2023.11.17

乞食だという批判を受けないためのクラウドファンディングの活用方法とは?

乞食だという批判を受けないためのクラウドファンディングの活用方法とは?

昨今新たな資金調達の形として、クラウドファンディングが人気を博し、その活用率は急激に高まっています。

一般社団法人日本クラウドファンディング協会の調査によると、購入型クラウドファンディングの市場規模は、この数年でなんと6倍以上に拡大しています。

しかし、クラウドファンディングによる資金調達が、単にお金が欲しいだけの、いわゆる乞食のようなものなのではないかと批判が寄せられるケースも少なくありません。

今回の記事では、クラウドファンディングは乞食だという批判がなぜ生まれるのか、その要因について考察していきます。

そもそもクラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、事業やプロジェクトの実施に必要な資金を、インターネットを介して、不特定多数の方から小口で資金提供や協力を得ること全般を指します。

資金を募集する側(プロジェクトの起案者)からすると、現時点で資金が不足している場合でも、銀行からの借入や、外部の投資家やベンチャーキャピタル等からの出資なしで事前に資金を集めることができるため、新しい資金調達の在り方として注目されています。

※クラウドファンディングに関する詳しい説明はこちら

起案者だけではなく、支援者にもメリットがあり、購入型クラウドファンディングの場合であれば、まだ世に出ていない製品を特別に先駆けて/安く入手できる、支援者しかゲットできない限定品が用意されている、金融型クラウドファンディングでは、利子・配当を受け取ることが出来るといったメリットがあります。
このように、プロジェクトの起案者は資金調達が出来る、支援者は出資金額に応じて貰えるリターンやサービスを享受することが出来るため、クラウドファンディングは双方にとってメリットのある仕組みとなっているのです。

※クラウドファンディングの種類ごとの特徴はこちら

加えて、資金調達以外の目的で活用されるケースとして、テストマーケティングやPR、プロモーションとして活用される事例も増えてきています。

企業が新たな製品・サービスを開発した際の大きな懸念点として、顧客に受け入れてもらえるのかどうかという点が挙げられます。当然モニターからのレビューを元に製品・サービスの改良は行っていると思いますが、市場のニーズにフィットするかどうかは極めて不明瞭です。そこで、クラウドファンディングを実施し先行販売を行うことで、新たに開発された製品や事業アイデアがどれほどのポテンシャルを持っているのかを検証することができるのです。

クラウドファンディングにかかる費用は、登録費用や資本金など諸々の資金が必要な新規事業・起業と比べて、圧倒的に安く済みます。低コストで始めることが出来ることもクラウドファンディングの人気に拍車をかけた1つの要因なのかもしれません。

また、クラウドファンディングは投資家やマスコミをはじめ、学生や主婦、アーティスト、政治家など、様々な属性の方が利用しているため、もしその製品のブランドのコンセプトや品質などが話題になり、多くの顧客の共感を得て多額の資金調達に成功すれば、ニーズの確認やPR効果にとどまらず、さらなる顧客や提携企業の獲得にも繋げることも可能です。

※企業によるクラウドファンディングの活用事例はこちら

このように色々な用途はあれど、クラウドファンディングは起案者及び支援者双方にとってメリットのある仕組みとなっているため、正しい使い方のもとであれば批判されることはありません。

しかしながら、現にクラウドファンディングは乞食だという批判は見受けられます。なぜなのでしょうか。

実際に炎上してしまったプロジェクト例を見ながら、その理由を考察していきたいと思います。

なぜ乞食だと言われてしまうのか?炎上したプロジェクトをご紹介

さてここからはクラウドファンディングが乞食だと言われてしまう理由を考察するために、実際に炎上してしまったプロジェクトをいくつかご紹介します。

女子大生の世界一周「夢のバトン」プロジェクト

2015年2月、京都在住の児童教育を学んでいるという女子大生がクラウドファンディングサイトで「あなたの夢と世界中の子どもの夢をつなげたい」と題したプロジェクトを立ち上げました。

そのプロジェクトの内容としては、まず初めに3万円以上の支援者にスケッチブックを送り、その1ページ目に自分の夢と途上国の子供たちへのメッセージを書いてもらいます。そして立案者である女子大生がそのスケッチブックを持って世界一周をし、訪問先の発展途上国のこども達に、自分の夢をそのスケッチブックに書いてもらうことで、「夢のバトン」を繋げるというものでした。旅に必要な資金を支援してもらう代わりに、旅先から持ち帰ったスケッチブックのコピーを支援者へ送るというリターンを設定していました。写真展の開催も予定していたそうです。

一見すると社会貢献性のあるプロジェクトに見えますが、後々炎上することになってしまいます。

その理由の1つとして、支援金の使い道が挙げられます。公表された内訳はカメラ代に15万円、生活費に93万円、旅費に18万円といったように、旅費以外はプロジェクトの内容に関係のない私的な支出のようにも見て取れます。また、それに拍車をかけたのが女子大生本人のFacebookページです。この女子大生は本名でプロジェクトを掲載していたため、SNSアカウントを調べられ、そこには「将来に悩んでいます。旅が楽しすぎて一生旅をしていたい」「一生遊んで暮らしたいと日々切実に願う」といった文章が書かれており、この「夢のバトン」プロジェクトも、ただ自分が旅行したいがために立ち上げたと思われても致し方がありませんでした。

その結果「自己満足の企画で全く支援になってない」「他人のカネで旅行したいだけだろ」「貧困国の子供に何も還元されてない」「この女子大生にしかメリットがない企画」といった意見と共に、発展途上国の子供たちを利用して、ただ自分が旅行を楽しむための費用をクラウドファンディングで集めているだけなのではないかという批判が殺到してしまい、最終的にこのプロジェクトは中止となりました。

スラム街の暮らしを肌で感じたい!

近畿大学に所属する男子大学生3人組が「スラム街の暮らしを肌で感じたい」と題し、クラウドファンディングサイトにプロジェクトを立ち上げました。内容としては、スラム街で子供たちとの交流を通じて、自分たちが夢を与えるきっかけになり、その活動を映像として残すというものでした。

このプロジェクトも、一見すると社会的意義に溢れた素晴らしいものですが、TwitterなどのSNSで嫌悪感を示す人が続出し、炎上することになってしまいます。

炎上の原因はいくつかありますが、やはりこのケースも、ただ自分たちがやりたいことをするためにクラウドファンディングで資金集めをしたのではないか、いわゆる乞食行為なのではないかということが大きな要因でした。

このクラウドファンディングの目的としては、スラム街の子供たちに、夢・将来への希望を与えたい、生きる楽しさを教えたいといったものだったのにも関わらず、プロジェクト内のページには「誰かのために!と謳うつもりはありません。今回の旅行は、誰かのためではなく僕らがやりたいからやります!」といった文章や、「わがままと言われても周りの意見は気にせず自分たちのやりたいことを全力でやります!!!!」などの記述があったのです。この矛盾している言動から人々の不信感を募らせ、最終的に乞食だと炎上するに至りました。

また、「夢を与える」「生きる楽しさを教える」とは具体的に何をもって目標達成とするのか、達成のためにどういったアクションを行うのかということが明言されておらず、活動報告用の映像に関しても、「すごい!!と思われるぐらいの映像を作ります」という言葉のみで、どのような映像を作りたいのかも分からないような状況でした。全体的に内容の薄いプロジェクトだったことも、自分たちの私利私欲のためなのではないかと思われてしまった要因の1つかもしれません。

MacBookが欲しい!

最後にご紹介するのは、女子大生ブロガーのつねこのプロジェクトです。4年間使っていたパソコンにガタが来たため「Macbookが欲しいです!」というプロジェクトを立ち上げ、その購入代金を募りました。

支援金に対するリターンがしっかりと設定されていれば問題はなかったのですが、提示されていたのは、なんとTwitterでの報告のみ。それに加え、最終的には違う機種であるSurfaceを購入したことから、乞食行為だと批判されてしまいました。

この他にも、モデルの千神朱佳(通称:ちあたん)さんが小さい頃から憧れていたバイクに乗るという夢を叶えるため、クラウドファンディングサイトで、「教習所へ通い、バイクの免許を取得したい」というプロジェクトを立ち上げ、千神さんとツーリングに行く等のリターンは設定されていたものの、自己利益のためという側面が強いのではないかと非難が集まるといった事例もあります。

乞食と見なされてしまう理由

さてここまで、実際に乞食だと炎上してしまったプロジェクトを見てきました。

これを元に、どのようなクラウドファンディングプロジェクトが乞食だと言われてしまうのか、その共通点を探っていこうと思います。

個人単位でも実現可能

アメリカやイギリスといったクラウドファンディング大国では、今や”億単位”のプロジェクトも施行されており、日本でも新ブランドの開発や起業など、大掛かりなクラウドファンディングはいくつも存在しています。ただ、中にはクラウドファンディングを実施せずとも、個人単位で簡単に実現できそうなプロジェクトもあるのが現実です。

例えば、目標金額が10万円のプロジェクトがあった場合、どんなに内容が素晴らしくても「10万円ぐらいならバイトをすればすぐに貯められるだろう」「貯金をはたけば済む話ではないのか」という批判を浴び、クラウドファンディングという名目のもと、ただお金を貰いたいだけだと判断されてしまうケースもあります。

プロジェクト達成のために必要な資金を募るクラウドファンディングにおいて、個人が努力をすれば集められる資金で実現可能なものは、やはり単なる「お金欲しさ」だと思われる傾向にあり、たとえ起案者に熱意や真剣さがあったとしても、それが支援者に伝わりにくくなってしまいます。あまりにも小規模で簡素なものだと、乞食行為なのではと批判の的になってしまうのです。

自己満足に終始し、支援者に利益がない

クラウドファンディングは、支援してもらう代わりに何からのリターンを提供するという仕組み上、支援者がメリットを感じられるようなものである必要があります。起案者のみが利益を享受し、社会や支援者に対して、魅力のあるリターンを提示せず、何のの好影響も与えないプロジェクトでは、支援を受けられる可能性は低く、お金が欲しいだけの乞食だと言われてしまう可能性があります。

支援金の用途が明示されてない/プロジェクトの実施に関係がない

リターンの設計だけではなく、支援金の用途も明確にしておかないと乞食と言われる原因になってしまいます。

クラウドファンディングはプロジェクトごとに集まる支援金の額が異なり、数十万のプロジェクトから数億円が集まるプロジェクトまで幅広くあります。

そんな中、実例で紹介したように、支援金をプロジェクトの実施にそぐわない形で使っている、または明示されておらずどのように使われているか分からない場合は、批判の対象になってしまうことも少なくありません。また、仮に目標金額を大幅に超えるような支援金が集まった場合でも、プロジェクトにさらなる付加価値を生み出すための資金として活用されるのは良いですが、中には自己利益、例えば借金返済のために利用されるといった事例もあります。プロジェクト自体に魅力を感じてお金を投資したにも関わらず、自分のお金が起案者の個人的な私利私欲のために使われると分かれば、批判を受けることにつながります。

プロジェクトとは全く別のところで使うお金を募る行為は、もはや「乞食」と批判されてしまったとしても、致し方ないと言えるかもしれません。

乞食と言われないための正しい使い方とは?

このプロジェクトをやりたい!という強い想いを持ってクラウドファンディングのプロジェクトを始めたにも関わらず、乞食だと批判を浴びてしまう可能性はあります。

ではどうすればそのような事態を避けることが出来るのでしょうか。

乞食と批判されないためのクラウドファンディングの使い方について徹底解説していきます。

達成したい理由が明確

クラウドファンディングで資金調達に失敗した、ないしは炎上してしまったプロジェクトのページを見てみると、プロジェクトへの熱量や実現性の細かい内容などは書かれていても、“なぜ達成しなければならないのか”という社会的意義について言及しているものは少ないです。支援者がプロジェクトページを見たとき、なぜこのプロジェクトを行うべきなのか、どういう社会貢献ができるのかという部分が強調されていると、自分たちのためだけではない、すなわち乞食ではないということが明確に伝わります。達成したい理由を含め、5W2H1Mを明示することが重要です。

5W→Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)

2H→How(どのように)、How much(いくら)

1M→Mission(使命)

また、ストーリー性のある文章で支援者に伝えることも大切です。プロジェクトページをオシャレでスタイリッシュなものにすれば、支援者の目を引くことが出来ます。しかし、単に一瞬のインパクトだけで魅せるのではなく、ストーリー性のある文章でなければ支援者の記憶には残りません。箇条書きではなく、ストーリー性のある文章を記載することを心がけましょう。

効果的なリターン設計

乞食だと言われてしまう最大の要因は、自分だけが利益を享受し、支援者に何もメリットがないことです。そのような事態に陥るのを防ぐためにも、支援者が魅力的に感じてもらえるリターンを設計する必要があります。

例えば、特別感のあるリターンにするコツの1つに、限定のものを用意するというものがあります。「先着○○名、限定○○個」と設定すると、特別感を感じてもらえるだけではなく、早い段階で目標額に達したり、注目度が増したりします。

支援後の対応

たとえ炎上することなく目標金額に到達したとしても、その後の行動を誤れば「恩を仇で返された」「自己利益のために利用された」と感じ、非難の的になってしまいます。支援者の方との信頼関係を維持できるように、迅速かつ誠実に対応することが求められます。

一番簡単に出来ることは、購入者へのお礼メールです。クラウドファンディングの場合、「支援」という形で商品を購入してくださることが多いため、支援者が購入後にSNSで配信するケースも多く、それがさらなる「支援」に繋がる可能性もあります。発送完了と同時に御礼のメールを送ることで、支援者とより深い信頼関係を構築することが出来ます。

また、クラウドファンディングのプロジェクトページの中には、活動報告というブログのような機能があります。「達成まであといくら」、「プロジェクト残り◯◯日」、「新たなリターンを追加」といったような進捗状況を報告することも効果的です。募集期間中であれば、起案者はプロジェクトを盛り上げるため、PRしながら活動報告に取り組みますが、いざ目標額に達すると活動報告を怠ってしまうケースが意外と多いです。ただ上述したように、乞食だと言われないためには、なぜそのプロジェクトを行うのか(製品・サービスを取り巻く背景、関わる人の想い)、自分たちの資金がどのように使われているのかということが重要です。資金調達後も頻繁に活動報告を更新し、支援者に製品の開発がどれくらい進んでいるのか、具体的に集まった資金を使用してどのような活動を行ったのかなど記載することで、支援者の安心感にも繋がり、乞食だという批判を防ぐことが出来ます。

またお礼メール同様、購入後の支援者にSNS配信を促す効果もあり、募集期間中、定常的に購入がある状況を生み出すことにつながります。

まとめ

従来であれば、クラウドファンディングは起案者・支援者ともに利益を享受することが出来るため、乞食ではありません。ただ、そんな中でも、クラウドファンディングが乞食だと非難されてしまうのは、プロジェクトの背景や支援金の使い道が曖昧で、リターンが不適切であるが故に、支援者が「自己利益のために利用された」と感じてしまうことが原因です。

当然支援するかどうかの判断軸として、支援者にとって「メリットがあるかどうか」ということはありますが、「このプロジェクトに支援しても良い」と思わせるほどの熱意も、支援者を突き動かす要因です。

そのような支援者の思いや、信頼関係を踏みにじることがないように、適切に行動すれば、乞食という批判を受けることなく、プロジェクトで成功を納めることができるでしょう。

※参考文献

・一般社団法人 日本クラウドファンディング協会 「クラウドファンディング

市場調査報告書」

http://safe-crowdfunding.jp/wp-content/uploads/2021/07/CrowdFunding-market-report-20210709.pdf

・J-CASTニュース 「学生トリオの「スラム街に夢」企画 炎上でCF中止&大学からも「指導」食らう」

https://www.j-cast.com/2018/07/05333142.html?p=all

・女子スパ! 「「スラム街に夢を!」で近畿大生が炎上、クラウドファンディング事件簿を振り返る」

https://joshi-spa.jp/863942

・Polca つねこさんのプロジェクトページ

https://polca.jp/projects/zb3zeiKq0lA

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