにおいて、認証システムは技術の発展とともに大きく遷移してきました。パスコードから指紋認証、そして顔認証へと変化したのは、Appleが技術的動向を分析・予測し、認証システムの導入・革新を進めたからに他なりません。

②テスラのバッテリー
電気自動車メーカーであるテスラは、自動車メーカーとしてはまだ歴史が浅く、2012年から自社で電気自動車の開発/販売を始めました。ただ、電気自動車のコアであるバッテリーの設計・生産に関しては、パナソニック社などのサプライヤーへの依存が大きく、価格面でガソリン車との競争に苦戦していました。そこでテスラ社は電気自動車の普及の鍵はバッテリーであると考え、自社で内製化し、低価格で長持ちするバッテリーの製造に着手する動きを見せています。

▼調べる方法

⑸Legal(法律的要因)

▼概要

細かな法制度でも、見落とすと利益のみならずブランド全体に深刻な悪影響を及ぼしますグローバル展開の場合は特に、事業展開エリアの法制度をチェックしましょう

▼関連要素

労働関連法、消費者保護法、独占禁止法、規制緩和、不正競争防止、プロダクトの安全に関する法律、雇用法、安全衛生法、差別法、データ保護法

▼具体事例

①Spotify
アメリカでは2013年、カナダでは2014年にサービスの利用が開始されました。この違いは、カナダの著作権委員会が「著作権料をいくら支払わせるか」という明確な基準を持っていなかったことに原因があります。

②資格
日本では2018年に成人年齢に関する法律の改正が行われました。2022年の施行から、公認会計士資格、医師免許、司法書士資格、薬剤師資格、社会保険労務士資格などが18歳より取得可能になります。これにより、資格取得のための予備校等教育機関・教育サービスなど、関連する事業は戦略の見直しや調整が必要になります。

▼調べる方法

⑹Environmental(環境的要因)

▼概要

地球環境そのものから企業のCSR活動等まで含まれ、特に観光、農業、保険などの産業に影響を与えます。近年では企業のブランドイメージや消費者の選好に大きな影響をもたらすとして、マーケティング分野でも急成長している領域です。

▼関連要素

天候、気候、気候変動、環境保護、サステナビリティ、CSR活動、環境問題に関する世論、エネルギー、電力源、生態系、絶滅危惧種、バイオテクノロジー、遺伝子操作

▼具体事例

①オーストラリアのENVIROSAX
オーストラリアでは2018年からレジ袋廃止の動きが活発になっています。「ENVIROSAX」は、環境保護に対する意識や動きを早期に予測し、2004年からエコバッグの製造販売を行っていました。ブランド力をもとに今後はさらに売上が拡大していくと予測できます。   

②フェアトレード
途上国の生産者に適切な対価を支払うというのも現在注目されている観点の一つです。スターバックスは毎月20日を「Ethically Connecting Day ~エシカルなコーヒーの日~」とし、生産地とのつながりをフェアトレード認証コーヒーで体感してもらうイベントを開催しています。フェアトレードという価値観を広げる活動として、社会に影響を与えており、社会的価値を重視する人々に対して、購入意向を促進し、ブランドイメージの向上にも寄与していると考えられます。

▼調べる方法

5.まとめ

いかがでしたでしょうか?

PESTLE分析は事業を取り巻くマクロ環境を分析するためのフレームワークです。ご紹介した調査方法はあくまで一例ですので、構想中の新規事業に影響を与え得る要因を分析し、戦略に反映してみてください。

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