AirPodsからデザイン思考の「問題定義」を考える

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デザイン思考の第二ステップ「問題定義」とは?
新しいアイデアを発見する方法として、企業や大学などの教育現場で「デザイン思考」を導入する組織が増加しています。デザイン思考とは、ユーザーへの「①, 共感」から「②, 問題定義」を行い、アイディアの「③, 発想」「④, プロトタイプ」「⑤, テスト」といった5つのステップを繰り返すことでユーザーですら気づかなかった問題の本質を探るプロセス、その考え方を指します。
前回の記事にてデザイン思考の第一ステップ「共感」について詳しく解説しました。今回は第二ステップ「問題定義」について解説したいと思います。「問題定義」とは、解決したい課題を見つけるために、立ち戻る場所(どの問題を解こうとしているのか?)ということを明確にするプロセスです。
立ち戻る場所を明確にするため、インタビューや実際に現場に足を運んで体験したことなどを通じて得られたユーザーの情報を整理します。整理のには様々な方法があります。
(問題定義においては、ユーザーが感じた情報を整理する「五感マップ」が使われる)
参考:”Updated Empathy Map Canvas” by Dave Gray
… とはいえ、やはり横文字が多くて、実際のところなにをすればよいのかわかりません。
今回は最近話題の人気商品を例に問題定義の方法について説明してゆきます。
もしApple社のAirPodsがデザイン思考のプロセスから生まれたら?
「AirPods」はApple社が開発したワイヤレスイヤホンで、最近は街中でも着けている人を見かけることも多くなってきました。私も愛用している一人です。初めて装着した時は、ケーブルがない感覚に感動しました。そんな人気のAirPodsですが、使ってみると気になることがあります。それは、イヤホンを片方だけ外すか、両方外すかで音楽再生/停止の挙動が異なってくるところです。
「片方」だけ外したら一時停止(再び片方を装着したらまた再生される)
「両方」とも外したら停止(再び両方を装着しても停止したまま)
些細な違いですが、私はこの機能がお気に入りです。
では仮にデザイン思考からこの機能が生まれた場合、どのような問題定義があり得るでしょうか?従来のワイヤレスイヤホンとAirPodsを比較して問題定義の差を考えたいと思います。
問題定義 1 イヤホンを外した時のユーザーの心境とは?
まず、ユーザーはどのような時にイヤホンを耳から外すのでしょうか?
上記で紹介した五感マップをもとにユーザーの「行動」「聞こえたもの」「感じたもの」をもとに整理したいと思います。
- 行動:ユーザーが自らイヤホンを外す
- 聞こえたもの: 近くの人の声、テレビやネットで偶然聞いた興味あるワードなど..
(イヤホンより外の世界で聞こえるもの) - 感じたもの: 音楽が流れていると聞き取りづらい..
[問題定義]
他人と会話するとき、外の世界で聞こえている音に耳を傾けたいときは
イヤホンによって音が遮断されるので、人はイヤホンを外す
[気づき]
イヤホンを外すということは音楽の再生が不要であるということなので、停止すればよい
→ 耳から外したかどうかを察知して音楽を再生/停止するイヤホンを作ろう!
上記のような発想からイヤホンを外したら音楽が停止される機能を搭載します。
もちろんこれだけでも便利な機能なのですが、ユーザーすら気づかないニーズかと言われると疑問視するかもしれません。
問題定義のもう少し別の行動から捉え直したいと思います。
問題定義 2 イヤホンを片方だけ外した時のユーザーの心境とは?
イヤホンを外すといっても、両耳外すと、片耳だけ外すではユーザーの心境に違いがある可能性があります。ここでは片耳だけ外した場合のユーザーの心境を整理します。
- 行動:片耳だけイヤホンを外す
- 聞こえたもの:両耳で聞き耳たてるほど重要なことではないけど、聴いておきたい情報
- 感じたもの:すぐにまた装着するのに両方外すのも手間である
[問題定義]
ただイヤホンを片方外すか、両方外すかによってユーザーの意図は異なってくる。
片方外すことはすぐにつける可能性が高い。
[気づき]
片方外すのであれば再びつける可能性があるので再生してあげたほうがユーザーにとって便利なのでは
→ 片耳を外した場合は音楽は一時停止するけれども再び装着したら曲を再生させる機能を追加しよう!
まとめ-問題定義の仕方だけ解決策がある-
いかがでしょうか?
上記のような例は一部分ではありますが、問題定義を行うことで製品に搭載される機能にもヒントを与えることができます。片耳と両耳で再生/停止の動きが違うという、とても小さな機能ですが小さな気配りとユニークさを感じます。
このような細部へのこだわりが、Apple社が世界中の人に愛されている製品を生み出している一要因だと思います。
ただAirPodsのような動作が世の中の人全員にとって便利な機能ではないかもしれません。人によっては片方だけ外しても、曲は停止せずに再生し続けてほしいといった声もあると思います。
そのような課題を解決すべく、バージョンアップしたAirPodsではそのような不満がなくなるような新たな機能が追加されているかもしれません。
デザイン思考の基本の進め方は「小さな失敗を繰り返す」ことです、
ユーザーインタビューからの検証結果が納得のいかないものであれば、問題定義と立戻って繰り返せば良いのです。問題定義の数だけ、それを解決する方法が存在しています。
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